手の震えや落ち着かなさがコマ越しに伝わる瞬間を見ると、つい細部を凝視してしまう。僕は、コマ割りそのものを“間”として使う作家の手腕に惹かれてやまない。たとえば'よつばと!'のような作品では、余白や大きな無言コマを活かして
手持無沙汰さを表現することが多い。人物の手が画面端で途切れたり、小さな繰り返しコマで同じ動作を何度も見せたりすることで、時間の遅さや居心地の悪さが読者にじわじわ効いてくる。
別のテクニックとして、コマの形や配置を崩す手法がある。僕は作中でコマ境界線をぎこちなく引いたり、わざと余白を広く取ったりしている場面をよく観察する。手が画面中央に留まる代わりに、周囲を空白で囲むと、手の動きの無駄さが強調される。さらに、アップと引きのコマを挟むことで心理的な距離を作り、手の動きが“何かを待っている”という意味合いを持つように仕向けることができる。
描線の密度やトーンの使い分けも重要だと感じる。細い線でくるくる動く指を描けば落ち着かなさが伝わるし、コマの縁をぶつ切りにすることで動作の途中感が生まれる。こうしたコマ割りと描写の組み合わせがあるから、言葉がなくても手持無沙汰さがはっきり伝わる。読むたびに、新しい発見があって面白い。