僕は最初、タイトルの佇まいに惹かれてページを開いた。フレドリック・バックマンの『A Man Called Ove』は、表面的には頑固で偏屈なおっさんの物語だが、その奥にある日常の温かさとコミュニティの力がじんわりと伝わってくる。ユーモアと哀愁が同居していて、読み進めるうちに主人公の過去や喪失が丁寧に明かされていく構成が巧みだ。
おれは本棚の片隅でこの本を見つけた時、静かな冒険譚が始まる予感を覚えた。レイチェル・ジョイスの『The Unlikely Pilgrimage of Harold Fry』は、定年後の何気ない一歩がやがて遠い旅路へとつながる話で、片田舎に暮らす中年から老年の男性像が丁寧に描かれている。冒頭の小さな刺激から自己再発見へ到る構成は、短い章の連続でテンポよく読み進められる。