その日の夜、高村は由佳と一緒に豪華なディナーを楽しんだ。
彼女は嬉しさのあまり、つい飲みすぎてしまい、頬が赤くなり、完全に羽目を外していた。
帰り道、高村は車の中でずっと寝ていた。
「ん?」目をこすりながらあくびをし、窓の外を見た。「家に着いたの?由佳、どうして降りないの?」
「どうやって降りろっていうの?」由佳は微笑んだ。
高村が下を見ると、自分が由佳の肩に寄りかかっていたのに気づいた。
彼女は気まずそうに笑い、そっと身を離した。
エレベーターに乗ると、高村は額を揉みながら尋ねた。「私、変なことしてないよね?」
「してないよ」
「それなら良かった……」高村はホッと息をついた。
「ただ、晴人に電話しただけ」
高村は驚き、どれだけ思い出そうとしても思い出せず、慌てて聞いた。「変なことは言わなかったよね?」
「何も」
高村が再び安堵しようとしたその瞬間、由佳は続けた。「ただ、彼に何曲か歌っただけ」
「どんな歌を?」高村は心がぎゅっと締め付けられた。
「楽しい歌ばかり」
「やめて……」高村は額を押さえた。「なんで止めてくれなかったの?」
「止めたわよ。でも、また彼に電話をかけ直して、『由佳がいじめてくる、電話させてくれない』って」
「もう恥ずかしくて死にそう……」
高村はスマホを取り出し、通話履歴を確認した。
通信記録が晴人だった。そして、通話時間37分だった。
彼女は無言で、その37分間、自分が何を話したのかを必死に思い出そうとした。
晴人に浅はかな人間だと思われた?あるいは、贅沢好きだと思われた?
弁解したほうがいいかな?
高村は晴人とのチャット画面を開き、何度もメッセージを入力して消した。
もういい、知らなかったことにしよう!
恥ずかしくなければ、恥ずかしいのは相手だ!
その時、晴人から電話がかかってきた。
高村はびくっとし、深呼吸をして電話に出た。落ち着いた声で答えた。「もしもし?」
「もう家に着いた?」受話器から晴人の低い声が聞こえた。
高村は息を止め、平静を装いながら答えた。「今ちょうど着いたところ。どうして外にいたのを知ってるの?」
「君が電話してきたんだよ」
「そうなの?お酒飲んでたから記憶が曖昧で……もし失礼なことを言ってたら気にしないでね」
「失礼なんてことはないさ。君が『別荘をこっそり