LOGIN結婚して2年、水瀬一花(みなせ いちか)は婚姻届受理証明書を発行してもらいに役所に行ってはじめて、夫から受け取り大切にしていた証明書が偽物だということを知った…… 夫の黒崎慶(くろさき けい)に、どういうわけか問い詰めに行ったが、6年間、自分を愛し大事にしてくれていたはずの男は、自分より6歳年上の大学時代の指導教員とすでに結婚5年目だという事実が発覚した。 一花はこの二人にうまく利用されていただけでなく、子供が生めない女だという理由からその二人の子供まで養子に迎えていた。 真実にぞっとした一花は、相続関連を任せている弁護士に電話をかけた。「未婚で子供はいません。全ての財産は私一人が相続します」 そして一花は黒崎家から離れることを決意する。しかし、慶は彼女には頼れる存在がなく、必ず自分のところに戻ってくると高を括り、悠長に構えていた。 しかしそれがある日、世間の注目を集める結婚のニュースに一花が登場したのだった。 一花はこの時、巨万の富を手にし、圧倒的な権力を持つ男と肩を並べてスポットライトの下に立ち、全国民から羨望の眼差しを向けられていた。
View More一花は黙ったまま顔色一つ変えずに、陸斗が続きを話すのを待っていた。「我が西園寺家に来る前なら、君が生きるために何をしてきたか理解できるし、それは重要な事じゃない。しかし、今西園寺家の後継者としてならそれは話が変わってくる。世論の影響はかなりダメージがくる。もし、会社がこの件で損失を出せば、君一人ではその責任を持てないだろう」陸斗のセリフは一花の想像の範囲内だった。彼女は首を傾げて陸斗を見るだけで、返事をする気はないようだった。すると陸斗はついに少し我慢できなくなった。「俺は母さんともう話し合った。君には西園寺グループの中間層の役職を与える。でも、君には西園寺家の七割以上の財産を返してもらう必要があるんだ」「条件が良くなってますけど、どうやら社長は少し私のことを認めてくれたのですね?」一花はおかしくなって、思わず陸斗に皮肉をもらした。その言葉に、陸斗の表情は険しくなった。笑みをたたえたまま、体をゆっくりとデスクから離し、鼻で笑った。「俺からのアドバイスだが、もう少し真面目によく考えたほうがいいぞ。西園寺グループはお前が思っているほど簡単だと思うか?言っておくが、おじい様はあと一カ月したら帰国なさる。お前みたいな青二才に西園寺グループを任せるのが心配だからだ。もし、おじい様がお前を認めなければ、西園寺一族は誰一人としてお前の存在を認めることはないぞ。それに、会社の運営に何か問題があれば、まずはお前がその責任を負うことになる。今、お前は矢面に立たされているだろ、今のこの些細な世論でも、お前をビジネス界の嘲笑の的に仕立て上げるかもしれんぞ……兄として、俺もお前のためを思って言っているんだ。西園寺グループで働かなくとも、おとなしく西園寺家の令嬢でいられる。俺たちは互いに干渉し合う必要もない」陸斗は非常に誠実で、本当に一花のことを思って誠意をこめているかのような口ぶりだった。しかし、その言葉自体は完全なる脅しだ。それを聞いた一花はさらに笑えてきた。自分のことをまるで三歳児のガキだとでも思っているのか。「副社長、携帯を開いて見てみたらどうです」一花の視線はすでに自分の携帯に移動していた。彼女が適当に画面をタップしてみると、やはりものの十分程度で話題のニュースは逆転してしまった。南関テレビは、あの記事を削除し、あの
一花はすでに法務部に連絡した。西園寺グループの法務部はかなりの実力を誇る。恭平は自分の勝手な行いに大きな代価を払うことになるだろう。彼だけでなく、ネット上で事実確認もせずにあの記事を大々的に取りあげたメディアたちも同じように。「一花さん、犯人を簡単に許してはダメですよ。こんな汚い手で嘘を広めるなんて、人のやる事はないですよ、ほんっと最低!」夏海たちは一花に対する不当な扱いに対して、怒りを覚えている。朝あの記事を見てすぐ彼女たちは他のことはせず、グループ内で一花の誤解を解くために必死になっていた。しかし、彼女たちの主張はあまり効果がなかった。それとは違い、一花は一本の電話で見事解決してしまった。「もちろんよ」一花は軽く返事をした。やられたらやり返す。自分を陥れようとした相手には一度も容赦したことはない。「伊集院さんはあの記事を見たんでしょうか?彼が知ったら、信じないですよね……」夏海はそこまで言うと、突然何かを思ったらしく、心配そうに一花を見つめた。「一花さん、伊集院さんはこんな嘘なんか信じませんよね!」夏海にそう言われて、一花は少しだけ動揺した。しかし、柊馬のことを想像し、一花はサラリとこう言った。「彼は信じないわ」柊馬と知り合ってそう時間は経っていないし、彼は一花のことをそんなに知っているわけではない。しかし、一花は柊馬がこんな嘘を信じるような人ではないと思った。ただこのような記事の内容では他人に与える影響はあまり良くない。一花はやはり彼に一言知らせておくべきだと思い、すぐに彼に電話をかけたが相手は話し中だった。きっと今は忙しいのだろう。一花がそう思っていると、オフィスのドアをノックする音が聞こえてきた。そして陸斗の特徴のある声が聞こえた。「失礼、ちょっと話せるか?」彼はそう尋ね、一花が返事するのを待たず、すでにドアを開けて入ってきた。彼はストライプの紺色のスーツを着ていた。スラリとした体で、ドアの枠部分に寄りかかって立った。「今忙しいかな?」陸斗は一花のデスクの前にいる夏海をちらりと見た。夏海もすぐに振り返って挨拶をした。「副社長、お疲れ様です」その声はすこしこわばっていて、警戒した様子で陸斗をじっと見つめた。まるで陸斗が一花に何か面倒事を持ってきたのではないかと言わんばかり
社長オフィスに戻ると、慶はすぐにネクタイをほどいた。彼は呼吸が速く、怒りをどうしてもコントロールすることができなかった。ネット上での一花に対する誹謗中傷を見ると、自分が殴られたような気分だった。彼は一花と6年過ごしてきた。誰よりも彼女が何かに対してこだわりが強く、純粋な人だと知っている。浮気をするどころか、彼女が携帯画面に映った男性アイドルにちらりと目をやっても、それはただ仕事のためだ。一花は恋愛未経験のうぶな少女と変わらない。慶が時間をかけて彼女を口説き、ようやく自分のものにできた。慶は暫くの間、自分を冷静にさせてから携帯を取って、一花に電話をかけようとした。しかし、オープンチャット内であの記事がどんどん転送され、多くの人が一花を非難し、さらにアットマークをつけて慶に同情の言葉をコメントする者もいた。慶は指先を震わせ、文を打つとすぐに送った。【記事は捏造されてものだ。一花は俺にとても良くしてくれているよ。ご心配なく!】少し考え、さっきの言葉では足りないと思い、慶は急いで長い文章を打っていった。【一花は会社でとても努力している。彼女の専門知識や能力はかなり高いんだ。全ての提携先はそんな彼女の能力を認めている。だから、あのでたらめ記事にあるような誰かに後ろ指をさされるような行為なんてしていない。事実も確かめずに勝手にあちこちで転送するのはやめてくれないか。こちらは弁護士を立てて、法に訴えるぞ!】その言葉を送った後、慶の心は少し落ち着いてきた。しかし、彼がそんな言葉をチャット内に送ると、綾芽がすぐに電話をかけてきた。慶がすぐに電話をとると、綾芽が怒って責め立ててきた。「どうしてチャット内で水瀬さんを庇うようなことを言うの?彼女が浮気しているのに、それでも許す気なの?」「綾芽、お前もどうかしてしまったのか?あの記事はわざと彼女を攻撃するために書かれたものだ。俺は彼女のことをよく知っている、絶対にあの記事に書かれているような人ではない!」慶が力強く、一花を守るような言葉を吐くので、綾芽は心が冷たくなった。彼女はさっきチャット内で一花が非難されているのを見て非常に愉快だった。しかしそこへ慶が現れ一花を擁護し始めたのだ。黒崎家に一花の正体を知られても別に構わないだろう?こうすれば彼らもあちこち彼女を探すのに
テレビ業界では、偽の情報が飛び交うことはよくある。たとえ、嘘の記事だっとしても、一花のように力も権力も持たない孤児が記者である恭平にどうすることもできないはずだ。彼はメディア関係の能力に長けている。彼が南関テレビに就職できたのも、彼が民衆の心を引き付ける文章を書くのが得意だったからだ。如何なるニュースも彼の手にかかれば、瞬時に世間に広まり大きな影響を及ぼしていた。今回彼が一花に関する記事を書くときには、自分の感情も加わっている。彼女に心を弄ばれた被害者であるという視点から、正義感に燃える怒りを込めて一花を名門大学出身の男を弄ぶ悪女に仕立て上げた。大学時代、彼女は完全に男を誘惑する「尻軽女」で、社会に出ると手練れた「女の武器の使い手」になった。明け方、恭平はその記事をネットに上げた。彼は南関テレビ局記者が扱うSNSアカウントでそれを公表し、一夜のうちに瞬く間にその記事が炎上した。しかも、話題のネット検索トップ3にまで上がった。ネット検索で多く使われた言葉は【名門出身の高嶺の花 結婚後 南関市 ビジネス界の大物 枕】だった。恭平は記事の中には一花の名前も、学校名もはっきりと書いているが、黒崎グループに関する内容だけをほのめかすように書いていた。するとすぐに一花の同級生たちが面白がって、大学のオープンチャット、Xなどで一気に拡散していった。ネット上での話題の焦点は社会の風紀に対してであったが、一花の周りではそうではなかった。普段、一花への印象はなかなか良い。しかし、一花が美しく能力の高い女性であることに本能的に好感が持てない人も多くいた。そしてこのような記事を見た後では、一花への印象が良くても悪くても、彼女に対してマイナスなイメージが生まれてしまった。黒崎グループ内でも、一花のゴシップ記事の内容が広まった。「彼女ってこんな人だったんだ……だからどんな契約でもとれたわけか……」「いくら綺麗だからって、こんな胸クソ悪い事するべきじゃないでしょ、女の恥ね……」朝、慶が会社に出勤するとすぐにオフィス内でひそひそと話し合う声が聞こえてきた。一花の名前が耳に入ると、彼はすぐに何があったのか尋ねた。そしてすぐに慶はあの記事を目にした。この記事を書いた人物は、一花の全てを知っているかのようだった。彼の話では、一花は大
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