隼人は胸の中に鋭い石が詰め込まれたように感じ、思わず襟元をつかんだ。
違う、違うんだ、桜子。
俺は一時の感情で動くような男じゃない。桜子に対しても軽い気持ちではない。
遅れてきた愛は、愛じゃないのか?
十三年前、共に生死を共にし、十三年後にもまた困難を乗り越えた。俺たちはもう、この先切っても切れない絆で結ばれているんだ。
隼人は、初めて「愛してる」と言いたいのに、言葉にできないもどかしさを感じていた。
結局彼は言わなかった。今は言葉ではなく、行動で示すべき時だと理解していたから。
桜子は熱が下がったものの、体は完全に回復していなかった。三日間も体力を消耗し、すっかり疲れ果てていたので、警戒心を持つ余裕もなく、枕に顔をうずめるとすぐにぐっすり眠りについた。
隼人は目を閉じることなく、ただ彼女の寝顔をじっと見つめていた。見守るように、まるで監視しているかのようだった。
桜子が深い眠りに落ちているのを確信した隼人は、体に痛みを感じながらも、静かにベッドを抜け出し、足音を立てずにソファへと向かった。
本当は彼女の穏やかで可愛い寝顔を静かに見つめたかったが、心の中で彼女が縮こまって寝ているのを見て、どうしても放っておけなかった。彼女の小さな体を横抱きにして、ベットまで運ぶと、そっと髪に顔を寄せた。
「ん......」桜子は夢の中で小さく声を漏らし、隼人の腕の中で赤ん坊のように丸まっていた。
隼人はその光景に胸が苦しくなり、喉が渇いていくのを感じた。思わず顔を彼女の唇に近づけたが、辛抱してそれを押しとどめた。
以前は、桜子が無邪気で感情に疎い小さな花のような存在だと思っていた。
しかし今、彼はようやく気づいた。桜子は、彼の心を強く引き寄せる、まさに「妖精」のような存在だった。
......
翌朝、桜子は目を覚まし、無意識にベットで伸びをして、心地よく眠れたことを感じていた。
昨夜は思っていた以上にぐっすりと眠れていた。
ちょっと待って。
桜子はハッと起き上がり、慌てて周りを見渡した。自分がベッドに寝ていることに驚き、何が起こったのか分からなかった。
夢遊病だったの!
急いで布団をめくり、服に異常がないことを確認した。狭いシングルベッドであることを思い出し、隼人のような体格の人間がこんな場所で一緒に寝ることはないはずだと考えた。もし一緒に