風過ぎて、オーロラは寂しい高橋蓮(たかはし れん)と結婚して五年目、私は病に倒れた。
彼はどんな代償も惜しまず、私に最も適合するドナーを見つけてくれた。
手術の一週間前、私は薬のせいで眠り込んでいて、目を覚ましたあと、手で触れたのはつるりとした頭皮だった。
渡辺葵(わたなべ あおい)はバリカンを手に、目を細めてにこにこと笑った。「美玲さん、どうせもうすぐ手術なんだし、私が剃ってあげたほうがちょうどよかったでしょ」
けれど、骨髄移植に髪を丸刈りにする必要なんて、もともとない。
「誰がそんなことしていいって言ったの、それは私の髪よ」
怒りのあまり、私は声を張り上げた。
そのとき、蓮がドアを押して入ってきた。
「葵はまだ若いし、ちょっといたずらが過ぎただけだ。美玲、そんなに目くじら立てるな」
彼はそこでいったん言葉を切り、私を見た。複雑な眼差しをしていたが、その言葉だけははっきりしていた。「それに、この子はお前に骨髄を提供してくれる人なんだから」