ここ数年、
株式会社グラストの制作現場を見てきて感じるのは、方針が明確でブレが少ない点だ。企画段階から完成までを単に作業としてこなすのではなく、“世界観とキャラクターを核に据える”という姿勢が一貫している。ストーリーと美術表現を同時進行で磨き込み、初期段階のコンセプトアートやモックアップでチーム内の共通認識をしっかり作ることで、後工程での手戻りを減らしているのが制作方針の肝だと見ている。そのため、外部パートナーや委託先にもスタイルガイドを徹底させ、作品ごとのトーンやディテールを守る文化が根付いているように感じる。
変化を恐れず検証を重ねるプロセスも特徴的だ。短いスプリントでのプロトタイピングを繰り返し、ユーザーテストや社内レビューを多段階で実施する流れができている。私は、この循環があるからこそ大胆なアイデアを試しつつも最終的には安定した品質に落とし込めるのだと思う。またアート面では、ビジュアルの統一感を保ちつつも“キャラクターの表情・動き”に特に力を入れており、それがプレイヤーや視聴者の感情移入を誘う強みになっている。音響や演出との連携も密で、映像的な見せ場づくりが巧みだ。
クリエイティブ面の強みをもう少し具体的に言うと、まずアートディレクションの明快さがある。色彩設計やライティング、キャラデザインのラインを最初に決めることで、演出側も迷わず表現を積み上げられる。また、チーム編成がクロスファンクショナルである点も大きい。企画、演出、アート、サウンド、エンジニアが早期から意見を出し合い、技術的制約を踏まえた上でアイデアを磨いていくため、完成品に無理がない。加えて、ローカライズやマーケティングを視野に入れたIP運用が上手く、作品ごとの世界観を壊さない範囲で外部展開(グッズ化やコラボなど)を計画的に行っている点も目を引く。
個人的には、グラストが“人を育てる”文化を大事にしているところが長期的な強さになると思う。若手に裁量を与えつつ、シニアが技術や表現のノウハウを伝える仕組みがあり、結果としてクリエイティブのバリエーションと安定感が両立している。冷静に見ると、彼らの方針は短期的な流行追随に走らず、作品ごとの独自性とユーザーとの信頼構築を重視するタイプ。だからこそ、完成度の高い作品をコンスタントに出せるのだと確信しているし、今後の展開も楽しみだ。