シャロン・ケイ・ペンマンの『The Sunne in Splendour』は、リチャード三世(かつてのグロスター公)の人物像を史料に基づいて丹念に再構築した長編だ。戦場や政争の描写は精緻で、同時にリチャードの内面や周囲の人間関係に深く踏み込むので、公爵としての葛藤や野心が伝記的な説得力をもって迫ってくる。ドラマ性を犠牲にせず、史実の論点や矛盾にも正面から向き合っているため、「物語」としての読みやすさと「伝記」としての信頼感が両立している点が魅力だ。私は読みながら登場人物の決断をつぶさに追い、史実の背景を改めて調べたくなった。
フィリッパ・グレゴリーの『The White Queen』は語り手を工夫していて、王妃や周辺貴族の視点から公爵たちを立体的に描く。エリザベス・ウッドヴィルという女性の視座を通じて、リチャード(グロスター公)や他の有力な貴族たちの役割や葛藤が浮かび上がるため、単純な英雄譚にならないのが良い。語り口は平易で読みやすく、登場人物の感情や日常的な振る舞いを通して公爵という地位がどう作用するのかが自然に伝わってくる。どちらの本も純粋な伝記ではないが、実在した公爵を主題にしてその生涯や時代を物語形式で丁寧に追えるので、歴史小説で“伝記的な読み物”を求めている人には特におすすめだ。気軽に読み始めて、気づくと深く歴史に引き込まれているタイプの作品だと感じている。