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109話

Auteur: 籘裏美馬
last update Dernière mise à jour: 2025-12-04 18:56:56

まさか、私が他の誰かを伴い、待っているとは思わなかったのだろう。

御影さんは苛立ちを顕にして、私に詰め寄ろうとした。

だけど、その気配を瞬時に察知した上尾さんがすっと動く。

私と御影さんの間に自分の体を割り込ませ、内ポケットから名刺ケースを取り出し、名刺を御影さんに差し出した。

「私は、上尾と申します。藤堂社長の専属秘書を務めさせていただいております。本日は、社長の代理でご一緒させて頂きました」

「藤堂社長の、秘書…、だと……」

「はい。不服でしょうか?」

にっこり、と上尾さんが笑みを浮かべる。

だけどその笑顔はどこか圧のような物を感じて。

御影さんは、圧に押されたようにぐっと押し黙ったあと、こくりと頷いた。

「いえ……。問題ありません」

「それは良かったです。……それで、藤堂本部長にご用とは……?本部長もお忙しいお方ですので、ご用がございましたら、手短にお願いいたします」

上尾さんの言葉はとても丁寧だけど。

常に笑みを浮かべてはいるけれど。

眼鏡の奥の目は、一切笑っていない──。

御影さんは、たじろぎつつ私にちらり、と視線を向けた。

「茉莉花……いえ、本部長……?藤堂、さんが本部長職に就いている、と……?」

「ええ」

「その、聞いておりませんでした。突然の訪問、失礼しました」

御影さんは信じられない、と言う目を私に向けてくる。

私がかつて会社で働いていた事すら、御影さんは覚えていないし、興味もなく忘れていたのだろう。

まさか、私が役職に就いているとは思わなかったようで、上尾さんに押されつつ呆気に取られた表情のままだったけど、すぐに切り替えたのだろう。

呆気に取られていた表情から一転、きりっとした顔に切り替わる。

「ですが、本日は私的な用で、藤堂さんに会いに来ました。少しだけ2人でお話したいのですが……」

御影さんが、ちらりと私を見やる。

当然、私が頷くと思っていたのだろう。

御影さんの言葉は、上尾さんに向けられたもので、私には「構わないだろう」と言うような感情が瞳に透けて見えた。

私が断る、なんて微塵も思っていない。

私はもう、御影さんの言葉に喜んで頷くような私じゃない。

だから、私は毅然とした態度で彼の言葉に首を横に振った。

「いえ、御影専
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