「おじさんのお気持ちはわかってる。でも今回だけは、自分で決めさせてください!」
田中陽大の決意が固いのを見て取ると、叔父は、それ以上何も言わなかった。「そこまで決めてるなら、もう俺も何も言わん。ただな、その女を俺の前に連れてくるなよ。お前はお前で、好きに暮らせばいい」
「おじさん!」
だが田中陽大が何を言おうと、叔父は手を振って制し、振り返ることなく去っていった。
その場にひとり立ち尽くした田中陽大は、何かを思い巡らせていた。
大晦日は、全国が祝いに包まれ、家族が集う特別な日だ。
例年この日は、菅原麗と田中仁の母子ふたりで年越しをして、新年を迎えていた。
だが今年は少し様子が違う。三井家と田中家の旧宅は近くに並んでいた。
しかも年明けには三井鈴と田中仁の婚約を控えていたため、菅原麗は田中家で年越しの食事を合同でしようと提案し、三井家の人々も全員賛成した。
そのため菅原麗は一日中忙しく動き回って年越しの料理を準備していたのだが、祭祀が終わった途端に田中陽大が現れた。
「麗、新年おめでとう」
田中陽大は低姿勢で、歩み寄るように自ら声をかけた。
例年なら田中陽大は田中葵と一緒に年を越していたため、彼の突然の来訪に菅原麗は少し驚き、淡々と尋ねた。「どうして来たの?」
「ちょっと座って話したくてな。ついでに用事もある」
菅原麗はふと顔を上げ、向かいの方角に目をやった。
田中葵がこの屋敷に住みついてからというもの、たとえ一つ屋根の下でも、北と南で明確に領域が分けられていた。
前回、田中陽大が田中葵との結婚を公にしようとしたあの日以来、ふたりは顔を合わせていなかった。
もしこの期間、三井鈴と田中仁の婚約準備で忙しくしていなければ、とっくにこの屋敷を出ていただろう。
「入って!」
田中陽大が部屋に入ると、広々とした空間には正月の華やかな飾りつけがされ、賑やかな年越しの雰囲気が満ちていた。その様子に田中陽大の心が揺れたが、今日の目的を忘れることはなかった。
「麗、リビングはうるさいから、書斎で話そう」
菅原麗は訝しげに彼を一瞥し、軽く「うん」とだけ応じた。それが同意のしるしだった。
書斎に入るなり、菅原麗は単刀直入に切り出した。「で、話って何?」
田中陽大はそれに反応するでもなく、黙って書類の束を取り出し、菅原麗の前に差し出した。「麗、こ