廃墟の不気味な雰囲気を最大限に生かしたホラー作品といえば、まず挙げられるのは『Session 9』だろう。精神科病院の廃墟を舞台に、アスベスト撤去作業員たちが不可解な現象に巻き込まれる様子は、実在したダンヴァース州立病院の廃墟で撮影されたため、圧倒的なリアリティを感じさせる。崩れかけた壁や朽ちた医療器具が、観る者の不安を巧妙にあおる。
『Grave Encounters』も忘れてはいけない。ゴーストハンターを装ったテレビ番組のクルーが廃病院で撮影中に本物の超常現象に遭遇するという設定で、フリーハンドカメラの映像が臨場感を倍増させる。特に時間ループや空間の歪みといった要素が、廃墟ならではの閉塞感を際立たせている。
日本作品では『残穢』が秀逸だ。廃アパートに残された「穢れ」が次々と住民を襲うというストーリーで、日常の隙間に潜む恐怖を描く小野不由美の原作を忠実に再現している。廃屋の床下から見つかる謎の物品や壁に残された痕跡が、過去の惨劇を少しずつ浮かび上がらせる演出は見事と言える。
最近の作品では『The Dark and the Wicked』も評価が高い。田舎の廃農場を舞台に、家族を訪ねた
兄妹が悪霊の襲撃を受ける様子は、宗教的ホラーと廃墟の持つ孤独感が見事に融合している。特に窓のない納屋や錆びた農具が、逃げ場のない絶望を象徴的に表現している点が印象的だ。