Share

13.

Author: satomi
last update Last Updated: 2025-09-24 09:40:14

俺は初めてこの身を捧げてもいいという女性に出会った。

侯爵としては異例かもしれないけど、それでもいい。彼女が俺の子を産んでくれたら…。

場所は王宮。彼女はしがない王宮の侍女だった。といっても王宮で侍女をするくらいだからそれなりに爵位のある家の子なんだろう。

他の子よりも凛とした態度・それを体現するかのようなストレートの銀髪・白い肌・こちらを見透かすような深い藍色の瞳。

俺は出会ってすぐに求婚した。

他の男に取られてたまるか。彼女は俺のものだ!

こうしてヴィックスは産まれた。

「ねー?ロマンティックでしょう?」

と言われても…。まず、男が‘この身を捧げてもいい’とかおかしいし。そういう事は女の台詞だと思う。

「久しぶりにヴィックスのおかーさんの夢見ちゃった♡」

あぁ、逃げられたおふくろな。俺が学園初等部くらいの時に家を出ていったんだっけ?

「親父、昔は一人称が‘俺’だったのか?」

「一応ね。カミングアウトするまでかな?」

俺が学園の初等部くらいでの父兄参観日までは一人称が‘俺’だったのか…。

「俺は親父が男の格好してると、できる男!って感じで好きだけど?」

「うーん、ヴィックスに好きって言われるのは嬉しいけど、この格好の方が自分らしいのよねぇ。だからやめられないかな」

親父はなんだか申し訳なさげだったけど、‘自分らしさ’を追求するのもまたアリだなぁと思って俺はそんな親父も止めない。

「そうだ!ケネス帝国は跡継ぎどうするんだよ?」

「あぁ、あの国は血筋とか気にしないらしい。力のある人が皇帝になる。…みたいな。かといって内乱があるわけじゃなくね?皇帝が次の皇帝を指名するみたいよ、こうちゃんが言ってた」

そんな話もしたのか。

Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter

Latest chapter

  • 2大商会の設立とその後   第7章 努力の結果面倒嫌いな伯爵

    私の主である、フレデリック=ホーラ伯爵様は世間では、眉目秀麗・才色兼備の天才でなんでもすぐにマスターしてしまうと言われている。私は知っている。その陰で主が物凄い努力をしたことを!そして、その反動でいまでは面倒な事が嫌いな方になってしまったことを!「フレデリック様、朝ですよ。起きて下さい」「え?起きるの面倒だなあ」「寝たままでは食事もできません。それから、本日は『ラルク商会』との商談があります」「はぁ、面倒だなぁ。誰がそのスケジュール決めてるの?」「多くは私が決まていますが…『ラルク商会』との面談はあちらにも予定がありますから、あちらの都合に合わせています。っていうか、起きろよ。このポンコツ!商談があるって言ってるだろ?」私はフレデリック様の乳兄弟で幼馴染なので、このような言葉遣いで接してしまうのです。「二重人格なのかよ?」「一応従者としての口調で話してただけだ。さっさと起きろ!そして、支度をしろ。面談だ」遅れましたが、私の名はデイヴィス=サターン。よくフレデリック様に悪魔みたいな名前だな。と言われます。その度に母からゲンコツ落とされてるのですが…。「で、フレディ。『ラルク商会』とは何を面談するんだ?」「はぁ、そんなことも把握してないんですね。この度、『ラルク商会』で東方の国の酒を用いてカクテルを作ることになったんですよ。そのカクテルと混ぜる酒の候補として我がホーラ領地で作られる数々の酒が候補に挙がっているのです。その話ですよ。はぁ」「酒の話か。それはいい話だな」「酒を用いるという事は利権が絡んできますから、当然何パーセントがホーラ領地に還元されるのか?って話です。そもそもが使ってもらえるのか?という所からのスタートのなりますけど」この男は寝起きは悪いし、使えないと思われがちだが、起きてしまえばこっちのもんで商談とか得意だから放っておいて大丈夫だろう。その昔、フレデリックはぽっちゃり体形でした。たいして才能もなく絵心もなく、前伯爵が危惧するほどでした。「デヴィ…。俺はどうすればいい?」「努力すればいいんじゃない?」俺のその一言がフレデリック様を本気で努力させました。3食以外の無駄な食事を一切しなくなりました。加えて、私設の騎士団と共に訓練をするようになりました。最初は少しでへばっていましたが、最終的には団長とやり合うほ

  • 2大商会の設立とその後   第6章 俺の話を聞いてください。

    誰も俺の事を理解することはないだろうとは思っていなかったけど、ここまでとは思わなかった。ちょっと酷いと思うので、俺の話を聞いて下さい。お願いします。この通りです!!切に願います!!俺は…一応公爵家の3男です。次男の様に、長男のスペアというポジションでもないので、まぁ親の俺の接し方はそんなもんだろうと思う。特別に大事にもしないし、気にもかけない。でも世間体というものがある。みたいな感じだろうか?それでもおかしいと思う。何がおかしいって、俺がさぁ。絵画展で入賞したとする。実際したことあるけど。かけられる言葉は、「どの使用人に描かせたの?」だ。俺が描いたんだけど?おかしくね?他に学園の試験で主席を取った時、かけられた言葉。「カンニング?公爵家に泥を塗るんじゃないわよ?」だ。実力なんですけど?剣術の大会で優勝した時にかけられた言葉。「なんで同年代の王家の子を勝たせなかったの?奇跡的にあんたが優勝したみたいだけど?」など。どう考えてもおかしいと思うだろ?思って然るべきだと俺は思うのです。そして、親がかけるべき言葉はまず俺自身を褒めろ!なぜ?他の人物とかカンニングとか俺が“できない”人間だと決めつけているのか俺にはわからない。え?その頭脳と剣術で下剋上?…フフフ、それは面白そうですね。やってみましょうか?翌日より俺はまず自分の兄達の実力がどの程度なのかを知ろうと思った。まずは知ることから始める。なんだ、二人の兄はどんな大会でも入賞経験がないのか…。剣術においても頭脳においても俺の方が勝っているという事は明らかだな。これが親が俺を褒めない理由だろうか?兄達に入賞経験がないというのにあっさり入賞した子を褒める訳にはいかない。と。なんてくだらない理由だろう?そんなことで俺はいちいち傷ついていたのか?馬鹿らしい。さて、公爵家の当主の座をいただく?そんなみみっちいことを俺は考えない。兄達には到底できないようなことを俺はしようと思う。そして、兄達は悔しがるといいさ。俺の目標は『ラルク商会』の商会長の警護。俺の頭脳と剣術で『ラルク商会』の商会長のガードをするようになるのだ。すると必然的に各国の有力王侯貴族と顔合わせる機会が多くなる。たかだか一国の公爵など相手にならない。 俺は早速『ラルク商会』の商会長に書簡を送った。数種類の言語を用い

  • 2大商会の設立とその後   第5章 男物の制服がないから女装をする羽目になった…。

    「きゃー!」「ちょっと押さないでよ!見えないじゃない!」「ああん、今日も素敵!」黄色い声援の中を俺は学園に進む。…この格好でなければ。ここケネス帝国国立騎士養成学校は元々は完全なる男子校。しかし、近年少子化により共学化。果ては男子が極端に少なくなり(ほぼ絶滅危惧種)、俺は女装してこの学校に通うこととなった。今は最上級生。今年で卒業。卒業後は準騎士かなぁ?はやく一人前の騎士になりたい…。俺の名は。ジェニファー=ルイス侯爵令息だけど、女装してるから今は令嬢?女子高ってこんななのか?男っぽい女がやたらとモテる。女だぞ?制服だって最近は肩幅が出てきたから、肩回りがピチピチだ。胸がピチピチの女子もいる。俺の家の侍女曰く、「ジェニファー様は胸が足りない分胸筋+パッドで誤魔化します。貧乳設定にすればいいのです。」だそうだ。出てきた肩幅はどうするんだろう?「ジェニファー様は体形も男らしくって髪型もショートでしょう?サッパリしていて素敵よね」と、この学校での評価。制服効果ってスゴイと思う。そんな俺が校外で私服で歩いていると、「うわっやば。同じ学校の女じゃん」と思うが、「何あの男?私見て身構えてんの?別にとって食わないっての。自意識過剰も恥ずかしくない?」等というのだ。そうそう、ケネス帝国では男が絶滅危惧種なので、強制的に体液を採取され、体外受精され、国民が国に管理されている。近親相姦にならないように。皇帝とて例外ではない。この中に皇帝の娘がいても不思議じゃないのだ。ケネス帝国国立騎士養成学校なので、俺は騎士(正騎士)を目指している。俺の学術…成績はまぁ中間かなぁ?ただ、体育のかわりとなる騎士の剣術の授業となると、俺に敵うものはいない。当たり前なんだけど。体力で女子は男子に敵わないから。「ジェニファー様、素敵―」「剣術の授業、私も選択すればよかった」などの声が聞こえる。男性を国が管理しているので俺が女装して国立騎士養成学校に通っていることは国も知っている。公然の秘密というのか?どうやら、魔物が大挙してきているらしい。俺は剣術の授業でも負けなしなので、討伐に借りだされた。「ジェニファー、なんだよ。その格好!超笑えるんだけど?」「俺の腹筋を破壊する気なのか?」など、討伐に参加する騎士達に俺はものすごくいじられる。重要な事なので、もう

  • 2大商会の設立とその後   20.

    もう孫も抱いたし、満足ね。ヴィックスが帰ってきたら、爵位をヴィックスに譲るって言おう。余生は領地でのんびり過ごしたいなぁ。「旦那様、それはなりません!」「どうしたのモール?」「ヴィックス坊ちゃんは王宮での仕事があります。加えて侯爵の仕事となると、かなりの仕事量となります。よって、旦那様にこのまま侯爵としての仕事をしていただきたく思うのです」確かにね。仕事一辺倒だと、子供と遊ぶ暇もないわ。それはちょっと不憫ね。「わかったわよ、余生とか言わないから。モールこそ、長生きしてよね。只今モールの息子を執事として教育中です」「モール、結婚してたんだ?」「ふぉっふぉっふぉ」トロの嫁さん、じゃなくて王太子妃は王妃教育も終わってるし、私は譲位してのんびり孫たちと遊んで暮らそうかなぁ?「陛下!譲位した国王というものは王都を離れ、遠い領地にある邸で暮らすのが定石ですよ?それを孫たちと遊んで暮らすなど…陛下ともあろうお人が嘆かわしい!」「いや、悪かった。王妃機嫌を直しておくれ。まだまだ現役で国王をする。トロもまだ国王の器としては小さいからな」「サツキ王太子妃は確かに王妃教育は終わってるんですけど、実践が足りないんです。実際にお茶会ではどのように扱われるのか、夜会では?など、まだまだ学ぶことはあります」「うむ」「今回、運よく男の子を授かりましたが、もう一人くらい男の子がいると安心です。女の子がいると外交的にも安心できます。それが王妃なんです」「はぁ」「なんで平民のように一人でいいなんて思わないでもらいたいわー」トロ、頑張れよ。トロと俺が親父たちに振り回される生活はまだまだ続きそうだ…。はぁ。

  • 2大商会の設立とその後   19.

    トロは王太子として仕事をするようになった。その右腕としてヴィックスが採用された。二人の愛妻の妊娠も同じ時期なので、ヴィックスの妻であるレイラが乳母に任命された。レイラとサツキは気が合ったようで、いつも二人で話をしている。そこに男が入り込もうとすると、怪訝な顔をされる。仕方なしにトロとヴィックスは王宮の一室で酒を飲み交わすようになった。「俺のレイラは可愛いだろう?親父も大層気に入っていてな?二人で買い物に行っていたりして、二人が姉妹とか親子に間違えられたって親父が嬉しそうに報告してくるんだよ」「俺のサツキこそ最高だ!普通は3年はかかる王妃教育を1年で終わらせる体力に知力。他には変わりが出来ないだろう?」「俺のレイラ!」「俺のサツキ!」酔うといつもどちらの嫁が最高かを競うようになる。素面だったら絶対に口に出さないのに。「うおー、頭痛てー!」「あなた、酔いすぎです。殿下と何を競っていてんですか?」言えない…どちらの嫁が最高かなんて。殿下も今頃二日酔いだろう。殿下は王家御用達の専属医師に診てもらっていた「二日酔いです」バッサリ斬られた。一応薬を処方してもらえたのでよかった。まぁ、レイラが乳母になって事で俺はレイラにも子供にも簡単に会えるけど、子供を親父には会わせたくないからな。それが守られて良かった良かった。「ヴィックスの親父さん、ケネス帝国に情報を提供した功績を称えて、王宮のフリーパスだぞ」陛下から無情な言葉を聞いた。聞いてしまった。何てことだ!子供の目に親父が写ってしまう。それだけは避けねばと思っていたのに。俺はどうすればいいんだ?トロ曰く「諦めなよ」。そうなのかなぁ?いよいよ出産で、なんとトロと俺の子供の誕生日が同じという事になった。これは…無邪気な子供の頃はいいけど、だんだんと生誕祭とかするようになると恨めしくなるパターンか?トロの子供は男の子(世継ぎだ良かったね)黒髪でチラッと見た眼の色は深い緑。俺の子供は女の子の双子。絶対に嫁にやらんぞ。二人とも銀髪で灰色の目。「いや~ん、可愛い!みんなうちの子?」「この子はうちの子です!」ズルいな、トロは自分の子をガードした。「え?それじゃあ、女の子二人がうちの子?レイラちゃんご苦労様~♡名前は?」「これから熟考するんだよ!」「ふーん」実は名前は決めてある。シルフィとフロー

  • 2大商会の設立とその後   18.

    俺の方は相手が見つかったので、お見合いという形になった。親父には場所を知らせていない。執事のモールには知らせてるけど、親父には言わないように口止めしている。「ヴィックス=カイスターです」眼前の女は商会で散々世話になった女。「レイラよ。商会の時は言ってなかったけど、うちも一応侯爵家ライレルク王国のだけど」なんだか気が抜けた。「はぁ、なんだよ。一気に緊張感なくなった」「失礼ね。あ、そうだ家名。ハリ侯爵家よ。うちは弟が継ぐから私は自由よ」それでバード商会にいたのか。「俺が侯爵家令息だってバレた時とか、対岸の火事って感じだったのか?」「まぁね~」こんな調子でお見合いは続いた。俺は結局レイラと結婚することにした。俺の親父と彼女との初対面。「親父、かなり特殊な性癖というか、見た目だけど気にしないでほしい」「わかった。かなり緊張する~!!」「ヴィックス~!その子がレイラちゃん?いや~ん若いから肌がピチピチ。羨ましいわ」「あの…」「こんな親父でなんかゴメン」「え?この方がお義父様なの?後妻さんかと思った」「お義父様っていいわね。後妻ねぇ。これでも一途なのよ」「この親父、出ていったおふくろを想い続けてるんだよ。ある意味気持ち悪いよな?」「気持ち悪いとか言わないでよ!プンプン!」彼女曰く「緊張してなんか損した気分」。そうだよな、わかる。難航したのはトロの縁談の方だ。公爵家又は王家で妙齢。見た目がそこそこ性格が◎の娘とはなかなかいない。商会長は仕方ないので、侯爵家まで爵位を下げた。すると、当たりがあった。オサナイ侯爵家。早速トロに報告。トロはアーバンクルク王国の国王に報告をし、こちらもお見合いをすることとなった。東方の国の鹿威しが鳴る一室でお見合いすることとなった。「初めまして、トロ=デ=アーバンクルクです」「うふふ、初めましてじゃないわよ?仕事でよく会ってたでしょ?」「あっ、荷物が重いときとか私が代わってたあの娘かぁ」「その節はありがとうございました。まさか王子様とは…」「でも、おかげで君は数カ国語が読めるんだよね?」「発音も書くこともできないけどね」「えーっと名前は?」「サツキ=オサナイよ」「うーん、サツキ。俺と結婚となると、結婚前に王妃教育しなきゃなんないんだ」「体力には自信があるんだけど?」「知力だよ?

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status