いろんな世代の友人におすすめすることが多いが、阿川泰子のレパートリーで個人的に外せないのが、スタンダードの名曲を爽やかに歌い上げた曲たちだ。たとえば、作曲家の妙を味わえる'All the Things You Are'を彼女がどんな色で染めるかにいつも興味が湧く。
別の角度では、映画音楽的な趣を帯びる'Over the Rainbow'や、ダンスホールの華やかさを想起させる'Cheek to Cheek'のようなナンバーも彼女の手にかかると自然に自分のものになっている。ロマンティックで親しみやすい'Blue Moon'も、彼女のやわらかな発声で耳に残るバージョンになる。
音楽仲間と語らうとき、阿川泰子のボーカルがどうスタンダードを生かすかがよく話題になる。私自身は、重厚でロマンティックな楽曲に惹かれていて、'Body and Soul'のような深い情感を要求するナンバーで彼女の表現力が際立つと感じた。
リズム感の試される曲では、コール・ポーターの名曲'Night and Day'のようなアップテンポを洗練されたアプローチでまとめ上げる手つきに好感を抱く。さらに、時代を超えた恋の歌である'As Time Goes By'や、せつなさを直球で伝える'Cry Me a River'にも挑戦していて、どれも聴く側の情緒をうまく揺さぶる。
ふとレコード棚を眺めていたら、阿川泰子が取り上げたジャズの名曲が次々と目に浮かんだ。個人的に好きなのは、映画の情緒をそのまま切り取ったような'The Shadow of Your Smile'で、彼女の声がメロディの陰影を豊かに描き出していると感じる。
もう一つ注目したいのが秋の風景に合う'Autumn Leaves'だ。彼女の解釈は単なるノスタルジーに終わらず、歌い手の内面が透けるような温度を持っている。軽やかなリズムでおしゃれに聴かせる'Lullaby of Birdland'や、寄り添うような'The Nearness of You'もレパートリーに含まれていて、アルバムを通して聴くと編曲やムード作りの巧さに気づかされる。