Chapter: 最終話君色に最終話君色にそして卒業式当日教室に入ると彩那の周りの空気が重くなっており、普段は周囲に人がいる彩那の周りには誰もいなかった。私はそんな重たい空気が漂う中自らの想いを学校の中……教室の中だというのに彩那に向かって叫んだ『──私は彩那が好き──!!』当然みんなの視線は私に集中した。しかしいつもなら大勢から視線が集中した途端話を止めてしまうのだが、想いの枷が外れた私は止まることなく今まで押し殺していた想いを泣きながら叫んだ、叫び続けた。私の叫びは求愛のために美しい音色で鳴き続けるスズムシの雄とは違う……私のはお店の中だというのにお金のことで説教を大声で延々とする父の声のような醜さだ。卒業式だったこともあり何時間も遅れ先生から呼び出しを受けたが私は先生のところに行かず、説教されている時も私は叫び続けた。私はその後に呼び出しを受けたが、その相手が悪かった。その相手というのは河口先生(かわぐちせんせい)だ。河口先生は理事長の息子であることを理由に根も葉もない理由を付け生徒を退学させまくるくせに他の先生から注意一つ受けないことから生徒たちから"調子に乗ったボンボン野郎"と言われている。私はその河口先生の逆鱗に触れたのかさまざまな理由をつけられ退学処分を受けてしまった。もう彩那に会えないのかな……だって連絡先も何も聞けてないんだよ!!……そもそも今日卒業式だからすると突然コンコンと扉を叩く音が聞こえた。河口先生が開けるとそこには泣いている彩那がいた。彩那は泣きながら「あの、河口先生……愛海を退学にしないでください、お願いします……私が今まで頑張ってこられたのはかっこいい姿を愛海に見せたかったからなんです!! だから……河口先生、辞めさせるなら私にしてください、お願いします!!」と河口先生にお願いしていた。私は彩那がそう言ってくれるだけで、沈んでいた心が癒やされていく音が聞こえてきた気がした。彩那の懇願を聞いた河口先生は退学を取り消してくれた。紙をめくる音を聞いた彩那が私の背後から覗き込みながら聞いてきた。「何見てるの愛海?」「卒業アルバムだよ」「懐かしいね。もう三年前かぁ、早いね」「だよね。ねえ彩那、咲美から聞いた?」「何を?」「咲美たちも同棲することになったんだって。何かお祝い買わなきゃいけないね」「奮発しちゃおうか!! せ
Last Updated: 2026-08-31
Chapter: 第十六話本当の姿第十六話本当の姿私と彩那の学校では二年生で一旦卒業式を行い三年生では系列大学のコネクションを使い大学生活を一年間体験するというのが決まりになっている。その関係で修学旅行は一年生で行うのだ。しかし今回ばかりは去年の修学旅行が今年になってよかったと本当に思う。修学旅行が終わった私たち二年生は卒業式の準備と講義決めが待っている。「彩那はどの講義を受けるか決めてる?」私が彩那に質問するといつもの元気が嘘のように小さな声で答えた。「……保育士」その光景を見て私は彩那のことを何も知らないのではと大きな不安に押しつぶされそうになった。「……彩那?」「ごめんね、心配させたよね。夢を口に出すのが怖いの……叶わなかったらって考えたらやっぱり怖くて、失望したでしょ」「失望なんてしない!! どんな彩那でも彩那は彩那だよ、私にそう言ってくれたでしょ。私本当に嬉しかったんだよ、少しは自分を認めてもいいんじゃないかってそう思えるぐらい。お願いだから彩那一人で抱え込まないで私にも抱えさせてよ……恋人でしょ私たち」今は周りにどう思われるかより彩那に安心してほしい、その一心で言葉をかけた。「ありがとう、でもちょっと一人にさせて」彩那はその日から一週間ほど一人で帰るようになった。何度誘っても断られてしまった。どうしてと考えているうちに思い出したことがある、それは彩那は一度も私に夢の話をしていないということだ。なぜ安易に聞いてしまったのか考えれば考えるほど沼にハマるように気持ちが沈んでしまう。咲美と灯凪ちゃんとは話す彩那を見て私は……やっぱり恋人失格だったのではないかと考えていたとき「もう見ていられません!!」と橘さんの声が聞こえてきた。「どうしたの橘さん、もしかして彩那を奪いにきたの?」「そんなわけないことくらいわかりますでしょ!! ここ最近の彩那様と白本さんときたら……とっとと仲直りすればよろしいではないですか。彩那様は白本さん、貴女を待っているのですよ。親衛隊の私たちでは心の奥底までは踏み込めません、恋人である貴女でないといけないのです。必要であれば私たち親衛隊を利用して構いません……ですから彩那様の笑顔を取り戻していただけないでしょうか」橘さんは深々とお辞儀をして私に懇願してきた。私は戸惑っていると彩那との思い出が走馬灯のように駆け巡った。「橘さ
Last Updated: 2026-08-31
Chapter: 第十五話宣言した朝第十五話宣言した朝アラームが部屋中に鳴り響き目を覚ました私はすぐさま昨日の宿題を終わらせ朝のシャワーを浴びた。「……スッキリした」私がお風呂場から出ると、良い匂いがしたので周りを見ると昨日買った鮭おにぎりを食べている彩那の姿があった。その姿を見て思わず声をかけてしまった。「今おにぎりを食べて朝食を食べられるの?」「分からないけど、お腹すいちゃって」おにぎりを食べながらお腹を鳴らしている彩那を見て強くは言えなかった。「可愛い」リスのように口いっぱいに頬張る彩那を見て溢れた言葉を彩那は聞き逃さなかったようで、おにぎりを飲み込んですぐに私にハグをしてきた。「ちょっと彩那もうすぐ行かないと間に合わないよ!!」「もうちょっとだけ」抱きついてきた彩那から寝息が聞こえてきて私は焦って起こした。「……んん、それじゃあ行こっか」袖で目を擦っている彩那を見て愛おしくて仕方ないという思いでいっぱいになったが、それは恥ずかしくて口には出来なかった。そして朝食を食べるために一般のお客さんと同じエレベーターを使ってホールに向かった。エレベーターから出てからすぐにただでさえ空いたお腹がさらに空くような良い匂いが漂ってきた。私がお腹を鳴らすと彩那が喩え話をしてきた。「これって上手く言えないけどお腹空いてる時に飯テロの動画を見た時みたいなそういう時の状態みたいな感じしない?」なんとなく理解できたので、私は軽く頷いた。普段なら理解がなんとなくでも完璧に理解出来ましたみたいな雰囲気を出す。彩那相手になら少しは本心を出せるようになってきたことに私は安心感に近い感情を抱いた。「いつかはみんなにも本心で接したいな」「それでしたら私にもそう接してくれてもいいですよね白本さん」呟いてしまった言葉を後ろにいた橘さんに聞かれてしまい私はものすごく焦り戸惑っていた。「愛海は穂乃果(ほのか)ちゃんにしっかり本心で接してるよ」彩那が私を庇って答えてくれた。だけどそれだけではダメだと……私は勇気を奮い起こして橘さんに説明した。「そういうことだったらそう考えてもおかしくはないわよね。……話すの相当勇気が必要だったでしょ、話してくれてありがとう」橘さんに少しなら心を開いてもいい……のかも。「まあ彩那様を幸せに出来ないのでしたら私が奪いますけどね」「ちゃんと彩那のこと
Last Updated: 2026-08-31
Chapter: 第十四話大切な事第十四話大切な事「あれ二人こんなところでどした。というか穂乃果を見なかったか?」「さっきまで話してたんだけど、あそこの道で別れたんだ。その後は知らないかな」「そっか、ありがとな。……こりゃあ穂乃果を慰めないとだな」宮野くんはそう言って去っていった。その後私たちは先生とも遭遇した。「二人とも修学旅行楽しめてる?」私たちは大きく頷いた。先生は満面の笑みを浮かべて喜んだ。「二人とも散策するなら明日にしておいたほうがいいと思うわ」彩那がなんでと質問すると、どうやら晩御飯の時間が早まったらしくそのことを伝えて回っている最中だったとのこと。「分かりました。彩那と一緒に向かっておきます」晩御飯の時間が早まった理由はホールに着いた時にわかった。そこにいたのは今話題になっているお笑い芸人コンビのネオキシスターズだった。それを見たみんなは大騒ぎだった。「あの人たちって彩那の好きな……」「…………」彩那はフレーメン反応の猫みたいに驚いていた。「良かったね彩那」私にとって彩那に何回か見せてもらったことがある人たちという認識だけど、テレビで見た人たちが目の前にいるこの事実に結構驚いている。それ以上に驚いたのは谷崎先生の『先生が好きだから来てもらったよ』のこの言葉だった。それだけで呼べたって谷崎先生ってすごい人なのではと正直思ってしまった。ご飯を食べ終えてコントを見た私たちは部屋に戻った。「凄かったね愛海!! 写真撮っておけばよかった」彩那が悲しんでいるのを見て私は彩那の肩を叩き私の撮った写真と動画を見せた。「彩那はこういう時写真を撮り忘れることがあるから私が撮っておいた。今から送るよ」「……送らなくていいよ、だってそうしたら愛海と一緒に見れなくなるじゃん」「……そうだね」私のスマホで一緒に見るってなったら絶対顔がものすごく近いってこと分かって言ってるよね、彩那。「どうしたの愛海、顔が赤いよ。もしかして風邪!?」「大丈夫だよ。一緒に見てるところを想像したら照れてきただけだから」「そっか、照れちゃったんだ」「ニヤけないでよ、もう」彩那は私をからかいながらお風呂の準備を進めていた。「今日だけでいいから愛海も一緒に入らない?」「さすがにまだ恥ずかしい」でも学校行事でみんなで入ったりとかしたし、そう考えても……彩那と二人はまだ
Last Updated: 2026-08-31
Chapter: 第十三話二人だけの秘密第十三話二人だけの秘密「ちょっと白本さん、せっかく二人きりにしてあげたのにどうして私を呼ぶのよ!」「そのお礼なんだけど」私がそういうと橘さんは溜息を一つついて「そういうことなら彩那様の笑顔が見られれば十分よ。そういうことだから今回だけは白本さんに任せたからね、そこだけ理解してよね」そういって去っていった。「穂乃果ちゃん、ありがとねー!!」彩那がお礼を告げると橘さんはぺこりとお辞儀をした。「さて愛海どこから行く?」「そうだね、まるまる部屋って場所からにしようかな」よくわからない場所から先に行って楽しそうな場所を後で行けば後味が悪くはならないよね。まあそれも私的には彩那との思い出として残るから全然良いんだけどね。私が彩那と二人でいられること自体はすごく幸せだけど、私たち恋人らしいこと出来てない。分かっていてもやっぱり私でよかったのかと不安になる。私は部屋に向かう最中不安をなくすことを考えながら彩那と話していた。そしてまるまる部屋という場所がどういう場所なのかを理解した私は部屋に入ることを躊躇った。なぜならその部屋は『出されたお題の行動をしないと出られない部屋』だったからだ。私が躊躇っているとホテルスタッフに入れられてしまった。「お二人様ごゆっくりとお楽しみくださいね~」「えっ、ちょっと待っ……」ガシャン「楽しそうだしいいじゃん。ね、愛海」「……彩那がそう言うなら」部屋に入ってすぐのところには大きな白い箱があった。「ここに手を入れればいいのかな?」「多分。だから私が手を入れるよ」ガサゴソ「紙みたいなのが入ってる」私が手に掴んだものを取り出すとそれはお題が書いてある紙だった。「なんかこれって借り物競走みたいでドキドキするね」「……私は不安しかないよ」部屋には不安で苦笑いの私とワクワクの満面の笑みの彩那で希望と絶望が入り混じったような混沌とした空気が漂っていた。そしてお題はというと。「「濃厚なキッス!?」」「いやいやなにこれ、出ようよ彩那……えっ、本気なの」部屋から出ようとドアノブに触れたのだが。ガチャ……ガチャガチャ「開かない」「私は……してもいいけど、愛海は嫌なの?」「嫌ってわけじゃないけど」言ってもいいのかな、せっかくキスするなら良い雰囲気でしたいって。でも言って彩那に嫌われたらどうしよ
Last Updated: 2026-08-31
Chapter: 第十二話癒しの午後第十二話癒しの午後「ねえ愛海見て水族館だって行ってみようよ!!」「そんなに焦らないで彩那、先生に連絡してからにしないと……父さんみたいなのと出会わないとは限らないから。これ以上彩那に迷惑かけたくない」「別に迷惑ぐらいならかけてくれていいのに私は気にしないよ」「彩那はそうでも私は気にするの。それに私のせいでこれ以上彩那には傷ついてほしくないから」「私のせいとか言わないで」「でも……」「でもじゃない、このままだと話が終わりそうにないから入ろう愛海」彩那に連れられて私は水族館に入った。「見てみて顔ハメパネルだって一緒に写真撮ろうよ愛海」彩那はそう言って近くにいた人に写真を頼んでいた。「それではいきますよ笑って笑って、はいチーズ」カシャ「はい、写真いいの撮れたと思うよ、楽しんでね」撮ってくれた人にお礼を伝え私たちは水族館を回ることにした。「見てよ愛海オオグソクムシだって……写真では見たことあったけど、実際にみても本当ダンゴムシに似てて可愛いよね」「……私はうじゃうじゃの足と乗せた時のゾワゾワがちょっと無理(うん可愛いよね)」「逆になってるよ愛海」「私はエイが可愛いと思う」「分かる、ちょこんとした目と口とか可愛いよね」私と彩那は水族館を回った。四十五分ほど水族館を堪能した私たちが次に向かったのは水族館近くにあった猫カフェプチという場所だ。猫カフェに行くと言ったときから彩那がソワソワしてて可愛いと思ってしまった。私たちは猫カフェに行ったりお土産屋さんで咲美たちにお土産を買ったりホテルまでの時間を二人で楽しんだ。橘さんをはじめとする親衛隊の人たちの気配は感じなかったから、本当に二人きりにしてくれたんだ。あとでお礼を言っておかないといけないな。そしてホテルにて「必ず消灯時間を過ぎたら部屋から出ないこと。出たらキツ~いお仕置きが待ってるわよ~」「先生お仕置きってなんですか~」「正座って言いたいところだけど、校長先生に怒られちゃうから、先生の愚痴をずっと聞いてもらうわよ~」「先生それはただのご褒美です」「霧島くん嬉しいこと言ってくれるじゃない、ありがとね」「本心を言ったまでですから」「ほんと霧島くんって先生のこと好きだよね」「当然です。僕は先生を愛してますから」「何度も言ってるけど霧島くんと私は教師と生徒なのよ。…
Last Updated: 2026-08-31
Chapter: 第八十八話第八十八話僕はアルバムを置いた場所を思い出していると、全く別のことを思い出してしまった。『引っ越しても絶対に風香ちゃんのこと忘れないからね! 絶対……絶対にまた遊ぼうね!』『うん、絶対に遊ぼうね! 〇〇ちゃん!!』 思い出したはいいものの、顔や名前に軽いモヤがかかっているのが分かる。彼女の乗っている車に反射している私を見るに幼少期の思い出なんだろうけど、今はまだ分からないのがもどかしい。幼少期の思い出を少し思い出したというのは大きな進歩だということに違いない。引っ越した友人がいたというのなら、アルバムにもしかしたら載っている可能性もある。僕自身を知ることが咎にも……母さんにも繋がるのだから、妥協している暇はない。「朱莉、僕が物を触っている記憶を読めないかな?」「了解、私に任せてよ風香ちゃん!!」神妙な面持ちで僕の記憶を辿っている朱莉にトキメキを感じていた。「見つけたよ!! あのタンスの二段目の…………わっ、私の写真の下にあるよ。風香ちゃん、そんなに私の写真印刷してたんだね。恥ずかしくなっちゃうよ」「どこにいても朱莉を感じてたかったからっていうのもあるけど、魔法を使う時に役に立てようと思ってね。ごめん、こんな使い方して」朱莉は疑問符を浮かべながら僕に質問してきた。「あのさ風香ちゃん、今更になるんだけど私たちの使ってる感情って愛と恐怖だよね。ものすごくふわっとしてないかな?」「急にどうしたの?」「いやね、風香ちゃんの記憶見てて思ったんだけど、愛にしても恐怖にしても感じ方で強くなるんじゃないかなって」「たとえば、どんな感じ?」「私は基本的に風香ちゃんへの愛なのは知ってるでしょ、風香ちゃんは私を失う恐怖を基本的に使ってる。恐怖を使う風香ちゃんでもお義母さんの時は私を落としちゃうぐらい動揺して魔法すら使えなかった」確かにそうだ、あまり疑問に思っていなかったけど、感情の種類……というか感じ方で魔法は変わるのかもしれない。恐怖にしても、母さんに朱莉を紹介出来ないと感じた時や母さんを失うと感じた時は発動すらしなかった。朱莉を失った時は普段以上に魔法を発動することが出来た。だけど、一般人となるとそこまでの威力にはなっていない。けれど魔法を発動する材料として……今もこの録音を残している。「だよね、風香ちゃん。風香ちゃんが自分を知ること
Last Updated: 2026-10-23
Chapter: 閑話その26閑話その26「そんじゃあ、自己紹介からだな。私は三浦華だ。まあゆっくり教えていくから……だらけて聞いてくれ」これでも私は魔女会で講師を務めている。教えているのは第二条件だ。感情を増やす方法の増築を教えるのが、私のここでの仕事だ。「えーまず第一に、なんでもいいから趣味を増やせ」「あの先生、流石にそれは雑すぎませんか。魔法には私たちの命だって関わっているのですよ」「知ってるよ、だから趣味増やせって言ってんの。例えば食べることが趣味の少女がいたとしようじゃないか、食べ続けて運動をしなければどうなるかぐらいは想像出来るな」「はい、それは当然出来ますが……」「それで散歩が趣味として加わるとしよう、そうすれば運動でもストレスを発散することができるだろ」「ええ、それはまあ……ですが、運動の趣味に目覚めたとして食への関心が減ることも想定出来るのではないですか?」「そりゃあそうだ、その可能性だって当然ある。だが生きている以上私は美味しいものはいくらでも食べたいに決まってる」「私はって……本当にこの人が講師でいいのかな」生徒たちがすんごい不安がってんなぁ、まあ良いか最初だらけて聞けって言ってんだし。「それに幸せが一つあるだけでも人生を豊かにはするだろ、単純に考えれば増やせばより豊かになる……まあ増やしすぎて手が回らないなんてこともザラにあるがな」この顔、すんげぇ引いてんな。「みんな帰ろう、こんな人から聞いても良いことないよ」「帰るのは待て」私は教室を隔離の異空間へ転移させ生徒たちの逃げ場をなくした。「先生何をするのですか!!」「ここで帰して死なれても寝覚めが悪いんだよこっちだってな。それにお前らだって漫画やらなんやら色々読むんだろ」「……えぇ、それは読みますが、今関係ありますかそれ?」「あるに決まってんだろ。お前は何を読むんだ今すぐ教えろ」「何故ですか」「これは第二条件にも関係があるからだ。今から一方的に話すからだらけてろ。漫画の読むジャンルを増やすこと、それもすなわち感情を増やす方法の増築になる。ギャグ漫画とバトル漫画で得る感情が違うだろ。特にシリアスバトル漫画とかだと顕著だな。たとえばシリアスバトル漫画でギャグ漫画展開をするとしよう。前提として面白ければ私は構わないんだぞ。シリアスバトル漫画で突然ギャグをされてもいやこ
Last Updated: 2026-10-22
Chapter: 第八十七話第八十七話まず探すことにしたのは、僕の部屋だ。「風香ちゃんはどこにアルバム置いたとか覚えたりする? 私はねぇ、アルバムとかって結構置いた場所忘れるんだよね、あはは」「それならその時は僕も一緒に探そうかな?」顔をものすごく近づけながら喜ぶ朱莉に多少の戸惑いを出しつつ僕たちはアルバムを探し始めた。「見てみて風香ちゃん、私の名前が書いてあるノート見つけたよ!」セミを捕まえて親に見せる子供みたいな無邪気な笑顔で持ってきたものを見て僕は思わずむせた。「……あっ、朱莉ななななんでそれを見つけたの!?」そうそれは、僕が朱莉への想いを書き殴ったポエムみたいなものであり、欲望がダダ漏れのノートだ。正直言って黒歴史にしたいレベルに書いてるから……本人にだけは見られたくなかった代物なんだ!!「あっ、朱莉~そのノートを今すぐに渡してほしいなぁ……というか渡して!!」「そんなに言われたら中身が、気になっちゃうな~」「というか心を読んだんだから分かってるでしょ!! 恥ずかしいから返して!」「えっ、やだ。だって風香ちゃんの全部知りたいもん、私」即答する朱莉を見て……かっこいいと思ってしまった僕がいるんだ。「朱莉、読んで良いよ」真剣な顔で滑らせている朱莉の瞳に、引かれないか不安になりながら気持ちを紛らわすためにアルバム探しを再開させた。心を読まれるのと本音を見られるのは、僕にとって似て非なるものなんだ。パタンとノートを閉じる音に身体が反応してしまった。「言いづらいのは分かるけどこういうのはやっぱり伝えてほしいな。なんか私が応えないって思われてそうでちょっと悲しいよ」あれだけ信じてくれてないと感じるのが悲しいとか朱莉にのたまった僕が、朱莉を信じきれていないなんて悪い冗談にもほどがあるだろうが。「ねえ風香ちゃん、この『僕には朱莉がいればいい朱莉さえいてくれれば元の生活になんて戻れなくてもいい。朱莉に触れたい朱莉に会いたい…………』これって本気?」これ……やっぱり引かれるやつだ。書くんじゃなかった、朱莉に嫌われるぐらいなら死んだ方がマシだ。「私は本気かどうか聞いてるの、答えて」「本気だよ。引くでしょこんな……気持ち悪いこと書いてる僕なんて」「引くわけないでしょ、触れたいならいつでも触れて良いし会いたいなら今すぐにでも一緒に住めばいい。だから死んだ方が
Last Updated: 2026-10-20
Chapter: 第八十六話第八十六話今の僕たちだと届かない以前の問題だ。蹂躙されて終わるのが関の山というやつになってしまう。だけど、今回は咎により痛覚増幅魔法を覚えることができた。魔物の成仏には再生出来ないほど痛めつければ良い。ならばこの魔法を使えれば葬りやすくなる、香取雛を殺しやすくなったと捉えればこれほど喜ばしいことはない。……ダメだな、僕じゃなくなってきてる。このままだと朱莉にまた秋口さんと呼ばれてしまう。……そういえば、僕がこうなる理由を考えてみれば避けようがあるのではないだろうか?僕が考え始めた時に朱莉の意識が戻った。「……朱莉、おはよう」本当はこんな状態でおはようなんて言いたくはなかったな。「……おはよう、風香ちゃん」ジトっとした瞳で見つめてくる朱莉に求愛時に瞳の色が変化するオウギワシみたく興奮を覚えながらも平静を保っている僕を褒めてほしいぐらいだ。いや突然どうしたんだって話になるだろうと僕もそう思う。しかしだな、この可愛さには抗えないのだよ!もはやあの時と同じだとは思わない、なぜならばあの時は朱莉の可愛さではなく絶望を見ていたからだ。朱莉の絶望は正直カレーに入れた隠し味なのに隠しきれないほど濃厚な味わいを僕に与え彩りをくれるものだ。しかしだ、それは朱莉のこの可愛さがあってこその味わいというものだ「本当に可愛いよ朱莉、その表情をめちゃくちゃにしたい」無意識に口角が上がっていることを理解出来てしまうことに嫌気がさしてしまう。「風香ちゃん、良い方に考えてみようよ。前は絶望のことばかり絶望の表情ばかり考えたのに私のことを考えてくれるようになったんだよ」齧り付きたくなるほど熟したトマト色に染め上げられた朱莉を見ていると無性に襲いたくなってしまう。「そんな目を向けてくれるのも嬉しいけど、もう少しだけ獲物を見るような目は抑えてほしいかも。いつもみたいな好きな人を見るような目にしてほしいな、その方が私は嬉しいな」朱莉が獲物か、あながち間違いじゃないのかもしれないな。「……って何考えてんの僕!?」今の何なの、思考はおかしくなった時に似てるのに、なんか変態みたいなこと考えてなかった!?「ああああ朱莉、今のは忘れてほんとに……ほんっっっとうに忘れて!!」もしかしておかしくなるのにパターンでもあるの!……でっ、でもさっきみたいな方がもしかして
Last Updated: 2026-10-17
Chapter: 閑話その25閑話その25「今村小雪(いまむらこゆき)様、いつも応援しております!!」今日もファンの声援が私の耳に入る。「ありがとう、君たちの応援のおかげで頑張れるよ」こんなにファンが応援してくれるようになったのも、指名してくれた秋口先生のおかげ。もっと感謝しないと申し訳が立たないんだよね。「さて、人影はないね。トゥンティンプルプルピリピリポー」即興とはいえさすがに変な掛け声だったかもと多少の後悔を交えながら魔法を使った。役に入るために実際に魔葬少女になった。「……うわぁ、転移する場所間違えたぁぁあ!!」ドサッ「痛っててて……ごめんなさいごめんなさい!!」どうしよう誰かを踏んづけちゃった。「だっ、大丈夫ですから…………ってその声もしかして小雪さんですか!?」この人よく顔を踏まれながらここまで話せるなぁと感心しているとあることに気づいた。「貴女、人間じゃないでしょ」この人から感じるのは魔物特有の空気しかも隠す気を感じないのがタチが悪い。魔物と人間の区別がここまで上手く出来るのは私の魔法のおかげでもあるから、なんとも言えないんだけどね。「魔物だけど、ファンなんです!! ……まさか踏んでもらえるなんて至高の喜びです」「……気持ち悪い」私の口が滑ると、この人は鼻息を荒くし始めた。さすがにこれ以上は関わったら明日の試写会に響きそうだからやめておこう。「私はそろそろ帰るね。今日のことは忘れてほしいな」ファンだと言ってくれたこの人が忘れるわけがないことぐらい想像も出来たはずなのに、私の配慮が足りなかったと思い知らされたよ。「もっと、もっと踏んで……私はこのためだけに生きてるんですから踏んで……踏んでください!!」足を掴んで離そうとしないのはさすがにいただけない。「そういうのはしちゃダメでしょ。離さないと消しちゃうよ」困り顔で伝えたのが悪かったのか、余計に離してくれなかった。「明日の試写会に来てくれるなら、今のことをなかったことに出来るからファンなら離してほしいな」「ファンだから、もっと踏まれたい!! こんなこともう二度とないんだから!!」推してくれるのは嬉しいけど、以前にもこういう人がいたけど、付き纏ってくるようになったから……ちょっと怖い。この人には悪いけど、私の安寧のためにいなかったことにさせて。「ハピリルハピリルミリシーラ
Last Updated: 2026-10-15
Chapter: 第八十五話第八十五話咎=父さんだということが確認出来ただけで上出来とするしかない。だけどここで引き下がったら、また朱莉が殺される……それだけは絶対に許すわけにはいかないんだ!!「風香ちゃん、行くよ!!」朱莉の声に合わせて僕は心霊魔法を使用した。「「即興合体魔法、呪血紅塵(じゅけつこうじゅ)!!」」ここまで朱莉に合わせることが出来るのが咎のおかげなのは正直癪だけどここだけは感謝するしかない。僕と朱莉が魔法を使った直後、異様な程に咎の表情は歪んだ。「そこまで感謝するならもっと浸らせてもらおうじゃないか風香!!」咎の言葉が耳に入った直後身体が動かなくなった。この感覚は愛海さんの支配を受けた時と同じ……いやそれ以上じゃないか。「思考するのは許してるからこの間に巡らせるといいよ。それとこれも送るよ」限りなく小さな吐息の音と同時に飾り時計が停止した。水本姉妹の支配と時間停止を同時になんて、次元が違いすぎるじゃないか。「この程度で言葉を失うとは興醒めもいいところだけれど、初めての体験ならば仕方ないか。それならこれをもっと送るよ」突如場所が変わったかと思ったが、何処なのかは一番僕が理解出来た。なぜなら、移動させられたのが僕の狂卒式の体育館だからだ。会話をする暇を与えず咎は畳み掛けてきた。「これが風香が殺したがっている荒川咎の力の一端だよ。よく観察し学び、そして私をさらに愉悦に浸らせてくれ!!」咎は屈辱的にも、朱莉が試験の時の愛魔法の応用を使ってきた。「どうだい風香、愛しの愛しの朱莉の魔法を本人以上に使いこなされる気分は!」『答えるはずがないだろうが!』当然の如く僕が断ると咎は支配の魔法を行使した。「それは残念だ。"風香よ気分を吐け"」動かないでくれ、頼むから……これだけは嫌なんだ。「朱莉の魔法は朱莉だけの特別なんだから最悪の気分で殺意が高まりました」ごめん朱莉、僕が不甲斐ないばかりにこんな思いさせて……本当にごめん。「風香にされたら喜ぶことを教えろ朱莉」朱莉が答えてくれたのは積極的に僕にしてくれることばかりだった。「行為に至るまで進んでいたとはな。絶望した際の表情を想像するだけで、胸の高鳴りが抑えられないじゃないか」僕にされたいことを自分からしてくれてたなんて……僕って幸せ者なんだな。なんで咎に教えられないといけないんだろうと思
Last Updated: 2026-10-11
Chapter: 最終話私たちは騙されない最終話私たちは騙されない魔龍王ヴォルフガングを討伐した私たちは王都に帰還した。王都にて私たちは宿を取った。部屋は当然ジャンケンで決めることになった。その結果私とスミカが同室になった。「ねえ、エル……私のこと愛してるって言ってくれたでしょ、夢みたいなんだけど本当? もし私がチューとかしたいって言ったらしてくれる? やっ、やっぱりなんでもない」チュッ「私、本当にスミカを愛してるんだよ、疑わないでほしいな。証明するためなら…………だってするよ」「きょ、今日は恥ずかしいからまた後日お願いします」「なんで敬語なの?」「「あはははは」」「ルミエルたち楽しそうですね」「ミリア今は俺だけを見ろ」「そそそそ、それはまた今度で」「ミリアがそういうなら」翌日私たちは王より勲章を授与された。式典が終わりみんなと別れを告げたことで戦いが終わったことを思い知らされる。「ねえ、戦いが終わったということはみんな別々の道を歩くわけだよね、元に戻るだけっていうのは分かるんだけど、やっぱり寂しい」「大丈夫だよエル、私たちはずっと一緒だよ。それに別々って言ってもまた会えるよ!!」「そうだぞ。それに元に戻るだけってそんなわけないだろ、そもそもルミエルは何を使ってヴォルフガングに勝ったんだよ」「みんなの想いとか、絆とか……!!」「だろ、ルミエルと俺たちには絆があるんだからよ、それを無かったことには誰にも出来ねえよ」「ロッテの言う通りですよ……」ミリアが話している最中にエリエルが叫びながら走ってきた、ルーマンを連れて。「四人とも実験体になって~!!」「エリー、お前何言ってんだよ!!」エリエルが言ったのは同性同士でも子供が作れるようにするための実験に付き合ってくれというものだった。私たちが了承するとエリエルは他の人にも頼むと叫んだ。「四人のあとはシノンとサジにも頼むから、それじゃあね~!!」それから私とスミカは夏休みが終わり、学園に通いながら私、スミカ、それにミリアとシャルロッテの四人で様々な依頼を受けながらエリエルの実験に付き合った。三年後学園を卒業し、私とスミカは両家に挨拶を済ませ結婚した。そしてその一年後エリエルの実験の結果私とスミカに一人の子供が出来た。子供には私とスミカから名前をとりエルーカと名付けた。子供が出来たと知らせた時のお父様た
Last Updated: 2026-07-27
Chapter: 第九十九話最終決戦その三第九十九話最終決戦その三魔物を倒せたけど、私の今の疲労した状態で、ヴォルフガングを倒せるのかな……ううん、倒せるかじゃない、倒すんだ!みんなの頑張りを無駄にしないためにも、何より……昔みたいにお祖母様と些細なことでもいいから話したい。「あのさ、ミリア……封印の壺のことでテシウスから何か聞いてないの?」「何かとは? ……もしかして、聞いてきましょうか?」「いやいいの、私が自分で聞くから」私は最悪の場合封印の壺にヴォルフガングだけ封印出来ないかと考えた。「へぇ、俺だけ封印しようとは面白いことを考える」「今すぐ避けろルミエル!!」「そう焦るなよお前ら」ヴォルフガングはアリス、ルイ、グレイの攻撃を受け止めた。転移の腕輪での転移は成功したみたいだけど、以前会った時と雰囲気がまるで違う。「ルミエル、お前に一つ教えてやる。お前のおばあちゃんの最期の願いで自らここに来てやったんだ」「エル、耳を貸しちゃダメ!!」「私は大丈夫だよスミカ、ありがとう」私は確実に奥義を当てられるように準備しておかないと。アリスたちの話の通りならヴォルフガングを孤立させるほど強くなってしまう。そして弱点が絆や愛であり、そのための絆と愛を使った奥義だ。「やはり一人が一番力が発揮出来て楽だ。これほどの力が出せるのだから」「さて始めるか……シノン、お前の新しい技を使え!!」「このために覚えましたからね、お任せください」シノンが覚えたのは洗脳だ。だが、自らより強い者には通じない。その洗脳でゾーマが操る魔物や死人に一時的にヴォルフガングに絆を感じさせ単純だが確実な方法で弱体化させる。「その程度の攻撃で俺が倒せるわけがないだろう。お前らの力はそんなものか」「私とルミエルで皆さんに支援魔法を使います!!」スミカたちの武器には再生封じの毒を塗ってある。少しずつでもダメージを与え続ける。この戦いには負けるわけにはいかない、みんなで楽しく話す明日を絶対に迎えるために。弱体化が充分に効いたのは、支援魔法を使い始めた約十分後だった。「なぜだ、あれだけ殺したというのに力が充分に出ないだと。お前たち何かやったな」「はぁ、はぁ、弱体化が効いても相変わらずなんという強さですか」「前より強いな、それでこそ魔王だ」「…………前回封印せずに殺しておけばこうはならなかった」「そ
Last Updated: 2026-07-27
Chapter: 第九十八話最終決戦その二第九十八話最終決戦その二「おいノアとやら、あの魔力の中心にヴォルフガングがいるって本気で思ってるのか」「そう思ってるから向かってるんじゃん」「ノラとやら姉妹なら止めてくれ」「止めなくてもいい」「本当にお前らなんなんだ!! あぁもうめんどくさいこと押し付けやがって!!」私とノアはヴォルフガングがいることが分かり一番魔力の濃い場所を目指している。「お姉ちゃんたち、何チンタラやってんだよ。全ての元凶がいんだよ……アイツさえいなけりゃ兄さんが殺されることはなかったんだよ」「落ち着けツバキ、ヴォルフガングを殺したいのは分かるがそう焦るな」「ツバキちゃん、ヴォルフガングを見つけているから私たちは走ってるんだよ」見つけた理由は私たち分裂体が、三体も殺されたからなんだけどね。「だったらとっとと言えや」「何度も言っているだろ、イライラしたからって口を悪くするなって」「そういや兄さんを操ったアイツらは今どうなったんだよ」「また無視か……それ結構堪えるんだぞ」私たちは襲ってくる魔物たちを即座に地に落とし、話しながら走っている。「もうガンちゃんが毒の排除をすぐに選ばず支部を潰してるから見つかっちゃったよ(今すぐ切り捨てよう、可燃物)我慢ならんから言うけどガンちゃん本当に邪魔だから、私から離れてくれ、一緒にいてももうメリットが何一つない」私たちが見たのは、ヴォルフガングと女が分離し二つになろうとする瞬間だった。「面白いじゃん、ガンちゃん」だが、それは失敗した。「お前みたいなやつがどれだけいたと思っている、対策をしないわけがないだろ。お前は俺に喰われて永遠に眠っておけ。さて邪魔者もいなくなったことだ、存分に楽しもうではないか……誰から俺を楽しませてくれるんだ? そうそう、確か転移の腕輪だったな、これは……これを使って転移でもさせるつもりだった訳だろミドラよ、聞いておるのだろう。まあ良いこの辺りは魔物共にでも任せて本命に向かうとするか」「そう簡単に逃すわけねぇだろ!!」「待てツバキ突っ込むな!!」「邪魔をするな小娘……なっ、身体が……」「ルミエルを……私が、愛するんだ……から、"転移"」「喰われてもなお意識があるのはお前が初めてだ。……最期のお前の願い叶えてやろう」シュン「おい、アイツはどこに消えた、とっとと教えろ!!」「あの腕輪を使って
Last Updated: 2026-07-27
Chapter: 第九十七話最終決戦その一第九十七話最終決戦その一「久しぶりだなシノン、貴様がここに居るということはボスに楯突いたってことでいいんだな?」「そういうことで構いません。というか私はボスより組織をクビになっていることはご存知でしょう?」「当然知っているに決まっているだろ」「まあ貴方のことですから私たちがなんと言おうと殺しにくるのでしょう?」「当然だろ。たとえ貴様がクビだろうが自らの意思で辞めたんだろうがボスを裏切ったことに変わりないのだからな!」「本当貴方は極端ですね。一つお聞きしますが、貴方の他にはどなたが生き残っているのですか?」「今から死ぬ貴様に話したところで何もないだろうが、冥土の土産だ、よく聞け! まずは……」グチャバタン「もう、敵に話したら駄目でしょ。ハロー、シノンちゃん幹部会議以来だね。ウチのバカはおしゃべりでごめんね。それと聞けなくて残念だったね」「殺す必要はなかったはずです。なぜ……とは言いません。敵に情報を伝える行為は裏切りも同然、粛清されてもおかしくありませんから」「嘘ついたね。本当はなんで僕が殺したのか問いたいんでしょ、分かっちゃうんだな〜僕にはさ」「でしたら、この情報が嘘かどうかも分かりますか?」「そんなの分かるに決まってるじゃん、僕を誰だと思ってんの? 僕はインジェンス・アムジィス様だぞ、僕の前では全ての嘘は無意味になるんだ。ホラホラ話してみろよシノンちゃん」「それでは話しますね。コホン、ボスは自らの部下を殺すつもりという情報を手に入れましてね。さあ、自慢の能力で見抜いてください」「ふんっ、こんなの能力使わなくても嘘って分かるね。僕の尊敬するボスが裏切ってもない僕達を殺す理由がないだろ。まあ能力で見抜けっていうなら仕方ないね。……違う、こんなの嘘だ嘘に決まってる……ボスが僕達を、そうか今日は調子が悪いのかきっとそうに違いない」「インジェンス副隊長、おそらくシノン隊長の仰っていることは事実かと思われます」「黙れ!! 僕はボスに聞くまで信じないからな」「申し訳ありませんシノン隊長ウチの副隊長が失礼な態度を……」「貴様は黙れ。おい、シノンちゃん、畜生どもの大群が来ているぞ。とっとと指示を出せ」「あの、インジェンスさんは味方なのですか、敵なのですか?」「敵に決まっているだろ!!」「副隊長曰く『魔物が大量にきたから今は休戦に決まっ
Last Updated: 2026-07-27
Chapter: 第九十六話最終決戦前会議第九十六話最終決戦前会議私たちはミドラ族長と共に魔龍王ヴォルフガングを討伐するための作戦会議を行うことになった。「これより作戦会議を行う。まずヴォルフガングは現在王都に向かっている。毒のことに感づいて行動している前提で話を進める。エリエルたち研究班をジンたちと騎士団に護衛させてある、そこにシノンたちが集めた裏社会の人間を王都に着き次第アガルタの異空間都市(ルパラディシュタット)から出す。その中から上位二十人を研究班の護衛として向かわせる。シノンは全体の指揮を頼む。サジとヒョウは研究班の護衛だ」「俺達だって兄貴と一緒がいい!!」「そこも考慮している。アカネとヨシカゲは王都の住人の護衛を任せる」「「任せてください!!」」「ノア、ノラは分裂をして王都を含めた各都市の護衛兼索敵を任せる、龍谷峠のやつらにも行かせてある、協力してくれ。そしてヴォルフガングを見つけ次第転移の腕輪で赤霊荒野(せきれいこうや)に飛んでくれ。シャルロッテ、ミリア、ファジリス、テシウスはそこを強襲する。ルミエルとスミカが奥義の準備中は俺とアカネ、グレイ、ルイで二人を護る」「あの〜私たちは?」「リリー、ノコノコ、クリボーはこの壺を護ってほしい。この壺はルミエルたちが失敗したときのための保険の封印の壺だ」「せっ、責任重大ですね」「安心しろよリリー、オレたちなら絶対出来る!」「そうですよリリーさん。私たちなら出来ますよ」「ですね、私たち三人揃えばどんなことでも出来る……そんな気にさえなれます!」「全員に転移の腕輪を渡しておく。それじゃあ作戦開始だ!!」私たちは渡された転移の腕輪というもので各々の作戦場所に転移した。「相変わらず変わってねぇなここも」「そんなことありませんよ、ほら以前にはなかった木があるでしょ」「…………グレイはバカだから気づかなかったんだよきっと」「バカとは何だよバカとは!!」緊張感がないのは駄目なんだろうけど、気持ち的に軽くなるって思っちゃう私がいる。「エル……本当に大丈夫かな? 不安になってくるんだけど」「私も不安だけどアリスたちが前にヴォルフガングを倒してるんだから大丈夫だよ……多分」「おいそこ聞こえてんぞ!! つーか、いつもどおりが一番なんだよ。変に気負うな、気負ったところで結果は変わりゃしないんだからよ。だからいつもどおりふざけてんだよ」
Last Updated: 2026-07-27
Chapter: 第九十五話魔王討伐の奥義第九十五話魔王討伐の奥義ファジリスの素体を取りにエデンの園本部へファジリスと私は向かった。「気をつけて進めよ、ルミエル。いつボスと遭遇するか分からねぇんだから」「ドジ踏まないよう気をつけるよ」なんだか、腕輪から小さな光の粒が見えるけど、気のせいかな?「止まれルミエル、誰か来る」腕輪から出た光の粒は動き始めた。「なんですかこの光の粒は」この声はミリアだ!!その後姿が見えたのはミリアとテシウスだった。「テシウス無事で良かった…………まあ信じていたがな」「心配させてすまないなファジー。(ルミエルに何があった。魔力量が尋常じゃなく増えている……これなら、あの技も使える)」「テシウス……母さんが腕輪を託して死んだ」「そう……か、ならルミエルには教えなければならないな」「今のルミエルなら使えるはずだ。私が保証する」「ルミエル、この後ヴォルフガングを倒す技を教える。それまでに相方を決めておけ」「相方ってどういうこと?」「この技が仲間の絆と一人の愛があって初めて使える技だからだ」「テシウスはなんでヴォルフガングを倒す技を知ってるのに使わなかったの」「使えなかったんだ、俺にもファジーにも」もしかして龍国峠でのミドラ族長の試練が恋愛関係だったのって……。私がそう考えていると族長の声が聞こえてきた。「それも当然あるが、ただ単に恋愛話が好きだった割合の方が大きい。それと皆、コロンドの森に集まってくれ。作戦を立てる」「ルミエル、道中でやり方を教える。合流するまでに相手を決めておけ」「……もう決まってるから安心して」そしてルーマンとエリエル以外の私たちは合流した。「「無事で良かったです兄貴〜!!」」「お前たちもなアカネ、ヨシカゲ……本当に無事で良かった」「ファジリスさん、テシウスさん貴方達がボスを裏切るとは意外でしたね」「私は副隊長としてファジリス様に従っているだけですので」「今更猫被る必要ないだろ」「それはそうですね。……言っておくけど、私がファジーに従ってるのは本当だからな。それにボスを倒すなら奥義的なやつが必要だろ。私とファジーはそれを教えられるからな」「シノンさん、信用していいんすか?」「ファジリスさんがここに居ることが信用する理由には充分ですよサジ」「そうっすか。なら俺はシノンを信じるっす」「ケーキ美味しいですね
Last Updated: 2026-07-27