松本若子は朝早く目を覚ましたが、目が腫れていた。
朝食の時、石田華は心配そうに尋ねた。「若子、どうしたの?目がこんなに腫れて......」
「私......」昨夜泣きすぎたせいだったが、おばあちゃんに本当のことを言うわけにもいかず、「たぶん......昨夜あまりよく眠れなかったからかな......」と誤魔化した。
石田華は微妙な笑みを浮かべて、「若い夫婦が、夜よく眠れないのは普通だよ。そうしたら、早く赤ちゃんができるかもしれないしね」と言った。
「おばあちゃん、そんな話はしないでください」松本若子は顔を赤くしながら反論した。
今日は、おばあちゃんに嘘をついて、藤沢修が朝早く仕事で出かけたと言ったので、修は一緒に朝食を食べられなかったが、おばあちゃんはそれ以上何も言わなかった。
「わかったわ、もう何も言わない。たくさん食べて、体を大事にするんだよ」
若子はなんとか朝食を進めながら、頭の中は戸籍謄本のことを考えていた。自分で探して見つかるとは思えない。
おばあちゃんから場所を教えてもらって、渡してもらわない限り、難しいだろう。
「おばあちゃん?私の戸籍謄本、どこにありますか?」若子は直接尋ねた。
それ以外に良い方法が思いつかなかった。ここで戸籍謄本を見つけるのは、まさに大海捜しのようなものだし、誰にも見つからないようにしなければならない。もし見つかったら、すべてが終わってしまう。
「戸籍謄本?」おばあちゃんは眉をひそめて、「どうして急に戸籍謄本が必要なの?」と聞いた。
通常、そんなものはあまり使わない。
石田華の疑い深い視線を感じ、若子は慌てて説明した。「身分証明書をなくしてしまったので、再発行するために必要なんです」
「ああ、そういうことか」石田華は納得して、「じゃあ、どうして昨日それを言わなかったの?」と尋ねた。
「昨日はすっかり忘れてしまって、今朝急に思い出したんです。おばあちゃん、身分証明書を作るために戸籍謄本が必要なんです。ちょっと貸してもらえませんか?」
若子は少し後悔していた。最初からこの理由を作っておけばよかったかもしれない。
きっと、自分が不安になっていたせいで、最初に人に知られたくないという気持ちが勝ってしまったのだ。
「いいわよ、もちろん」
おばあちゃんは執事に向かって、「戸籍謄本を持ってきて」と指示した。