細部を追うと、僕が特に注目したのは慣用表現と比喩の扱い方だ。日本語の比喩はしばしば季節感や伝統的な美意識に根ざしているので、英語に直すと意味は通じても情感が薄れることが多い。そこでこの翻訳では、原文の比喩を直訳する場面と英語圏に馴染む別の比喩に置き換える場面を使い分けている。たとえば“朝露に濡れたような瞳”という表現をそのまま“eyes wet with dew”にする代わりに、“eyes like morning glass”といった視覚的な直感を優先する選択をして、詩的でありながら英語の読者にも映るイメージを作っている。