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Novels by るな

婚約破棄されたら、イケメン御曹司に拾われました

婚約破棄されたら、イケメン御曹司に拾われました

ジュエリーデザイナーの桜井知英は、大学時代からの恋人の的場優一と先日婚約をし、幸せ絶頂な日々を過ごしていた。しかし、その幸せは優一の裏切りにより見るも無惨に崩れ去った。 幸せの絶頂から絶望へと突き落とされた知英は、行くあてもなく街を彷徨った。そんな時、突然の雨が降りだし、傘を持っていない知英は目の前のホテルに駆け込んだ。この場所で知英の運命を変える人物と出会うとも知らずに…… 裏切りから始まるシンデレラストーリー開幕!
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Chapter: 始まりの場所
私は桐生の運転で、授賞式の会場のホテルに到着した。偶然にも、このホテルは私と桐生の出会いの場でもあった。まだ数ヶ月前の事なのに、もう随分と前の出来事のような気がする。あの雨の日、偶然、駆け込んだこのホテルで桐生と出会った。私の運命を変えた場所で、今度は、私の尊厳を取り戻す。なんという巡り合わせなのだろう。 「俺たちの始まりの場所だね」 「そうね」 桐生も同じことを考えていたようだ。私は桐生の横顔を覗きみた。相変わらず、整った造形に見惚れてしまった。 「また俺の事見てたでしょ?」 「見てない/」 「ふーん」 「なに?/」 すると、桐生は私の右手の甲にそっとキスをした。 「素直じゃないから」 「みんなが見てる//」 「だからした。今日の知英ちゃんは綺麗すぎるから。変な虫がつかないように」 「私に寄ってくる人なんて居ないわ」 「ほんと、知英ちゃんは分かってない。だから、俺から離れないで。分かった?」 有無を言わせぬ桐生の視線に、私は頷いた。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 会場に足を踏み入れると、別世界のような煌びやかな景色が広がっていた。招待客は、私でも知っているような著名人ばかりだ。みな、各々に素敵に着飾っていた。 すると、一人の男性が桐生に声をかけた。 「桐生社長。ご無沙汰しております」 「ご無沙汰しております。斎藤社長」 齋藤と呼ばれた男性は、私の存在に気づくと桐生に問いかけた。 「お隣の美しい女性は、もしや、桐生社長の?」 「そうです。私の恋人です」 「おお!それはめでたい。桐生財閥も安泰ですな」 「彼女次第ですけどね」 「またまた、桐生社長。あなたなら何でも手に入るでしょう」 齋藤の一言に、桐生の表情が変わった。私はこの顔を知っている。齋藤は桐生の逆鱗に触れたのだ。 「彼女を力で手に入れようとは思わない。これ以上、彼女を侮辱するなら、どうなるか分かっているか?」 「は、はい……申し訳ございませんでした」 「分かったならここから出ていけ」 桐生の一言で、齋藤は逃げるように会場から出て行った。私は未だに険しい表情をしている桐生に言った。 「翼さん、ありがとう。でも、私のせいで仕事に支障が出たりしない?」 「大丈夫だよ。彼の
Last Updated: 2026-09-06
Chapter: 私の尊厳
「ここって……雑誌で見たわ。日本一、予約が取れない美容室だって」「それじゃあ、行こうか」桐生は店の前で、呆然と立ち尽くす私の手を握った。「いらっしゃいませ。桐生様。お待ちしておりました。こちらへどうぞ」私と桐生は、案内されたVIPルームへと向かった。そこには、一人の黒髪の男性が立っていた。「ご無沙汰しております。桐生様」「忙しい中、わるいな。湊くん」「とんでもございません。今日はどのようなご用件でしょうか?」「俺の恋人のヘアメイクを頼みたい。会場一、華やかになるように」私は桐生と湊の会話を、なるべく冷静を装って聞いていた。湊といえば、美容師界のプリンスだ。その甘いルックスだけではなく、確かな技術力にも定評があり、大物芸能人や人気モデルまでもが彼に担当して欲しいと希望している。その、湊が私のヘアメイクを担当するのか!?私は、動揺せずにはいられなかった。「承知しました。こちらにお座りください」私は湊に呼ばれ、ゆっくりと歩き出した。そもそも、桐生と湊が知り合いだということにも驚きだ。御曹司の交流関係には毎回脱帽する。「よろしくお願いします」「こちらこそ、よろしくお願いいたします。お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」「桜井知英と申します」「桜井様ですね。桐生様ととてもお似合いです。二人とも美男美女だから」お世辞だと分かっていても、嬉しくて顔がにやけてしまう。「ヘアメイクのご希望はありますか?」「おまかせでお願いします」「ドレスのお色はなんですか?」「白です」「承知しました」それを聞いた湊の表情が一変した。先程のにこやかな表情から、プロの表情に変わった。それから湊は、私の肌にメイクを施していった。その動きに一切の迷いは無かった。「桜井様、綺麗な髪ですね。緩やかな巻き髪なんでどうでしょう?」「ぜひ、お願いします」ヘアメイクをしている間、桐生はソファーに座り、ずっと私を見ていた。鏡越しに目が合うと恥ずかしさが募った。「完成しました。どうでしょうか?」「わぁ!すごい!私じゃないみたい」すると、桐生が私の元へ歩いてきた。「うん。今日もすごく綺麗だ。ドレスに着替えておいで」「はい。行ってきます」私は湊に案内され、更衣室にやって来た。そこで、湊からドレスを受け取り、早速、着替えた。湊のヘアメイクは完璧だった。いつもの何倍も
Last Updated: 2026-09-05
Chapter: 逆転への招待状
俺は隣で眠る知英の寝顔を眺めた。知英の平穏を脅かす者は、誰であっても許さない。今日も知英が笑顔で過ごせるように。俺は知英の頭をそっと撫でた。今日は知英にとって、間違いなく人生の転機になるだろう。彼女を陥れた者を彼女自身の手で葬り去るのだ。その為なら俺は、どんな事でもしよう。知英の未来に明るい光を灯せるのならば、この手を汚しても構わない。俺は知英を起こさないように、そっとベッドから起き上がった。そして、床に散らばっている服の中からスーツのジャケットを拾った。その内ポケットには、近藤からの授賞式の招待状が入っていた。遂に、この日が来た。知英のデザインを奪った奴に復讐できる。今は喜びの絶頂にいるであろう安東の顔が絶望で歪む姿を早く見たい。知英を苦しめた罪は重いことを、その身に思い知らせてやる。「招待状?」振り向くと、バスローブ姿の知英が立っていた。「そう。コンペの授賞式が今夜あるから。近藤が送ってきた」「近藤社長が?」「知英ちゃん、奪われたものを取り返しにいかない?」「まさか……そのために?」「安心して。近藤は味方だ。知英ちゃんの大事な大舞台に必要な会場と観客を用意してくれた」俺は知英がジュエリーデザイナーとして認められ、その才能が世界に羽ばたくことを祈っている。その為ならば、これくらいのこと朝飯前だ。「ありがとう。必ず、デザインを取り戻して、翼さんにプレゼントする」「そうと決まれば、主役に相応しいドレスを買いに行こうか」「そうね。着飾って、先輩を驚かせなくちゃ」知英は珍しく、無邪気な笑顔を俺に向けた。 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄「これと、これと、これも。それから……靴はこれとこれ。あとはバッグも……」「翼さん、さすがに買いすぎよ」「どれも知英ちゃんに似合うから。ドレスは何着あっても困らないし。だからこのドレスも」俺の指示で、店員たちが次々と知英の元に商品を運んだ。「知英ちゃん、他に欲しいものは?」「もう十分過ぎるわ。ありがとう」「分かった。これで支払いを」俺は店員を呼び止め、クレジットカードを渡した。「翼さん、いつも買ってもらってばっかりだわ」「いいんだよ。俺がしたくてしてるんだから」俺は知英に微笑んだ。今日のドレスは知英にとっての戦闘服だ。闘いに勝つために必要なものを知英に買い与えただけだ。あと少し
Last Updated: 2026-09-04
Chapter: ずるい人
「ちょっと……翼さん、待って//」桐生はホテルの部屋に入るなり、私の静止も聞かず、私を壁に追いつめた。桐生の整った顔が私に近づいてくる。私は抗う術を忘れたかのように桐生を見つめた。「ほんとに待って欲しいの?」「ずるい……」「言わないと分からない」「分かってるくせに//」すぐ傍に桐生は居るのに、触れてくれない。それがもどかしくて堪らなかった。「知英ちゃん、顔真っ赤」「翼さんのせいだから///」「俺?まだ何もしてないけど」すると、桐生は私の唇に触れるか触れないかの所まで顔を近づけた。しかし、寸前の所で桐生は私から顔を逸らした。「どうしたの?」「今日の翼さんは意地悪だ」 「嫌い?」「嫌いになれないの知ってるでしょ」私は背伸びをし、桐生の首に両腕を回した。そして、自ら桐生の唇にキスをした。いつから私はこんなにも欲望をさらけ出すようになったのだろう。「こんな私は嫌い?」私は桐生の目を見つめた。「ううん、好き」「んん……//翼さん、苦しっ」私は桐生のキスに応えることに必死だった。桐生はキスが上手い。容赦なく桐生の舌が私の口内に侵入してくる。それ故、気を抜くと腰から砕け落ちそうになる。「煽ったのは、知英ちゃんでしょ?」桐生は私を軽々と抱きかかえ、ベッドまで運んだ。私に覆い被さる桐生の胸元から、鍛え上げられた素肌が見えた。桐生は私の服のボタンを慣れた手つきで外し、自らも服を脱ぎ捨てた。ずっと見ていたいほど、桐生はいい体をしている。私は思わず桐生に手を伸ばした。「触りたいの?」私は無言で頷いた。すると、桐生は私を起き上がらせ、腕を掴んだ。「いいよ。触っても」私を見下ろす桐生の視線が、更に私を興奮させた。私は思わず生唾を飲んだ。そして、そっと撫でるように桐生の上半身に触れた。「知英ちゃん、満足した?」「まだ……」私のこの言葉を合図に、桐生は何度も私の唇にキスをした。唇が腫れるのではないかというくらいお互いの唇を貪った。どんなに触れても足りない。桐生をもっと感じたい。誰が何と言おうと、桐生は私のものだ。そして、私は桐生のもの。だから私は桐生の身体に、私の痕跡を刻みつける。私は桐生の背中に爪を立て、彼の首筋に吸い付いた。数日もすれば痕は消えてしまう。それでも今夜は、証が欲しい気分なのだ。「知英ちゃん……はぁ……」桐生の吐息が
Last Updated: 2026-09-03
Chapter: 試される想い
「知英ちゃん、そろそろ帰ろうか」「そうね」私と桐生が帰り支度を終えた時、彼のスマートフォンが鳴った。「もしもし」「翼。俺だけどさっき、日本に着いてさ」「はぁ!?」私は桐生の大きな声に思わず驚いた。「レオ!帰国するなら事前に連絡しろって毎回言ってるだろ」どうやら電話の相手は、〝レオ〟というらしい。私は桐生の隣で、通話が終わるのを静かに待った。「分かったよ。いつものホテルのバーな。ああ。また後で」桐生は通話を切った。「知英ちゃん、今夜なんだけど……」「私の事なら気にせず行ってきて?」「いや、そうじゃなくて、知英ちゃんも一緒に来て欲しいんだ」「でも、私は知らない人でしょ?お友達と積もる話もあるだろうから」「ううん、知英ちゃんは知ってるはずだよ。世界的ジュエリーデザイナーのレオ・ベルバトフだから」「レオって、あのレオ様だったの!?」私は思わず大きな声を出して驚いた。ジュエリーデザイナーを志す者で、知らない人は居ないであろう。レオの生み出すデザインは、どれも斬新で人の目を惹く。私もレオのデザインに魅了されたひとりだ。「留学先で意気投合してさ。それからの腐れ縁なんだ」「そうだったのね」「レオに知英ちゃんを紹介したいんだ。俺に本気の恋人が出来たら紹介するって前から話しててさ。もちろん、知英ちゃんが嫌でなければだけど」「嫌なわけないわ。嬉しい。ありがとう」すると、桐生は私の顔をじっと見つめた。「翼さん、どうしたの?」「ううん、なんでもない」「そう。ならいいのだけど」私は桐生の表情に一抹の違和感を抱えながらも、レオの待つバーへと急いだ。 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄「レオ、待たせたな」「おお!翼、来たか!って、その方は?」今、私の目の前に、レオ・ベルバトフが居る。メディアや雑誌でしか拝見したことがない雲の上の存在の彼が、私に話しかけている。これは現実なのだろうか?「初めまして、桜井知英と申します」「桜井……あ!!希望の石!君だったのか」「え?私の作品をご存知なのですか?」「ああ。翼が絶賛しててね。俺に何度も見せるからさ」「レオ。それ以上は」「だって、本当の事だろ?」レオと話す桐生は、いつもと違い肩の力が抜けているように見えた。桐生にとってレオは、気心が知れた相手なのだろう。「ところで、桜井さん
Last Updated: 2026-09-02
Chapter: 分かっていても
コンコンコン 「はい」 「芹沢です」 桐生はノックをした相手が芹沢だと分かると、自ら社長室のドアを開けた。 「お待たせしました。保冷剤です」 「芹沢さん、ありがとうございます」 「お気になさらず。桜井様は桐生社長にとって大切な方ですので」 芹沢は私と桐生の顔を交互に見比べた。私は芹沢に動揺を悟られまいと、できるだけ平然を装った。 「知英ちゃん、それ貸して。俺がやる」 「ありがとう」 私は保冷剤を桐生に手渡した。 「芹沢、今日はもう帰っていいぞ」 「承知しました。社長、お疲れ様でした。桜井様もお大事になさってください」 「芹沢さん、ありがとうございます」 芹沢は私に微笑みかけた。いつも仏頂面の芹沢の笑顔を初めて見た私は、驚きを隠せなかった。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 「どう?冷たい?」 「うん。とっても」 桐生は私をソファーに座らせ、赤くなった腕を丁寧に冷やした。桐生のお陰で、痛みはほぼなく、赤みもひいてきた。 「翼さん、もう平気。痛くないわ」 「ほんとに?」 「ええ。赤くもないし」 すると、桐生は私の腕を冷やしていた保冷剤を机に置き、腕をそっと撫でた。今まで冷やしていたせいで、余計に桐生の体温を感じてしまう。 「よし、腫れてないな」 「だから大丈夫って言ったでしょ?」 「うん、だけど心配だったから」 心配性で、過保護な桐生が愛おしい。普段は、誰も寄せ付けないオーラを放っているにも関わらず、今の桐生の無防備な姿はギャップでしかなかった。 「さっきの話だけれど、お父様が言ってたことは間違ってないわ。その、私が何処の馬の骨かも分からないって……私、言われ慣れてるから。だから、翼さんはこれ以上、お父様と揉めないで」 「知英ちゃん、慣れたらだめだ。あいつは知英ちゃんに対して、最低なことを言った。だから、知英ちゃんは怒っていいんだ。我慢する必要なんてない」 桐生は私と向き合い、私の目を見て訴えた。 「だけど、私は親の顔を知らない。自分がどこで産まれたかも分からない。孤児なのよ。そんな私が翼さんの隣に居たらいけないの。私だってそんなこと言われなくても分かってる」 「知英ちゃん、俺を見て?」 「いや……今は顔を見られたくない」 私は話しながら、涙が次から次へと流れた。ただ、愛する人のそばに居た
Last Updated: 2026-09-01
実は、俺⋯受けなんです!

実は、俺⋯受けなんです!

ギャップに悩むエリート商社マン(受け)がハマった相手は年下大学生(攻め)だった。 容姿端麗、頭脳明晰、エリート商社マンの高嶺司は、今夜も好みの男性と熱い夜を過ごしていた。 けれど、彼が満たされることはない。 なぜなら、司には秘密にしている性癖があった。それは、攻めではなく〝受け〟だということ。 そんな時に出会った大学生の涼。 司は欲求を満たしてくれる涼との営みに次第に溺れていく。 しかし、涼にも秘密があって…… 過激な駆け引きの末、拗らせた2人が辿り着く結末とは?
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Chapter: 覚悟
涼の実家は、俺の自宅から車で一時間程の所にあった。「涼、車どこに停めればいい?」「実家の駐車場に停めて。もう少しで着くから」俺はゆっくりと車を走らせた。そろそろ、涼の実家に到着する。俺は極度の緊張感に襲われていた。______________________「司さん、行こう」「ああ」涼の実家の駐車場に車を停めた俺は、シートベルトを外し、深呼吸をした。すると、涼が俺の右手に自分の手を添えた。「大丈夫。二人で乗り越えよう」俺の気持ちなんて お見通しと言わんばかりに、涼は優しく微笑んだ。涼は俺にとって、最高に格好よくて、可愛い恋人だ。だから、たとえ俺たちの関係を認めてもらえなくても、俺は涼と離れるつもりはない。「行こうか」「いつもの司さんだ」「涼のおかげ」俺は車から降りた。そして、助手席にまわりドアを開けた。「司さん、ありがとう」「どういたしまして」すると、玄関の方から女性の声が聞こえてきた。「あら、いらっしゃい」「母さん、びっくりさせないでよ」「だって、涼が恋人を連れてくるなんで初めてだから嬉しくて。ずっと、窓から見てたの」「そんな事だろうとは思ったけど」俺は涼と彼の母親との様子を黙って眺めていた。二人とも笑顔で話している。俺の家族とは大違いだ。何においても一番でなければ認めなかった父。父に従順な母。子供の俺が見ても、夫婦関係は冷めきっていた。それなのに、外面はいい親を演じる両親に俺は嫌気がさしていた。「そちらの方がもしかして……」すると、俺を見つけた涼の母親が俺に声を掛けた。「ご挨拶が遅れて申し訳ございません。私、高嶺司と申します」「まぁ!本当にイケメンね!」「え?」「俺が、母さんに司さんは本当に格好よくて、頼りになる人だってよく話しててさ」「そうだったのか」俺はあまりにも想像と違う展開に動揺を隠せないでいた。「そんなことより、外は暑いわ。早く家の中に入って」 「司さんも来て」「ああ。お邪魔します」 俺は戸惑いながら、涼の実家に足を踏み入れた。______________________リビングに通された俺は、涼と並んでソファーに座った。「司さん、肩の力抜いて?」「分かってるけど」「抜かないならキスするよ」「おい、今はだめだ/」隣のキッチンで、涼の母親が冷たい飲み物を用意してくれている
Last Updated: 2026-08-08
Chapter: 同棲開始
俺の一週間の長期休暇は、あっという間に時間が過ぎ、残すところあと2日となった。俺たちは、温泉旅行から帰宅後すぐに、涼の荷物を俺の家に運び、同棲生活を始めていた。そして、今日は涼のご両親に挨拶へ伺うことになっていた。「司さん、準備できた?」「もう少し」俺は姿鏡の前に立ち、入念に服装を確認した。「なぁ、涼。ネクタイこれでいいかな?」「うん!俺は好きだよ。このブルーのネクタイ。司さんによく似合ってる」俺は柄にもなく緊張していた。仕事での大事なプレゼンよりも緊張している気がする。それだけ、俺にとって涼は大切な存在なのだ。だからこそ、涼のご両親にも俺たちの関係を認めて欲しい。これまで数々の挫折を味わってきた俺にとって、涼との関係を認めてもらえたら、それはもう奇跡なのだ。「司さん、緊張してる?」「とっても」すると、涼が俺を抱き締めた。俺は涼の背中に腕を回し、彼の体温を感じた。「司さんは俺の自慢の恋人だから、自信持って!それに、司さんには僕がついてる。だから、いつもの格好いい司さんでいてね」「ん、分かった」「よし、そろそろ出ようか」「そうだな」俺は旅館で買った土産を持ち、涼と自宅を出た。涼も今ではすっかり慣れたのか、フロントのコンシェルジュへの挨拶にも余裕を感じる。「行ってらっしゃいませ。高嶺様、桜庭様」「木村さん、行ってきます」「コンシェルジュの方と仲良くなったのか?」「あれ?司さんやきもち?」「違うけど」本当は違わない。ここに長く住んでいる俺でも知らないコンシェルジュの名前を涼は知っていた。涼は社交的で、人付き合いも上手い。だからこそ俺は時々不安になる。「こないだ宅配便が届いてさ。その時に、預かってもらって。名前は名札を見た。毎日、俺に挨拶してくれる人の名前は覚えたいなって」「なるほど」「だから、司さんが心配するようなことは何もないよ」「だから心配してない」「そうなんだ」「ああ」俺は車のロックを解除した。俺が運転席に乗り込むと、続いて涼も助手席に座った。俺はエンジンをかけ、シートベルトを締めた。「涼もシートベルト締めて。んっ/」涼が不意打ちで俺の唇にキスをした。俺は思わず吐息を漏らした。「素直じゃないから」「だからって、ここでするなよ//」「あ、やっぱり。やきもち妬いてたんだ」「そうだよ。わるいか」「わるく
Last Updated: 2026-07-22
Chapter: 君以外欲しくない
食事を終えた俺は、一人掛けのソファーに座り、寛いでいた。涼は俺のすぐ傍の畳に寝転んでいる。「畳って落ち着くね。俺ん家のアパートに和室はないから」「それをいうなら、俺のマンションにもないな」「司さんのマンションは、桁違いに豪華だからね」「でも、あの家に独りは寂しい時もある」そういいながら、俺は煙草を一本咥え、火をつけた。「俺も頂戴」「だめ」「なんで?」「身体に悪い」「司さんは吸ってるじゃん」「やめられなくなるから」「ふーん」すると、涼は起き上がり、俺と向き合った。そして俺が煙を吐いた時、涼は俺の唇にキスをした。「まずっ」「ははっ、だから言っただろ」俺は灰皿で煙草の火を消した。「こっち来る?」「うん、行く」涼は俺の膝の上に座った。俺は涼を後ろから抱き締めた。「司さん、くすぐったいよ」「ん?」「わざとでしょ」「うん」ずっとこのままで居られたら。そう思うくらいに、今、俺は満たされている。「ねぇ、司さん、家に帰ったら何したい?」「ゆっくり寝る」「なにそれ」涼が笑った。俺は思い切って涼に聞いてみることにした。「あのさ、前にも話したけど、俺のマンションに来ないか?」「ほんとにいいの?」「もちろん」俺が体調を崩す前、同棲の話はした。だが、俺の体調が落ち着くまではと思い、それから話さずにいた。「俺も司さんと一緒に住みたい。残りの休みのやること決まったね」「そうだな」「でも、俺、荷物少ないから、引っ越しすぐに終わりそう」「早く終わったら、引越し祝いしようか」「蕎麦食べるの?」「それもいいな。早めに涼のご両親にも挨拶にいかないと」「うちはいいよ」「さすがにそれは……」「分かった、なら今言う」「今!?」「そんなに驚かなくても大丈夫だよ」涼は机に置いてあるスマートフォンを手に取り、電話を掛けた。もちろん、その相手は……「もしもし、母さん。俺だけど、うん、元気だよ。今日は話したいことがあってさ。前に話しただろ?司さんのこと。一緒に住むことにしたから。うん、その報告。近いうちに、司さんと会いに行くね。ありがとう。母さんも、体調気をつけて。またね」涼は電話を切った。「これで大丈夫」「いいのか?」「うん。母さんには司さんとのこと話しててさ」「俺の休暇中に、ご挨拶に伺おうか」「そうだね。って、司さ
Last Updated: 2026-06-28
Chapter: 君以外欲しくない
俺と涼は再び露天風呂に浸かっていた。「明日には帰らないとね」「そうだな」「あっという間だなぁ」涼が外を眺めながら呟いた。「また旅行しよう。二人で」「行く!次はどこがいいかな?司さんの行きたいところは?」「涼しいところ」「司さん、暑いの苦手?」「苦手」「海とか、プールは?」「却下」俺はきっぱりと答えた。「えー、司さんと夏らしいことしたいのに」涼の言葉で俺はふと、旅館の入口で見たポスターを思い出した。「花火」「ん?」「今夜、この近くで花火大会があるらしい」「ほんと!?」「ああ」「行く!行きたい!」涼は嬉しそうな顔で俺を見た。「分かったよ。行こうか」「やった!」涼は自分の気持ちに素直に生きている。そこが俺には羨ましくもあり、愛おしくもある。「司さん、のぼせた?」涼は心配そうに俺の顔を覗き込んだ。「大丈夫だよ」俺は涼に微笑み、額にそっとキスをした。「司さん/ずるい……//」「ははっ、先出るから」「え、キスして逃げる気?」「さぁな」涼と過ごす穏やかな時間は、俺にとって何にも代えがたいものだ。俺たちは、昼食の時間まで部屋でまったり過ごすことにした。「昼食は、部屋に運んでもらうか?」「うん、それがいい!」「分かった」早速、俺はその旨を受付に伝えるべく、部屋から電話を掛けた。「はい、その時間で。はい、よろしくお願い 致します」すると、涼が俺を見つめていた。「どうした?」「司さんは格好いいなと思って」「いつもと変わらないだろ?」「だから、何時も格好いいんだよ」涼は上目遣いで俺を見た。「こんなに格好よくて、優しい人が、俺の恋人だなんて未だに信じられないよ」やばい、可愛すぎる。ベッドでは俺を攻めまくるくせに、普段はこんなにも可愛い涼に俺は溺れっぱなしだ。「涼、俺に襲われたいの?」「襲えないくせに?」すると、涼は俺の首に腕を回した。「司さんは格好いいけど、あなたを抱くのは俺だから」涼は下唇を舌でペロッと舐めた。先程の可愛い涼は何処へ……「今夜も楽しみだね」涼は悪戯な笑みを浮かべた。コンコンコン……その時、部屋のドアをノックする音が聞こえた。俺は立ち上がり、ゆっくりとドアを開けた。「失礼致します。お食事をお持ちしました」「ありがとうございます」「お部屋までお運びしてもよろ
Last Updated: 2026-06-28
Chapter: ひとを愛するということ
部屋に入ると、俺は涼を壁際に追い込みキスをした。「んん……/司さん、どうしたの?」「ぐっすり寝たら、したくなった」「まだ朝だよ?」「関係ない」俺はズボン越しに涼のモノを撫でた。「だめ、だよ……」涼の目付きが変わった。その目をみると身体の奥がぞくぞくする。俺はそっと涼の首筋に吸い付いた。「はぁ……あんまり煽らないでって昨日も言ったのに」「涼もやりたくなった?」「うん」俺達はお互いの服を脱がせながら、ベッドまできた。「涼、風呂は?」「あとでいい」涼は俺を見下ろすと、人差し指で上半身をなぞった。今、堪らなく涼が欲しい。「司さん、立ってるね。ここ」涼は俺の左の乳首を甘噛みした。「んん……//」俺の口から抑えきれず声が漏れた。追い討ちをかけるように、涼は乳首を親指と人差し指で強くつねった。「痛っ、それやだ//」「嫌なの?」「ん/」「じゃあ、やめる?」「やだ……//」「司さん、やだばっかり」「だって、涼が……//」「俺が何?」涼は俺の目を見て言った。俺は恥ずかしさのあまり目を逸らした。「こっち見て」「恥ずかしい//」「ねぇ、顔見せて?」俺は優しい涼の声に思わず顔を上げた。「やっと見てくれた」俺は涼の妖艶な表情に目を奪われた。早く涼に抱かれたい。俺の身体は疼き出した。「涼……//」「ん?」俺は涼を見つめた。「司さん、言わないと分からないよ?」焦らされる。それが余計に俺を興奮させた。何と言えば涼は俺に触れてくれるのだろうか?「触って……欲しい//」「可愛い、司さん」涼は俺の唇にキスをした。俺は更にキスを求め、涼の首に腕を回した。「好きだよ、司さん。これからも、俺だけを見ててね」「うん」俺は頷いた。「我慢できないの?」「ん/」「こっち来て?」涼は俺を自分の上に座らせた。「自分でやってみて。見ててあげるから」今日の涼は意地悪だ。だけど俺はいつも以上に興奮していた。自分の性癖に笑ってしまう。俺は自ら入り口を解し、腰を沈めた。「んああっ//んん……///」俺の口から声が漏れた。そんな俺を涼は瞬きもせずに見つめていた。「見ないで……//」「見て欲しいんでしょ?」「違う/」すると、涼は起き上がった。そして至近距離で俺を見つめた。「ふふっ、司さん、可愛いね」「可愛くない、んんっ
Last Updated: 2026-06-28
Chapter: ひとを愛するということ
力尽きた俺は布団に倒れ込んだ。そんな俺を涼が優しく抱き締めた。「幸せ」「涼って、俺の髪撫でるの好きだよな」「うん、好き」「それ気持ちいい」「ならもっと撫でようか?」すると、涼は俺の髪をくしゃくしゃっとした。「おい、それは力強すぎ」「注文が多いなぁ」他愛ない会話をしながら、俺たちは笑い合った。涼の腕の中で、彼の体温を感じた。こんなにも幸せなことはない。俺は涼を見つめた。「ん?」「愛してる」「……ずるい/」「ははっ、顔赤いぞ」「司さんのせいだからね//」涼は俺の唇に何度もキスをした。「ちょっ、キスしすぎだ/」「仕返しだよ」俺も負けじと涼の首筋に吸い付いた。「んん……///」 「付いた」「司さんが痕付けるなんて珍しい//」「だめだったか?」「ううん、嬉しい」「それならもっと付けようかな」「ねぇってば、今日は寝よ」「分かったよ。仕方ないな」「司さんが寝ないならもう一回するけど?」「それは遠慮しておきます……」「遠慮しなくていいのに。司さん、こっち来て?」「ん」「俺も愛してる」涼は俺を優しく抱きしめ、額にそっとキスをした。____________「おーい、司さん起きて。朝だよ」「……まだ眠い」俺は布団を被った。「司さーん。隠れてないで出てきて。朝ごはん食べに行くよ」「……寒い」「もう!寝ぼけてないで。起きて」涼は俺から布団を剥いだ。「さむっ、無理。眠い」「司さんは朝が弱いよね。そういう所も可愛いけどさ」「俺は可愛くない。それより、布団返して」「嫌だ。また寝るでしょ?」「うん」「うん、じゃないよ」涼は俺の両手を引っ張り、布団に座らせた。「おはよ、司さん。寝癖ついてる」「直して」「いいよ。ついでに、顔も洗いに行こう。目が覚めるよ」「嫌だ、動きたくない」「ふふっ、久しぶりの駄々っ子だね。でも、可愛いから許すけど」涼は俺の頬にキスをすると、優しく微笑んだ。「司さん、朝ごはん食べに行こ」「ん……」俺は眠気眼を擦りながら、立ち上がった。「お腹空いてないの?」「空いた」「って言いながら、寝てるよ」「ん……起きてる」「でも、目開いてないよ?」「瞼が重いだけ」「それを寝てるって言うんだよ」「もう少しだけ。あと一分、いや、三分」俺は涼に抱きついた。涼の匂いと体温が心
Last Updated: 2026-06-26
御曹司の俺が正体を隠してレンタル彼氏を試したら、まんまと本気になった話

御曹司の俺が正体を隠してレンタル彼氏を試したら、まんまと本気になった話

大企業の御曹司である湊智也は、父親を説得して大学卒業までの4年間だけ自由を得た。智也は正体を隠し、学生生活とバイトに明け暮れる日々を過ごしていた。そして迎えた20歳の誕生日。智也の恋愛対象は男性。しかし、その事を誰にも言えずに、気づけば恋人がいない歴=年齢になっていた。そこで智也は、思い切ってSNSの広告で見かけたレンタル彼氏を試すことにした。右を左も分からない智也が直感で選んだ相手が、レンタル彼氏NO.1の塁だった。初めは塁との疑似恋愛を楽しんでいた智也だが、その心に変化があらわれて……秘密を抱えた2人の疑似恋愛から始まる恋の行方は?
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Chapter: それぞれの決意
塁は俺の突然の告白に言葉を詰まらせた。「塁さんを困らせたい訳じゃないんだ。ただ、俺は塁さんの居場所になりたい。だから、もう会わないとか言わないで」すると、塁は俺に抱きついた。「智也さん……」俺の名を呼び、塁は俺を見つめた。「俺、話つけてくるから」「え?」「堂々と智也さんと一緒に居られるように」塁の言葉を聞いた俺は悟った。塁がひとりで全てを背負おうとしていることを。「塁さん、俺にも何かできることない?」俺の力なんてたかが知れてる。そんなこと俺が一番分かっている。だけど、どうしても聞かずにはいられなかった。「今夜、一緒に眠ってほしい」「それはもちろん」「それだけで俺は幸せだよ」俺は塁の笑顔を見ながら、自分の無力さを悔いた。「ベッド狭くないですか?」「狭い方が智也さんの近くに居られるから、嬉しい」俺と塁の間に穏やかな時間が流れた。例えそれが、かりそめの幸せだとしても、俺は今夜の事をこの先も忘れないだろう。 「おやすみ、塁さん」本当は寝たくない。一分一秒でも長く塁と居たい。気を抜いたら涙が溢れてしまいそうだ。「智也さん、必ず会いに来るよ。約束する」塁は俺の胸に顔を埋めたまま言った。塁の表情は見えなかった。「分かりました。待ってます」俺は気の利いた言葉をかけることが出来なかった。その変わり、俺は塁を力強く抱き締めた。言葉がなくても、気持ちが伝わればいいのに。しかし、夜は容赦なく、俺たちを闇の中に引きずり込もうとする。だとしても、俺は塁の為なら何度でも抗ってみせる。俺にとって塁は自分以上に大切なひとだから。必ず、塁を救い出す。俺は心に誓った。 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄俺は朝の日差しで目を覚ました。智也は俺をしっかりと抱き締めたまま眠っていた。俺は智也を起こさないように、そっと彼の頬に触れた。当分、会えなくなる愛しい人の寝顔を俺は眺めた。まさか、客に本気になるとは思わなかった。なのに、智也は容赦なく俺の中に入ってきて、俺を掻き乱した。だけど、それが嫌ではなかった。そして、ある時気づいた。智也の前では俺は笑えることを。それから智也を好きになるまでに時間は掛からなかった。だけど、智也はあくまで俺の客として振る舞い続けた。だから俺の事は好きじゃないと思っていた。せめて友達になれればと思い、智也に提案し、受け入
Last Updated: 2026-09-06
Chapter: あなたが好き
俺はホテルから電車を乗り継ぎ、家に帰ってきた。今日は大学の講義もアルバイトも休みだ。塁と会えるのは夕方の予定なので、俺はシャワーを浴びることにした。風呂から出ると、俺はアルバイト代をつぎ込んで買った服に袖を通した。塁と会う時は、格好いい俺でいたい。俺は最近買ったヘアアイロンで、髪を入念にセットした。〝俺なんか〟という言葉で誤魔化し、努力をしようともしなかった俺を塁が変えてくれた。人は変われる。見た目も、中身も。変われるかどうかは、自分次第なんだということも塁が教えてくれた。今日は塁から〝会いたい〟と言ってくれた。好きな人に必要とされる事が、こんなにも嬉しいということを俺は初めて知った。トゥルルルルルル……その時、俺のスマホが鳴った。「もしもし」「もしもし、俺だけど仕事終わったよ」「今どこに居ますか?すぐ行きます」俺は家を飛び出し、塁の元へ走った。 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄「塁さん!!」俺は息を切らしながら、塁の元へ駆け寄った。「智也さん、慌てなくてもよかったのに」「少しでも早く塁さんに会いたくて」「ありがとう」塁は俺を見て微笑んだ。だが、その表情はどこか疲れているようにも見えた。「ね、智也さん」「どうしましたか?」「俺に自由はないのかな」「塁さん……」今夜の塁はとても弱って見えた。きっと、何かあったに違いない。俺はこのまま、塁を独りになんて出来なかった。「俺の家、ここから二駅なんです。もしよかったら、そこでゆっくり話しませんか?」「智也さんの家行っていいの?」「はい。俺たち友達でしょ?」俺は塁の手を握り、駅へと向かった。「お邪魔します」「狭いけど、ここに座ってください」俺は塁に一人掛けのソファーを勧めた。「ありがとう」「飲み物は、コーヒーでいいですか?」「うん」俺はインスタントコーヒーをマグカップに入れ、お湯を注いだ。「どうぞ、熱いから気をつけて」俺はコーヒーの入ったマグカップを二つ、リビングの机の上に置いた。塁はゆっくりとコーヒーを喉に流し込んだ。そして、意を決したかのように俺に言った。「智也さん、俺たち友達やめよう」「え……?」俺は言葉を失った。「俺、さっきまでお金の為にお客さんを抱いてた。それなのに、智也さんの家に上がり込んで、智也さんと一緒に居たいと思ってる」「それ
Last Updated: 2026-09-06
Chapter: レンタル彼氏は誰かの彼氏
俺は朝日の眩しさで目を覚ました。 「おはよ、智也さん」 「おはよ、塁さん。もう起きてたんだ」 「智也さんのお陰でよく眠れたからね」 「そっか、良かった」 俺は眠い目を擦りながら起き上がった。そして、俺は顔を洗い、歯を磨いた。塁はというと、髪のセットも終えて、帰り支度を進めていた。俺はそんな塁に問いかけた。 「塁さんは今日も仕事?」 「うん。午前中から常連さんと」 「そっか」 塁の仕事はレンタル彼氏。それ故、今日も別の人の彼氏になる。頭では分かっているのに、俺の胸は張り裂けそうだ。なぜ、こんなに近くに居るのに、俺は塁の恋人ではないのだろうか? 「智也さん、仕事が終わったら会える?」 「え……」 俺は塁の言葉に驚き、思わず聞き返した。 「ごめん。無理ならいいんだ。智也さんも学校とバイトで忙しいだろうから」 「会えます。俺も会いたい!」 俺は前のめりで答えた。 「ほんと?嬉しい。ありがとう。夕方には仕事が終わると思うから、また連絡するね」 「はい。待ってます」 さっきまでの憂鬱な気持ちが、塁の一言であっという間に晴れていく。今の俺と塁は、金で繋がった関係ではない。それだけで十分だ。俺は欲張りになりそうな自分を戒めた。 例え、塁が他の誰かの恋人になったとしても、一日の最後に帰る場所が俺でありますように。ホテルの部屋を出る塁の背中を見送りながら、俺は願った。 俺は一人、ホテルのベッドに寝転がった。さっきまで隣で眠っていた塁の残り香がした。それだけで、恋しくて、会いたくなる。 今頃、塁は俺の知らない人の彼氏になっているのだ。食事をして、手を繋いで、買い物をして完璧な彼氏を演じているに違いない。 考えるだけで、胸が苦しくなる。塁にとってレンタル彼氏は仕事だ。頭では分かっているのに、俺以外の人に笑いかけている塁を想像するだけで耐えられない。これが人を好きになるということなら、俺にとっては苦しさでしかない。俺は、塁の連絡を待つことしかできない自分の無力さに嫌気がさした。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ どれくらいこうしていただろう?気づけばホテルのチェックアウトの時間になっていた。俺は慌てて、帰り支度を済ませるとホテルを出た。 塁からの連絡はまだない。俺は、スマートフォンを握りしめたまま、昼間のホテル街を一人で歩いた。
Last Updated: 2026-09-05
Chapter: 月が綺麗だ
塁は寝たのだろうか?俺は深夜にも関わらず、目が冴えてしまった。そもそも、好きな人と同じベッドで眠るなんて俺には無理な話なのだ。「智也さん、起きてる?」「起きてます」塁の問いかけに、俺は答えた。「俺、今、すごく智也さんとしたい」突然の塁の言葉に、何と言っても正解ではない気がして、俺は答える事が出来なかった。「って、ごめん。忘れて」「塁さんは、どうして俺としたいんですか?」俺の脳をフル回転させて絞り出した言葉が、ありきたりなこれだった。「理由は分からないけど……」「そうですか」「智也さん、怒らないの?都合のいいこと言うなって」「俺、今まで恋愛したことがないんです。誰かを好きになった事もない。だから、そういう時もあるのかもなって思いながら聞いてます」「そんなこと言ったら、智也さんに色々教えたくなっちゃうよ?」塁が色っぽい笑みを浮かべて言った。俺は思わず頬を赤らめた。「でも、塁さんに教えてもらえるなら、それもいいかも……/」「ねぇ、本気で言ってる?」「俺はいつも本気です。塁さんの前で嘘をつく余裕はないから」俺は恥ずかしさのあまり、塁と目を会わせることが出来なかった。「今夜だけは、嘘でも嫌だって言って欲しかった」「え?」「智也さんを俺だけのものにしたくなるから。今、俺は智也さんの優しさに漬け込んで、智也さんとして、このよくわかんない感情を抑えようとしてるずるい奴なわけで……」「塁さんなズルくない」俺は塁の目を見て言った。「どうしてそう思うの?」「俺に正直に何がしたいかも、どう思っているのかも伝えてくれたから」俺は塁に微笑んだ。「なんでそこで笑うんだよ」塁が泣きそうな声で言った。「僕の前では、嫌なことも忘れて、塁さんに笑って欲しいから」俺はこの歳まで、誰かを好きになったこともなければ、他人に興味すらなかった。そんな俺が、塁と出会い、彼に恋をした。叶うことのない想いだけれど、せめて、塁の居場所になりたい。この時、俺はどんな塁でも受け止めると心に誓った。「塁さん、こっち来て?」 俺は塁を自分の胸に引き寄せた。俺の胸にすっぽりとおさまる塁が愛おしかった。「智也さんの心臓の音がする」「うるさいでしょ?」「ううん、落ち着く。俺も生きてるんだなって実感できる」「塁さん、今日はゆっくり寝ましょう。俺がいます」俺は塁の
Last Updated: 2026-09-05
Chapter: 塁には敵わない
「智也さんは頑固だな。折角、忠告してあげたのに」「だって、塁さんは俺が初めて一緒に居たいと思ったひとだから」俺は後ろから塁を抱き締めたまま言った。塁に顔が見られない分、いつもより素直に言葉が出てきた。「俺、告白されてる?」「こ、こくはく!?」全く無自覚だった俺は、塁の言葉に動揺し、思わず彼を抱き締めている腕を離した。俺の発言が、世間一般的に告白と思われる事実に驚きを隠せなかった。「智也さん、動揺しすぎ」「だって、塁さんがそんなこというから……」「ごめんね。でも、ありがとう。嬉しかった」塁は俺の頭を優しく撫でながら微笑んだ。そして今度は、塁が俺を抱き締めた。「智也さんと居ると落ち着く。このまま寝そうだ」「寝ていいですよ」俺は塁の背中をトントンと叩いた。「智也さんも一緒に寝よ?」まさかの展開に俺は固まった。塁と同じベッドで寝る勇気は俺には無い。俺には好きな人と同じベッドで眠るなんてハードルが高過ぎるのだ。しかし、そんな俺の不安を他所に、塁は俺を軽々しく抱きかかえ、そっとベッドに寝かせた。「智也さん、なんで隠れるの?」「それは、塁さんの顔が近いから/」「智也さんを近くで見たいからね」俺の顔が赤くなるようなことを、平気な顔して塁は言った。甘い言葉に慣れていない俺は、塁の一言に心を乱される。「智也さん、出てきて?」塁の甘えた声が、俺の耳に届いた。思わず俺は、布団から顔を出した。すると、塁が嬉しそうな顔で俺を見た。塁は友達だ。俺は何とか自分を抑えようと必死だった。「智也さん?」だが、俺の決意は呆気なく崩れ去った。俺は何も言わず、そっと塁の頬に触れ、そのまま彼の首筋を優しく撫でた。「んっ、」塁の吐息が俺の耳にかかった。ここで止めなければ、俺は塁と一線を越えてしまうかもしれない。「智也さん……」塁に名前を呼ばれ、我に返った俺は彼に触れていた手を離した。そして、俺たちは見つめ合った。触れなくても、互いの想いが伝わりそうなその距離で、俺と塁はどちらともなくキスをした。「塁さん//」「ん?」「これ以上は……俺たち友達でしょ?/」「智也さんを見てるとしたくなる」「もうだめ//寝ますよ///」俺は照れ隠しに、塁に背を向けた。恋愛慣れしている塁と、恋愛初心者の俺。気を抜くと、塁のペースに流されてしまう。「智也さん。もうしない
Last Updated: 2026-09-05
Chapter: 今夜はひとりで居たくない
シャワーの音が聞こえる。俺はベッドに寝転んで、塁が戻ってくるのを待った。勢いでホテルまで来てしまったが、今夜、俺は塁と同じベッドで寝るのだろうか。いや、無理だ。俺には出来ない。我に返った俺は、自分がとった行動に頭を抱えた。20年間、恋をする暇など無かった。御曹司としての教養や振舞いを叩き込まれ、父親の言いなりだった俺に恋など不要だった。そんな俺が、初めて惚れた相手が塁なのだ。しかも、塁は訳ありで、難易度が高すぎるイケメンときた。恋愛経験皆無の俺には為す術がなかった。俺はじっとしていられず、枕を抱き締め、ベッドを行ったり来たりしていた。「智也さん、何してるの?」「塁さん!?」恥ずかしい所を塁に見られてしまった。穴があったら入りたいとはまさにこの事だ。「智也さん、驚きすぎ」「だって、塁さんが……/」「俺が何?」「ちょっと、近いです//」風呂上がりの塁は、バスローブ姿で俺に顔を近づけた。塁の火照った上半身が、バスローブの隙間から見えた。俺は塁の裸体を直視出来ず、咄嗟に視線を逸らした。「智也さんと居ると飽きないな」「え?」塁は何事も無かったかのように、濡れた髪をバスタオルで拭き始めた。俺と違い塁は、誰かとホテルに泊まることも慣れているのだろう。俺だけ、余裕がなくて馬鹿みたいだ。そこで俺はそっと塁に近づいた。「ん?智也さん。どうしたの?」「髪、乾かします」俺は塁からドライヤーを受け取ると、彼の髪に優しく触れた。「智也さん、くすぐったい」「折角、綺麗な髪だから丁寧に乾かそうと思って」「そんなに綺麗かな?傷んでない?」「全然。俺、何度も染めてるから髪傷んでて」「それなら、俺が使ってるシャンプー使ってみる?美容師さんに勧めてもらったんだけど、これが良くてさ。次に会う時、持っていこうか?」「あ、うん。ありがとうございます」塁の口からさりげなく零れた〝次〟という言葉に、俺は過剰に反応してしまい、塁への返答が素っ気なくなってしまった。塁は俺とまた会うつもりでいてくれている。それが嬉しくて、今すぐ塁を抱き締めたい衝動に駆られた。俺はドライヤーのスイッチを切り、手から離すと後ろから塁を抱き締めた。「嫌なら言ってください」「ううん。智也さんなら嫌じゃないよ」「良かった」「智也さん」「どうしましたか?」「今夜はひとりで居たくない」俺は
Last Updated: 2026-09-04
番犬に噛まれた夜

番犬に噛まれた夜

番犬は従順なフリをして飼い主を束縛する。 全ては、拗らせた恋心ゆえ。 犬飼宗介は仁科理久は隣同士に住む幼なじみで、大学生になった今でもいつも一緒にいる。 イケメンだけど強面な宗介は、気弱な理久の番犬として彼に変な虫がつかないように見張ってきた。 宗介はこの関係がこれからも変わらずに続くと思っていた。 あの夜、理久が宗介の知らない男に抱きしめられている現場を目撃するまでは……
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Chapter: 番犬の脅威
一限目の講義が終わり、次の教室へと移動しようとした俺を、実が呼び止めた。「宗介、ちょっと」「なんだよ」俺は立ち止まり、振り返った。「俺、この匂い嫌い」「はぁ?」「宗介の匂いと混じってる」「なんの事だ?」「だから、幼なじみくんの匂い」「なんで実が嫌がるんだよ」俺は怪訝な表情を実に向けた。「宗介って鈍感だよね」「だからはっきり言えよ。用がないなら行くぞ」俺は実に背を向けて教室を出ようとした。すると、実が俺の背中に抱きついた。「行くんだろ?あの子の所に」「そうだよ」「俺は理久しかいらない」俺はそれだけ告げると、実の手を振り解き、教室をあとにした。実に抱きつかれた。俺としたことが、隙を与えてしまった。 実のことは、無愛想な俺を気にかけてくれる良き友人だと思っていた。だが、俺への気持ちが特別なら話は別だ。今後、実が理久に接触しないとも限らない。実に告白されたことを理久に伝えるべきか。やましいことは何も無い。なのに、何故か理久に伝えることを躊躇している俺がいた。俺は2限目の教室へと移動している途中で、理久とすれ違った。理久は同じ学部の生徒と談笑しながら歩いていたが、俺に気づくと微笑んだ。「理久」俺は思わず理久を呼び止めた。すると、理久は友人とわかれ、俺の元へとやってきた。「どうしたの?宗介」「うんと……」俺としたことが、何を話すか考えないまま呼び止めてしまった。何も言わない俺を、理久は心配そうに覗き込んだ。「宗介?」俯いていると、実が俺の肩を引き寄せた。 「あ、ごめん。話してた?」「実、とりあえず離れろ」「あの、そちらの方は……?」理久が遠慮がちに問いかけた。「宗介と同じ学部の小鳥遊実です。そちらは幼なじみくんかな?」「あ、はい。仁科理久と言います」「理久くん、確かに可愛い」「おい!実、それ以上喋るな」俺が一番恐れていた事態が起きてしまった。俺と理久の間を掻き乱す者。実の存在は、俺にとっての脅威に値する。「わるい、理久。また昼に」「う、うん」俺は実の手を引いて、誰も居ない教室へ連れ込んだ。「宗介、痛いってば。宗介!」「なんで理久にあんなこと言った?」俺は実を睨みつけた。「なんでそんなに怒ってるの?」「…………」「俺が理久くんに可愛いって言ったから?」「……」俺は何も答えなかった。実は
Last Updated: 2026-08-10
Chapter: 番犬の脅威
久しぶりに昔の記憶が蘇った。あの頃は、ただ、理久の傍に居られたらそれで満足だった。 なんて、綺麗事か。俺はいつだって、理久の一番近くに居たかった。理久が欲しかったのだ。それが叶った今、俺の欲望は募るばかりだ。理久と何度身体を重ねても、またすぐに彼を求めてしまう。何度キスしても足りない。できることなら、理久をこの部屋に閉じ込めて、誰の目にも触れさせたくない。俺だけの世界に理久を連れて行けたらどんなにいいか。だが、実際にそんなことをしたら、理久は俺から逃げてしまうかもしれない。俺の事を嫌うかもしれない。そんなこと耐えられない。だから俺はこの願望を心の奥底に沈めて、理久に笑顔を向ける。そう、今、俺がしてるように……「理久、朝だぞ」「宗介だ。おはよ」理久が俺に抱きついた。「寝ぼけてるのか?」「うーん……」「可愛いなぁ」俺は理久に微笑んだ。この笑みの奥の感情は隠したままで。「ほら、早く起きないと遅刻するぞ」俺は寝起きのわるい理久の身体を揺すった。「宗介も寝ようよ」完全に寝ぼけている。「俺は一限から講義があるんだ。理久もだろ?」「あっ!そうだった!起きる」理久は思い出したかのように起き上がった。そして辺りを見回した。「どうした?」「眼鏡がない」理久は視力がわるく、普段はコンタクトをつけている。風呂上がりは眼鏡をかけているのだが、枕元に置いたはずの眼鏡を理久はよくなくす。「宗介、そっち落ちてない?」「ないけど」「まじか……」実は、床に落ちていた眼鏡を見つけた俺は理久に気づかれないように拾っていた。「理久、洗面所まで連れて行ってやるよ。階段危ないし」「ありがとう」理久は俺に掴まろうと立ち上がったが、バランスを崩して俺の上に倒れ込んだ。「ごめん!宗介。怪我ない?」俺を心配そうに見つめる理久が愛おしくて堪らない。「大丈夫」「良かった。って、それ!」俺の胸ポケットに入っている眼鏡に理久は気づいたようだ。「宗介、拾ってたんだ」俺は寝転んだまま、理久に眼鏡をかけた。「これで見えるか?」「よく見える///」理久は俺を見つめながら、頬を赤らめた。「おはよ、理久」「おはよう、宗介//」「キスしていい?」「恥ずかしいから//」俺は起き上がり、理久の口を塞いだ。「キスの時は眼鏡は邪魔だな」「もう、宗介ったら//」
Last Updated: 2026-04-26
Chapter: 番犬の邂逅
しばらくすると、理久の規則正しい寝息が聞こえてきた。 俺の胸にすっぽりとおさまる理久。俺は理久を優しく抱き締め、頭を撫でた。そして、理久の寝顔を眺めながら、俺は彼を守ると決めた日のことを思い出していた。 遡ること、十数年前。俺の隣の家に理久が引っ越してきた。その頃の理久は、とにかく可愛らしかった。俺は不覚にもときめいてしまった。しかし、その容姿が原因でいじめられることも多かった。 「お前、気持ち悪いんだよ」 「やめて、痛い!」 俺は理久が同級生に髪の毛を引っ張られている現場を目撃した。そして、居ても立ってもいられず応戦した。 「お前ら、妬みか?格好悪いぞ」 「なんだ。宗介か。宗介も思うだろ?こいつのこと気持ち悪いって」 俺は怯えている理久を見た。そして、同級生に言い放った。 「そんなこと思ったことないね。それよりも、俺の友達を傷つけたら許さないから」 小学生の頃から、俺は背が高く、喧嘩も強かった。そのせいか同級生たちは、血相を変えて逃げていった。 「もう大丈夫」 「ありがとう」 俺は理久に手を差し出した。 「僕たち友達なの?」 「嫌だったか?」 「ううん、嬉しい!!」 この時の理久の笑顔を俺は今でも鮮明に覚えている。 「よし、決めた。今日から俺が理久のボディーガードになる!」 「宗ちゃんが守ってくれるなら安心だ。」 「宗ちゃん?」 「ん!友達だから」 この瞬間、番犬が誕生した。 その日から毎日、俺は理久と過ごすようになった。朝、理久を家まで迎えに行くのが俺の日課になったのもこの頃だ。眠そうな理久の手を引いて、学校までの道のりを歩く。俺は理久のボディーガードだ。理久を傷つける全てのものから彼を守る。本気でそう思っていた。 月日は流れ、俺たちは中学生になった。思春期を迎えた俺と理久だったが、相変わらずいつも一緒に居た。俺達にはそれが当たり前だった。だが、周りの目は違った。ある日の放課後、委員会を終えた俺は理久が待つ教室へと急いだ。 「理久、お待たせ」 「宗ちゃん、お疲れ様」 「帰ろうか」 「うん」 俺たちはいつものように並んで帰り道を歩いた。ただいつもと違い、理久が一言も話そうとしなかった。理久の異変に気づいた俺は、彼に問いかけた。 「なんかあった?」 「変だって」 「何が?」 「俺と宗ちゃん。男同士なのに
Last Updated: 2026-04-25
Chapter: 番犬の癒し
俺は理久を抱き締めながら、寝顔を眺めた。長い睫毛に、白い肌。俺は理久の頬にそっと触れた。「ん……」 「起きたか?」「……宗介」俺は理久の唇に軽くキスをした。「途中で寝ちゃったのか。ごめん」「ううん。それより起き上がれるか?」「なんとか」理久は腰を擦りながら起き上がった。すると、理久の中から出てきた俺の欲望がシーツを濡らした。「宗介//これって……」「理久が起きてから掻き出そうと思って」「ん//」「風呂場行こ。やってあげる」「自分でやるよ/」「立てないのに?」「それは宗介が!/」「わかったから、じっとしろ」俺は理久を抱きかかえると、強引に風呂場まで運んだ。「理久、ここ座って、足広げて?」「嫌だ/恥ずかしい//」「しっかり出さないと」理久は顔を真っ赤にしながら、俺の言う通りに足をひらいた。俺は理久の中に指を入れ、少しづつ自分の欲望を掻き出した。指には白くドロっとしたものがまとわりついた。「俺のたくさん入ってる」「だって、宗介が奥までするから//」「そう言いながら、今もここ、ビクついてるぞ」「んぁっ……/////」俺は理久の入口をそっと撫でた。「だめ、宗介/」「どうして?」「また欲しくなる//」「そうだよな。折角、綺麗にしたからな」そこで、俺は自分のモノを理久のモノに擦り付けた。「あぁっ/」「いれないから」「んん……/////」風呂場には、理久の喘ぎ声と、俺の吐息が響いていた。「宗介、激しすぎ。腰動かない」「わるかったって」「ほんとにそう思ってる?」理久は俺のベッドに寝転びながら、上目遣いで言った。「思ってるよ」「ふーん」「まだ怒ってるのか?」「怒ってない。けど……」「けど?」「そこは察しろよ/」と言われても、言ってくれないと分からないこともある。「大学の課題があるから、理久は先に寝てていいよ」「宗介は俺が先に寝てもいいんだ」また怒らせたか?「いや、そういう訳じゃ……」「宗介は昔から鈍感だからね」「ん?」「もういい。寝る!」理久は完全に拗ねてしまった。俺は一旦、課題にキリをつけるとベッドの縁に座った。「理久、こっち向いて?」「嫌だ」俺はそっと理久の首筋にキスをした。「ひゃっ/」「どんな声出してるんだよ」「宗介がそんな所触るから/」「理久、おいで。一
Last Updated: 2026-04-23
Chapter: 番犬の烈情
「理久、先に風呂入ってきていいよ」「一緒に入ろうよ/」「いいのか?」「うん//」頬を赤らめながら、俺を誘う理久が愛おしくて堪らない。今すぐにでも理久を抱き締めたい。 理久が好きだ。好き過ぎて、おかしくなりそうなくらいに。「なら入ろうかな」俺はソファーから立ち上がった。すると、俺の背中に理久が抱きついた。「宗介は、どんな俺でも一緒に居てくれる?」「うん。居る」「なら、今すぐ抱いて」理久の様子が変だ。俺は理久と向き合い、彼の目を見つめた。「今、俺の事見ないで」「どうして?」「ずるいから、俺」「それは俺もだ」俺は理久の唇にそっとキスをした。「俺は理久が好きだよ。きっと、理久が思っている以上に」すると理久は顔を上げ、俺の首に腕を回し、キスをした。理久の舌が俺の口内を舐め回す。そして、理久は俺を床に押し倒した。「俺は宗介が思っているような人間じゃない。今でも、宗介に抱かれたくて堪らない」初めてみる理久の男の顔は、ゾクッとする程、色っぽかった。「理久、綺麗だ」俺は理久の耳元で囁いた。「宗介は余裕なんだな」理久は呟きながら、俺のシャツのボタンを1つずつ外した。「悔しい」そういいながら、理久は俺の身体に舌を這わせた。「んっ」 思わず声が漏れてしまう。「宗介、気持ちいいの?」理久が上目遣いで俺に問う。余裕なんて初めから微塵もない。ただ、理久には余裕のある男に見られたかった。理久はそんな俺のちっぽけな見栄を崩していった。「ね、宗介。答えて?」「どう思う?」けれど俺は本心を隠した。「身体に聞けばいいか」「おい、そこは……/」理久は俺の下着を下ろすと、反り勃ったそれを躊躇いもなく口に含んだ。「んんっ……」「ふふっ、宗介のそういう声初めて聞いた」「理久、離せ」「嫌だ。どんな俺でも一緒に居てくれるんでしょ?」「それとこれとは別だ」「宗介は素直じゃないなぁ」目の前に居るのは誰だ?本当に理久なのか? 「仕方ないな。宗介が気持ちいいって言ったらやめてあげる」そんなこと、言えるわけがないだろ。俺は口をつぐんだ。「残念、聞きたかったな」そういうと、理久は再び俺のモノを口に含んだ。「んんっ……やばっ、いっ」「あーあ、いっちゃったね」「理久が触るから」ゴクンッ…… 「宗介の味だ」「おい、出せって」
Last Updated: 2026-04-22
Chapter: 飼い主の秘密
俺は仁科理久。隣同士に住む犬飼宗介とは幼なじみだ。そして、俺は宗介のことを〝番犬〟と呼んでいる。理由は、どんな時でも俺の傍に居て、守ってくれるから。そんな宗介の事が俺は前から好きだった。自分がゲイだと気づいたのは中学生の頃。周りの同級生が異性を意識し始めた頃も、俺は宗介しか見ていなかった。宗介はモテた。背も高く、頭もいい。その上、イケメンだ。年齢に似合わず、物静かな所も人気だった。だけど、宗介が彼女を作ることはなかった。俺は淡い期待を持った。もしかしたら、宗介も俺と同じなのではないかと。だが、それを聞く勇気もないまま、月日は流れ、俺たちは大学生になった。相変わらず、宗介は俺の面倒をみてくれる。でも、宗介と居ると辛い。きっと、宗介は女の人が好きだから。俺のこの気持ちが報われることはない。 だから俺は、大学で俺に好意を持ってくれたひとと関係を持とうと思った。最低だが、正直、誰でも良かった。だけど、その人に抱き締められた時、俺の全身が宗介以外の男に触れられることを拒んだ。その現場を宗介が見ているとも知らずに……あの時の宗介の表情は、今でも鮮明に覚えている。嫉妬に狂った宗介は美しかった。何度この日を夢見ただろうか? どんな形でもいいから、俺は宗介に抱かれたかった。宗介にとって、俺は何も知らない無垢な幼なじみだ。それを崩す訳にはいかない。だから、俺を抱き締めていた男は〝友達〟だと咄嗟に嘘をついた。いや、友達ではなく、ただの同級生と言った方がよかったか?その相手と関係を持とうとしていたとは、口が裂けても言えない。宗介に本当の俺を知られるわけにはいかない。俺はあえて宗介に〝好き〟と言わなかった。宗介の好きが俺と同じか確かめたかったから。俺はずるい。でもそれくらい宗介が好きで、宗介しか欲しくないのだ。だから、俺は今日も無垢な幼なじみのフリをする。そうすれば、宗介は俺を躾てくれるかな?俺は宗介以外、何もいらない。宗介が俺の頭をわしゃわしゃと撫でる。宗介が俺の手を握り隣を歩く。宗介が俺の頬に触れる。宗介が俺の唇に触れる。宗介が俺を抱き締める。宗介が俺を押し倒す。宗介が俺を犯す。俺の脳内には宗介しか居ない。だから今日も触れて欲しい。なのに、最近、宗介は俺に触れようとしない。俺は宗介に嫌われることでもしたのだろうか。俺は不安で押し潰されそうな日々
Last Updated: 2026-04-19
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