制作現場で長くページと向き合ううちに浮かんだ観点だけど、場面削除の説明は感情と論理の両方を織り交ぜて行うのがいちばん響くと思う。
私はまず、物語全体のテンポと情報密度を念頭に置いて説明する。たとえば『
daikichi』のある場面が削られたときは、そのシーンが主人公の感情を丁寧に描いている一方で、同じ情報が別の短い対話やモノローグで既に暗示されていることを示す。こうすることで、読者には失った要素があるように見えても、実際にはテーマや決意の流れは保たれていると伝えられる。
次に、技術的事情も明かす。ページ数や連載枠の制約、ページ配分によるコマ割りの都合など具体的な制約を挙げて、削除が単なる好みではなく必要な調整だったことを示す。過去に似た話の例として、『ブラックジャック』でサブエピソードを短縮する判断が作品全体の力学を守るための措置だったことを引き合いに出すと、納得感が増すはずだ。最後に、残された断片が読者の想像力を刺激する効果もあると付け加えて、削除が必ずしも損失だけではないと締めくくる。