ログイン支配されて、快楽だけが残った身体に、もう一度、愛を教えてくれた人がいた。 ――女社長に壊された心と身体が、愛されることを思い出すまで。 藤並蓮は、家族を守るために自分を売った。 支配され、壊され、快楽だけを刷り込まれた身体。 それでも、心の奥には「愛されたい」という願いが残っていた。 湯浅律は、その手を離さなかった。 守るだけではなく、共に並ぶことを選んだ人。 ただ抱かれる夜ではなく、「生きていい」と思える夜を、藤並に与える。 支配か、自由か。 快楽か、愛か。 壊れたまま終わるか、もう一度、立ち上がるか。 これは、傷ついた心と身体が、 「好きだ」と言っていい未来を選ぶまでの物語。
もっと見るClarissa Angela Sophia, or just Sophia, is a hopeless romantic.
Even though she only has one goal in life, and that is to be successful enough to support her home orphanage, she has always loved reading. Romance just happened to be the genre she has grown to love until today. Reading and experiencing love through the books she has read helped her escape reality. She has been an orphan her whole life and was only adopted in her teens, but, sadly, even her foster parent—a lovely old woman—died too early as she left her all alone again. It was reading that helped her escape her harsh reality, and even without noticing it, it has set her standard a little bit higher than she thought she could ever have.
Yes, she is a hopeless romantic who is a virgin in all aspects. A hopeless romantic who has never experienced any kind of romantic relationship with anyone in real life. Yet here she is with her set of standards that can only be reached if you are Prince Charming.
Prince Charming—a man who will sweep her off her feet and will bring her to her happily ever after. She is already in her twenties and she still naively believes that someone like that exists in real life. But, in all honesty, she is not necessarily looking forward to a fairytale kind of romance. Yes, her standards are for Prince Charming alone, but she just honestly wants to meet a good person that will hopefully, truly, experience the best romance life has to offer with her.
With all that said, she wants it to happen when she is finally done with everything she has to do. She is already in her last year of college and just a little more, she can finally work and reach her dream of supporting everyone she loves. There is nothing that could go wrong…
Until the Universe decided that it has a whole new, different course of plans just for her.
The romance in her life was only supposed to be the second thing on her list. She still has so much to do before she can even cross out her number one priority—but the Universe said screw her list because she was suddenly given everything, and she meant everything, she did not ask for… yet.
This is not supposed to happen now or nowhen near now. Everything is out of schedule and totally out of her list of priorities. This is not how she pictured her romance to be. This is pure chaos! If this was a novel book, this is one of the biggest plot twists that has ever been written just to mess up her whole life!
The romance that she has been dreaming about, all the chaos in the order of things on her list, everything... and she actually thought that it was all that there is to it.
A big no was plastered on her forehead for the answer to her expectations. No, she was not only given the romance she always dreamt about with Prince Charming or just any good person. She was offered love by and with someone who did not only fit the impossible standards she has but was the complete opposite of what she had in mind. The Universe not only drained her expectations down the drain but reminded her how expectations are nothing to what reality holds.
She was given a shot at what love and romance can be with a villain.
A villain who offered her the contract she cannot reject. The very person who is sleeping soundly against her chest. The man named Navier.
When novels and stories established that bad guys can fool you for their angelic looks and irresistible charms, they were not kidding about it at all.
Now, dating the villain does not seem so bad... or does it?
部屋の照明は、変わらず淡い光を落としていた。蛍光灯ではない、やわらかな間接照明。白すぎない光が、壁と天井に反射して、二人の影を滲ませている。時間は、夜の底に静かに沈んでいく。湯浅がリモコンを手に持ったまま、ふっと笑った。画面では、芸人たちが笑い合い、次のコーナーに移ろうとしている。けれど、その笑い声とは別に、湯浅の口元がわずかに緩んだだけだった。「くだらねえな」そう呟きながら、湯浅はチャンネルを変えなかった。その声に、特別な意味はなかった。ただ、今そこにある空気を壊さないための、日常のひとつだった。藤並は、その横顔を見つめた。何も言わず、ただ隣にいる。湯浅が笑うと、自分の胸の奥にも同じ形の笑みが広がっていく気がした。心が、静かに満たされる。それは、激しい快楽とも、刹那の興奮とも違う。もっと穏やかで、じわじわと染み込んでくる感覚だった。藤並は、ソファのクッションに手を置いた。その手が、湯浅の膝に触れるでもなく、ただ布地の感触を確かめるだけだった。けれど、その距離感が心地よかった。「これからは、何度でも言える」心の中で、そう呟いた。好きだって、何度でも言える。特別な夜じゃなくてもいい。何かの約束があるわけでもなくていい。洗濯物を畳むときにも、コーヒーを淹れるときにも、ソファに並んで座るときにも、テレビを見て笑うときにも、そのたびに「好きだ」と言える。それは、藤並にとって初めての感覚だった。誰かに愛されることを、許せるようになった。そして、愛することを、自分に許した。「律」藤並は、小さな声で湯浅の名前を呼んだ。「ん?」湯浅はリモコンを持ったまま、視線だけをこちらに向けた。「なんでもない」藤並は笑った。湯浅も、肩をすくめて笑った。それでよかっ
テレビの音が部屋の中で柔らかく続いていた。画面の中では芸人がはしゃぎ、観客の笑い声が流れている。でも、その音はもう藤並の耳にはほとんど入っていなかった。隣にいる湯浅の体温が、肩越しに伝わってくる。その温度が、じわじわと胸の奥に広がっていく。不思議な静けさだった。騒がしいテレビの音とは裏腹に、心の中は驚くほど静かだった。藤並は、ふっと息を吐いた。肩を湯浅に預けたまま、ソファの縁に視線を落とす。クッションの縫い目がきちんと揃っていて、指先でなぞればその手触りがはっきりとわかった。そんな何気ない感覚が、胸にじんわりと沁みていく。ただそこにいるだけでいい。守るために身体を捧げる必要もない。誰かに何かを差し出す必要もない。今は、ただ並んでいるだけ。それだけで十分だと、心の奥から思えた。「……好きだ」思わず、唇から言葉が漏れた。小さな、小さな声だった。藤並は自分でその言葉に驚いた。けれど、すぐに目を閉じることはしなかった。目を開けたまま、湯浅の横顔を見た。湯浅は、微かに息を吸った。でも、何も言わなかった。その代わりに、ソファのクッションを撫でるように、手をゆっくりと動かした。藤並の手には触れなかった。けれど、その動きが答えだった。何も言わなくても、全部伝わっていると分かった。「これが、愛なんだな」心の中で、藤並は呟いた。身体を重ねることでも、傷を埋め合うことでもない。ただ並んで、同じ時間を過ごしている。そのこと自体が、愛だった。守るでも、守られるでもなく、ただ一緒にいる。それが、こんなに安心できるものだとは知らなかった。「好きだ」今度は心の中で、もう一度繰り返した。その言葉は、もう特別なものじゃない。特別な夜でも、特別な出来事でもなく
夜の部屋には、テレビの音が低く流れていた。画面では芸人が笑いながら、くだらないゲームをしている。観客の笑い声がエコーのように響き、それが部屋の隅々にまで柔らかく染み込んでいった。藤並はソファに座り、膝の上に手を置いていた。その手は、もう固くならない。力を抜いて、ただそこにある。隣にいる湯浅は、何も言わずにテレビを眺めている。肩に手を回すこともしない。身体を寄せるでもなく、離れるでもなく、ただそこにいる。それが、藤並には心地よかった。「……」藤並は目を細めた。テレビの画面に視線をやりながらも、意識は湯浅の横顔に向いている。笑い声が流れても、湯浅はそれに合わせて笑ったりしない。けれど、口元がわずかに緩む。その表情を、藤並はこっそりと見ていた。肩が自然と、湯浅の方へと寄る。意識して動かしたわけじゃなかった。気づいたら、肩先が湯浅の腕にかすかに触れていた。湯浅は何も言わなかった。目線を動かすこともなく、ただそのまま、画面を見ている。藤並は、その沈黙に安堵した。これまでなら、触れることに意味を持たせすぎていた。触れられることは、支配されること。身体を預けることは、相手に全てを渡すこと。そう思い込んでいた。けれど、今は違う。肩が触れても、それはただの温度だった。身体の境界が、心地よく並んでいるだけ。誰も奪わないし、誰も壊さない。藤並は、目を閉じなかった。きちんと目を開けたまま、湯浅の横顔を見た。湯浅は相変わらず画面を見ている。薄いシャツの肩越しに、呼吸のリズムが伝わってくる。ゆっくりと瞬きをした。まぶたを上げると、また同じ夜がそこにあった。この時間が特別ではなく、日常になる。それが、嬉しかった。「なあ」藤並は、小さく声を出した。
乾燥機の音が止まった。部屋の中に、洗いたての柔軟剤の香りがふわりと広がる。湯浅がバスケットを持って戻ってきた。何でもない夜の、何でもない時間。「畳むぞ」湯浅がソファの前に座り、Tシャツを一枚手に取った。その動きは、ゆっくりと落ち着いている。几帳面な手つきで、袖を揃え、胸の部分を折りたたむ。「はい」湯浅が畳んだTシャツを、藤並の方に渡した。藤並は自然にそれを受け取った。まるで、ずっと昔からこの作業を一緒にしてきたかのように、何の違和感もなかった。藤並は、膝の上に広げたTシャツの端を揃えた。指先が生地を撫でる。以前なら、こういうとき必ず手が震えていた。何かを壊しそうな気がして、力が入りすぎたり、逆に力が抜けてしまったり。でも、今は違った。洗濯物の感触を確かめるように、端をぴたりと合わせる。その手つきに、無理な力はなかった。湯浅が横で、次のシャツを畳んでいる。二人分の洗濯物が、ゆっくりと小さな山になっていく。その様子を見ながら、藤並は心の奥でひとつ、言葉にならない想いを噛み締めていた。「こういう時間が、欲しかった」それは、いつからか自分の中にあった願いだった。けれど、それを口にすることはなかった。自分には許されないと思っていた。守るために身体を売ることはできても、こういう生活を求めることはできないと、どこかで思い込んでいた。けれど、今はこうして、湯浅と並んで洗濯物を畳んでいる。特別なことじゃない。どこにでもある、生活の一部。でも、その何気ない時間が、たまらなく愛しかった。湯浅は黙って、淡々と手を動かしている。その横顔は穏やかで、口元はわずかに緩んでいる。笑っているわけではないが、どこか優しい表情だった。藤並は、畳んだシャツを積み重ねながら、自分の手を見た。もう、震えていない。自分の身体が
藤並の身体は、湯浅の手の中でわずかに震えていた。けれど、それは恐怖や拒絶の震えではなかった。欲望と快楽の波が、身体の奥からせり上がってきている。その波に、ただ素直に身体を預けているだけだった。湯浅の手が、ゆっくりと藤並の肌を撫でる。指先が首筋をなぞり、鎖骨のくぼみを辿る。その動きは、焦りもなく、乱暴でもない。まるで、時間ごと抱きしめるような触れ方だった。藤並は、薄く目を閉じた。肌の上に滑る手の感覚を、細胞のひとつひとつで受け止める。胸の奥が熱くなる。
湯浅の指が、藤並の頬をそっと撫でた。その手つきは、まるで壊れ物に触れるように慎重だった。けれど、もう藤並は壊れそうになどなかった。触れられた頬が、じんわりと熱を帯びる。それは冷えた肌に触れたせいだけではない。自分の内側から、ふつふつと何かが湧き上がってきている。唇が重なった。湯浅の唇は柔らかかった。乾いていない。温度がある。その感触が、胸の奥にゆっくりと広がる。怖くなかった。ああ、本当に怖くない。藤並は、唇を重ねられたまま、心の中で何
藤並は、コーヒーのカップをそっとテーブルに置いた。指先がカップの縁をなぞる。その感触を確かめるように、ゆっくりと手を滑らせた。微かに震えていた指は、もう止まっている。湯浅の隣に座る自分の身体が、どこにも力を入れていないことに気づく。こんな夜は初めてだった。「律」名前を呼んだ。湯浅は、ソファに身体を預けたまま、視線だけを藤並に向けた。目が細められる。優しい目だった。けれど、その奥にある熱は、いつも変わらない。そこには、欲望もあるし、愛情もある。
夜の街は、まだ雨の匂いを残していた。アスファルトが濡れたまま光を吸い込み、ビルの灯りがぼんやりと滲んでいる。二人は並んで歩いていた。湯浅の足音と藤並の足音が、同じリズムで響く。傘は差していない。もう雨は止んでいた。けれど、空気は湿っていて、コートの裾がわずかに重たかった。藤並は、湯浅の隣を歩きながら、ふと視線を落とした。足元の水たまりに、二人の影が並んで揺れている。揺らいで、重なって、また離れて、少しだけずれる。けれど、最後にはきちんと重なり直す。「