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第2話

Penulis: 果林
病院のエレベーターは、いつもなかなか来ない。

粥が冷めるのが怖くて、私は階段を走って上がった。

十九階。一階上がるごとに立ち止まって何度も息を継がなければならず、肺の中は火が燃えているように熱かった。

病室のドアを押し開けると、そこにはすでに父・結城浩司(ゆうき こうじ)がいた。

彼の手にはピンク色の紙袋が提げられており、そこには最新のタブレット端末のロゴが印字されていた。

結愛はベッドの背もたれに寄りかかり、タブレットを抱きしめてキャッキャと笑っていた。

「ありがとう、お父さん!私、お父さんがだーい好き!」

父は満面の笑みで甘やかすように手を伸ばし、彼女の鼻先を軽くつついた。

「結愛が喜んで早く病気が治るなら、お父さんは何を買ったって安いもんだよ」

母はその横でハンドクリームを塗っていた。

部屋の中には温かな香りが漂っていた。それは、家族の匂いだ。

私だけが、のけ者だ。

私は少し冷めかけた粥を抱えたまま、どうしていいか分からず立ち尽くしていた。

「戻ったのか?」

父が私をちらりと見ると、その笑顔が少しだけ引いた。

彼は足元の袋から無造作にパンを一つ取り出すと、こちらに向かって放り投げた。

「まだ食べてないんだろ?」

カチカチに硬いパンが胸に当たり、ひどく痛んだ。

俯いて見てみると、それは一番安いあんパンで、パッケージには目立つ黄色の見切り品シールが貼られていた。

賞味期限間近の特売品。

一方で、結愛のベッドサイドのテーブルには、綺麗なティラミスと輸入品の牛乳が並べられていた。

私と結愛は双子だけれど、彼女は生まれた時から体が弱かった。だから、家のものは当然すべて彼女に優先して与えられた。

両親の愛情も含めて。

「ありがとう、お父さん」

私は小さな声でそう言い、腰をかがめてパンを拾い上げた。

食べられるだけマシだ。祖母は、人は満足することを知るべきだと言っていたから。

「お父さん」

結愛が突然タブレットを置き、唇を尖らせた。

「路地の入り口にあるお店の甘栗が食べたいな。お口の中が苦いの」

窓の外はどんよりと暗く、土砂降りの雨が降っていた。

父は窓の外をちらりと見て、少し躊躇した。

「結愛、外はすごい雨だから、雨が止んでからにしないか?」

結愛の目の縁が途端に赤くなった。

「やだ、私、今すぐ食べたいの。ゴホッ、ゴホッ……」

彼女が咳き込んだ途端、両親が慌てふためいた。

母は急いで背中をさすり、父もオロオロと落ち着きなく動き回った。

「わかったわかった、食べよう。お父さんが今すぐ買ってきてやるから!」

父が傘を手に取ろうとした時、視界の隅に部屋の端にいる私を捉え、その手がピタリと止まった。

「望美。結愛が甘栗を食べたいそうだ。ちょっと買ってきてくれないか。

俺とお母さんは結愛の世話から離れられない。お前は若くて足も速いんだから、ひとっ走りしてきても平気だろう」

私は一瞬呆然とした。具合が悪いと言いたかった。外はひどい雨だと言いたかった。

だけど父の目を見た瞬間、その言葉はすべて喉の奥へと飲み込まれた。

「うん」

私は一口かじっただけのパンを置き、振り返って雨の中へと歩き出した。

私に傘はなかった。

唯一の傘は父が玄関に置いていたけれど、彼は私にそれを持っていけとは言わなかった。

私も、持っていく勇気はなかった。

雨水が体に打ちつけ、頭はさらにクラクラし、足元の道が揺れているように見えた。

それでも立ち止まるわけにはいかなかった。お店が閉まってしまうのが怖かったし、母に役立たずと怒られるのが怖かった。

路地の入り口は、病院から三本も通りを隔てた場所にあった。

水溜まりは足首まで浸かり、靴の中は泥水でいっぱいになった。

甘栗を買った時、店のおかみさんは私をまるで怪物でも見るような目で見ていた。

「お嬢ちゃん、こんな大雨の中、傘もささないなんて。親達はどうしたの?」

私は無理に微笑んだだけで、何も答えなかった。

ほかほかの甘栗を胸の奥にしっかりと抱き込み、自分の体で雨風を凌いだ。

帰り道、私はあまりにも急ぎすぎていた。

水溜まりの前で足を滑らせ、膝を縁石に強く打ち付けてしまった。

慌てて胸の甘栗を確認した。幸いにも紙袋は破れておらず、甘栗はまだ温かかった。

私はほっと息をつき、足を引きずりながら病院へと戻った。

病室に戻った時、私の全身からはボタボタと水が滴り落ちていた。

母が声を押し殺して言った。

「今まで何やってたのよ!足音がうるさい!結愛がやっと眠ったところなのに!」

甘栗を抱えていた私の手は、宙に浮いたまま硬直した。

父はソファに座ってスマホをいじり、私を一度も見ようとはしなかった。

「机に置いとけ。水浸しじゃないか、早く拭いてこい。結愛に病気をうつすなよ」

私の膝からまだ血が流れていることに、誰も気づかなかった。

私が寒くないかと聞いてくれる人も、誰もいなかった。

私は黙って病室を出し、廊下の椅子の上で小さく丸まりながら、机の上に放り出された甘栗の袋を見つめた。

結愛は目を覚ましても、きっと食べないだろう。

冷めてしまった甘栗には、彼女はこれまで一度も手を出したことがないから。

私が命を削るようにして買ってきたものは、最後には高い確率でゴミ箱行きになるのだ。

深夜。手首の香を見ると、すでに三分の一が燃え尽きていた。

私は誰もいない空気に向かって、小さな声で尋ねた。

「死神のおじさん。人は死んだら、本当に魂が残るのかな?

私、お母さんが私のために一度くらい泣いてくれるか、見てみたいな」

虚空はただ静まり返り、誰も私に答えてはくれなかった。

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