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第 2 話

Autor: ぶりっ子
琴音はどうしていいか分からず、真っ青な顔をして、自分の首筋に残るキスマークを証拠に見せて反論した。

彼との関係を証明するために、そんなものを見せなければならないほど追い詰められていたのだ。

案の定、担当教員の目は一瞬にして軽蔑の色に染まった。

「ほう?浅野さんはあの時、俺を探してたのか?」

その一言が、彼女の意識を現実へと引きずり戻した。

周囲の嘲笑するような視線を浴びながら、彼女は拓真の目を見つめ返した。

その瞳はまるで本当に二人の間に何もなかったかのようにあまりにも冷静だった。

拳をさらに強く握りしめると、心臓が喉から飛び出しそうになった。

琴音に恥をかかせようとしたあの女性が、また口を開いた。

「そうよ、拓真、知らなかったの?

あなたが咲と海外に行った後、琴音が狂ったみたいに大学の掲示板に書き込んでたのよ」

拓真はまるで部外者のように、目には何の感情の波も浮かべず、テーブルの上のグラスを指で軽く回しながら言った。

「なんで俺を探したんだ?」

立て続けに発せられた二つの問いは、その場にいる全員に対し、俺は浅野琴音などよく知らないと突きつけているかのようだった。

ポツポツとまばらな嘲笑が響き、見下すような冷ややかな視線が琴音を突き刺した。

彼女はガタッと音を立てて立ち上がった。

震える手を後ろに回し、死ぬほど強く握りしめながら口を開いた。

「拓真、結婚おめでとう」

そう、もうあの答えに執着する必要なんてないのだ。

彼女は自分の前にあるお酒を手に取り、一気に飲み干した。

「心からお祝いするわよ」

彼の目を見る勇気はなかった。

グラスを置くと、静かに伏し目がちになった。

一番互いに夢中だったあの頃、彼は言っていた。

「初めての同窓会には絶対に一緒に行くよ。

俺たちがずっと前から付き合ってるって、みんなに知らしめてやる」

琴音は真面目で、一度言われたことは頑なに信じ込む性格だった。

彼女は自分が約束したすべてのことを覚えている。

だが拓真は忘れてしまった。

もう、いい。

この同窓会には最後まで付き合い通してやる。

そして、すべてを終わらせるんだ。

周りの人々は拓真の顔色をうかがった。

拓真はグラスを指で撫で、表面上は飄々と見せながらも、その瞳の奥は重く沈んでいた。

「……ありがとう」

ただその一言だけを言い、彼は話題を変えた。

咲を除いて、もう誰も琴音の方を見る者はいなかった。

咲は腕の中の子供を強く抱きしめ、唇を真一文字に結んでいた。

誰からも相手にされなくなった琴音は、席を立ってトイレに向かった。

冷たい水で思い切り顔を洗った。

顔を上げると、鏡越しに自分の後ろに立つ咲の姿が見えた。

大学時代、彼女と咲はほとんど接点がなかった。

専攻も違っていたし、何より咲は有名な存在だった。

咲は彼女に向かって微笑み、ティッシュを差し出した。

「大丈夫ですか?」

琴音は受け取らなかった。

彼女には、咲の真意が読めない。

咲はゆっくりと洗面台に近づき、蛇口をひねって優雅に手を洗い始めた。

その声には生まれつきの傲慢さが宿っていた。名家で育てられた令嬢特有の余裕だ。

「拓真って本当にタチが悪いわよね。

家を継ぐのは優秀な兄がいるから、彼はいつも退屈を紛らわせるように、目新しくて刺激的なことばかりを求めていた。

でも、すぐに飽きてしまう。

お爺様は彼が道を踏み外すんじゃないかと心配して……

彼がスカイダイビングなんて無茶をやり始めたのを見て、怒って彼をあの柚木町(ゆずきまち)の田舎に追いやったのよ。

彼の『好き』なんて、ほんの一瞬のもの。

琴音さん、彼があなたを傷つけたこと、私が彼に代わって謝るわ」

その言葉は、容赦なく彼女のプライドを粉々に打ち砕いた。

咲はハンカチでゆっくりと指先を拭きながら続けた。

「柚木町にいた頃からの知り合いだってことは知ってるわ。

彼、いつもあなたの話をしてたから。

あの時、うちの家にあなたの支援を頼んだのも、彼から言い出したことなのよ。

あなたが頑張って帝都大学に合格した時、私も自分のことのように嬉しかったわ。

でも、あなたたちは住む世界が違うの。

彼があなたの気持ちをもてあそんだことについては、すでに桐生家で厳しいお仕置きを受けているわ。

琴音さん、もう彼と会うのはやめなさい。

あなたみたいな一般人が手を出していい相手じゃないのよ」

琴音は反論したかった。

だが「柚木町」という言葉が出た瞬間に、すべての怒りが引いていった。

それは、彼女と拓真だけの秘密だったはずだ。

誰にも言わないと約束したのに。

そうか、彼はとっくに彼女に話していたのか。

彼の妻である咲を前にして、琴音は自分が恥ずかしくてたまらなかった。

4年経って、彼女はようやくその現実を直視することができた。

自分は、ただの金持ちの道楽息子に遊ばれていただけなのだ。

体も心も弄ばれ尽くしたというのに、彼女はそれでも頑固に答えを求め続けていた。

自分が世間知らずで、馬鹿正直なだけの、都合の良い女だったからだ。

両手を固く握りしめ、押し寄せる屈辱に耐えていると、咲の言葉がさらに続いた。

「許したくないなら、それでも構わないわ。

ただ、もう彼には近づかないで。

彼はいつもああだから、いつまた気まぐれを起こすか分からない。

あなたがまた傷つくのが心配なのよ」

居ても立ってもいられず、琴音は今すぐこの場から消え去りたい衝動に駆られた。

咲は言い終わると、ブランド品のハンカチをゴミ箱に捨てて、そのまま出て行った。

空気が薄く感じられ、琴音は再び冷たい水を顔にかけた。

自分の頬を濡らしているのが、水なのか涙なのかも分からない。

彼女はただひたすら顔を洗い続け、その僅かな温もりが水と共に排水口へ消えていった。

彼女は横にあったペーパータオルを抜き取り、顔を拭いて、鏡の中の自分を見た。

儚げな顔立ちに、どこか意地っ張ったような雰囲気、澄んだ大きな瞳。

確かに、親友が言った通り、ああいうドラ息子が好む、か弱いヒロインみたいな顔だった。

琴音は自分の頬をこすり、トイレを出た。

個室に戻ると、もうお開きになっていた。

拓真だけが彼女のバッグの隣に座り、まつ毛を伏せて何かを考えていた。

彼女は足早に近づき、バッグを掴んで出ようとしたが、バッグのもう片方の紐を、彼の細く長い指が摘んでいた。

琴音は立ち止まり、顔を上げて彼の視線とぶつかった。

彼は、今気づいたとでもいうように、ゆっくりと指を離した。

あの頃と同じだ。

柚木町で初めて出会った時も、彼はそんな風に気だるげに彼女のポニーテールを掴み、「お前、耳聞こえないのか?」と不思議そうに聞いた。

耳が聞こえないわけじゃない。父親に平手打ちされて、少し聴力が落ちていただけだ。

最初は拓真のことが大嫌いだった。

どこからか飛ばされてきた、すごく金持ちのワガママなお坊ちゃんだと聞いていた。

しかし、彼女の初めての補聴器を買ってくれたのは拓真だった。

その日から、周囲の音がはっきりと聞こえるようになったのだ。

当時の琴音は口下手で、拓真と口喧嘩になるとすぐに顔を真っ赤にして怒っていた。

そんな彼女を見て、彼は肩を震わせて意地悪そうに笑ったものだ。

「お前ってホント面白いな」

13歳の琴音は、16歳の拓真が本当に大嫌いだった。

でも、その16歳の拓真が、彼女が進学できるように支援者を探してくれたのだ。

琴音が勢いよくバッグを引っ張ったため、拓真も予想していなかったのか、バッグの角が彼の鎖骨に当たり、シャツのボタンが一つちぎれ飛んだ。

生地が垂れ下がり、鎖骨のくっきりとした輪郭が露わになった。

琴音の視線は、無意識に彼の鎖骨の少し下へ向かった。

初めて身体を許すと決めた日、彼女はどうしても、拓真の気持ちがただの遊びなのではないかと不安に駆られていた。

すると彼は苛立ったように彼女の手を引いてタトゥースタジオへ駆け込み、お互いのイニシャルを肌に刻み込んだのだ。

彼の鎖骨の下には「KTN」と刻まれていた。

あの時、彼は少し赤く腫れたタトゥーを指差して言った。

「これが残っている限り、俺の気持ちは変わらないから」

だが今、そこには何の痕跡もない。

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