光の瞬きは舞台での「合図」のように機能して、瞬時に観客の注意を引き寄せます。視覚は動きや時間的変化にとても敏感なので、
ちらちらと点滅する照明は静止した背景や俳優の微細な動きより先に検出されやすい。僕は昔、小さな劇場で光の点滅だけで場面転換の瞬間を明確に伝える演出を見て、言葉や大げさなアクションがなくても観客の視線が自然と移動するのを体感しました。点滅は視覚的な「不連続」を作り、そこに注目が集まることで次に来る出来事の重要性を暗示します。
具体的には、点滅のリズムや強さ、色によって誘導の仕方が変わります。高速で短いパルスは驚きや危機感を、高速でも規則的なリズムは心拍や緊張感を増幅します。反対に、ゆっくりとした間隔の点滅は不安や幻覚めいた雰囲気を作りやすい。音楽や効果音と同期させると、視覚と聴覚が結びついて注意の集中度がさらに高まります。たとえば『レ・ミゼラブル』のような大掛かりなミュージカルでの一瞬のフラッシュは、群衆の動きより先に感情のピークを知らせる合図になることがありますし、SF作品の舞台演出では『ブレードランナー』的なネオンと点滅で都市の不穏さを強調できます。
演出的な使い方としては、観客の視線を特定の舞台上の位置に誘導したいときに非常に有効です。暗転やスポットで隠れている要素を点滅で明らかにしたり、複数の役者のうち一人に注意を集中させたいときにその周辺だけをちらつかせると、自然に視線が寄ります。また点滅を使って時間の経過や記憶のフラグメントを表現する手法もよく使われています。技術的には周波数(点滅の速さ)、デューティ比(点灯と消灯の比率)、色温度、位置の組み合わせで狙った心理効果をコントロールできます。
ただし、安全面と観客の快適さには必ず配慮が必要です。光の点滅は光過敏性発作(ストロボによるてんかん発作)を誘発するリスクがあるため、頻繁に高速点滅を使う場合は事前告知や代替演出の用意が重要です。明るさを抑えたり、点滅の割合を下げる、あるいはフェードや色変化で代替することで同様の注意誘導を穏やかに実現することも可能です。個人的には、点滅は少量かつ戦略的に使うと最大の効果を発揮すると思っています。効果的に使えば視覚的なドラマを強め、物語の抑揚を鮮やかに描き出してくれます。