LOGIN俺は仕事を終えると、すぐに車に乗り込んだ。久しぶりに定時に上がれた。俺は涼へメッセージを送った。「今から帰る」 ブーブーすると、すぐに涼から返信が届いた。「俺も今から向かうよ!」もうすぐ涼に会える。今朝も会ったばかりだが、数時間会えないだけで恋しくなる。早く会いたい。声が聞きたい。一分一秒でも早く家に着きたいのに、赤信号につかまってしまった。この数分がとてつもなく長く感じる。今、涼は電車だろうか?それとも、もうすぐ最寄り駅に着く頃だろうか?何をしてても、涼のことを考えてしまう。俺の中心にはいつも涼がいる。俺はノンストップで車を走らせ、自宅へと急いだ。マンションに到着すると、地下駐車場に車を駐車させ、エントランスでコンシェルジュと挨拶を交わし、足早にエレベーターに乗り込んだ。高層階まではエレベーターで数十秒。今日はその時間がとてつもなく長く感じた。涼は来ているだろうか?自宅へ帰るだけなのに、何故か落ち着かない。俺は、はやる気持を抑えて、部屋まで歩いた。すると、部屋に明かりがついているのが見えた。俺は鞄から出しかけた鍵をしまい、インターホーンを押した。ピンポーン「おかえりなさい!」「ただいま」エプロン姿の涼が俺を出迎えた。「司さん、お疲れ様」帰ってきた時に出迎えてくれる人が居る。それがこんなにも、幸せなことだということを俺は初めて知った。「司さん、スーツがシワになっちゃう」「それよりも今は涼がいい」「可愛いね」涼は俺を抱きしめ、頭を優しく撫でた。「俺は可愛くないよ」「うん。司さんは格好いい」「おい、真顔で言うな//」「あ、照れてる」「着替えてくる//」恥ずかしくなった俺は、涼から離れようとした。「先にくっついてきたのは司さんでしょ?」「そうだけど……/」涼は俺を壁際まで追い詰めるとそっと口付けした。「もっとする?」「うん///」俺が頷くと、涼は舌を捩じ込みながら再びキスをした。「んん……/////」「これ以上すると、俺が限界だ」「それなら……」「それなら?」「何でもない/」「言って欲しかったなぁ」 「うぅ……」俺は俯いた。「ごめん。意地悪しすぎた。すぐに夕飯作るね。今夜はペペロンチーノだよ」「わかった。着替えてくる」「はーい」恥ずかしさが勝り、素直に涼を誘えない自分がもど
ピピピピピピ……起床を知らせるアラームが鳴った。時刻は6:00俺は隣で眠る涼を起こさないように、そっとベッドから出た。「おはよ、司さん」「わるい、起こしたか?」「ううん、俺も起きる」涼は起き上がり、歯を磨いている俺の背中に抱きついた。「朝から司さんに抱きつけるなんて幸せだな」「涼の寝起きって可愛いのな」「俺は可愛くなーい」やっぱり、可愛い。「司さん、朝ごはんは?」「いつも朝はコーヒーだけ」「おっけ」涼は俺から離れるとキッチンへ行き、コーヒーを煎れ始めた。「本格的なんだな」「カフェでバイトしたことがあってさ。コーヒーにはこだわりあるんだよね」「そうなのか」また涼の新たな一面を知った。「もう少しかかるからシャワー浴びてきていいよ」「それじゃあ、お言葉に甘えて」「うん、行ってらっしゃい」この朝の風景、俺は好きだ。シャワーから出ると、コーヒーのいい香りが部屋中を包み込んでいた。「いい香りだな」「でしょ」俺は髪を拭きながら涼の隣に立った。涼はコーヒーカップを2つ用意すると、ゆっくりと淹れたてのコーヒーを注いだ。「司さん、着替えてきたら?」「涼のこと見ていたくて」「見られてると恥ずかしい/」「それならもっと見る」「司さんは受けのくせに、たまにSっ気だしてくるよね」「涼のドSぶりには負けるよ」「やった、褒められた」他愛のない会話がとても落ち着く。俺は涼を後ろからそっと抱き締めた。「司さん、襲って欲しいの?」「そんなつもりじゃ//」「ふふっ、冗談だよ。コーヒー冷めないうちにどうぞ」「ありがとう/」俺は涼からコーヒーカップを受け取ると、じっくり味わうように一口飲み込んだ。「美味しい」「よかった」涼は俺に微笑みかけた。「司さん、何時に出る?」「7時には出ようかな。着替えてから仕事行きたいから」「了解。司さんは、時間までゆっくりしてて?」「うん、ありがとう」すると、涼はキッチンで何かを始めた。俺はその様子を眺めた。「もしかして、弁当作ってくれてる?」「うん。あ、でも、いらなかったら自分の分だけ作るから」手作り弁当なんて、学生の時に母親に作ってもらって以来だ。「嬉しいよ。涼の作ってくれた弁当食べたいな」「有り合わせになるけど、そこはごめんね」「ううん、とんでもない。作っ
俺は今、バイトの飲み会に参加している。さっきから、やたらとバイトの同僚の女子に連絡先を聞かれていた。 もちろん、教えるつもりはない。だが、気まずくなって、働きにくくなるのも避けたい。俺は愛想笑いを浮かべながらその場をやり過ごした。早く帰りたい。そろそろ司さんの仕事が終わる頃かもしれない。明日、会う約束はしているが、せめて声だけでも聞きたい。「ねぇ、涼くん」「ん?どうした?酔ってる?」「少し」そう言いながら、同僚が俺にもたれかかってきた。勘弁してくれ。俺にそんなことをしても何も意味がないのに。俺の想い人は、司さんただ一人。「涼くん、つまんなさそう。2人で抜け出そっか?」心底めんどくさいと思ったその時、俺のスマートフォンが震えた。ディスプレイに司さんの文字が見えた。なのに、この女が俺にもたれかかっているせいで電話に出られない。俺は怒りを抑え、冷静に言った。「ごめん、トイレ」俺は立ち上がり、なるべく静かな通路まで急いだ。そして司さんに電話をかけた。トゥルルルルル……「もしもし」「もしもし、司さん。さっきは電話に出られなくてごめん。仕事終わった?」「ああ。今、帰ってるところ」「お疲れ様」「ありがとう」司さんの声を聞きたいのに、ここは騒がしくて聞き取りずらい。 「今、外か?」「うん。バイトの飲み会で。でも、そろそろ帰ろうかなと思ってる」「どこで飲んでる?」俺は司さんに飲み会の場所を伝えた。「今から迎えにいく」 俺は予想外の返答に驚いた。「司さん疲れてるでしょ?」「それよりも涼に会いたい。明日まで待てない」え?今なんて言った?司さんが会いたいって言ってくれた。明日まで待てないって。俺だけじゃなかったんだ。「司さん……そんなこと言ってくれたら俺、泣くよ?」俺も早く司さんに会いたい。司さんも同じ気持ちだったことが嬉しくて、思わず目が潤んだ。「すぐに迎えに行くから待ってて」「分かった。着いたら連絡して?すぐ行くから」俺は電話を切ると、席に戻った。「涼くん、どこ行ってたの?」「すみません。迎えが来るんで、俺、先に帰ります。お疲れ様でした」俺はテーブルに会費を置くと、足早に店を出た。____________俺は店の前で司さんが来るのを待っていた。「あの、涼くん」振り返ると、俺の連絡先を聞いてきた同僚がいた。
コインパーキングから歩いて5分くらいの所に涼の住むマンションはあった。「ここの2階に住んでる」俺は涼の後に続いてエレベーターに乗った。 「ほんとに狭いから。俺の家のリビングが、司さんの家の風呂場くらい」 「それはさすがにないだろ」「いや、それがあるんだなぁ」そういいながら、涼は玄関の鍵を開けた。「どうぞ」「お邪魔します」俺は、靴が綺麗に整頓された玄関に革靴を並べた。部屋はワンルームだった。一人暮らしの学生が住むには十分な広さだ。「司さん、スーツ脱いで?シワになったら大変だから」「ありがとう」涼は俺から背広を受け取ると、丁寧にハンガーにかけた。「すぐに夕飯作るから、司さんはそこで休んでて」俺はベッドとテーブルの間に座った。「狭いでしょ」「でも落ち着く」「先にビール飲む?」 「飲みたい」「了解」俺は部屋の中を見回した。必要最低限なものしか置いていない所が涼らしい。「司さん、お待たせ」「ありがとう」俺は涼から缶ビールを受け取ると、一気に飲み干した。「あー、美味い」「今日もお疲れ様」キッチンで俺の夕飯を作りながら、涼が言った。「テレビつけてもいい?」俺はキッチンで料理を作る涼に問いかけた。 「いいよ。リモコン分かるかな?ベッドの上だと思う」「うん、あった」その時、ふと見慣れた表紙の本を見つけた。「涼もこの本読んでるのか?」「司さんが面白いって教えてくれたから。読んでみたら止まらなくてさ」「だろ?」俺はその本を手に取った。しおりは、物語の終盤に挟まっていた。この後の展開を語りたい衝動に駆られたが、俺はぐっと堪えて、テレビの電源を入れた。「お待たせ。出来たよ」「美味そう」涼はサラダそうめんを作ってくれた。「夜遅い時って、こういうさっぱりしたものが食べたくなるんだよな」「ほんと?よかった」「いただきます」「どうぞ」「涼もこっち来いよ。一緒に飲も」「うん。行く」涼が俺の隣に座った。「美味い」「ふふっ、なんかいいね。こういう時間」「そうだな」俺たちは微笑み合った。「ご馳走様でした。美味しかった」「よかった。ちょうど風呂も沸いたから、入ってきたら?」「そうだな」「ビール飲んでるし、今日は泊まっていくよね」「うん、でも、俺は床で寝るからお構いなく」さすがに、涼のシングルベッド
俺は今日も慌ただしく仕事をこなしていた。全ては明日の夜、涼との時間を作るため。こんなにも誰かと会える日を心待ちにしたことが今まであっただろうか?俺にとって涼との時間は癒しだ。できる人の仮面を外して、本来の俺で居られる時間。本当の俺を晒しても涼は笑顔で受け入れてくれる。それがどれほど幸せなことか。「高嶺さん、いつも以上に仕事早いですね。さすがです」「ありがとう」後輩社員が俺に声を掛けた。正直、今は誰かに構っている暇はないのだが、俺は愛想笑いを浮かべながら作業の手を止めた。「何かあった?」「高嶺さん、察しがいい。あの、この資料なのですが……」俺は後輩のフォローをしつつ、溜まっている仕事も片付けた。「終わった……」気づけば今日も21時を過ぎていた。早く涼の声が聞きたい。俺は会社の駐車場から涼に電話をかけた。トゥルルルル.........しかし、涼は電話に出なかった。すでに21時を過ぎている。風呂に入っている時間かもしれない。それとも、大学の課題をやっているのかもしれない。疲れて早めに寝ているのかもしれない。俺は涼の声を聞けない理由を考えながら、自宅まで車を走らせた。そして、今夜も夕飯を作る気力はなく、いつものコンビニに車を停めた。その時だった。ブーブー……俺のスマートフォンが震えた。相手は涼だ。「もしもし」「もしもし、司さん。さっきは電話に出られなくてごめん。仕事終わった?」「ああ。今、帰ってるところ」「お疲れ様」「ありがとう」電話の音が騒がしく感じた俺は涼に尋ねた。「今、外か?」「うん。バイトの飲み会で。でも、そろそろ帰ろうかなと思ってる」「どこで飲んでる?」俺は涼から飲み会の場所を聞いた。偶然にも、このコンビニから車で10分くらいの所にある店だった。「今から迎えにいく」「司さん疲れてるでしょ?」「それよりも涼に会いたい。明日まで待てない」「司さん……そんなこと言ってくれたら俺、泣くよ?」早く涼に会いたい。涼も同じ気持ちだったことが嬉しかった。「すぐに迎えに行くから待ってて」「分かった。着いたら連絡して?すぐ行くから」俺は電話を切ると、涼の元へと車を走らせた。涼に指定された居酒屋に着くと、彼は店の外で俺を待っていた。俺はハザードランプを点滅させ車を停めた。すると、俺に気づいた涼が車まで駆け寄ってきた。
教室に入ると、友人が慌てた様子で俺の元に走ってきた。「あのさ、偶然見えたんだけどいまの人って……」「うん。司さん」「涼、あの人はやめておいた方がいい。俺みたいに捨てられるぞ」それはお前が司さんの本質を見抜けなかったからだろう。 自分のことを棚に上げて、司さんの愚痴を言い続ける友人に俺は嫌気がさした。「わるいけど、そういう話に興味無い。それと、司さんはお前が思ってるような人じゃなかったよ」俺はそれだけ言うと教室を出た。そして、その足で俺は喫煙所へ向かった。最近、俺は司さんが吸っていた煙草と同じ銘柄を吸い始めた。香水も司さんと同じものを付けている。会えない時間も司さんを感じていたい。毎日でも声が聞きたい。俺は自分でも驚くほど、司さんにハマっている。水曜日が遠い。俺は大学が終わるとバイトへ向かった。バイト中も気を抜くと司さんのことばかり考えてしまう。今は目の前の仕事に集中しなければ。俺は雑念を振り払い、仕事に没頭した。俺のバイト先は本屋だ。今日は、入荷した本の品出し業務を担当していた。棚を整理していると、司さんと訪れた本屋で一緒に見たビジネス書が目に入った。どこにいても、何をしていても、俺の中心には司さんが居る。こんなにも、自分が恋愛にのめり込むタイプだったことを初めて知った。そうこうしているうちに、時計の針は20時を回っていた。そろそろ深夜帯のシフトの人と交代する時間だ。俺は仕事にキリをつけると、休憩室へ向かった。俺は3回ノックをしてドアを開けた。そこにはマネージャーの鈴木さんが居た。「お疲れ様でした」「涼くん、お疲れ様。明日の飲み会参加できそう?」「はい。19:00にいつもの居酒屋ですよね」「そう。涼くんが参加すると、参加率いいんだよ」「そうですかね?」「そう!イケメンは羨ましい」鈴木さんは30代半ばで独身。仕事はできるし、頼りにもなるが、こういう絡みは正直めんどくさい。「それでは、俺はお先に失礼します」「引き止めてわるかった。気をつけて帰ってな」「はい」やっと鈴木さんから解放された俺は早歩きで駅へと向かった。スマートフォンを確認すると、21時を過ぎていた。司さんからの通知はない。まだ仕事なのかもしれない。電話をしたいけれど、仕事の邪魔もしたくない。俺はスマートフォンをポケットに入れて電車に乗りこんだ。家に着いた。誰も居