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天岸あおい
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Novels by 天岸あおい

寄るな、触れるな、隣のファンタジア~変人上等!? 巻き込み婚~

寄るな、触れるな、隣のファンタジア~変人上等!? 巻き込み婚~

異世界からの俺様美形王子×現代の巻き込まれ平凡男子の、現代ラブコメ逆転移ファンタジー。 ※話タイトル前の『●』はR18シーンあり。 普通の高校生・坂宮太智の隣に引っ越してきた百谷三兄弟。 ある夜、大智は隣人がなぜか庭を光らせたり、異世界ゲームキャラな格好をしている姿を目撃する。 その日から大智は隣人が気になってしまい、 クラスで席も隣な同級生・百谷圭次郎ウォッチングにハマってしまう。 しかし、それが圭次郎にバレてしまった時、太智は取り返しのつかない仕打ちを受けてしまう――。 「坂宮太智、お前もこれから好奇の視線に晒されて、変人の烙印を押されるがいい」 「そんなことで結婚するなよぉぉっ!」 ※表紙絵 星埜いろ先生
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Chapter: 信じるより信じたい
タッ、と軽く助走をつけながら、俺は精霊たちに向かって叫ぶ。「この場にいる精霊たちよ、龍になって俺を乗せろ。そしてケイロたちを取り囲め!」言いながら、精霊に龍って分かるのか? と心配になったが、戦いを止めない俺の声に応えて精霊たちが一斉に集まり形を成していった。多彩な光球が作り出した龍――俺に顔を向けながら、長くて巨大な体を境内を取り囲むように伸ばしていく。そして俺に目配せして、乗るように促してきた。俺は勢いをつけて龍の首へ駆け上り、颯爽とまたがる。「よし、上出来だ。さあ行くぞ!」精霊の龍は頭を起こして俺を高く上げながら、その体で作り上げた円を縮めていき、ケイロたち――巻き込まれてマイラットも一緒に――を囲っていく。さすがにこの状況は見過ごせなかったらしく、ケイロたちは戦いの手を止め、俺と龍を見上げて目を剥いていた。「何をしているんだ、太智!?」動揺して叫ぶケイロを、俺はジッと見下ろす。「人の話は聞かないし、自分の都合を勝手に押し付けるし、巻き込むだけ巻き込んで取り返しがつかない所まで追い込むし……もう愛想尽きた」「大智……」「ってか、もう我慢しなくても良くなったから、今まで溜まった鬱憤、ぶつけさせてもらうわ」俺は左手を見せつけて、婚姻が消滅した事実を突きつける。他の三人が呆然と俺を見る中、ケイロだけは痛みを覚えたように目が細まる。「……目的だった離縁を果たして、俺に復讐する気か?」「そう思うなら思えばいい。取り敢えず俺もケイロと同じく、自分のやりたいようにやらせてもらう……精霊たち、思う存分ケイロに突っ込め! あ、マイラットは悠の所へ移してくれ」了解したと応えるように龍が一瞬光を点滅させ、容赦なく実行に移す。猛スピードで顔からケイロへ迫り、鼻頭で空へと押し上げていく。すごい風圧……乗っているだけの俺でも息が苦しい。思わずたてがみらしきものにしが
Last Updated: 2025-05-07
Chapter: その場を収めるために
俺たちの動きに気づいたアシュナムさんが、足先をこちらへ向けて走り出そうとするのが見えた。でも、「太智殿、今お助けを! ……クッ」周囲に浮かんでいる精霊たちの一部がアシュナムさんの前に飛び出し、暴風を吹かせて阻止してくる。ソーアさんも来て対抗しようと「風の精霊よ――」と呪文を唱えようとする。けれど精霊の攻撃が治まることはなかった。「魔法が使えない!? 精霊が神官の私の言うことを聞かないなんて……っ」『我は百彩の輝石……すべての精霊を従わせ、我の意思に添わせることが叶う存在。覇者の杖がなくとも、近くの精霊たちを統べることなど造作もないこと』俺の手の上で、さらっと輝石がチート発言してくる。単体でもすごいんだな……と驚いていると、輝石から小さく吹き出す声がした。『太智も我を手にしながら望みを言えば、精霊は同様に従ってくれるぞ?』「な、なんだって……?」『もっとも、今は精霊たちが太智に希望を見出し、心の底から慕っている。大智だけでも望みを口にすれば、我が命ずるよりも強い力を出すだろう』つまり俺もチート状態になったのか! でも、俺、ケイロたちともマイラットたちとも戦う気がないんだけど!?精霊が俺の言うことを聞くなら、一旦戦いを止めさせよう。どっちも傷ついて欲しくない――俺は大きく息を吸い込んだ。「みんな、ちょっと落ち着け! 戦う必要ないから! ケイロっ、一回マイラットの話を聞いてくれ! マイラットも、話せばケイロも分かってくれるから! ……あああ、風のせいで声が届かねぇっ……風の精霊、ちょっと風止めろー!」全力で訴えてみても、ケイロもマイラットも風の精霊さえも俺の声を聞いてくれない。むしろお互いに頭に血が上って、戦いがさらに激しさを増している。少なくとも精霊は俺の言うこと聞いてくれるんじゃないのかよ?困惑と焦りでオロオロしていると、輝石が『
Last Updated: 2025-05-06
Chapter: どっちも俺を考えてのこと
『さあ太智よ、これで障害はなくなった。我に力を貸してはくれぬか?』あの金の輝きが薬指から消えた。俺はただの左手に戻ってしまった現実を、呆然と眺めてしまう。「ゆ、指輪が……まさか、これ、離婚成立……?」『うむ。全精霊の承諾を得て交わされる婚姻は、全精霊が認めれば破棄が叶う。本来は各地にある精霊を奉る神殿に出向き、報告する儀式を得て叶うことだが、今は太智に自由を与えることが精霊の総意……離縁しても一度その身に宿した王族の精は残り、その力は消えん。もう大智は一王族のみに縛られぬ』輝石の話を聞きながら、俺はジワジワと婚姻のしがらみから解放されたことを感じていく。強引に結婚させられて、離婚するためにケイロたちを手伝っていたのに……指輪が消えた左手が軽くてたまらない。最初は心から望んでいたこと。でも、今は胸が激しく痛んで泣きそうになっていた。『……どうした? これが望みではなかったのか? 精霊たちから、離縁のためにケイロ王子に協力していると聞いていたのだが――』「太智っ!!」鳥居から名前を呼ばれて俺は振り返る。いつになく必死な形相のケイロ。白銀の剣を持ち、気迫に溢れた姿は凛々しく、王子の肩書きに相応しいなと思ってしまう。すぐ後ろにはアシュナムさんとソーアさんを引き連れていて、真っすぐ俺に駆けつけようとしていた。だけどそんなケイロの前に、いつの間にか同様の剣を手にしたマイラットが立ちはだかる。ケイロたちが足を止め、悔しげに顔をしかめる。剣先を向けながら、マイラットは静かに告げた。「ケイロ殿下には申し訳ないが、太智様をお渡しする訳にはいきません」迷いがない。完全に腹を括った気配をヒシヒシと感じてしまう。それに対してケイロがカッと火が点いたように叫ぶ。「ふざけるな、裏切り者! 俺たちの都合に太智を巻き込むな!」
Last Updated: 2025-05-05
Chapter: 俺、なんで渦中の人になっちまってんの!?
そりゃあ供給よりも需要が多くなり過ぎたら資源はなくなるよなあ。うん、社会科はあんまり得意じゃないけど理解できる。でも人を探しに来たって、まさかこっちの人間をあっちの世界へ連れていく気なのか? ってことは、まさか悠を――。こっちの人間で精霊が見えて、マイラットと懇意の仲。条件が揃いすぎている。慌てて悠に振り向けば、なぜか俺と同じような勢いで悠がこっちを見てきた。「秋斗さん、まさか太智を……っ!?」……え? 俺?ってか悠、舞野先生を下の名前で呼んでたのか。ここで自分が候補に挙げられると思わなくて、俺はしきりに目を瞬かせる。いやいや、俺は違うだろ。一応ケイロたち側の人間なんだし……と心の中で首を横に振っていると、「太智君……いや、太智様」「さ、様……っ!? 待ってくれマイラット。まだ心の整理どころか、状況が理解し切れていないのに――」「これよりウォルディア王国近衛隊長マイラットは、大智様に忠誠を誓い、命を賭して守ることを誓います」おもむろにマイラットが膝をつき、俺に対して首を垂れてきた。「ええええっ!?」待て待て待てっ! 人の話を聞かずに忠誠を誓うなよ!ケイロは天上天下唯我独尊を地で行ってるから人の話を聞かないけど、マイラットも大概だ。言葉だけじゃ届かないと思って、俺は全力で首を横に振った。「いやいやいや、俺は違うって! 頭は良くないし、一応精霊は使えるけどケイロの魔力が体に入ってるからだし……そもそも、世界の命運を握っちゃうような重要なことを、安易に異世界の人間に託しちゃうのはどうかと思う!」必死に訴えていると、手の上の輝石がほのかに光りながら教えてくれる。『王族の精を受けた、というのが重要なのだ』「……っ」ストレートにそう言われると、恥ずかしくて逃げ出した
Last Updated: 2025-05-04
Chapter: 明かされる事情
舞野先生は俺が学校に入学した頃から、既に司書室にいた。前からこっちの世界の人であることは間違いない。しかし今の舞野先生はマイラットが中にいるせいで、世界からちょっとズレてしまったらしい。だって初夏なのに茶色のロングコート着てるから。 暑くないのか……? 汗まったくかいてないし、涼しげな顔してるし、どうなってるんだ?口に出してツッコミを入れたかったけれど、マイラットの真面目な空気に気圧され、俺は唇を固く結んでこの衝動をやり過ごす。ふと、硬かったマイラットの顔が安堵に緩んだ。「君から接触を望んでくれて非常にありがたい。私の主がぜひ会いたいと望んでいたんだ」「主……?」「今ここにいらっしゃる。少し待って欲しい」言うなりマイラットはコートのポケットから何かを取り出す。 乳白色に赤い糸の縫い目――俺にとってものすごく見慣れたものだった。「や、野球のボール!?」「この中に隠れて頂いていたんだよ。この世界のものは、私の世界の力を受けにくいからね」ボールを上下に掴んでマイラットが捻れば、真っ二つに割れる。 次の瞬間、把握し切れない数の色のきらめきが現れて、思わず俺と悠は目を腕で庇っていた。目を細めてどうにかその正体を確かめると、ピンポン玉ほどの丸い石が延々と輝きを放っていた。「うわっ、まぶし……っ……宝、石か?」『会いたかったぞ、坂宮太智……我は百彩の輝石と呼ばれるもの。遥か昔に精霊王様の力を受け、数多の精霊を濃縮して作られたのだ』「石がしゃべった!」 『我は石の形をしておるだけで実は生きておる。ほら、手を出してみろ』言われるままに手を差し出せば、マイラットが百彩の輝石を載せてきた。「うわっ、なんか温かいし脈打ってる! なんだこれ!? 悠、触ってみろよ」「え……う、うん……ホントだ、不思議……」ものすごく困惑しながら悠が輝石を指でつつきながら、チラチラとマイラットをうかがう。 なんでそんなに戸惑ってんだ? と心の中で首を傾
Last Updated: 2025-05-03
Chapter: 深夜の待ち合わせ
◇◇◇日付を跨いだ真夜中。俺は気だるい体を起こしてケイロのベッドを抜け出す。まったく起きる気配のないケイロを見下ろして、安堵しながらも複雑な気分になる。昼間は学校生活を送りながら、マイラットと百彩の輝石の捜索。夕方以降は自分の世界に戻って用事をこなす日々をコイツは送っている。なかなかハードな生活だ。その上、俺を定期的に――ってか、最近は三日も空けない――抱き潰しているんだから、見た目によらず本当にタフだと思う。でもコイツだって生身の人間だ。疲れ果てれば深く眠ってしまうだろう。それを分かっていながら、俺は意図してケイロの負担を大きくした。俺の手が、思わずそっと伸びてケイロの頭を撫でる。こんなことで後ろめたさの罪滅ぼしになるとは思わないけれど、普段はできない労いをしてしまう。……本当に悪いな、ケイロ。あとで延々と説教コースでもお仕置きコースでも受け入れるから、ちょっと行ってくるな。枕に沈んでも崩れない端正な横顔に小さくキスしてから、俺は脱ぎ散らかったパジャマを回収し、自分の部屋へと戻った。もしかしたら寝たフリをして、ケイロは俺の動向をうかがっているかもしれない。慎重に事を運ぼうと思い、俺はすぐに実行せず、一旦自分のベッドへ潜り込んで目を閉じる。時間が経ってから再び起き上がり、俺は足音を忍ばせながら着替えを持って部屋を出る。階段を下りてトイレに入ったら素早く着替えて、足早に家を出ていく。自宅と百谷家、ふたつの家からそこそこ距離が離れた所から、俺は徐々に加速して深夜の町中を走り出した。◇◇◇約束した場所は、学校の近くにある神社。敷地を木々に囲まれたこの場所なら、誰かに目撃されにくいと思って俺が指定した。深夜二時の待ち合わせ――もし行けなかったらゴメンと先に謝っておいたが、言い出しておいて約束を破るハメにならなくて本当に良かったと、俺は胸を撫で下ろす。神社の入り口前で一旦立ち止まって呼吸を整えると、古しくてか
Last Updated: 2025-05-02
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