CRUZ

CRUZ

last updateLast Updated : 2023-01-28
By:  Becky AnyanwuOngoing
Language: English
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Philip Cruz, the older son of Manuel and Maria Cruz, takes over the CRUZ company. He employs a young lady, Clara Hamilton and unknowingly falls in love with her. During his search for Clara's background information, he discovers that she is the daughter to the woman and man who maltreated him and mother in the past. As a means of retribution, Philip plots schemes to deal with Clara and her parents. But will he realize his love for her and accept it or will he continue his dangerous schemes just to bring them down to their knees?

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Chapter 1

CHAPTER 1

流産の手術を受けたその日、夫の福山京介(ふくやま きょうすけ)は「親友」の個展のために、プライベートジェットでパリへと発った。

翌日、ネット上を席巻したのは、セーヌ川のほとりで唇を重ねる二人の写真。

さらにその「親友」は、薬指にペアリングが光る手の写真をSNSに投稿し、気取った一文を添えていた。

【真実の愛に、言葉はいらない】

抜け目なく、京介のアカウントがタグ付けされている。

私は乾いた笑みを漏らした。名門・矢代(やしろ)家の跡取り娘であるこの私、福山蘭(ふくやまらん)が、まさか男の恋人のカモフラージュにされていたとは。

上等だわ。けれど、この私を欺いた代償――払いきれると思わないことね。

……

ネットでの炎上騒ぎが三日続き、ようやく京介がパリから帰国した。

その傍らには、例の写真に写っていた張本人、立花晴人(たちばな はると)の姿もあった。

玄関を入るなり、晴人は糸が切れたように京介の胸へと崩れ落ちる。

「京介……めまいが……」

京介はすぐさまその細い体を抱き留め、私を見上げると眉間に深い皺を寄せた。

「蘭、ネットの件は本当に悪かったが、晴人は重度の鬱なんだ。今回の騒動で自殺未遂まで起こして……連れて帰るしかなかった」

まるで今夜の献立でも読み上げるような、淡々とした口調だった。

そこには一片の弁解もなければ、私への労わりもない。

京介に抱きかかえられた「繊細な」男を見つめ、口元だけで笑った。

「福山家と立花グループのAI医療プロジェクト、株価が三日で三十ポイント暴落したわ。時価総額にして数十億が吹き飛んだ」

私は冷ややかに告げる。

「それなのに、あなたの口から出るのは、彼の鬱の話?」

京介の表情に苛立ちが滲んだ。

「金で済む話なら、大した問題じゃない。晴人の命の方が大事だ」

彼は晴人を支えたまま、噂でしか知らない存在である晴人を、堂々と我が家へ連れ込んだ。

「会社のダメージは俺がなんとかする。だから彼を追いつめるような真似はするな」

私はその場に立ち尽くし、密着した二人の背中を見送りながら、全身の震えを抑えられずにいた。

流産手術による身体の消耗など、この瞬間に胸へ広がった冷たさに比べれば、あまりに些細なものだった。

深夜、喉の渇きを覚えて階下へ降りた。

キッチンから微かな物音がする。

そこには、京介の白シャツを纏った晴人の姿があった。ゆったりした裾から覗く、華奢な脚。

不慣れな手つきでミルクを温めている彼は、私に気づいて大仰に後ずさった。

「蘭……さん」

震える手からこぼれたミルクが、手の甲を濡らす。

「あっ!」小さな悲鳴があがった。

次の瞬間、京介がゲストルームから飛び出してきて晴人の手首を掴み、痛ましげな眼差しを向けた。

「何やってんだ!」

慌てた様子で晴人の手を冷水に晒し、振り返った京介の目には非難の色があった。

「何の用だ?驚かせただろう」

私はドア枠に背を預け、冷めきった瞳でその茶番を冷ややかに眺めていた。

晴人は京介の背に隠れるように身を寄せ、潤んだ瞳で私を見上げながら、か細い声を絞り出す。

「蘭さん、ごめんなさい……わざとじゃ……ただ京介にミルクを温めてあげたくて……僕、何もちゃんとできなくて」

私は笑みを深め、ゆっくりと歩み寄った。

手を伸ばし、ミルクで濡れたシャツの生地を指先でなぞる。

「京介のシャツはイタリア製のオーダーシルクよ。熱に弱いの」

視線を上げ、動揺に揺れる晴人の瞳を射抜いて、あからさまな嘲笑を浮かべた。

「立花さん、次に『当てつけ』をするなら、もう少し安い小道具を選んだら?」

晴人の顔色が見る間に蒼白になる。

京介が素早く彼を庇い、失望を滲ませた目で私を見た。

「どうしてそこまで意地悪を言うんだ?」

……

翌朝、眩い陽光に包まれて目を覚ました。

階下へ降りると、いつもは冷え冷えとしたこの家に、初めて生活の温もりが漂っていた。

京介と晴人がサンルームにいた。

一人はパレットを、もう一人は筆を手に、未完成の油絵について語り合っている。

まるで一枚の絵画のような、調和の取れた光景。

そこに私は、紛れ込んだ異物に過ぎない。

近づいてようやく、キャンバスに描かれたものが見えた。

寝室の窓から望む景色は、私が何より愛した、薔薇の生垣だ。

胸の奥が締め付けられ、喉元まで苦しさが這い上がってくる。

私が足を踏み入れた途端、その調和は脆くも崩れ去った。

京介は筆を置き、何事もなかったような顔で言った。「起きたのか」

「流産の診断書、もらってきたわ」

私は診断書を彼の前に置き、抑揚のない声で告げた。

「医師から絶対安静を指示されたの。でも、家が騒がしくて……」

京介の視線が一瞬だけ診断書に留まり、すぐに逸れた。

顔を上げた彼の目には、私が最も嫌う光――有無を言わせぬ、一切の反論を許さない強引さが宿っていた。

「晴人の精神状態がやっと落ち着いたんだ。今出て行かせるのは、死ねと言うのと同じだぞ」

私の胸の中で、どす黒い苛立ちが膨れ上がった。

「じゃあ彼の精神状態のために、私の体はどうでもいいわけ?法律上の妻は私なのよ、京介!」

私が声を荒げると、彼はますます不機嫌そうになった。

そんな彼に思わず詰問した。「結局、あなたが欲しいのは私?それとも……彼?」
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