感情の波を細かく刻むことが肝心だ。まずは崩れていく過程を一括りの“事件”で済ませないで、日常の些細なずれや習慣の変化として描くと刺さる。僕はキャラクターが最初に見せる“小さな嘘”や言い訳、手の動きのぎこちなさを意識的に描写するようにしており、それが積み重なって信頼の亀裂になる様を見せると、読者は自然に感情移入してくれる。
次に内面の矛盾を可視化する工夫が必要だ。自分の中の正義と欲望がせめぎ合う瞬間に、記憶の断片や過去のトラウマを挿入して感情の重みを増す。たとえば'寄生獣'のように外的脅威と内的葛藤が同期する場面を模倣すると、変化が必然に感じられる。
最後に、選択のコストを明確に提示して終わらせる。崩落は不可逆であることを示す小さな描写──信頼されなくなる目線、誰かを傷つけた後の沈黙──を持たせると、読者はただの悲劇以上の重みを感じ取る。こうした積み重ねが、共感できる“
墜ちるキャラ”を生むと確信している。