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8ツーらO太!
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Novels by 8ツーらO太!

生きた魔モノの開き方

生きた魔モノの開き方

 ヴェルミリオン帝国の第七監獄《グラットリエ》――その地下には、生きた魔物を解体・調理する異端の調理場がある。そこで終身刑の囚人であり調理人のエルドリス・カンザラが演者を務めるのは、生放送料理番組『30分クッキング』。彼女は魔物を生かしたまま切り開き、極上の料理へと変えていく。調理助手《アシスタント》兼監督官として配属された新米役人イオルク・ネイファは、その狂気に満ちた調理を前に戦慄するが、彼女を止めることはできない。  番組は今日も進行する。血と痛みの先にある、一皿のために。
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Chapter: 31踊目:死へ向かう舞踊
「ネイヴァン・ルーガスッ!」 ネイヴァンが立っていた位置でエルドリスが叫ぶ。二人の場所が、入れ替わったのだ。 ネイヴァンは倒れ、左胸に刺さった槍は、スライムのように溶けて逃げていく。その槍の抜けた穴から尋常じゃない量の血が溢れ出す。 左腕の痛みを、一瞬で忘れた。 僕はほぼ反射的にネイヴァンへ駆け寄り、回復魔法を発動した。だが初歩の初歩たる教科書魔法だ。山火事にコップ一杯の水をかけ続けるようなもの。燃え尽きるスピードの方が圧倒的に早い。「虚の脈息《ルクス・エヴィータ》」 エルドリスの手がかざされて、真っ赤な胸の穴が、濃い白の光に包まれる。「回復魔法では間に合わない」 延命魔法だ。これでネイヴァンは、30分は生き長らえる。だが延命魔法は"致命傷を負っていても一定時間生きられるようにする"だけで、"致命傷を治す"わけではない。だからその30分の猶予期間に回復魔法で傷ついた臓器を――穴の開いた心臓を治療しなくては。 白い光が消え、血の止まったネイヴァンが、「やってくれるじゃねえか」と呟きながら上体を起こす。「ネイヴァンさん、まだ動いては――」「ああん? 殺されかけて泣き寝入りしろってぇ?」「治ったわけじゃないのは、その痛みでわかっているでしょう!?」「さあな。どういうわけか、大して痛くねぇんだ」 エルドリスの延命魔法は、命の期限を延ばすだけの魔法。かつて彼女が『30分クッキング』の視聴者に向かい『痛覚には何ら影響ない』と語ったとおり、痛みは消えていないはず。本来ならば起き上がるどころか話すことすら、呼吸すら辛いはずなのだ。 その痛みを超越しているのだとしたら、それは大量出血による血圧の急低下やアドレナリ
ปรับปรุงล่าสุด: 2025-05-01
Chapter: 30傷目:ホップ、ステップ、ジャンプ
 四、五メートルは上から落ちてきたのにケロリとしているラシュトを見て、僕は寒気を覚えた。やはり、コレと戦うのは無謀だ。「エルドリス」 逃げましょう、という意味で僕は彼女を呼んだが、反応はない。彼女の碧い眼差しはもはや、人間離れした少年へと釘付けになっている。「呼ばれてるよ、綺麗でかっこいいお姉さん」 ラシュトがくすくす笑うが、エルドリスの表情は能面のようにぴくりとも動かない。 戦《や》る気なのだ。 僕は覚悟した。そして気持ちを、いかに逃げるか、から、いかに捕らえるか、に切り替える。 ネイヴァンも僕と同じ考えに至ったようで、ラシュトに正対して重心低く立ち、利き手の拳を握っている。「アハ、そうこなくっちゃ。活きの良い獲物は好きだよ」 ラシュトの笑みが深くなる。「ぬかせ」 とネイヴァン。その拳が赤い光に覆われる。 それが開戦の狼煙《のろし》となった。 高らかな笑い声とともに、ラシュトの体がねじれて変形する。溶けるように輪郭が崩れ、次の瞬間――エルドリスと瓜二つの姿がそこに立っていた。「……悪趣味め」 エルドリスは即座に間合いを詰め、ナイフで自分と同じ姿の首を一文字に切り掛かる。後ろに飛び退いた白い喉を刃が掠め、赤い血が僅かに飛び散る。 ラシュトは軽やかに距離を取ると、今度はネイヴァンの姿に変わる。口元を歪めて、挑発するように舌なめずりした。「なあエリィ。魔物とヤったことあるか? 俺で試してみるのはどうだい」「ネイヴァン・ルーガス、こいつを黙らせ
ปรับปรุงล่าสุด: 2025-04-30
Chapter: 29戦目:お待たせ
 ラシュトを振り返った僕たちはすぐさま迎撃体勢をとった。そこにいるのは、どう見ても人間の少年。けれどネイヴァンが言ったとおり、人間ならば砂浜からの帰還に数時間は掛かるはず。 十分やそこらで戻ってこられたということはやはり、「きみは、人間ではないんですかっ……?」 ラシュトは口角を引き上げ、悪戯っぽく笑った。「怖いお兄さん、僕から見たらあなただって、純粋な人間には見えないよ?」「黙れクソガキ!」 ネイヴァンが吼えるが、少年は意にも解さず楽し気に続ける。「そうそう、まだ答えを聞いてなかったね。どんなふうに殺されたいか教えてくれる?」「それはこちらの台詞だ。希望どおりの殺し方をしてやろう。こちらには名のある脚本家兼演出家と、魔物を開きなれた調理人、そして万能な調理助手《アシスタント》がいる」「おおっと。あなたたちやっぱり、死刑囚じゃなかったんだね。じゃあそうだなぁ……こんなプロットにしてよ。まずは冒頭で、パーティ全員毒蛇に噛まれて死ぬ、って」 次の瞬間、ラシュトの姿がぐにゃりと歪み、肉が変質する嫌な音が響いた。皮膚が硬質化し、暗い色の鱗が連なっていく。彼の身体は分裂するように長く伸び、それが何本にも分かれていく。 無数の黒い蛇。くわあ、と開かれた口には巨大な牙。そして牙の先から滴る毒液。 硬い鱗を持った蛇たちが地面を這う。 ズズズ……ズズズ……。 この音……! 僕は気づいた。蛇の鱗が岩に擦れる音。これは昨夜聞いた音と同じ。 あれは何かを引き摺った音じゃなく、無数の蛇が、岩壁に開いた隙間を潜った音だったんだ。 ラシュ
ปรับปรุงล่าสุด: 2025-04-29
Chapter: 28骨目:おまえはだれだ
 僕たちは光の雨粒に打たれた白骨遺体を見つめていた。人間の形を保ってはいるものの、ところどころ損傷が目立つ。とりわけ頭蓋骨は縦に真っ二つに割れていて、致命傷の跡なのか白骨化後の傷なのかは知れないが、異様だった。  骨の表面には、雨水や泥の跡がうっすらと残っている。 そして絡みつく、僕が放った絶対拘束《トータル・フェター》の蛇。その意味するところはつまり、「これは囚人の――死刑囚の遺骨です」「誰なんだよ」 とネイヴァン。「わかりません。でもラシュトの部屋の奥にあったんですから、ラシュトの知り合いなのでは?」「うーむ……でもあいつ、他の死刑囚とつるむようなタイプか? 殺しちまいそうだろ」「知らないですよ」「あ、そうだ。これは聞いた話だが、人間の遺体が雨風に晒された状態で完全に白骨化するには、少なくとも一年かかるらしいぜ。となれば、この遺体は一年以上前にこの島へ送られた囚人のものだ」「そんなの、数えきれないほどいます」「だよなぁ。……新人君、識嚥《シエ》で食ってみろよ。それでわかるだろ」「嫌ですよ! 冗談じゃない!」 この男はなんてことを言うんだ。 エルドリスが小さくため息をついた。「断られるに決まってるだろ。頭を使え、ネイヴァン・ルーガス」「なんだよエリィ。じゃあ他に方法があるっていうのか?」「だから頭を使えと言っている。これまでの情報を総合的に考えてみるんだ。まず、この場所はラシュトのねぐらの奥にあって、ここに繋がる通路は岩壁によって遮断されていた。だが完全な遮断ではなかった。岩壁には隙間があったし、ここの天井にも隙間がある」「それが何なんだよ」 次に、とエルドリスはネイヴァンの問いかけを無視して続けた。
ปรับปรุงล่าสุด: 2025-04-28
Chapter: 27殺目:快楽殺人者の憂鬱
 頭が重い。手足が思うように動かない。体が痛い。 目を開けると、冷たい岩肌の床が視界に入り、その先に、赤々と燃える焚き火が見えた。「おはよう、怖いお兄さん」 楽しげな声が降ってくる。 顔を動かして声のした方を見ると、ラシュトが焚き火のそばに座り、金属製のナイフを弄んでいた。彼は木製のナイフしか持っていなかったはずなので、それは恐らくエルドリスの持ち物だろう。その唇の端は愉快そうに吊り上がっている。「あなたたちさ、昨夜食べたセフィアベリーと今朝食べたヴェルド、食べ合わせって考えたことある?」 唐突な問いかけを聞きながら、頭の中で警鐘が鳴り続けている。手足が動かないのは縛られているせいだ。しかも手は背中側で括られているため、身を起こす支えにもできない。 エルドリスとネイヴァンも目を覚ましていたようで、すぐそばで動く気配がする。「セフィアベリーはね、胃でなかなか消化されないんだ。だからひと晩経ったくらいじゃまだ、胃の中に残ってる。それで、ヴェルドと混ざると……さ、あっという間に有害成分に変わる。そうなると、人間は――」 ラシュトはそこで言葉を止め、ゆっくりと笑みを深めた。「――昏倒してぐっすり眠っちゃうんだよ」 ネイヴァンが舌打ちする。本当は悪態のひとつも吐きたいところだろうが、彼とて今、この不利な状況で少年を煽るリスクを考えないわけがない。 エルドリスも同様だった。いつもネイヴァン相手に流暢に飛び出す嫌味が今は鳴りを潜めている。だが、彼女の無念は僕ら以上だろう。調理人である彼女にとって、毒の生成に食べ合わせを使われること、そしてそれにまんまと引っかかってしまったことは、屈辱にも近いはず。「あなたたちは運が悪かった。でも逆に僕はものすごく幸運だ。い
ปรับปรุงล่าสุด: 2025-04-27
Chapter: 26喰目:グラングの塩焼きとヴェルドのハーフカット
 なんだ? どういうことだ? ラシュトはどこへ消えた? 僕はエルドリスとネイヴァンを起こし、事の顛末を二人へ伝えた。 ネイヴァンが点火魔法で焚き火に火をつけ、洞窟の中に鮮やかな視界が戻ってくる。僕たちは壁面を丹念に調べ始めた。叩いたり、押してみたり、突起に指をかけて引いてみたり。しかし――「特に変わったところはないな……」 ネイヴァンが首を水平に振る。壁面を構成する岩は、どれもただの岩でしかない。床も、下に抜け穴がないかと三人で調べてみたが、何も見つからなかった。 僕たちが調査を続けていると、外から小鳥の鳴き声が聞こえてきた。「朝か」 エルドリスは立ち上がると、部屋の入り口へ向かっていく。「どこへ行くんです? もう砂浜へ戻りましょう。ネイヴァンさん、転移魔法をお願いします」「少し待て、念のため洞窟の外を確認する」「確認って何を! エルドリス、待ってくださいっ」 僕は洞窟へ入っていくエルドリスを追った。エルドリスは歩きながら僕の質問に答える。「確認するのはあの部屋の外側だ。私たちはここに入ってくるとき、蔓に覆われた入り口しか見なかった」「それが何なんです?」「あの部屋――あの広い空間には外気が流れていたな。つまり、僅かだが外部と繋がっているということ。その繋がっている場所を外側から見れば、わかるかもしれない。内側を調べてもさっぱりだったが、子どもひとり通り抜けるだけの隙間の手がかりが。あくまで小さな可能性だが」「わかりました。じゃあ、洞窟の周囲をざっと見て、そしたら浜辺へ帰りましょう」「おいおい、新人君。なんだか妙に焦っちゃいねえか」 後ろから付いてきていたネイヴァンが飄々と言う。彼にはわから
ปรับปรุงล่าสุด: 2025-04-27
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