Masuk主人公の朱里の表の職業は教師、しかし裏の職業は【殺し屋】だ。朱里の両親がある殺し屋に殺されたことをきっかけに、両親を殺した犯人に復讐をするために殺し屋になった朱里は、殺し屋として確実に成長していた。 そして朱里は職場で一人の男と出会う。それは朱里を殺した犯人と同じ名字を持つ男だったーーー。 その男が、朱里の人生を狂わせていく。その男は朱里の復讐相手の実の゙弟゙だった。 朱里はその男の恋人となり、ついに復讐相手に近付くことに成功する。 そして朱里の復讐の炎は、さらに燃え上がっていく。朱里は復讐を成し遂げるため、その男とも関係を持つようになるが、朱里にとある事態が訪れる。 この恋は復讐の恋にはずだったーー。
Lihat lebih banyakこの恋は、決して許されない恋のはずだった。
私たちは、やはり出会ってはイケなかった。
ねえ、真樹。あなたと出会わなければ私は、この恋に溺れることなんてなかったのにーーー。
傷つくことも、揺らぐことも、好きになることもなかったのにーーー。
どうして私たちは、出会ってしまったのだろうか。
✱ ✱ ✱
「こんにちは、久城さん」
私は目の前のターゲットに向かって、微笑みを向ける。
「ん?誰だ、お前は?……っ!?」
「思い出してくれました? 久城和輝さん」
私の裏の職業は【殺し屋】だ。 依頼者から頼まれた人物を抹殺するのが、私の本当の仕事だ。
抹殺する方法はただ一つ。事故に見せかけて殺害すること。 事故に見せかけて抹殺するのが、私の殺し屋としての仕事だ。だからこそ、ミスは絶対に許されないーーー。
「おま、お前……まさか!?」
「あら?あの時一夜を共にした私のこと、まさか忘れたとか言わないですよね? あんなに激しく私を抱いたのに?」
殺し屋である前に、私は一人の女。だから使えるものは何だって使う。
女の武器であるこの身体を使わない手なんてない。この身体を使って、私は殺し屋としての仕事を全うしている。この身体をターゲットに捧げることに、なんの抵抗もない。 むしろ私にとっては、こんなの当たり前なのだから。
怖いものなんて、この私には存在しない。「お前……やはりあの時の!」
「ようやく思い出してくれましたか?久城さん」
私には男なんて怖くない。 怖いのはただ一つ、自分だけ。
「な、なぜ君がこんな所に!?」
「なぜ?そんなの決まってるでしょ? あなたを抹殺するため、ですよ?」
私の殺し屋としての口癖。それは【今宵、あなたを殺害させていただきます】だ。
「殺害……?この俺を?」
「ええ。正真正銘、あなたをよ」
私は絶対にミスはしない。 そしてこれからも、ミスは絶対に犯さない。
「ハハハッ!何をバカなことを! 冗談はよしてくれ!」
「冗談?あなたこそ、何を言っているのか分かってる? あなたにはこれが、冗談に見えるの?」
私はスカートのポケットから、潜ませていた拳銃を取り出す。
「ーーーっ!?」
「私は冗談なんか言わないですよ?久城さん」
その拳銃を久城和輝の額に向けて突き付けると、久城は怯えたような表情を向けた。
「おい、やめてくれ!頼む……!」
「やめてくれと言われても……上からの指示なので、やめることは出来ないわ。ごめんなさいね」
私はそう伝えると、拳銃の引き金をそっと引いていく。
「頼む!何でもするから! 頼むよ!殺さないでくれ!!」
「だから……やめることは出来ないって言ったでしょ」
私の仕事は殺し屋よ。殺し屋として、この仕事を全うするのは当たり前のこと。
ボスからの指示なのだから、必ず一発で仕留めてあげる。「覚悟はいい?久城」
「う……うわああああっ!?」
私はその後「久城、往生際の悪い男はモテないわよ」と言って、その引き金を久城のこめかみに向かって引いたのだったーーー。
✱ ✱ ✱
「もうすぐ……会えるからね」「楽しみだな」「……うん」私はこの子たちの母親になる。 父親が誰であろうと、私がこの子たちを守り抜く。「真樹……あなたは、この子たちの父親になる覚悟が……今でもあるの?」真樹の気持ちが知りたい。「その覚悟なら、とっくに出来てる」「……そう」私は……真樹とどうなりたいのだろうか。本当は、殺したいくらい憎いはずなのに……。私はその気持ちが、わからなくなっていた。「……朱里」私の頬に触れる真樹のその手が、妙に温かくて……。「真樹……」その手の温もりが心地良く感じる私は、その真樹の手をつい取ってしまう。「朱里……?」 私はその手を振り払えなくて、そのまま真樹の唇に自分の唇をつい重ねてしまう。「私……あなたのことが好き」「俺も……好きだ。愛してる」私はイケない人間になってしまった。 こんな男を愛してしまうなんて……。こんな冷酷な男を愛してしまうなんて……私はイケない人間になってしまった。こんな憎い男を愛してしまうほど、私は落ちぶれてしまったんだなと、つくづく実感する。こんなはずじゃなかった。……こんなはずじゃ、なかったのに。なんで私は、この男のことを愛してしまったんだろうか。 どうして……。そんな虚しくなる気持ちを抱えてしまうほど、私は弱くなってしまったのだろうか。「朱里……?」「好きだよ……真樹。 大好きだよ……」でもこの気持ちだけは、どうしても止められそうにない。 私の気持ちだけは、もう止まらない。✱ ✱ ✱それから数日が経った頃ーーー。「おめでとうございます、お母さん。 元気な双子の男の子ですよ!」私は、双子の男の子を無事に出産した。 予定日よりも数日早い出産となったが、無事に産まれたことが嬉しかった。思えば、買い物の途中に破水してしまい、急遽病院に運ばれて、そのまま病院で出産することとなった。初めて陣痛は、どうしようもなく痛くて、死にそうだった。「おめでとうございます。 元気な双子の男の子ですよ」「そうですか。……良かった」その隣にいるのは、真樹だ。「お父さんに似て、美形なお子さんですね」「それは嬉しいです」急に出産することになったと伝えたら、真樹はすぐに病院に飛んできた。 一人では不安だろうから、付き添いたいと言ってくれたのは、真樹だった。 真樹は私のそばに
私が紅茶の中の砂糖を混ぜながらそう答えると、真樹は「出産の日……一人なのか?」と質問してくる。「……そうだけど、なんで?」真樹はなぜ、そんなことを聞くのだろうか。 私たちは夫婦ではないのだから、立ち会ってもらうつもりは私にはないのだけど……。「なら、俺たちが……立ち会ってもいいか?」「え……?」今、俺たち……って、言った?「立ち会うって……二人でって、こと?」「ああ。 俺と千歳、二人で立ち会いたい」「……どうして? どうして、そこまで?」私のために、そこまでしてくれる理由がわからない。 私は一人で産む決心をした。なのに、なんで……立ち会いたいだなんて言うのだろうか。「見たいんだ。……子供が産まれる瞬間を、純粋にこの目で見たいと思ったんだ」命が尊いからこそ、その瞬間をこの目に焼き付けたいのだと、真樹は私に懇願した。「……立ち会いたいなら、別にいいけど」真樹は「本当か?」と私を見る。「うん……もちろん」真樹は私の前に来ると、私をそっと抱きしめる。「え……? 真樹?」「俺……自分の子供が産まれることって、想像してなかった。でも……今はすごく楽しみなんだ」自分でも信じられない。真樹が……真樹じゃない。 これは私の知っている、真樹じゃない。私の知っている真樹は、冷酷な人なはずだ。 「俺が何を言ってるのかって思うだろうけど……本当に、そうなんだ」「……そっか」真樹は変わったと思う。 あなたはレッド・アイで……最強の殺し屋だと思っていたのに。こんなに優しい人じゃないと、思ってた。「真樹……」「ん……?」私は真樹の手を握りしめ、真樹を見る。「あなたのこと……今でも愛してるのは、変わらないわ」「朱里……?」「だから、あなたに優しくされると……」優しくされると……困るのよ。 そう言いたいのに……なかなか言えない。「優しくされると……何だよ?」真樹は私の顔を覗き込んでくる。「……なんでもない。忘れて」私は真樹から目を逸らし、紅茶を口にする。 そんな私に、真樹は「朱里……」と私の肩に触れる。「あなたの優しさに触れると……私、惨めになるの」「え……?」「あなたは冷酷で、残酷な殺し屋で……。私はあなたが悪くて仕方ないのに……あなたの優しさに触れると、私は惨めに感じるの。 母親になることを決めて、強くなろうと思ったの
「お願いだから、これ以上……私には関わらないで。もういいのよ、私のことなんて。 気にしなくて、いいんだって……」私だってわかってる。二人が思いやりがあることくらい、わかってる。それでも私は、二人と距離を置きたいとさえ思ってしまうの。動かない時計の針を、これ以上動かしたくはない。 ううん、動かしてはダメなの。「言っただろ。それは出来ないって」「……どうして?」私がそう問いかけると、千歳は「君と子供のために、何かしてあげたいと思うのは……父親としての宿命だと思ったんだ。 兄貴も、そう言ってた」と私に話してくれた。「……変な人ね、あなたたちは」だけどその優しさを受け入れていくことも大事なのかもしれないと思った私は、その優しさに甘えることにしてしまったんだ。きっと私は、それを受け入れたことでバチが当たるかもしれない。 それでも、二人の思いを虚しいものになんてさせたくなかった。「子供の名前……考えてきてくれたの?」「ああ。二人で二つずつ、候補を出した。とりあえずだけど」「……ありがとう。参考にさせてもらうね」「ああ」あれからどんどん大きくなるお腹が、現実になった。 つわりがあった頃は、お腹なんて膨らんでもなかったから、全然実感なんてなかったのに。でも今は、ちゃんと赤ちゃんの鼓動も感じるし、生きているってことも感じられる喜びがあった。早く赤ちゃんに会いたいと願ってしまう自分がいて、私はやっぱりつくづく母親なんだと、思い知らされた。私を母親にしてくれたのは、間違いなくこの子たちだ。「朱里……出産の時、俺が立ち会ってやろうか?」ハルキがそう言ってくれたのは、多分私に対する優しさだと思う。「一人じゃ、不安だろ?」「でも……そんなの悪いよ。 ハルキだって、任務で忙しいでしょ?」ハルキが出産に立ち会ってくれると言ってくれるのは、嬉しいけど……申し訳ない気持ちでいっぱいになる。「一人で出産するなんて、寂しいだろ? 俺で良ければ、立ち会うよ」「ありがとう……気持ちは嬉しい」「立ち会えるように準備はしておく。……いつでも呼べよ、俺のこと」ハルキにそう言ってもらえるだけで嬉しい気持ちになった。 ハルキが私のそばにいてくれるからか、不安が取り除いていく気がした。「ありがとう……ハルキ。本当に、ありがとう」私……頑張るからね。 「朱里、お前
「ん……ありがとう、ハルキ」「朱里、一人でなんでもやろうとしなくていいんだぜ? 俺たちがいるんだから、頼るべき所は頼れよ」ハルキが優しくそう言ってくれるから、本当に嬉しかった。仲間ってやっぱり大切だし、いるべきだなと思った。「ボスも……朱里が頑張りすぎること知ってるから、心配してる」「え……?」ハルキは缶コーヒーのプルタブを開けてそれを口にすると「ボスも言ってたから。朱里を一人にはしないって。 これからも朱里は、大切な家族だからって言ってた。 だから、もっと俺たちを頼れよ」と私に向かって話した。「ボスが、そんなことを言ってたの……?」「そうだよ。朱里のこと一番心配してるのは、なんだかんだボスだしな」私はそれを聞いてちょっとホッとしたのか、「そっか」としか言えなかった。 でもその反面嬉しくて、ボスやハルキに支えられていることを改めて知った。「心配すんな。お前なら、大丈夫だって」「……ん、ありがとう」ハルキは「頑張れよ、お前ならちゃんとやれる」と私にエールをくれる。「子供なら、俺たちも一緒に育てていくから。一人で頑張らなくていい」「……うん」私は一人じゃないと思えた。ずっと一人で生きていくことが正しいとさえ、そう思っていたのに。やっぱり一人でなんて無理だし、そう考えると誰かに頼っていくことも、大事なことだと感じた。愛おしいと思える家族が、私にはたくさんいる。ボスがいて、雅人がいて、ハルキがいて……そして大切な子供たちがいる。「朱里、お前は充分に母親になってる。だから、心配しなくてもいいんだぜ。……お前は、もうこの子たちにとっては、大切な一人しかいないママなんだから」ハルキの言葉はいつも、勇気と元気を与えてくれる。「私……程々に頑張るよ」「おう。無理すんなよ」「うん」間もなく私は、出産の時を迎える。 出産した後がとても大変になるけど、私はどんな時も負けない。絶対に負けたくない。アイツと約束、したから。 絶対に死んだりしないと。「じゃあ、俺帰るわ」「うん、今日は来てくれてありがとう」 「おう」ハルキが帰る姿を見つめながら、私も家の方面へと向かう。「早く……会いたいな」この子たちが産まれてきてさえすれば、私はそれでいい。 無事に産まれてきたことを、心から喜びたい。「あなたたちの名前……二人のパパが、付けてくれたか
「……分かってる。本当にごめんなさい」「でも、朱里の方が傷付いて当然だ。 朱里の大切な人を……兄貴は傷付けたんだ。 そんなの怒って当然だし、恨んで当然だよ」(どうして千歳は……そんなに優しいの……。これ以上、優しくしないでほしいのに)「……あなただって、私を恨んでるでしょ? 私はあなたを騙して、殺そうとしたのよ?……恨まれて当然のことを、私はあなたにした」私のことを殺したいと思えば、それは当然で。私がなにかを言える立場ではない。「俺は……朱里のことを恨んでるわけじゃないよ」「っ……なんで……?」なんで……そんなことを言うの?「俺は……朱里のことが本当に好きだったんだ。だから、
「ハルキは、私の大切な家族だよ」「家族……そうか」「私はあの時から、ひとりぼっちだった。 でもハルキたちと出会って、私は一人じゃなくなった。一人でいることの寂しさを分かってるからこそ、私にはみんなが必要なの。……ボスに拾われたこの命だもの。大切にしなきゃって思ってる」 ハルキは私の頭をポンポンと撫でると、「それでこそ朱里だな。お前はやっぱり、強くなったな」と笑った。「……ハルキも強いよ」「俺なんて心はボロカスだよ。メンタルもだいぶ弱ってるしな」そう言われて、私は思わず「なんで弱ってるのよ?」と聞いてしまった。「わかるだろ? お前にフラレたからだ」「え……私のせい?」「俺は
「朱里だって、自分に責任を感じてるんだろ? 今回のことで、より一層責任を感じたはずだ」「それは……」ハルキの言うとおりだ。なにも間違ってない。「お前が選んだ生き方を、俺は否定はしない。 朱里が望んだことなら、尚更否定出来るわけはないからな。 それが朱里の望んだ生き方なのなら、俺たちにはそれを見守る権利がある」「ハルキ……優しいね」「俺が優しいのは、お前にだけだ」「え……?」ハルキは私の隣で「お前とこうして過ごす時間は、俺にとってかけがえのないものになってる。 空っぽだった俺の心に火を灯してくれたのは、お前だから」と照れ臭そうに話している。「ねえ……それって、どういう意味……?
「朱里、その時まで俺たちは……敵同士だ」「そうね。私とあなたは敵。……まあ永遠のライバルとでも、言っておこうかしら」「永遠のライバルか。悪くない響きだな」真樹はそうやって笑った。✱ ✱ ✱「おい、朱里」「えっ、ハルキ……?」真樹と別れて帰宅した私を待っていたのは、ハルキだった。 (なんでハルキがここにいるの……?)ハルキは私の元へ歩いてくると、いきなり「お前、なんでアイツのこと開放したんだよ。 殺すんじゃなかったのかよ」と問い詰めてくる。「……気が変わったのよ」「あれだけ千歳のこと殺すとか言ってたのに、気が変わった? お前らしくねぇな、朱里」ハルキは私にそう言われた