短編小説の世界で恨みやつらみを描くのが上手い作家といえば、まず思い浮かぶのは芥川龍之介ですね。『羅生門』や『藪の中』では人間の
醜い部分を鋭くえぐり出し、登場人物たちの複雑な感情の絡み合いを見事に表現しています。
特に『蜘蛛の糸』は、極楽から地獄へ垂らされた一本の糸を巡る
利己心と憎しみの連鎖が、たった数ページの中で圧倒的な臨場感を持って描かれています。これらの作品を読むと、人間の心の闇をこれほどまでに深く掘り下げた作家は他にいないと思わずにはいられません。芥川の筆致は冷徹ながらも、どこか哀れみを感じさせるのが特徴です。