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スターの冷たいプロポーズ〜今さら愛してると言われても……
スターの冷たいプロポーズ〜今さら愛してると言われても……
Autor: 桜立風

1.親友からの頼み事

Autor: 桜立風
last update Fecha de publicación: 2026-07-07 09:21:43

「……お見合い?」

「そう!悪い話じゃないわよ?相手が誰か知ったら、さすがの花も驚いて腰を抜かしちゃうんだから!」

三日月の綺麗な夜だった。

私、香坂花の友人、天野瑠璃が、突然見合い話を持ってきたのは……

「そんなすごい人なら瑠璃がお見合いすればいいのに」

「それがダメなのよ!……私はほら、遊びすぎてるから、父親が紹介できないって!」

あははっと明るく笑う瑠璃。……確かに彼女は遊び人だ。

裕福で格式高い家のお嬢さまなのに、奔放に遊びまくっている。

「それにね、この話は花に来てるのよ。人づてに頼まれたって、お父さんが……」

「私がその話を受けると、瑠璃やおじさんたちにいいことある?」

「あ……そりゃあまぁ、ね」

瑠璃のことだ。

いくら父親からの話だとしても、それが私にとって不利益なのだとしたら、こんな風に話して聞かせない。

「いいよ。そのお見合い、受けるよ」

「花……!」

瑠璃の表情がパッと明るくなった。……きっと、おじさんに強く勧めるよう言われているのだろう。

「相手が誰か教えてもらったんだけど、それは絶対に言うなって口止めされてるの。でも、会うだけでも価値のある人だから!」

お見合いの日にちと待ち合わせの場所をメモに残し、瑠璃は青い目を花に向けて手を握る。

「嫌だったら断っていいから。父親に言われているのは、とりあえず花をお見合いに向かわせることなの」

「うん、わかった。必ず行くよ。……でも」

「でも、なに……?」

心配そうに顔を近づけてくるので、その分上半身をのけぞらせた。

「青い目、怖いよ?」

「えっ?!こんなのただのカラコンだよ?」

瑠璃はめいいっぱい目を見開いて、コンタクトを取って見せてくれた。

「目も悪くないのにそんなものつけて……体に悪いからやめなよ」

「いや!カラコン外したら、恥ずかしくて誰にも会えない……」

地団駄を2回踏んで、瑠璃は花の部屋を出ていく。

なんでも、クラブに友達を置いてきたというが……どんなクラブ活動をするところなんだろう。

「階段から落ちないでね!」

踵だけでなく、全体に底が厚すぎる不自然な靴を履いているからヒヤヒヤする。

見送って部屋に戻り、メモを見て……花はベランダとは名ばかりの物干し場に出る。

「あぁ……本当に今日は綺麗なお月さまだなぁ」

やがて、瑠璃に頼まれたお見合いの日がやって来た。

お見合いというのは土日など、休日に行う事が多いと聞いたことがある。

だが今日は、ド平日。

「タイガーマクナカロンホテルの、1階ロビー……」

瑠璃が残したメモにもう一度目を通す。

職場である下町の小さな出版社は、同じ都心部ながら、ホテルのある華やかな地域まで地味に遠い。

「でも、行けばいいのよね。……時間もたっぷりありそうだし」

お見合いをすることは、一応結人にも知らせておいたほうがいいかな……

そう思ったところで、帰りに郵便受けを確認してくるのを忘れたことに気づいた。

履き古したサンダルを突っかけ、アパートの郵便受けに向かう。中を覗いてみれば、いつもの茶封筒が放り込まれていた。

部屋に戻って開封し、書き殴りの文字を指でなぞるように読んだ。

「一刻も早く携帯を持ってください……?」

弟の結人は大学2年生で海外留学中だ。向こうでの生活ぶりと、成績の推移などを書いた手紙をよく送ってくれる。

それにしても毎回同じことが書いてある箇所。つい、笑ってしまう。

「すぐに連絡が取れないと心配だし……?お金もそんなに送ってくれなくていいよ、って……」

海外にいるからこそ、心配でつい多めに送っている自覚はある。

「使わなかったら返してくれたらそれでいいって、何回も言ってるのに」

手紙を畳んで封筒に戻し、花は窓辺に寄って空を眺めた。

この空の向こうに結人がいる。

……そう信じることができれば、多分明日も大丈夫。

「……あの、今日はお先に失礼します」

退勤時間になり、花はおじさん社員とおばさんパートに頭を下げ、デスクを軽く片付ける。

「……ちょっと待ってよ花ちゃん〜」

デスクに足を乗せ、新聞を顔にかけて居眠りしていた人がタイミング悪く起きてしまった。

「社長、おはようございます」

「なにそれ嫌味〜?」

嫌味ではないが、朝からずっと同じ体勢で眠っていたようだから出た言葉だ。

「残業してよ。楽しい残業〜」

「今日は予定がありまして。すみません……明日は必ず」

たいして仕事なんてないのに帰したがらないこの人は、ここ、トウキビ出版の2代目社長、時日樹木也氏だ。

仕事を適当にやる事がカッコいいと勘違いしている、30代後半の独身。

瑠璃と約束したお見合いは絶対に行かなければ……花は社長の返事を待たずに古びたビルを出た。

その後は順調に目的地に到着することができた花。

「……なに、このホテル」

待ち合わせ場所であるタイガーマクナカロンホテルの正面に立って驚いた。外壁に、等身大と思われる男性の壁画が彫られていたから。

見たことない装飾……?に、思わず立ち止まる。

「誰なんだろう。もしかして創業者かしら」

スカートの裾をちょっと持ち上げて膝を曲げ、挨拶のマネごとをしてみた。

すっかり用はなくなった都心のラグジュアリーなシティホテル。最近は壁画を掘るのが流行っているのかもしれない……あまり素敵ではないけれど。

ひとつ大きく深呼吸をして歩き出す花。

両手をウエストのあたりで組み、背筋を伸ばしてエントランスに近づけば、ドアマンがやってきて開けてくれる。

「ありがとう」

微笑と共にお礼を言うのはあの頃と同じ。……違いはチップがないだけ。

改めて顔を上げ、目に飛び込んできた光景にまたも度肝を抜かれた。

ロビーを取り囲む大きな写真パネル。

1人の男性が、こちらを優しく見つめていたり、怒ったような表情をしていたり、背中で何かを語っていたり。

全方向を取り囲むそれは圧巻……

その写真パネルを、嬉しそうに撮影する女性たちでロビーは賑わっている。

「大雅サイコー!めっちゃカッコいい!」

あちこちから聞こえる「大雅」という名前。

ちょっと待って。

大雅って、誰なの?

このホテルは芸能人とコラボしている、ということ?

「……香坂花さん?」

後ろから声をかけられ、振り向いてみると……

写真パネルの男性が、にこやかに微笑んでこちらを見つめていた。

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