結婚したのに、日陰の恋人でしかない僕僕の名前は緒川圭(おがわ けい)。彼女・二ノ宮静(にのみや しずか)が突然、体に特別な装飾を施したと告白してきた。とある秘密なところに。
顔を赤らめながら、「あなたをもっと喜ばせたくて」なんて健気に言う彼女。
翌日、僕は手作りの栄養食を持って彼女の会社を訪ねた。そこで目にしたのは、僕の親友である小久保悠(おくぼ ゆう)と抱き合う静の姿だった。
悠は彼女の腰を引き寄せ、低い声で囁く。
「いい子だ。本当に俺の言った通りに飾りしたなんてな。
あいつは、自分のためだと思い込んでるみたいだけど。まさかお前が俺と結婚するなんて知ったら、ショックで死んじまうんじゃないか?」
静の声が冷たく響く。
「あなたとはただの政略結婚よ。警告しておくけど、圭には絶対にこのことを知らせないで」
悠は鼻で笑い、その手をゆっくりと下へ滑らせた。
「分かってるよ。お前が俺を満足させてくれる限り、あいつに余計なことはしないさ」
扉の外で全てを聞いていた僕は、全身の血が凍りつくのを感じた。
僕はスマホを強く握りしめ、数日前に上司から打診されていた地方支社への転勤話を思い出す。
もう、迷いはない。
僕は上司にメッセージを送った。
「部長、例の件ですが……3日後に海ヶ城市への転勤をお願いします」