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第117話

Author: 吉乃婆婆
last update publish date: 2026-05-04 12:10:50

「ママ、ありがとう。」

「ママ、いつまでもみんなで待っているからね。」

二人から差し出された花束を受け取れるように、佐和子が

涼禾の手を取ろうとした。が、それより先に涼禾が自ら花束を受け取った。そして、

「夏蓮、陽亮、少し会えなかった間に大きくなったわね。こんなママで、ごめんね。」

と言うと、しっかりと二人を見つめ涙を浮かべた。

涼禾の変化にその場にいた全員が息を呑んだ。

「…涼禾……?」

佐和子の呼びかけに、ゆっくりと顔を向けると、

「お母さん、ごめんなさい。」

ひと言返してまた眠りに落ちていった。

ほんのひとときではあったが、涼禾が周囲に穏やかに反応したのは事件以来初めてのことだった。

幼いとはいえ、男の子である陽亮に対しても拒否反応は

なかった。

僅かではあるが、今度こそ回復の兆しを得た皆は心から聡美に感謝した。

聡美は、

「私の方こそ皆様に感謝しています。私の拙い作品をこんなに素敵な場で披露させていただけたのですから。」

と返した。

この日をきっかけに、涼禾は少しずつ自分を取り戻し始めた。

9月になり、結婚記念日まであと三日という日、涼禾の病室の前には朝から熊のようにドアの前
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