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ページをめくるたびに、特典が小さな発見をくれる。
同梱されていた目玉の一つは、初稿の写し──言い換えれば原稿の抜粋だ。赤ペンで入った修正跡や手書きの注記が再現されており、創作の痕跡を手にするような感覚が面白かった。また、物語舞台の簡易地図が折りたたまれて入っていて、登場人物の移動や場所関係を視覚的に追えるのも助かった。
加えて、小さな短い外伝的エピソードをまとめたリーフレット、キャラクターのミニアクリルスタンド、そして布製のワッペンが封入されていた。これらは読書体験を広げる小物で、飾る楽しみを与えてくれる。所有していると、読み返すたびに新しい手触りを見つけられる、そんな愛着の湧く初版特典だった。
箱の中身を並べると、どれも作者の“遊び心”が伝わってきた。
まず目についたのは、印刷された差し込みの手紙の複製ではなく、作者の筆跡を再現したファクシミリーレターだ。活字では味わえない息遣いが伝わってくる短文で、作品の成立過程やひとことコメントが綴られている。その温度感が個人的にはとても嬉しかった。
それから、特典として珍しいのがCDだ。収録内容は作者自らが朗読したボーナスチャプターと、音楽的なBGMトラックが組み合わされたもので、物語を声と音で楽しめる形になっている。紙ものばかりのセットに音が加わると印象が一変して、物語の世界にぐっと入り込める。
さらに二つ折りの両面ポスター、布製の帯(特注の織り込み模様入り)、金属製のブックマーク、そして丁寧に作られた専用スリーブケースが付属していた。どれも実用性と装飾性を両立していて、開封したときの高揚感が長く残る仕様だった。総じて、ただの販促品ではなく“所有体験”を売る方向で作られているのが分かるセットだった。
手に取った瞬間に気づいたのは、細部へのこだわりだった。
装丁をよく見ると、通常版では見られない箔押しの表紙カバーが施されていて、それ自体が一枚のアートになっている。封入物として目を引くのは、作者直筆サイン入りのフルカラープリントで、限定番号が小さく記されている点だ。厚手の紙に印刷されたその絵は、物語のワンシーンを切り取ったもので、自分の本棚に並べたときの存在感が違う。
そのほかに、短い書き下ろし章をまとめた12ページ程度の小冊子が同梱されていた。本文とは別扱いのエピソードで、本編の裏側を知る小さな鍵に当たる内容だ。さらに透明のアセテートスリーブ、ピンバッジ風のエナメルピン、ステッカーシートがセットになっており、どれもコレクション性を高めるための“遊び”が詰まっている。外箱には限定版の証明としてシリアルナンバーが入っていて、所有者としての満足感が得られる作りだった。
こうした特典は単なるおまけを越えて、物語体験を拡張してくれる。ページを再読すると、同梱された短編やイラストが新たな視点を与えてくれて、所有する価値をしっかり感じさせる仕掛けになっていた。