書店の棚割りを考えると、まずはその本自体の“顔”をしっかり掴むことが大事だと思います。表紙や帯のコピー、出版社のジャンル表記、帯にある推薦文、さらにはISBNデータや流通ラベルまで目を通して、どの読者層に届くかを推測します。たとえば物語がミステリ寄りならミステリ棚、青春や恋愛の色が強ければ文芸・青春コーナー、ライトノベル的な語り口や挿絵があるならライトノベル棚に置くのが基本です。ジャンルが曖昧な場合は、販売動線やターゲット年齢に合わせて柔軟に考える必要があります。私は個人的に、まず「主要カテゴリに一冊でも顔を出す」ことを優先します。主要棚に置くだけで目に入る回数が圧倒的に増えるからです。
とはいえ、新刊展開は単に棚に並べるだけで終わらせない工夫が重要です。発売当初は『新刊』台や店頭の顔となるエンド台に面出しで置き、帯のキャッチや短いスタッフコメントを添えます。スタッフによる推薦札を付けると、迷っているお客さんの背中を押す効果が高いです。また、関連棚と連携させるのも有効です。たとえばミステリ要素があるなら
推理小説の近くに、登場人物の年齢層が若いならヤングアダルトの隣に置くなど、隣接陳列で“出会いの確率”を高めます。内容に合う既存作家の近くに置くと比較購買も期待でき、読者が手に取る導線をつくれます。
長期的な視点も忘れずに。発売後2〜4週間は積極的に目立たせ、その後は売れ行きと客層を見て通常棚へ移動するのが現実的です。加えてSNSでの紹介文や短い試し読みカード、店内POPにQRコードでレビューや試し読みページに誘導する施策も有効です。特典や作者イベントがある場合は開催前後で集中展開をかけると反応が良くなります。結局のところ、
瞳リョウさんの新刊をどの棚に並べるかは「まずは読者の目線に立つ」こと、そして「本の性格を正確に把握して最も出会いが生まれる場所に置く」ことが鍵だと感じています。どんな棚に置かれても、その本の魅力が伝わるように工夫するのが書店員としての醍醐味です。