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第569話
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冷酷社長の逆襲：財閥の前妻は高嶺の花 第678話
桜子が部屋に入ると、茶卓の上に上質な黒檀で作られたアンティークの箱が置かれているのが目に入った。彼女はその箱を見てすぐに、その中身が普通のものではないことを感じ取った。「なんて美しい箱......」桜子は目を奪われ、思わず声を漏らした。「箱だけ見ないで、中身も見てごらん」隼人は静かに彼女のそばに歩み寄りながら言った。隼人の視線は、完全に桜子の魅力に引き寄せられ、彼女の美しい顔に釘付けだった。桜子は少し戸惑いながらも、期待を込めて、少し湿った手をスカートで拭きながら箱を開けた。箱の中には、ピンクと青が織り交ざった美しい高足杯が入っていた。その美しさは夢のようで、現実感を失うほどだった。「わぁ！」桜子は思わず声を上げ、驚きと興奮で手で口を覆った。万霆の個人博物館には、国内外の宝石やアンティークが数多くあったが、骨董品だけはなかった。この高足杯の出現は、その隙間を埋めるもので、桜子は胸が高鳴り、心が震えるほど興奮した。「これは、三ヶ月前にY国のコレクターのところで偶然見つけたものだ。お前が気に入ると思って、何度も交渉した末、やっと手に入れた」隼人は穏やかな笑顔を浮かべながら言った。その過程でどれだけ苦労したか、どれほど努力したか、桜子がその笑顔を見ることで、すべての苦労が報われた気がした。「本当に美しい......」桜子は呟きながら、その目がキラキラと輝き、心からの喜びを表現していた。手袋をしていないため、手が触れることを恐れて、ただその杯を囲むように動かすだけだった。「それはお前のものだ。好きなように触れていいんだよ」隼人は優しく星のような目を彼女に向け、背後に回り込んで桜子をそっと抱き寄せた。彼の腕が、まるでその杯を守るように、桜子を包み込んだ。桜子は、隼人の熱い息が髪をかすめ、耳元で鼓動を感じるたび、心の奥から熱が込み上げるのを感じた。その熱は、冷たかった首筋や耳元をほんのりと赤く染めた。二人の心拍は次第に速くなり、影が重なり合った。空気の中には、まるで甘い香りが漂っているかのように、酔いしれる感覚が広がった。「隼人、あなた......」桜子がほんの少し唇を開きかけたとき、突然、背中に重みを感じた。隼人は彼女にぐっと寄り添い、細い腰にしっかりと腕を回して引き寄せた。
冷酷社長の逆襲：財閥の前妻は高嶺の花 第677話
隼人は桜子の手をしっかりと握り、空っぽの豪華な廊下を急ぎ足で歩いていた。まるで、世間の束縛から解き放たれた二人の貴族のように、規範を超えて、心躍る逃避行をしているかのようだった。桜子は隼人の背中をじっと見つめ、その広くて頼りがいのある背中に心が揺れ動く。胸が高鳴り、手のひらには汗をかいていた。その瞬間、少しだけ心が動いたことを彼女は認めた。そして、今でも隼人に気持ちがあることを、少しだけ恨んだ。十三年前、三年前に続き、今もこんな簡単な手をつなぐだけで心が動く自分が悔しかった。くっそ！本当に、自分は軽い女だ！隼人は楽しそうに桜子を引っ張り、スイートルームの前で足を止めた。桜子は動揺し、顔を赤くして、彼の手を力強く振りほどいて怒鳴った。「隼人！これはどういうこと？私、桜子の名を持つ者にこんなことをするなんて、許せないわ！今すぐ、兄たちを呼んであなたを引き裂くよ！」隼人は驚き、桜子が誤解しているのを見て、思わず苦笑いを浮かべながら言った。「どこを見てるんだ、桜子。俺がしたかったのはただ、お前に渡したプレゼントをここに預けることだけだよ」桜子は目を大きく開き、唇をぎゅっと結んだ。顔がさらに赤くなった。「兄たちを連れてきても、俺はちゃんと対応できるけど、印象を良くしたいから、今日はちゃんとしたいんだ」隼人の瞳がほんのり暗くなり、彼女に身を寄せる。その目は抑えきれない欲望と共に、わずかな赤みを帯びていた。「もし俺が不誠実なことをしても、お前を家に連れて行くくらいだ」「そんな家、絶対に帰らないわ！本当にうんざり！」桜子はますます恥ずかしくなり、顔を背けてもう彼を見ないことにした。「潮見の邸は、俺の家じゃない」隼人は少し喉を詰まらせ、静かに言った。「桜子、俺は家を持っていない」桜子の心が痛んだ。「これからは、お前と一緒にいることで、初めて家ができるんだ。もしできなければ、俺はホームレスだ」隼人は喉を震わせ、胸に苦しみを詰め込んだ。桜子はゆっくりと、彼の真剣な眼差しを再び見つめた。その目は、まるで長い間病に苦しんでいるかのように疲れ切っていた。その一瞬で、隼人は胸が痛むほど後悔した。焦りすぎた。こんなにも焦る必要はなかった。たとえ本心でそう思っていても、こんなことは言うべきじゃなか
冷酷社長の逆襲：財閥の前妻は高嶺の花 第676話
「でも、分かっているか？お前がこんだけ準備したのに負けた理由。」隼人は感情を表に出さず、冷ややかな笑みを浮かべながら言った。「俺が策略を使ったり、心を攻めたりするのは、桜子を喜ばせたかったからだ。でも、お前の考えはそうじゃない。今夜、白石夫人が体調を崩しているのに無理に宴会に連れて行こうとした時点で、お前は俺の手のひらの上で敗北が決まったんだ」その言葉を残し、隼人は足早にその場を去った。隆一は息を呑んで、目に怒りを滲ませた。宴会は賑やかな雰囲気の中、順調に進んでいた。隼人は初戦に勝利し、心の中で喜びを感じていた。少し外に出て、タバコを吸って一息つこうと思った。その時、後ろから甘い声で名前を呼ばれ、心が一瞬で弾けた。「隼人！」隼人は急いで振り返った。桜子はセクシーなハイヒールを履き、風のように彼に近づいてきた。その澄んだ瞳が輝き、艶やかな髪が揺れ、紅い唇はまるで夜のバラのように魅力的だった。隼人は一瞬、衝動に駆られた。彼女を強く抱きしめ、唇を重ねたいと感じた。桜子が目の前に近づき、二人の視線が絡み合った。空気の温度が上がり、お互いの呼吸が乱れ始める。言葉は交わさず、ただ静かな熱気が漂っていた。「ふふ............今夜、愛子さんにあんな予想外のプレゼントを贈るなんて思わなかったわ」桜子は軽く咳をして、きらきらと輝く瞳で言った。「みんなのプレゼントの中で、愛子さんが一番喜んだのは、あなたが贈った宝冠よ。私が贈ったプレゼントは、すっかりそれに隠れてしまったわ」「え？」隼人は急に顔色を失い、慌てて説明した。「ごめん、愛子さんが喜んでくれると思って贈っただけで、そんなこと考えてなかったんだ.....桜子、すまない、お前の存在をかき消そうなんて思ってないんだよ。お前は愛子さんにとって大切な家族だから、お前が贈ったプレゼントが一番喜ばれてるはずだ」「もう、謝らないでよ。何回謝れば気が済むの？」桜子は眉をひそめ、紅い唇を少し結びながら言った。「そんなに謝られると、私がいつもあなたをいじめてるみたいで嫌になっちゃうわ」隼人は驚いた顔をした。桜子が怒ったり、叱ったりするのはなんとか耐えられるけど、「ありがとう」と言われると、どう反応すればいいのか分からなかった。「実はね、ずっ
冷酷社長の逆襲：財閥の前妻は高嶺の花 第675話
少しも感動していないと言ったら、それは嘘になる。万霆は静かにその言葉を聞き、心の中で大きな感動を覚えた。隼人を見る目が、先ほどまでの敵対的なものとは変わっていた。「隼人、いい心遣いだな。お前の贈り物は本当に気持ちがこもっている。見てわかるよ。大変だったろう」「高城会長、お気遣いありがとうございます」隼人は冷静に答えたが、心臓は激しく鼓動を打っている。手をぎゅっと握りしめて、気持ちを抑えた。隼人............高城会長が、彼を「隼人」と呼んだ。その瞬間、まるで何年も冷たくあしらわれてきた自分が、ようやく桜子の父に認められたような気がした。今夜は、眠れないかもしれない。隆一は、隼人が評価され、高城会長から褒められるのを見て、怒りが胸の中で渦巻いた。彼はとても計算高く、心を攻めるのが得意だが、贈り物一つで隼人に敗れるとは思ってもみなかった！耐えられない！「実は、もう一つ贈り物があります。私と祖父からの気持ちです」隼人は微笑み、清らかな瞳で言った。「私と祖父は、宮沢家を代表して、愛子基金会に60億円を寄付することにしました。これは慈善活動のためです」会場中が驚きの声を上げた。60億円！さすが宮沢家、太っ腹だ！万霆は鋭い目で隼人を見つめ、軽く頷いた。この男、嫌なところもあるが、仕事はしっかりしている。高城会長が100億円を出したことを考えると、隼人が寄付する60億円という金額は少し劣るが、礼儀をわきまえた行動だ。これで、隆一は完全に影を潜めた！裕也は孫の言葉に満足そうに微笑み、隼人に親指を立てた。実は、裕也も後で寄付する予定だったので、タイミングが良かった。達也はそのタイミングを逃さず、楽しげに手を上げて言った。「俺も寄付します！万霆より少し少なめですが、80億円！」会場の人々はなんて太っ腹なんだと感心していた。宮沢家が寄付した以上、盛京で影響力のある白石家も何か出さなければならない！そうしないと、面目が立たないからだ。「ありがとう！」万霆は笑顔で手を振った。商界の大物たちにとって、何十億円という金額がまるで小銭のように軽く感じられるのが、まさに現実だった！「父さんが80億円を高城家に寄付するなんて、ちょっと損だな」健一は不満げに呟いた。「80億
冷酷社長の逆襲：財閥の前妻は高嶺の花 第674話
ふん、なかなか強気だな。「私が用意した贈り物は、特別に高価なものではありません。私はお金ではなく気持ちが大事だと思っています。これが私の誠意です。愛子が気に入ってくれると嬉しいです」隼人は謙虚で落ち着いた態度で言った。桜子は顎を支えて腕を組み、じっと隼人を見つめて眉を少し上げた。いつも冷酷で高飛車な隼人が、こんなにフレンドリーに振る舞うのは珍しい。ふん、うまく演技しているな。「隼人様からの心意なら、見てみましょうか」万霆は淡々と口を開き、少し渋い顔をした。愛子は苦笑し、隼人に対する嫌悪感がDNAに刻まれていると感じていた。隆一は万霆の表情を密かに観察し、思わず笑いそうになった。隼人がどんなに取り繕っても、桜子を傷つけた事実は変わらない。それが高城家全員にとって許されないことだ。犯した過ちは、どんなに努力しても無駄だ。愛子と万霆は一緒に赤い布を引き剥がした。その下に、透明なガラスの箱の中に、金で作られ、真珠が飾られた豪華な宝冠が静かに置かれていた。その瞬間、愛子の瞳が大きく見開かれ、心臓が激しく鼓動を打ち、目の奥が赤く染まった。「愛子？愛子？どうしたんだ？」万霆は愛子の様子が変だと気づき、彼女の手を握って優しく問いかけた。愛子はすぐに気を取り直し、涙をこらえながらも、満面の笑顔を見せた。「万霆、宮沢社長が送ってくれた贈り物、本当に気に入ったわ......本当に、本当に好きよ」その温かい声はマイクを通して会場全体に響き渡り、すべての人々がその真心のこもった言葉を聞いた。高城家の全員が驚き、桜子も呆然としていた。桜子には理解できなかった。見た目は精緻な工芸品だが、素材には特別な価値がない宝冠が、どうして柔ちゃんの心に響いたのか。「愛子、どういうことか、ちょっとわからないよ......」万霆は迷った顔で言った。愛子は急いで説明することなく、目を輝かせたまま隼人を見つめ、「宮沢社長、この宝冠はどこで見つけたのですか？」と尋ねた。「話すと長くなりますが、何度も探した結果、引退した道化師のところで見つけました」隼人は真剣に答えた。「その方はこの金の冠をずっと大切にしていたんです。私は高額で買いたいと言いましたが、どうしても売ってくれなかったんです。でも私が心から贈り物にしたいと伝えると
冷酷社長の逆襲：財閥の前妻は高嶺の花 第673話
桜子は自然と背筋が伸び、心臓の鼓動が速くなっていくのを感じながら、台上をじっと見つめていた。優子はすぐに桜子の様子に気づき、その瞳にわずかな変化があるのを感じ取った。会場の目が再び、隆一から台上に移った。「へへ！孫が送った贈り物だ！孫が送った贈り物だぞ！」裕也は樹の肩を叩き、次に達也の肩も叩きながら興奮して言った。やっぱり孫はやってくれる、どうしても白石家のこの頭の良さそうな小僧に目立たせたくない！「おい、達也、お前の息子、小春に興味があるんじゃないか？」裕也は白い眉を上げ、得意げに聞いた。「小春？」「え、ああ......桜子のことだよ。小さいころからそう呼んでるから、つい」裕也はすぐに言い直した。達也はしばらく黙ってから口を開き、「うちの隆一は遊びすぎていて、何を考えているのかよくわからない」「わからない？」裕也は頬に舌をあてながら、にやりと笑って言った。「高城家の愛子の誕生日に、お前の息子が6億以上する骨董品を贈ったんだろ？これは万霆の好みにピッタリじゃないか。どうやら、お前の息子は桜子のことかなり本気らしいな」「若い子たちのことだから、俺はよくわからない」達也は苦笑しながら答えた。「まあ、それもそうだろうけど、ちょっと言わせてもらおう」裕也は背もたれに体を預け、満足そうに眉を上げた。「桜子はきっとうちの孫と一緒になる運命だよ。だから、長輩としてのアドバイスだが、達也、お前は帰ったら息子に言っておけ。世の中にはいくらでも素敵な人がいる。隆一の才能は素晴らしいが、もっとふさわしい相手がいるだろうから、無駄な時間をかけるな」達也は思わず驚き、少し困った笑顔を浮かべた。隣に座る樹も表情を変え、何気なく唇を引き上げた。裕也の言動は、実に予測不可能だ。それは若い頃の彼がどれほど個性的で決断力のある人物だったかを物語っていた。その背後で、完璧な美しい顔に冷徹な表情が浮かんだ。彼は隼人が贈り物をすることは予想していたが、まさかこれほど派手にやるとは思っていなかった。その時、司会者が再び赤い布をかけた大きなトレイを運んできた。同時に、隼人の後ろから静かな足音が響いた。隼人は冷徹な目で振り返り、堂々と現れた。彼の立ち姿は落ち着いていて、まるで絵から飛び出したように美しかった。「愛子様、
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