その代わりに私に近づくな!と言わんばかりに凄い形相で睨みつけてくる。
恐ろしい顔だ。伝説の魔女のようだ。何を要求するのかと待ち構えていたが、向こうは本気で私と会話するのが嫌だとでも言わんばかりにプイッと目を逸らした。
そのまま怒ったようにズンズンと、反対側に大股で歩いていく。
いや………あの女はあんな風に大股で歩く女だっただろうか?
何だかあの日以来アデリナは、マナーというか、王妃としての気品が欠けている気がする。
侍女のホイットニーだけが申し訳なさそうに振り返り、頭を下げた。一体何なんだ。
何がしたい?
いつもの様に、私の腕にわざとらしく纏わりつく事もないのか。まさか昨夜の事を怒ってるのか?
どうせ離婚する気など無いくせに。
その態度。こちらこそ不愉快だ……!
◇◇◇
行政庁から戻り、軽めの昼食を取る。
昼食だけはいつも一人で食べる事ができた。 だから自室の隣にある執務室に昼食の準備をさせる。 早い話、仕事をしながら簡単な食事をするのだ。「陛下………もっと、まともに昼食を取られては?
この所働き詰めです…できたら休息もなさって下さい。」一緒に目の前の膨大な書類を片付けていたランドルフが、そう促した。
「いや、この所仕事が増える一方だから、休んでなどいられない。
この前起きた、森林火災による西部地区の救助活動と、建物被害の復興活動も十分ではないし、東部地方での厄介な山賊の討伐にも、人員が必要だ。 それに例の汚職疑惑の書類についてもまだ」 この国は小国だが、自然災害や人的災害はそれなりに起きる。 解決するのもまた、王である自分だ。必要な場所に必要な人員を采配し、援助