The Huntress

The Huntress

last updateLast Updated : 2023-07-06
By:  JD FaberOngoing
Language: English
goodnovel16goodnovel
Not enough ratings
90Chapters
3.0Kviews
Read
Add to library

Share:  

Report
Overview
Catalog
SCAN CODE TO READ ON APP

The Huntress is the continuation of the story Hunter's Revenge. The Huntress is the third installment of the Hunted Trilogy. Hunter's Revenge is the story of how Hunter and Sienna met and the trials their relationship goes through. It's also a transformative story in which Sienna goes from being the innocent Stone Princess to a suspected killer. After the death of her best friend, Sienna's life is never the same. Sienna blames herself for her part in Rylee's death and begins a journey to fulfill Rylee's dreams, giving up on her previous aspirations. Hunter's Revenge ends when Sienna is placed in a pivotal moment. She can either decide to go back to living her Princess lifestyle, or she can choose to fight for what she believes in. The Huntress is the story of the birth of the new Sienna. The powerful assassin that doesn't let anything get in her way. How far will Sienna go in the name of justice, and will she get the love she so desperately craves from Hunter? Or will she be forced to move on? They say if you love something, you should set it free. But what if that very act is what denies you of your true happiness?

View More

Chapter 1

1. Things Just Got Grimm

 ――私、朝倉 結(あさくら・ゆい)は、七年間、ただの「可愛い妹」という安全な檻の中にずっと隠れ続けていた。

 シャンパングラスの触れ合う乾いた音が、分厚いガラス戸の向こうでくぐもって聞こえる。

 九月の夜風はまだ生温かく、首筋に張り付いた後れ毛をわずかに揺らした。息苦しいホールから逃げ出すようにテラスへ出て、薄暗い庭園の奥へとヒールを進める。芝生が沈み込む感触を足の裏に確かめながら、ようやく肺いっぱいに夜気を吸い込んだ。

 きつく締め付けられたコルセットのせいだけではない。会場に足を踏み入れた瞬間から、ずっと背中に焦げるような熱を感じていた。

 振り返らなくてもわかる。フロアの中心で、常に誰かに囲まれているあの人――高遠 玲司(たかとお・れいじ)。高遠グループの若きCEOであり、長年、兄の親友として家に出入りしていた男だ。

 十四歳の夏、初めて書斎で会った時のことを今でも覚えている。アメリカ人の母親譲りの色素の薄い瞳。周囲を寄せ付けないような冷たい空気を纏っていた彼が、ふと見せた不器用な笑み。

 あの日から七年間、私にとって彼は「優しくて少し遠い、お兄さんのような存在」だった。いや、そう思い込もうとしていた。二十一歳になった今でも、彼に対するひどく重たい感情を、誰にも気づかれないように心の奥底へ押し込めて。

 名前をつけてしまえば、今までと同じ顔ではいられなくなる気がしていた。兄の親友を見るだけで胸が騒ぐ自分を、私はずっと見ないふりをしてきた。

 けれど、数週間前。兄の会社へ忘れ物を届けに行った日を境に、何かが少しずつ変わり始めている。

 すれ違いざまに向けられた、あの眼差し。妹を見るような、頭を撫でるような温度ではなかった。肌の奥まで見透かすような、重く深い視線。

 思い出すだけで、鎖骨のあたりが粟立つ。

 ふと、甘い葉巻と、微かなシトラスの香りが鼻腔を掠めた。

 冷水を浴びたように足が止まる。

 生け垣の向こう側。月明かりだけが頼りの薄暗がりの中に、背の高い影が立っていた。

 間違いない。テーラーメイドのダークスーツに包まれた広い肩幅。少し無造作にセットされた前髪の隙間から見える、高い鼻梁。

 手には火のついていない葉巻。そしてもう片方の手で、小さな何かを弄んでいる。

 月光がその表面を反射して、きらりと光った。

 息を呑む。銀色の、小さな星型の細工。先日私がどこかで落としてしまったはずのヘアピンだった。

 なぜ、あの人がそれを持っているのだろう。しかも、指の腹でその縁をなぞる仕草は、ひどくゆっくりで、まるで大切で壊れやすいものに触れるかのような熱を帯びていた。

「……結」

 低い、ざらついた掠れた声が、静寂に落ちた。

 家族しか呼ばないその名前を口にされる。ただそれだけのことなのに、鼓膜の奥が痺れ、心臓が肋骨を突き破りそうなほど跳ね上がった。

 もしかして。

 ほんの少しの自惚れと、七年分の重たい感情が、胃の底からせり上がってくる。ただの「親友の妹」ではなく、自分は彼にとって特別な存在なのかもしれない――。

 期待と戸惑いが入り混じる中、一歩、無意識に足を踏み出そうとした。

 その時、ヒールの先が小石を弾いた。

 カツッ、という音が不自然なほど大きく響く。

 しまった、と思った時にはもう遅かった。影が動きを止め、ゆっくりとこちらを振り返る。

 目が、合った。

 一直線にこちらを射抜くような鋭い瞳。全身の血が逆流する。突然のことに動揺し、彼の顔をまともに見ることもできない。

 (逃げなきゃ!)

 咄嗟にドレスの裾を掴み、踵を反して走り出す。背後から名前を呼ばれた気がしたが、振り返る余裕などなかった。

 逃げ帰るように戻ったホールは、むせ返るような香水とアルコールの匂いが充満していた。

 指定された円卓に戻り、冷たい水を一気に飲む。乾ききった喉が、ヒクッと鳴った。

 (大丈夫、追ってきている気配はない。暗かったし、人違いだと思ったかも……)

 そう自分に言い聞かせた直後、ふわりと、あのシトラスの香りが隣に落ちてきた。

 ビクッと肩が跳ねる。

 隣の空席に、あの人が腰を下ろしたのだ。できるだけ彼を避けようとしていたのに。

 周囲の空気が一瞬にして緊張を帯びる。親戚や仕事相手たちが慌てて愛想笑いを浮かべて挨拶を始めたが、彼は短く頷きを返すだけで、視線はこちらに向けようとしない。

 ただ、テーブルの下。

 隣り合う椅子の距離が、異常に近い。

 ダークスーツの生地が、ドレスから露出した私の膝の側面に触れるか触れないかの距離にある。布越しに伝わる体温が、じりじりと肌を焦がすように伝わってくる。

 (絶対、わざと距離詰めてる……!)

 会話の端々に相槌を打ちながらも、意識はすべて右半身に集中していた。グラスが持ち上げられるたび、微かに動く腕の筋肉。ゆっくりと吐き出される熱い呼気。

 見えない糸で絡めとられているような息苦しさに、手元のナプキンを無意識にきつく握りしめる。

 たまらず視線を横に向けると、唐突に、目が合った。

 他の人には愛想の良い笑みを向けているのに、私を見る目だけは氷のように冷たく、そしてどこか怒っているようにも見えた。

 何度もこちらに向けられるその視線に、もう平静ではいられなくなる。

 これ以上、この至近距離で体温を浴びせられ続けたら、おかしな声を出してしまいそうだった。

「……少し、風に当たってきます」

 誰に言うでもなく呟き、逃げるように席を立つ。

 ヒールが絨毯に沈む感触がひどくもどかしい。背中に突き刺さる視線を振り切るように、早足でメインエントランスへと向かった。

 分厚い絨毯の廊下を抜け、バルコニーへと続く重いガラス扉に手をかけた、その瞬間。

 背後から伸びてきた大きな手が、扉の取っ手ごと、私の手を乱暴に覆い隠し、行く手を阻んだ。

 ビクン、と肩が跳ねる。

 背中に、硬く熱い胸板が押し付けられる。

 シトラスの香りと、微かな葉巻の匂い。そして、アルコールの混じった熱い吐息が、耳のすぐ裏側に吹きかかった。

「……話がある」

 低く、鼓膜を直接撫で回すような声。

 逃げる隙間は、どこにもなかった。取っ手ごと握られた手。重なった大きな親指の腹が、手の甲の薄い皮膚を、じり、とゆっくり擦った。

Expand
Next Chapter
Download

Latest chapter

More Chapters

To Readers

Welcome to GoodNovel world of fiction. If you like this novel, or you are an idealist hoping to explore a perfect world, and also want to become an original novel author online to increase income, you can join our family to read or create various types of books, such as romance novel, epic reading, werewolf novel, fantasy novel, history novel and so on. If you are a reader, high quality novels can be selected here. If you are an author, you can obtain more inspiration from others to create more brilliant works, what's more, your works on our platform will catch more attention and win more admiration from readers.

No Comments
90 Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status