実地の史料調査を進める中で興味深かったのは、古い和歌集や律令期以降の名録を手がかりにする研究だ。古語や古文献に現れる語形・字義を検討して、'大吉'の語源的意味や吉名としての使われ方を追う方法がある。
具体例として、『万葉集』のような古い歌集や平安期の読み物に見られる名の使われ方を参照する研究がある。これらには吉祥語や祝賀的表現としての語彙が散見され、それが人名化した可能性を論じる材料になる。また、平安から鎌倉にかけての写本や
公家・武家の名録を調べることで、いつどの社会階層で'大吉'が名乗られたかを示す研究も見られる。学術誌に掲載された個別事例報告や、歴史言語学の論稿が一次史料の解釈を補強する役割を果たしている。
こういった文献中心の手法は、言葉の意味変遷や文化的背景を掘り下げるのに向いていると感じる。私の観察では、文献証拠を積み上げることで名前の由来に対する説を精緻化している研究が多かった。