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岸本よしみ
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岸本よしみの小説

間違い人生のトリガーを破壊して新しい人生を謳歌します!

間違い人生のトリガーを破壊して新しい人生を謳歌します!

アーティスト逆ハーレム医者転生ハッピーエンド
東雲翔月(しののめかつき)と契約結婚をした若桜凛華(わかさりんか)は夫やその友人達、そして義妹の若桜楓香からの嫌がらせを受け流しながら、あと僅かに迫った離婚成立を心待ちにしていた。しかし、離婚後も彼らの支配下の生活が続くと知って絶望してしまった。その日の夜、失意の中義妹が指示した交通事故に遭い意識を失った。目覚めて見ると凛華は3歳を目前にした幼児に戻っていた。前世の不本意な人生のトリガーとなった出来事を回避しながら今度こそ自分らしく生きようと奮闘していく。その結果、前世で結婚を強いられた年齢になった凛華の周りを彼女の心を得たいと望む男達が取り囲む。悔いなく生きたいと望む彼女の選択は……。
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Chapter: 第92話
だから、知られないように必死に取り繕って来た。 にも関わらず、ビョルンは何か気付いたのだろうか。「私?私は元気よ。」「僕にまで隠さないで。メイブリットのせいで凛華が辛い目に合ってるって知ってるよ。」やはり何か気づいて慰めに来てくれたのか。でも、うっかり甘える訳にはいかない。「……。そうでもないよ。」「凛華が皆にそう言ってくれているおかげで、あいつは叱られるだけで済んでいる。」ああ、ビョルンは彼女の為にお礼を言いに来たんだ。凛華はすぐに納得した。やっぱり甘えなくて良かった。「いろんな人から厳しく叱られたらしいね。思い詰めないといいけど。ビョルン、幼馴染なんでしょう。私に遠慮しないで慰めてあげてね。」「そうじゃない。僕が言いたいのは……。」「彼女、ビョルンに認めて欲しくて張り切り過ぎたみたいね。あなたにまで責められたらきっと深く傷付いてしまうわ。ちゃんと慰めてあげるのよ。」凛華は遠くを見つめながら寂しそうな顔で言った。「凛華、僕は……。」ビョルンは凛華の人を寄せ付けないような、何処かよそよそしい雰囲気に踏み込めず言葉を飲み込むしかなかった。「そろそろ休憩時間が終わるから行くね。」凛華は何事も無かったかのように仕事に戻って行った。 彼は、本当は彼女に謝りに来たのだった。あれから1週間も経つのに、今だに病院のあちこちで凛華の間違った噂が囁かれている。具体的には分からないが、仕事にも支障が出ているらしい。それに対してメイブリットは、スサンナやマリアから厳しく叱られただけだった。スサンナからは暫く工房に来ないように言われたが、完全に破門されたわけでもない。マリアからも賠償などの話は出ていない。会社としてはかなりの損害が出たはずなのに凛華が、「まだ子供だから、今回だけは大目に見てやって欲しい。」と言う口添えをしてくれたおかげだった。それでも、さも悲劇のヒロインかのように泣き喚いて周囲の同情を買っている。ビョルンにも彼女の両親から慰めに来てやって欲しいと何度も連絡が来た。でも、彼は行かなかった。正直、自業自得だと思う。浅はかな妬みから、勝手な思い込みで罪もない人を犯罪者呼ばわりしたのだ。当然の報いだろう。まだ子供?凛華と3歳しか違わないじゃないか。ビョルンにとっては、誰にも弱音を吐くことなく一人で耐えているだろう凛華の方が心配で
最終更新日: 2026-09-19
Chapter: 第91話
メイブリットは、慌ててナースコールを押して看護師に助けを求めた。夜勤明けで家に帰り、食事をした後眠っていた凛華は、携帯の着信音で起こされた。誰からの連絡かも確かめずに、まだぼうっとした頭で答えた。「はい、若桜です。」「凛華、大変だ。今すぐSNSを見ろ。」電話はロルフからだった。訳が分からず取り敢えず開いて見ると、トレンドの中に“詐欺師研修医”と言う言葉があった。嫌な予感がして見てみると、顔までははっきりしないが明らかに自分であると分かる写真が載っていた。「ロルフさん、これ何ですか?」「こっちが聞きたい。お前何やったんだ。病院に苦情の電話やメールが来てるらしいぞ。」「わかりません。詳しく見て後で連絡します。」凛華は一旦通話を切って、改めて詳しく見てみた。どうやらあのポーチが原因らしい。自分がマキ・フカサワの贋作でお小遣い稼ぎを目論んだと言うことになっている。しかも、大学病院の研修医と言う身元まで特定されている。なぜこんなことに。呆然としているうちに、問題の投稿やそれにまつわるコメントの山はあっと言う間に消えていった。あっ、誰かが気づいたんだ。誰だろう。マリアさんかな。お父さんかな。後者だったらちょっと怖い。その時の凛華は検討外れの心配しか浮かばなかった。メイブリットが投稿を削除した後、その地点でのコメントを削除させたのはマリアだった。気づいたのが早かった為、炎上までにはなっていなかった。これで何とか収まるかと皆が思った。が、甘かった。マキ・フカサワと【AKOGARE】への注目度がそれを許さなかった。暫くして、ポーチの画像を保存していたらしい誰かがコメントと共に新たな投稿をした。おそらく、どちらかの熱心なファンなのだろう。『私達の大切なキャラクターを汚す行為は許せない!』『勇気ある告発を揉み消すとは卑劣!』『そうだ!断固糾弾して断罪すべき!』と言う過激な声をあげ始めた。こうなっては仕方ない。マリアは正式なコメントを出さざるを得なくなった。『我が社のキャラクターの刺繍入りポーチについて。これは次期キャンペーンの為の試作品です。デザインは、マキ・フカサワさんによるオリジナルに間違いありません。偶然目にした人物が、誤解をして勝手に投稿したに過ぎません。非難を受けている人物は無関係です。どうかこれ以上のコメントはご自重くだ
最終更新日: 2026-09-18
Chapter: 第90話
病室で話し合いをしていたマリア達が、そろそろ終えようとした時だった。マリアのアシスタントの携帯が鳴った。少し離れて彼女が電話に出ると、会社からの何やら急な連絡のようだった。彼女は慌てて画面を操作し、知らされた投稿を見て驚いた。すぐにマリアに駆け寄り画面を見せた。「お話中すみません。マリアさん、これを。」「何、これ。これって、これのことよね。」マリアが凛華のポーチを指差してアシスタントに確認した。「そうだと思います。」「と、言うことは……。」二人の様子を不審に思ったスサンナが、マリアに尋ねた。「凛華ちゃんのポーチが何か?」「それが……。このポーチ、いつからここに?」「今朝です。凛華ちゃんが夜勤明けに寄ってくれたんです。その時に。昨日私が見たいってお願いしたからわざわざ届けてくれたんです。」「そうなんですね。」マリアは驚きから一転してうんざりした顔になりながら、スサンナに投稿画面を見せた。二つの投稿とコメントを見たスサンナの顔はみるみる青ざめていった。「あの子、なんてことを……。すみません。まだ子供で事の重大さも分からずにやったのだと思います。責任は私が取ります。何でもおっしゃってください。」青褪めた顔色に苦悩の表情を浮かべて謝罪をするスサンナを見て、マリアはこの場でこれ以上話すことを躊躇った。「頭を上げてください。取り敢えず彼女にこの投稿を削除させてください。こちらでも対応を検討して改めて連絡します。すみませんが、今日はこれで。」慌ただしく帰って行くマリアたちを見送ると、スサンナはすぐにメイブリットを呼び出した。いよいよ自分に目を向けて貰えたのかと上機嫌で部屋にやって来た彼女は、室内にスサンナしかいない事に気付いて首を傾げた。「先生、お呼びですか。お客様達はどちらへ?」そこで初めてスサンナの顔に目を向けて、驚いた。「先生、どうされたんですか?傷が痛みだしたんですか?」「違うわ。メイブリット、携帯を出しなさい。」「?」「すぐに携帯を出して午前中とさっきの投稿を消しなさい。」「先生がどうしてそれを?まさかあの女が文句を言ってきたんですか?」「あの女?誰の事を言っているの?そんな事よりすぐに消しなさい!」「あんな事位でそんなに怒らなくても……。」文句を言いながら渋々携帯を取り出すメイブリットを見て、怒りを抑えきれなく
最終更新日: 2026-09-17
Chapter: 第89話
二人は自己紹介の後、凛華のことを少し話題にしてから本題へと話を進めて行った。凛華の予想通り、二人は大人の対応が出来る上に気も合い、どんどんと話も進んだ。ただ一人、話題についていけないメイブリットは不機嫌を隠そうともせずスサンナのベッド脇に突っ立ったままだった。それでもマリアのアシスタントが素早く記録を取っていたので問題はなかったのだが、見かねたスサンナが指示を出した。「メイブリット、お客様にお茶の用意を。」「え?私がですか?」「あなたは何のためにここにいるの?」「……。」彼女は流石にこの場で自分の目論見を口にはできなかった。渋々ミニキッチンに向かったものの、慣れない手つきで手間取り、挙句に茶葉の缶をひっくり返して駄目にしてしまった。大きな物音で状況を察したスサンナは、マリア達に申し訳なさそうな視線を送った。マリアは全く気にする様子もなく薄く笑みを浮かべて首を振った。スサンナはもう一度メイブリットに指示をした。「メイブリット、あなたはもういいから控室に下がっていなさい。」「えっ?おばさま、でも……。」「早く言うとおりになさい。」 スサンナの冷たい声に、これ以上は無理だと悟った彼女は静かに部屋から出て行った。マリアはふと 、彼女が思わず言った“おばさま”という一言が引っかかった。そこでさりげなく尋ねてみた。「さっきの彼女はお弟子さんの一人ではなかったのですか?」「何度も頼まれて、つい最近仕方なく引き受けたんです。彼女はご近所さんなんです。息子と年が近くて、以前は兄妹のように仲がよかったのですけど……。」スサンナは困ったような顔でその先を詰まらせた。それを見たマリアは何となく先を察して話を終わらせた。「そうでしたか。立ち入ったことをお聞きしてすみませんでした。もう少し、さっきの続きをよろしいですか?」スサンナはほっとした表情でそれに応じた。病室から追い出されたメイブリットは、悔しそうな顔のまま付き添い人用の控室に入って行っ彼女の予定では、今頃マリアと今後の予定について相談しているのは自分のはずだった。というのも、彼女にとって【AKOGARE】はまさしく”憧れ“の対象だった。イメージキャラクターたちの愛らしいイラストも洗練された香りも大いに彼女を魅了していた。ところが昨日、その責任者が師であるスサンナに仕事の依頼の為に会いに
最終更新日: 2026-09-16
Chapter: 第88話
「言いそびれていてすみません。彼女はとてもしっかりしていて素敵な人です。いいお話し合いが出来ると思います。」「そうなのね。ますます楽しみだわ。」「それから、これ、持ってきました。いろいろ拙くておばさまにお見せするのは恥ずかしいんですけど。」凛華は鞄の中から、横長の楕円形でがま口の付いたポーチを取り出した。それには、3人の妖精が大きな葉っぱの上で仲良く木の実を食べている刺繍がしてあった。「あら、可愛い!こんなデザインは初めて見たわ。」「未発表のを許可を得て使わせて貰ったんです。自分で楽しむのに使うだけならっていう条件で。」「そうなのね。少し借りててもいいかしら。参考にさせて。」「こんな物でよろしければどうぞ。」スサンナは惜しげもなく気軽に作品を預ける凛華に、内心驚きながらも平静を保ちポーチを受け取った。凛華が帰った後、スサンナはポーチをじっくりと観察し、感心しながら呟いた。「お医者さんにしておくのは惜しい才能ね。伝統技術は入っていないけど、色使いやステッチの選択が絶妙だわ。」スサンナはひとしきり眺めて楽しんだ後、ベッド横の棚にポーチを置いてから横になって休んだ。スサンナがぐっすり寝入った後に、弟子の一人のメイブリットが面会に来た。彼女は弟子になってまだ日が浅い。にも関わらず、今日【AKOGARE】のチームリーダーが来ると聞いて一番にスサンナの付き添いに名乗りをあげた。後の二人は今日はおそらく顔合わせ程度だろうと思い、仕方なくその役割を譲る事にした。彼女は【AKOGARE】の妖精のような、可愛いレースをふんだんに使ったライトグリーンのワンピースを着て意気揚々と病室に入って来た。「先生、おはようございます。お加減はいかがですか。」声を掛けてみたが返事はない。そっと枕元に近寄ると、スサンナはぐっすりと寝入っている。起こさないようにと静かにベッド脇の椅子に座り、何気なく部屋の様子を見回してみた。この部屋は来客用の応接セットやミニキッチンも付いた豪華な個室だ。壁に沿って設置されている棚には華やかなアレンジフラワーなどお見舞いの品々が幾つも並んでいる。おそらく多くの見舞客が訪れたのだろう。病室ではあるが、華やかな応接室にいるような居心地の良い部屋だ。 一通り見回した後ベッド横の棚に目を向けると、楕円形のポーチが目についた。手に取って見て
最終更新日: 2026-09-15
Chapter: 第87話
「そう言われればそうかも。もしバレたらとんでもないことになってしまうわね。そこまでしなくても入院くらいできるんじゃない?」芙美華はグドムンドに同意した。「じゃあ他に何か意図があったってこと?」「僕はその可能性が高いと思うが、今の所分からない。」「ねぇお父さん、私にも監視カメラの映像を見せて貰える?何か気付くことがあるかも。」「う〜ん。事務所まで来られるか?そうしたら見せてあげられる。幾つかは極秘扱いで持ち出せないんだ。」「大丈夫。明日は夜勤だから午前中は空いているわ。」凛華は翌日朝9時過ぎにグドムンドの事務所に着いた。そしてすぐに映像が見られる部屋に籠もって、大量の映像を次々と見ていった。それらはグドムンドの調査チームが集めた、事故現場近隣の監視カメラの物から通行していた車のドライブレコーダー、近隣にいた人達の携帯画像等様々な物があった。よくもこれだけ集めたものだと感心しつつもひたすら画像に集中し、11時半近くになってしまった。それまでに見た映像の中には、スサンナが怪我を負った瞬間の物もあった。それには、追突され街灯にぶつかり、さらに歩道にまで乗り上げた車が、街灯の欠片を浴びて体勢を崩した彼女の腹部に衝突し、ようやく停止する様がはっきりと映っていた。最初にそれと気付いた凛華は、あまりの傷ましさに直視できなかった。けれど、今後の事を思ってもう一度しっかりと確認した。まだ確認できていない物は沢山あったが、時間もなくなって来てしまった。最後に、と、一つの映像を選びしっかりと見始めた。この後数秒後、あの大事故が起こるとは誰も予想していなかった平穏な事故現場。人も車もいつも通りに移動をしている。凛華は何気なく歩道を歩く人物に目を向けて一瞬目を見開いた。慌てて巻き戻し、今度はその部分を拡大してじっくりと見直した。そしてその人物が間違いなく自分の思った人物であると確信した。「どうしてこの人がここに?」疑問に思いながらも、すぐにグドムンドに報告した。今度は、グドムンドと彼の秘書も一緒にその映像を見た。映像は事故のあった車線とは反対の車線に面した建物の、2階の部屋から撮った携帯の映像だった。凛華が見つけた人物と、BMC社の社長が乗っていた車がすれ違ってすぐに、その車が急停車した。その動きに反応できなかった後続車が追突し、次々と衝突が連鎖していった
最終更新日: 2026-09-13
いつかの一枚のために

いつかの一枚のために

強いヒロイン天才記憶喪失
記憶を失った涼禾は、優しい家族と出会い身ごもっていた子供たち共々穏やかな生活を送っていた。 ある日ふとしたことにより過去が判明し、双子の父親が訪ねてきた。離れていた5年間の想いから彼の三人への溺愛が始まる。 天才双子と父親が協力して過去の事件の真相解明に挑む。失われた家族の幸せを取り戻すために。
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Chapter: 第120話
たまらず駆け寄り抱きしめかけた隼翔は、数歩手前で立ち止まり、「涼禾、やっと会えた。今日もとっても綺麗だよ。」と恐る恐る手を差し出した。その目は一点の曇りもなく、薄っすら浮かんだ涙のせいで一層キラキラ輝いていた。涼禾は、自分の不安を一瞬で綺麗に拭い去った隼翔の笑顔に、心からの笑顔を返して、「ありがとう、隼翔さん。これからもよろしくお願いします。」と言って差し出された手を両手で包み込むように握り返した。そこで安心した隼翔は素早く涼禾を抱きしめて、「涼禾、よかった。僕の方こそよろしくね。」と涙を流した。「やっぱりパパ泣いちゃったねぇ。」「やっぱりね。」陽亮と夏蓮は嬉しそうに笑いながら、「「パパ、ママ、結婚記念日おめでとう!!」」と二人に駆け寄った。隼翔はその会の間中、とうとう一度も涼禾から離れずに、会が終わっても病室に泊まり込んで皆を心配させた。しかし、その翌日から涼禾は目に見えて回復して1週間ほどで退院した。2年後、同じ病院で涼禾は退院を翌日に控えていた。退院準備の為に手伝いに来ている佐和子が、大きなため息をついた。「いよいよ退院だけど、明日から大変よ。もう一人家政婦さんを頼んだ方がいいんじゃない?」「やっぱり2人じゃ足りないかしら。」「暫くはあなたも無理できないでしょ?陽亮と夏蓮もいくらしっかりしていてもまだ2年生だし。」「そうねぇ。それに今回は元気な男の子ばかりだし。成長スピードもすごいしねぇ。」3週間前、涼禾は一卵性の三つ子を出産した。2年前、涼禾が回復してから隼翔が、「ねぇ涼禾、陽亮は雅輝にべったりだし、夏蓮は亮君や従兄弟たちにベッタリなんだ。僕にも僕に一番懐いてくれる子が欲しいと思わない?」と度々言うようになった。涼禾は笑いながら聞き流していたが、やがて妊娠に気づいて検査してみると何と三つ子だと分かった。双子に続いて三つ子とは…と不安になったのもつかの間、隼翔と江崎夫妻は大喜びだった。これで自分たちにも”一番“ができる、と。細身の涼禾にとって三人はかなりの負担だったが、周囲の手厚い支えがあって、やや未熟児ながらも手術で無事に生まれてくれた。三人は生まれてからどんどん成長して、今では通常の新生児並みになっている。「やっぱり三人じゃ狭かったのかしら?」真剣な顔で言う涼禾を見て、佐和子がくすくすと笑う。「か
最終更新日: 2026-05-05
Chapter: 第119話
雅輝は思わずプッと噴き出して、「確かに。これは兄さん泣くね。」と笑い出した。亮もつられて、「ふふっ、気の毒…でも…あはは…。」と笑い出した。涼禾は訳が分からず陽亮と夏蓮を見ると、二人もにこにこしながら、「パパがねぇ、ママが会ってくれないってずっとしょげてるの。」「せめて明日ぐらい、少しでもいいから会えないかって。何日か前から部屋の前をうろうろしたり、おばあちゃんたちに様子を聞いたり。今日も私たちに聞いてきてくれって。」涼禾は困ったような顔になり、「パパがママに会いたいって?」「当たり前じゃない。」「何で僕だけ会ってくれないんだってブツブツ言ってるよ。」「パパ、無理して仕方なくとか……。」「「そんなわけがない!」」「ママ、パパはね、ママが大好きなんだよ。」「昨日もこの部屋の前をクマみたいにうろうろしてたって、おばあちゃんに叱られてた。」「隼翔さんが……、クマ?」家族の前以外では、いつも冷静な態度と冷たい眼差しの彼が?涼禾はその光景を思い浮かべて、思わずくすっと笑ってしまった。亮が穏やかな笑顔で涼禾に言った。「姉さん、もういろいろ考えなくていいんだよ。自分の心の望むままにすればいい。」「そうそう、弟の僕から言わせて貰えば、うちの兄はとても単純で純粋なんだよ。そして、びっくりするくらい一途なんだ。姉さん限定でね。」四人と話しているうちに、涼禾の心の強張りがすうっと解けていくような気持ちがした。「ありがとう、みんな。陽亮、夏蓮。パパに伝えて。明日の夜はみんなで記念日のお祝いをしましょう、って。」「「やったー!!!」」双子の喜びの声に続いて、雅輝が燥いで問いかけた。「姉さん、姉さん!みんなって僕は入ってる?父や母は?亮ちゃんは?」「ちょっと!僕は当然入ってるでしょ?」涼禾は賑やかな四人に笑顔で答えた。「みんなよ。私は大丈夫だから、亮ちゃん、参加者を決めるのも含めて準備をお願いできるかしら。」「任せて!姉さん。じゃあ、決まったからには姉さんは明日の夕方まではゆっくり休んでいてね。」「そうだね。もちろん僕も手伝うからね。」雅輝がそう言うと、四人は嬉しそうに会の準備について話しながら帰って行った。涼禾は、ほうっと一息ついてまた眠りについた。その表情は、1年前の最高に幸せだった頃に戻ったような穏やかなものになっていた
最終更新日: 2026-05-05
Chapter: 第118話
「信じてる。でも、嫌悪感なんて頭で分かってても感じてしまうものでしょう?彼に我慢させるなんて耐えられない。」「………。」「隼翔さんと結婚できて、家族として過ごせた半年足らず。とっても幸せで……、彼があの頃と変わってしまったらと思うと……。会いたいの。でも、……。」娘の複雑な気持ちを聞いて、かける言葉に詰まってしまった佐和子だった。それでも、「ねぇ、涼禾。2年ちょっと前のこと、覚えてる?」「隼翔さんと再会した頃?」「ええ、あの頃もあなた、怖いって言っていたわね。」思い出す仕草をした後、小さく頷いた。「ええ。今とは違う理由だったけど。」佐和子も一つ頷いてから話を続けた。「あの頃は陽亮と夏蓮に背中を押して貰ったようなものだったけど、会ってみてどうだった?」涼禾はまた少し考えて、思わずくすっと笑った。「彼は……、彼のままだった。ううん、思っていた以上に私を想ってくれていて、嬉しかった。」「そう。私はね、あの頃以上に、彼はあなたを大切に想ってくれていると思うわ。」「……。」「焦ることはないわ。気が向いたら考えてみて。」佐和子は少し話し込みすぎて疲れさせてしまったかと心配になり、話を終えて休むように勧めた。素直に頷いて横になり、目を閉じた涼禾を見守ってから静かに部屋を後にした。翌日の午後には、亮と雅輝が付き添って陽亮と夏蓮が会いに来た。二人は幼稚園での様子やそれぞれの習い事の様子を報告した。「ママ、私ね、こんどはじゅうちゃんから“けんどう”をならうの。」「空手と合気道はもういいの?」「どっちも続けるよ。でもね、私はまだ小さいからむずかしいことはできないの。元気なからだをつくるのが一番なんだって。」「そう。いい先生に習っているのね。」 「ママ、僕はキーボードの早打ちソフトで記録を更新したよ!雅輝さんに習ってプログラミングも始めたんだ。」「陽亮もすごいわね。でも頑張りすぎて目を悪くしてはだめよ。」「うん!ちゃんとお休みしながらやっているよ。」涼禾は二人の頭を撫でながら亮と雅輝を見た。「亮ちゃん、雅輝さんありがとう。あなたたちの研究は順調かしら?」「来月から治験段階に進むよ。まずは3ヶ月間のデータを見てそれからの方針を決めていくつもり。治験者には聡美さんや島田さんの奥さんも参加してくれるんだ。」「島田さんの奥さん?」「あ
最終更新日: 2026-05-04
Chapter: 第117話
「ママ、ありがとう。」「ママ、いつまでもみんなで待っているからね。」二人から差し出された花束を受け取れるように、佐和子が涼禾の手を取ろうとした。が、それより先に涼禾が自ら花束を受け取った。そして、「夏蓮、陽亮、少し会えなかった間に大きくなったわね。こんなママで、ごめんね。」と言うと、しっかりと二人を見つめ涙を浮かべた。涼禾の変化にその場にいた全員が息を呑んだ。「…涼禾……?」佐和子の呼びかけに、ゆっくりと顔を向けると、「お母さん、ごめんなさい。」ひと言返してまた眠りに落ちていった。ほんのひとときではあったが、涼禾が周囲に穏やかに反応したのは事件以来初めてのことだった。幼いとはいえ、男の子である陽亮に対しても拒否反応はなかった。僅かではあるが、今度こそ回復の兆しを得た皆は心から聡美に感謝した。聡美は、「私の方こそ皆様に感謝しています。私の拙い作品をこんなに素敵な場で披露させていただけたのですから。」と返した。この日をきっかけに、涼禾は少しずつ自分を取り戻し始めた。9月になり、結婚記念日まであと三日という日、涼禾の病室の前には朝から熊のようにドアの前をうろうろする隼翔の姿があった。ドアが開いて中から出てきた美沙は、その姿を見て呆れたような顔をして声をかけた。「まだいたの?」「だって、……お母さん。なぜ僕だけだめなんだ?陽亮や亮君、雅輝だって会えるようになったのに。この間は安藤のおじさんや颯太くんと健人君まで会えたじゃないか。そのうちお父さんや剣太郎君や柔治狼君も会えるようになりそうなんだろう?なのに何で僕はだめなんだ!」「情けない子ね。それだけ涼禾さんがあなたを特別に思っているってことでしょ。彼女の気持ちの整理がつくまで落ち着いて待ってあげなさい!」「だって……。」この3ヶ月間、涼禾は起きて正気を取り戻して過ごせる時間が少しずつ増えてきた。演奏会以前は、長時間眠り続けたり、起き上がってもぼんやりとして周囲に反応できなかったり、異性に怯えて距離を取ろうとしたりという状態だった。それが、夏蓮と陽亮を認識できたのをきっかけに、弟の亮と義弟の雅輝にも会えるようになった。室内に入っても拒否しなくなって、更に慣れて少し話せるようになり、短時間ながら以前のように親しみを持って接することができるようになった。佐和子や美沙や夏蓮や
最終更新日: 2026-05-04
Chapter: 第116話
今までは何かの催しや、時折訪れる慰問の演奏者たちによって演奏されるだけだったが、この春休みだけは違った。二日に一回の間隔でお昼休みになると、1時間ほど演奏されるのだ。その曲たちは、ほとんどが誰もが聴いたことのある馴染みのあるものが、日によって変えられながら演奏されていた。ただ、毎回最後に演奏される1曲だけは同じ曲で、今まで聴いたことのない穏やかで、優しい曲だった。この二日に一度の小さな演奏会は、入院患者のみならず病院内のあらゆる人達の心を癒していった。春休みが終わり、この演奏会が無くなって多くの人達が残念に思った。涼禾もまた、その一人だった。演奏会のある日は、お昼になると必ず起き上がり、穏やかな顔で耳を傾けていた。そして最後の一曲を聴き終えると、時折頬に一筋の涙が溢れることもあった。砂川先生によると、感情を取り戻す兆候なのではと期待も持たれた。しかし、演奏会が無くなった後はまた、ほとんど横になったままの生活に戻ってしまった。そんな涼禾を見て、隼翔は一つの決心をした。涼禾を現在の中京市の病院から東都の病院へと転院させる事にしたのだ。移動時の疲労や環境の変化がかなりの負担になるだろうことは予測された。しかしそのリスクを冒してでも、家族の側で過ごして欲しいという思いが勝ったのだった。5月の半ば、細心の注意を払って涼禾の転院が行われた。やはり、転院直後の数日間は熱を出したり、悪夢に魘されたりと不調が続いた。けれどそれもだんだん落ち着き、やがて穏やかに過ごせるようになっていった。涼禾が転院したのは、瀬川グループ系列の病院で設備も環境も素晴らしかった。その素晴らしさのひとつとして、ピアノが常設された小ホールがあることが挙げられる。ある週末、その小ホールで少し変わった演奏会が計画された。観客が女性限定なのだ。なぜ?と思う人もいたが、ここは病院なのだから、おそらく何かの事情があるのだろうと納得したようだった。演奏会当日。佐和子と美沙、それに亜沙美と果奈も車椅子で参加している涼禾に寄り添うように席に着いた。観客は八人の患者ごとに、そのサポートメンバーとまとまって席を用意している。時間通りに演奏者の聡美が入って来た。アイスブルーの、天使のように清らかなイメージの衣装に身を包み、微かな微笑みを浮かべながら演奏が始まった。どの曲も初めて聴くもの
最終更新日: 2026-05-03
Chapter: 第115話
『やめて…、誰か助けて…』くぐもった言葉にならない声が漏れる。何度も同じ目に遭ってしまう自分の愚かさが嫌になる。そんな涼禾を嘲笑うかのように男の言葉が続く。「だけどさぁ、せっかくの印が薄くなっちゃっているんだよねぇ。お仕置きを兼ねてもう一度しっかり身体に刻んであげなくちゃあ、ねぇ。」男がニヤリと笑いながらポケットから取り出した物を一振りすると、シュルリ、としなやかな音と共に焦げ茶色の革紐が垂れ下がった。「今度こそ完全に君は僕の物になるんだ。」パァーン!男が革紐を両手で強く引き、強度を確かめる音が響いた。その音が涼禾の脳裏に5年前の出来事を全て蘇らせてしまった。延々と続いた暴力に因る苦痛と、容赦無く浴びせられる暴言による屈辱、逃れられないと言う絶望感。それらから心を守る為に記憶を閉ざしていたのに。思い出してしまった今、まるで他人事のような諦めの言葉が浮かんだ。『今度こそ私は壊れてしまうんだ。』そんな涼禾を意に介することもなく、男は容赦無く大きく腕を上げて力を込めて革紐を彼女背中に振り下ろした。革紐はピシッと鋭い音を立てて白い華奢な背中に、赤い一筋の線をくっきりと刻んだ。焼け付くような激しい痛みが涼禾を襲う。と同時にこの後に続くだろう惨劇が脳裏に浮かんだ。涼禾は耐えきれずに、「いやーっ!!!」とありったけの力を込めて叫んだ。それでも男はニヤリと不気味な笑みを浮かべて再び腕を振り上げた。その時、隣室でドアが押し開けられ、男達が激しく争う音がした。その音がすぐに収まると、すぐにこちらの部屋に二人の男が駆け込んだ。男達は中の様子を見て一瞬顔を顰めたが、すぐに一人が犯人を制圧し、もう一人は上着を脱いで涼禾に掛けた後、彼女の拘束を全て取り去った。そして上着で涼禾の身体を包み込みながらゆっくり抱え起こしてくれた。「もう大丈夫ですよ。今度こそ全て終わりました。安心してください。」聞き覚えのある穏やかな男の声が聞こえてきたので、涼禾はゆっくり顔を上げると、大きく目を見開いた。「しま…だ、さん?」小さく呟く声に男が頷くと、安心したように表情を和らげて意識を手放した。涼禾が助け出されてから一月がたった。大田原は逮捕され、今までの様々な悪事に関する調査が行われている。尋問により証拠も出てきているようだ。浅野夫妻の事故や涼禾への殺人未遂
最終更新日: 2026-05-02
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