Masuk「愛しているのは君じゃない」 冷たい瞳で、冷たい顔で、冷たい声ではっきりと私に向かってそう告げたのは、将来結婚すると思っていた、私の婚約者である御影 直寛(みかげ なおひろ)。 彼は、お祖父様からの命令で私との交際、婚約に嫌々応じたのだ。 けれど彼の心の中にはずっと初恋の人、速水涼子(はやみ りょうこ)がいた。 それでも、私はいつか直寛が私自身を見てくれると思っていた。 けど、彼からはいつも冷たい態度を取られるばかり…。 そんな日々を送っていた時、彼は私とパーティーに参加していたのに私を置き去りに、涼子の元へ走った。 絶望した私は、お酒を飲み、気づいたら見知らぬ男性と朝を迎えてしまった。 慌てて逃げた私だったけど、その男性がまさか小鳥遊グループの息子だったとは夢にも思わなかった。 その後。 直寛は自分の過ちに気づき、私に許しを乞う。 けれど、私はもう直寛への気持ちは捨て去った。 土下座されても。 愛を伝えられても。 もう私は直寛よりも愛しい人ができたから、あなたはもういらない。
Lihat lebih banyak警報音が鳴り響き、私と苓さんはバチリと目を開いた。 「──この音、侵入者に対する警報音ですよね?」 「え、ええ……、そうです……!」 「茉莉花、服を」 ぱっ、と苓さんに服を渡され、私は急いで下着と服を身につけていく。 私が全ての衣服を身につけた時には、既に苓さんは服を着終えていて。 周囲を警戒するように見回していた。 「──この場所は、本邸から死角になっていて、見え辛いはずです。灯りも付けていないので、私と苓さんがここに居る事は誰にもバレていないはず」 「……警備会社の人が来るのに、どれくらいかかりますか?」 「恐らく、10分もかからないと思います」 苓さんの手を私が取ると、ぎゅっと強く握り返してくれる。 私は苓さんに身を寄せ、同じように周囲を警戒する。 幸い、今日は灯りを付けていない。 だから侵入者からも私たちの姿は見えていないだろう。 「……お母様が辛い時に不謹慎ですけど、お母様が入院していて良かったです」 「……確かに。家の中にいたら危険だったかもしれませんね」 私の言葉に、苓さんも頷いてくれる。 お母様は病院にいて、身の安全は保障されている。 お父様も今は出張中だから、この家にはいない。 使用人も最低限の人数しかいない。 それに、今日家にいる使用人は、自分の身は自分で守る事は出来るくらい格闘の腕がある。 この警戒音に気付いて、今は周囲を警戒してくれているだろう。 「茉莉花、俺から絶対に離れないでくださいね」 「分かりました……!」 ひそひそ、と声を落として会話をする私たち。 下手に動いて、物音を立てるより警備会社の人が来るまでの間、ここでじっとしていた方がいいだろう。 私は苓さんに抱き寄せられ、彼の腕に収まりながら周囲を確認する。 縁側があるここは、高い柵に視界を遮られていて、外から中の様子は見えにくい。 それに、外からこちら側に近付くなら、砂利道を踏みしめる足音だって聞こえるだろう。 私が庭側を警戒しているのとは逆に、苓さんは建物側をしっかりと見張ってくれている。 誰か人が入ってくるなら、建物の出入口だ。 私たちは今日、縁側の方面から入ってきたから建物の出入口は施錠されたまま。 鍵だって、私が持っている。 だから開けられ
◇ ──ああ、私は酔っているんだな。 そんな自覚がはっきりとあった。 いつもより自制が効かず、苓さんに甘えたくなってしまう。 迷惑をかけちゃうかも。 そう考えるけど、苓さんに甘えたいという欲求には抗えなくて。 苓さんがたじろいでいる内に、私ははしたなくも苓さんの足に跨り、押し倒してしまった。 背中を打ってしまった苓さんの顔が強ばったのが分かった。 傷に響いているのかも。 すぐに離れないと。そして、苓さんの傷口を確認しないと。 そうは思うけど、苓さんから強く止められる事がなくて。 私はどんどん大胆に苓さんを求めてしまう。 ぎゅってして欲しい。 抱きつきたい。 キスしたい。 もう、私の頭の中はそんな言葉でいっぱいになっていて。 多分、それを口走ってしまったのだろう。 苓さんの表情が、明らかに変わった。 瞳はギラギラと光り、あきらかな熱を感じる。 苓さんも私を求めてくれているんだ。 それが分かった瞬間、凄く嬉しくて。 キスに夢中になっている内に、いつの間にか私の背中には縁側が。 そして、目の前には苓さん。 苓さんの奥には日本家屋の天井が見える。 それでああ、今度は私が押し倒されたんだ、と理解した。 けど、お互い求め合う事はもう止められなくて。 「苓さん……苓さ……っ」 私は必死に名前を呼び、苓さんに手を伸ばす。 すると、苓さんは私の手を取ってくれて。 自分の首に回すように誘導した。 ぐっ、と私の背中が浮き、再び唇を塞がれる。 呼吸を、思考を奪うような激しいキスに頭の中が沸騰するような感覚。 キスに答える事に必死になっていると、苓さんの手が私の服の中に入り込んだ。 大きくて、温かくて安心する苓さんの手のひら。 苓さんの手のひらは、私のお腹を撫でてから背中に回った。 ふつり、と胸が解放されたような感覚がした。 服を脱がされ、苓さんも乱雑に服を脱ぎ捨てる。 2人で生まれたままの格好になって、時間も忘れてお互いを求め合った。 「苓さんっ、苓さんっ」 「──はっ、茉莉花っ」 苓さんの私を呼ぶ声に、愛情を感じる。 私が何度も苓さんを呼ぶと、苓さんはどこか泣きそうな顔をして。 苦しくて息が出来ないくらいぎゅうっと抱きしめられながら、何度も達した。 寒い夜のはずなのに、体は熱を持って暑くて。 苓さ
「──っ」 息がひゅっと詰まる。 先日切った背中の傷に痛みが走り、俺は目を細めた。 僅かに痛む傷。 だが、今はそれより目の前の光景が信じられなくて──。 「ま、茉莉花……っ!?」 俺がぎょっとした声を上げると、茉莉花は先程と変わらずくふくふと楽しそうに笑っている。 そして、俺に乗っかったまま上体を倒してぺたり、と上半身をくっつけて来た。 かぁっと顔が熱くなるのが分かった。 それもそのはず。 俺の足を跨いだ状態で、茉莉花が俺を押し倒しているのだ。 茉莉花の柔らかい体の感触がダイレクトに俺に伝わり、腰が重くなるのを感じた。 この体勢だと、すぐに茉莉花にバレてしまう。 「まっ、茉莉花……っ!離れて……っ!」 俺は慌てて茉莉花を自分の体の上からどかそうとした。 縁側に上半身を起こし、上に乗っている茉莉花の両脇に手を添え、持ち上げようとする。 だが、茉莉花は俺の考えを察知してそのまましがみついて来た。 「──っ」 「や、です。苓さんと離れたくない……」 茉莉花に抱きつかれ、俺の体はピシッと固まってしまう。 俺の胸元に頬を寄せ、擦り寄る茉莉花が可愛くて可愛くてしょうがない。 それに、ふわりと茉莉花の香りがして。 柔軟剤だろうか、それともシャンプーの香りだろうか。 香水を付けていないはずなのに、とても甘やかで、もっと嗅いでいたくなるような中毒性がある。 俺が固まっている間に、もぞもぞと自分の位置を直していた茉莉花は、ぺたりと俺の胸に手を当て、見上げて来た。 「苓さんと、ちゅうしたいです……」 「──っ」 「んっ、んむっ!?」 ぷつん、と頭の中で何かが切れた音がした。 何か、なんて分かりきっている。 俺の細い理性の糸なんて、茉莉花の破壊力のあるお強請りの前では紙同然だ。 性急に茉莉花の唇を塞ぎ、すぐに唇を舌で割って深くキスをする。 茉莉花が飲んだお酒の量はそこそこ多いらしく、俺の頭まで酒でぐらり、と揺れた。 小さく声を漏らす茉莉花の声に、また煽られて。 キスは深まって行くばかりだ。 茉莉花の手が俺の頭を抱え、くしゃり、と俺の髪の毛を掴むのが分かる。 まるで求められているような多幸感。 茉莉花が俺を求めてくれている、と言う嬉しさに益々キスが深くなって行く。 茉莉花とのキスに夢中になっていると、先程とは違い
◇ 月を見ながら、月見酒なんて、いいんじゃないだろうか。 そう思い、料理をしている時に閃いた自分に、考え直せと言いたい。 その時の俺は、ただ本当に楽しみで。 ただ、茉莉花と一緒にお酒を楽しみたいな、なんて思っていたんだ。 それなのに──。 どうしよう、茉莉花が可愛すぎて死にそうだ。 「茉莉花、茉莉花……少しペースを落とした方が……」 心配する俺の声に、茉莉花は酒にとろんと潤んだ目で俺を見あげてくる。 ふふふ、と笑いながら俺に体を寄せる茉莉花が物凄く可愛い。 「全然大丈夫ですよ、まだまだ飲めます」 「うん……それは分かるんだけど……」 茉莉花はお酒に弱い訳では無い。 だけど初めて俺と茉莉花が会った時。 その時は、お互い大分酒に酔ってしまった。 あの時の事があるからこそ、今の俺たちがあるが、あの時の酒に酔った茉莉花の破壊力は凄まじかった。 俺の薄っぺらい理性なんて、茉莉花の可愛さの前では簡単に吹き飛んでしまう。 また、あの時のように茉莉花が深く酒に酔ってしまったら。 はっきり言って俺に耐えられる自信は微塵もない。 あの時とは違い、ここは茉莉花の実家だ。 しかも今はご両親が不在。 ご両親が不在の時に、茉莉花を抱くなんて──。 ご実家にお世話になっている俺の身で、茉莉花に手を出すなんて。 しかも、茉莉花のお母様がお気に入りのこの日本家屋で──。 だけど、そんな俺の葛藤など今の茉莉花からしたら簡単に吹き飛ばしてしまう。 「んー……、苓さん、あったかい……」 「──っ」 俺が1人で悶々と悩んでいる間。 茉莉花は暖を取るように俺の膝にひょい、と乗り上げた。 そしてそのまま俺の胸に顔を寄せ、満足そうにくふくふ笑っている。 その笑っている顔が可愛くて。 「ああもう、酔っ払いめ……」 可愛さが憎い。 そんな風に思う事が来るなんて。 茉莉花はにこにこと笑顔のまま自分のおちょこに酒を注ぐ。 俺が持っているおちょこにカチ、と自分のを合わせ「かんぱい」と舌っ足らずな可愛らしい事を言ってお酒を飲む。 くいっと酒を煽り、茉莉花の白く細い首元が顕になる。 無意識に、その白い喉元に吸い寄せられた。 「──んっ」 茉莉花の艶やかな甘い声が喉から漏れ、俺はその声にはっとした。 不味い。 俺もアルコールで思考するより先に本
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