支配されて、快楽だけが残った身体に、もう一度、愛を教えてくれた人がいた~女社長に壊された心と身体が、愛されることを思い出

支配されて、快楽だけが残った身体に、もう一度、愛を教えてくれた人がいた~女社長に壊された心と身体が、愛されることを思い出

last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-26
Oleh:  中岡 始Baru saja diperbarui
Bahasa: Japanese
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支配されて、快楽だけが残った身体に、もう一度、愛を教えてくれた人がいた。 ――女社長に壊された心と身体が、愛されることを思い出すまで。 藤並蓮は、家族を守るために自分を売った。 支配され、壊され、快楽だけを刷り込まれた身体。 それでも、心の奥には「愛されたい」という願いが残っていた。 湯浅律は、その手を離さなかった。 守るだけではなく、共に並ぶことを選んだ人。 ただ抱かれる夜ではなく、「生きていい」と思える夜を、藤並に与える。 支配か、自由か。 快楽か、愛か。 壊れたまま終わるか、もう一度、立ち上がるか。 これは、傷ついた心と身体が、 「好きだ」と言っていい未来を選ぶまでの物語。

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Bab 1

雨粒と名札

小雨が降っていた。

四月の終わりとは思えないほど肌寒い日で、ホテルのロビーには湿った空気が籠もっていた。藤並は、冷えた指先で資料を抱えながら、経営者向け講演会の控室へと足を運んでいた。

黒いスーツの上着は肩のラインがきちんと整えられ、ネクタイも完璧に締められている。だが、胸元につけた名札の裏で、藤並の心は静かに擦り切れていた。

「藤並 蓮」と書かれた名札は、白地に黒文字のシンプルなものだった。名札の文字を何度も指先でなぞりながら、彼は思っていた。

自分は、名前で呼ばれることなんてほとんどない。ただ「顔がいい」と言われるだけだ。面接でも、企業説明会でも、いつも決まって同じことを言われる。

「君は華があるね」

「営業に向いているよ、顔で得するだろう」

何度その言葉を聞いただろうか。最初は受け流していたが、だんだんと胸の奥に澱のように溜まっていった。

「顔だけで選ばれるなら、いっそ商品になればいいのに」と、ふと心のどこかで思うことがある。

資料を抱えた腕に、かすかな汗が滲んだ。冷たいのか、熱いのか、自分でもよくわからない。会場のドアの前で立ち止まり、深呼吸を一つ。口角を上げる。それが、藤並の「就活用の顔」だった。

ガラス越しに見える外の景色は、ぼんやりと滲んでいた。小雨が窓を伝い、しずくがゆっくりと滑り落ちていく。その動きを眺めながら、藤並は思考を止めた。考えれば考えるほど、足が動かなくなるからだ。

「…失礼します」

低い声で控室のドアを開ける。中には、講演会を終えた経営者たちが談笑していた。スーツの色は濃いネイビーやブラック。時計は高級ブランドのものばかりだ。湿った空気の中で、あの人たちだけが別の時間を生きているように見えた。

「こちら、次の資料になります」

藤並は丁寧に資料を配る。目線は胸の高さ。相手の目は見ない。見れば、何を考えているかすぐにわかってしまうからだ。

「君、学生さん?綺麗な顔してるね」

やっぱり、そう言われた。にこりと笑って「ありがとうございます」と返す。これも就職活動の一環だ。ボランティアスタッフとして働くことも、業界の空気を知るためだと自分に言い聞かせていた。

けれど、心のどこかが冷えていくのを感じた。

何をしても、俺は商品にしか見られない。

顔を褒められるたびに、内側が削られていく。

資料を配り終え、最後の一冊を抱えて立ち止まる。鏡に映った自分の姿が視界の端に入る。整った顔立ち、細い首筋、柔らかそうな唇。それが「営業向き」と言われる理由だとわかっていた。

「俺は…」

心の中で呟く。けれど、その先は出てこなかった。

名札の重みが、やけに胸に食い込む。名札の裏には、自分の指の跡が残っている。小さな名札一つに、自分という存在が押し込められている気がして、ふと吐き気がした。

「お茶をお持ちします」

そう言って、藤並は控室の奥へと足を踏み入れた。会場の空気は柔らかい香水とコーヒーの香りが混じっている。けれど、その匂いは彼にとってはただの異物だった。

ガラス越しに、また雨粒が落ちるのが見えた。滑り落ちる雫は、誰にも気づかれないまま消えていく。

俺も、そうやって消えてしまえばいいのに。

けれど、身体は動く。口角を上げる。営業スマイルを作る。まるでプログラムされた機械のように、藤並は笑った。

「お茶をどうぞ」

無表情の笑顔。それが、藤並のいつもの顔だった。

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雨粒と名札
小雨が降っていた。四月の終わりとは思えないほど肌寒い日で、ホテルのロビーには湿った空気が籠もっていた。藤並は、冷えた指先で資料を抱えながら、経営者向け講演会の控室へと足を運んでいた。黒いスーツの上着は肩のラインがきちんと整えられ、ネクタイも完璧に締められている。だが、胸元につけた名札の裏で、藤並の心は静かに擦り切れていた。「藤並 蓮」と書かれた名札は、白地に黒文字のシンプルなものだった。名札の文字を何度も指先でなぞりながら、彼は思っていた。自分は、名前で呼ばれることなんてほとんどない。ただ「顔がいい」と言われるだけだ。面接でも、企業説明会でも、いつも決まって同じことを言われる。「君は華があるね」「営業に向いているよ、顔で得するだろう」何度その言葉を聞いただろうか。最初は受け流していたが、だんだんと胸の奥に澱のように溜まっていった。「顔だけで選ばれるなら、いっそ商品になればいいのに」と、ふと心のどこかで思うことがある。資料を抱えた腕に、かすかな汗が滲んだ。冷たいのか、熱いのか、自分でもよくわからない。会場のドアの前で立ち止まり、深呼吸を一つ。口角を上げる。それが、藤並の「就活用の顔」だった。ガラス越しに見える外の景色は、ぼんやりと滲んでいた。小雨が窓を伝い、しずくがゆっくりと滑り落ちていく。その動きを眺めながら、藤並は思考を止めた。考えれば考えるほど、足が動かなくなるからだ。「…失礼します」低い声で控室のドアを開ける。中には、講演会を終えた経営者たちが談笑していた。スーツの色は濃いネイビーやブラック。時計は高級ブランドのものばかりだ。湿った空気の中で、あの人たちだけが別の時間を生きているように見えた。「こちら、次の資料になります」藤並は丁寧に資料を配る。目線は胸の高さ。相手の目は見ない。見れば、何を考えているかすぐにわかってしまうからだ。「君、学生さん?綺麗な顔してるね」やっぱり、そう言われた。にこりと笑って「ありがとうございます」と返す。これも就職活動の一環だ。ボランティアスタッフとして働くことも、業界の空気を知るためだと自分に言い聞かせていた。けれど、心のどこかが冷えていくのを感じた。何をしても、俺は商品にしか見られない。顔を褒められるたびに、内側が削られていく。資料を配り終え、最後の一冊を抱えて立ち止まる。鏡に映った自分
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視線の一瞬
控室の時計が、ゆっくりと秒針を刻んでいる。スーツの袖口を整えながら、葛城美沙子は薄いグラスに残った氷を転がした。ガラス越しの外には小雨が降り続けていて、都心のビル群が濡れたアスファルトに歪んで映っている。春とは思えない冷たい空気が、窓越しに肌を撫でた。講演会は、予定通りに終わった。経営者たちの談笑が続く中、美沙子は一歩だけソファから身を起こした。相手の表情を読むのは、呼吸をするのと同じくらい自然なことだ。誰が退屈しているか、誰がまだ話したがっているか、誰が誰に媚びを売っているか。すべてが手に取るようにわかる。けれど、その瞬間だった。控室のドアが小さくノックされた。「失礼します」静かな声が響いた。女性でもなく、年配でもなく、若い男の声だった。扉が開き、トレーを持った青年が入ってくる。その姿を見たとき、美沙子の喉が微かに鳴った。細い…と、心の中で呟いた。細い首筋、丁寧に結ばれたネクタイ、スーツの肩のラインは合っているのに、どこか頼りなげに見える身体。まるで、柔らかい絹を無理やり形にしたような、不安定な美しさだった。彼が顔を上げた。目が合った。けれど、その目は…何も映していなかった。「お茶をお持ちしました」微笑んでいる。口元は完璧に笑顔を作っている。けれど、目だけが空っぽだ。どうして、この子はこんな顔をしているのかしら…美沙子はグラスを持つ手を止めた。まるで、割れ物を手渡すような仕草で、彼はお茶を置いていく。動きは滑らかだった。無駄がなく、よく訓練されている。だけど、そこに「生きている感触」がない。ああ…これは、いいわ。美沙子は思った。この子は、まだ誰にも汚されていない。身体も、心も、きっとまだ誰のものにもなっていない。だけど、もうすでに壊れかけている。そんな目をしている。壊したい。その目を、もっと奥まで割ってみたい。そうすれば、どんな声を出すのだろう。「あなた、学生さん?」声をかけると、青年は一瞬だけ目を伏せた。「はい。就職活動中で、今日はボランティアスタッフとしてお手伝いしています」美沙子は唇の端をゆるく上げた。年齢は二十、二十一か。顔立ちは整っているが、ただ綺麗なだけではない。細いのに艶がある。危ういのに色気がある。まるで、壊れやすいガラス細工を握りつぶしたくなる衝動に駆られる。「お名前は?」「藤並
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仕組まれた偶然
窓の外には、晴れ間が広がっていた。東京の春は気まぐれで、前日の雨が嘘のように、陽光がビル群の隙間を照らしていた。だが、その陽射しは、葛城美沙子にとってはただの背景にすぎなかった。美沙子は自室のデスクに腰を下ろし、タブレット端末の画面に映し出された資料を指先でめくっていた。手元には、藤並蓮の実家に関する調査報告が積み重ねられている。調査会社に依頼してから三日。彼女が得た情報は、彼女の思惑を裏付けるには十分すぎるほどだった。老舗料亭「藤並」。創業は昭和初期。戦後、三代目にあたる父親が継ぎ、今も高級料亭として知られているが、実情は異なる。立地の維持費、食材費、職人への人件費…。伝統を守るという美名の裏で、経営はすでに限界に近い。表向きには常連客が支えているように見えるが、その実態は、ほぼ一人の有力資産家による大口支援に依存していた。その資産家も、昨年病で倒れた。現在は家族によって財産管理が引き継がれ、支援は打ち切られたという。美沙子は静かに息を吐いた。狙いどおりだった。料亭の帳簿を見れば一目瞭然だった。借入金の返済が滞り始めたのは、ちょうど藤並蓮が就職活動を始めた頃と一致する。つまり、息子が家業に戻ることを避けるため、両親は必死に別の道を模索していたのだろう。あの子の瞳に宿っていた疲れと諦めは、決して個人的な問題ではなかった。家を背負う人間の目だった。「いい目をしていたわ」美沙子はそう呟いて、端末を閉じた。唇の端が、わずかに上がる。彼を手に入れるのに、そう時間はかからない。けれど、ただ手に入れるだけでは足りない。自分から選ばせなければ意味がない。罠だとわかった上で、飛び込ませること。それが、快楽だった。デスクの脇に置かれた電話に手を伸ばす。番号を押すのに迷いはなかった。相手は、地方銀行の東京支店長だった。かつてビジネススクールで同じクラスだった男だ。「葛城です。…お久しぶりね」「いやあ、これは珍しい。どうされました?」「ちょっと、気になる企業があって。料亭なんだけど、昔ながらのね。藤並っていうの、ご存じ?」電話の向こうで、キーボードを叩く音がする。すぐに、確認の声が返ってきた。「ええ、取引ありますよ。支店ではそこそこ有名ですね」「融資、続いてるの?」「まだ続いてますが、正直…返済遅れが出てるって話も。そろそろ見直しかなあって」「
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雨と投資話
料亭「藤並」の軒先には、白い提灯の灯りがぼんやりと揺れていた。雨は細く、霧のように降っている。傘をさしていても、服の肩口がじわりと濡れていくような夜だった。藤並蓮は、暖簾を少しだけ外して立っていた。父からの電話を切ったばかりだった。声は低く、言葉数も少なかったが、その一つひとつが心臓に刺さった。資金繰りが、もう限界だという。「追加融資は…やっぱり断られた」父はそう言った。声には疲れがにじんでいた。料亭を守るために、どれだけ頭を下げてきたのかを、藤並は知っている。だからこそ、何も言えなかった。握りしめたスマートフォンが、湿った手のひらで滑りそうになる。雨の粒が額から頬に伝い、襟元に落ちた。顔が濡れているのか、泣いているのか、自分でももうわからなかった。「…どうすればいい」小さく呟くと、喉の奥がつんとした。就職活動は、うまくいっていない。企業の面接では、相変わらず「顔がいいね」「営業向きだ」と言われるだけだ。どこも内定は出さない。本当は、自分が家業を継ぐべきなのだろう。けれど、それを思うたびに、胃の奥が重たくなる。今の料亭では、借金を背負うだけだ。自分が入ることで、何かが好転するわけではない。もう、どうすればいいのかわからなかった。そのとき、黒塗りの車が静かに料亭の前に停まった。ワイパーが一度だけ動き、雨粒を払う。後部座席のドアが開き、細い足が現れた。見慣れたシルエットだった。「こんばんは、蓮くん」葛城美沙子が、柔らかく微笑んでいた。黒いスーツに、細い指先。髪は濡れているのに、どこか艶めいて見える。傘を差す様子もなく、彼女は藤並の方に歩いてきた。「社長…こんな時間に」「たまたま近くまで来たの。ちょっとお話、できるかしら?」藤並は躊躇ったが、断れる理由もなかった。店の灯りを背に、美沙子と並んで歩く。料亭の脇にある小さな屋根付きの待合スペースまで、二人で移動した。雨が、そこだけを避けている。けれど、空気は冷たいままだ。「お父様から、少し話を聞いたわ。料亭、大変なんでしょう?」美沙子はそう言って、藤並の顔を覗き込むように見た。その瞳は笑っていた。けれど、どこか底が見えなかった。「…ええ。まあ」「融資が止まったのよね。仕方ないわ。銀行も、利益にならないところには貸せないもの」藤並は唇を噛んだ
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所有完了
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雨上がりの檻の前
ホテルの廊下は、深い絨毯に足音を吸い込んでいた。五月の夜、雨上がりの湿った空気が、建物の中にまでじわりと染み込んでいる。藤並蓮は、都内高級ホテルの最上階、スイートルームの前に立っていた。壁に寄りかかることも、手をポケットに入れることもできなかった。指先はスマートフォンを握りしめたまま、冷たい汗で滑りそうになっている。その手を胸元に引き寄せ、そっと深呼吸をした。「これは仕事だ」心の中で何度も繰り返す。「これは仕事だ。助かるためだ。家のためだ」それ以外の選択肢は、もうなかった。父の料亭は資金繰りが限界に達している。銀行の融資は断られた。親戚も、これ以上は助けられないと言った。自分が動くしかない。でも、それが「抱かれる」という形になるとは、思っていなかった。「俺は…助かるために抱かれるんだ」唇の内側を噛んだ。血の味が微かにした。それでも、心は冷えたままだった。天井のシャンデリアが、ぼんやりと滲んで見える。湿度でレンズが曇ったように、視界が揺れていた。右手を伸ばして、スイートルームのインターホンに触れる。その瞬間、指先がかすかに震えた。触れたボタンの感触が、妙に冷たい。「…」呼吸が止まりそうになる。でも、押さなければならなかった。カチリと、小さな電子音がした。インターホンの向こうで、応答のチャイムが鳴る。数秒後、ドアが開いた。ゆっくりと。まるで、誰かの心の奥に手を差し込むように、静かに。「待っていたわ、蓮くん」美沙子が、白いバスローブ姿で立っていた。髪はゆるくまとめられ、濡れたような艶が光っている。首筋があらわになっていた。肌は白く、鎖骨のくぼみが、柔らかい影を作っている。唇は、艶やかな薄紅色だった。リップグロスの光沢ではなく、生の艶だった。それが、藤並には
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美沙子がワインボトルを傾けた。赤い液体が、薄いグラスに静かに注がれる。部屋の間接照明が、その表面を艶やかに照らしていた。「飲めるでしょう?」藤並は頷いた。グラスを受け取ると、その薄さに指が少しだけ震えた。それを隠すように、もう片方の手でグラスの脚を支える。「緊張してるの?」「…いえ」声はかすれていた。けれど、顔には笑みを浮かべた。何度も練習してきた営業スマイル。その表情を貼りつけて、目を細めた。でも、目は乾いていた。瞬きをするたび、まぶたの裏がきしむようだった。「蓮くん。今日から、もう心配しなくていいのよ」美沙子はグラスを傾けながら、艶やかに囁いた。唇が赤いワインの縁をなぞる。その唇が、ついさっきまで藤並の手を撫でていた指先と同じ色に見えた。「料亭のことも、お父様のことも。これからは、私が支えるわ」「…ありがとうございます」その言葉を言うしかなかった。言葉にした瞬間、胸の奥がひどく重たくなった。それでも、グラスを口に運ぶ。ワインが喉を滑る。苦い。渋みが舌の奥に広がった。でも、それを感じる余裕はなかった。「私ね、恩は忘れない人が好きなの」美沙子は微笑んだ。その笑顔は、柔らかいのに、どこか冷たかった。「私も、蓮くんに恩を与えるわ。助けてあげるの」「…」「だから、私のことも、大事にしてね」言葉の意味は、分かりすぎるほど分かっていた。けれど、藤並は何も言わなかった。形式的な契約書はなかった。交わしたのは、言葉だけ。けれど、それは何よりも重かった。「これが、契約なんだ」心の中で呟いた。紙に書かれた文字よりも、ずっと逃げられない契約。それが、この夜だった。
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美沙子の指先が、藤並のネクタイにそっと触れた。白い手が、ゆっくりと結び目をほどく。細く、美しい指だと誰もが思うだろう。けれど、藤並には、それが檻の鍵を回す手に見えた。「こんなに綺麗な首、どうして誰も手をつけなかったのかしら」美沙子は、耳元で囁いた。その息が、頬をかすめる。藤並の喉の奥が、かすかに鳴った。指先が、襟元に触れる。生地の間から、肌が露わになる。美沙子は、シャツのボタンを一つずつ外していく。その動きは、驚くほど丁寧だった。乱暴でもない。急ぎもしない。けれど、逃げ道をすべて塞いでいくような、確実な手つきだった。カチリ、とボタンが外れる音がするたび、藤並の背中には冷たい汗が流れた。けれど、顔は笑っていた。笑顔は、もう自動的に作れる。でも、目は笑っていなかった。目の奥だけが、ひどく冷えていた。「これは仕事だ」心の中で唱える。「俺は、助かるために抱かれるんだ」そう言い聞かせても、心臓の鼓動は速くなるばかりだった。美沙子の指先が、鎖骨のあたりを撫でた。指の腹が、肌をゆっくりと滑る。柔らかい。けれど、その柔らかさが恐ろしかった。「ねえ、蓮くん。怖い?」「…いえ」声は平静だった。けれど、身体は震えていた。その震えが、呼吸を邪魔する。「可愛いわね」美沙子が微笑んだ。唇の端だけが上がる。その笑みには、底がなかった。藤並は、もう何も言えなかった。シャツが、肩から滑り落ちる。肌が空気に晒される。部屋の湿度が高いはずなのに、肌寒さを感じた。美沙子の指先が、首筋を撫でる。耳の後ろから、鎖骨へ。その動きは滑らかだった。けれど、藤並の身体は硬直していた。そのときだった。ふいに、別の記憶が蘇った。
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濡れた身体、乾いた心
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