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第642話

Author: ラクオン
受け身に回らず巧みに主導権を握ること――それは綾香がここ数年、法廷で意図的に鍛え上げてきた弁護士としての癖である。

しかし海人は今に始まったことではなく、とっくにそれを身をもって知っている。

以前、二人が付き合っていた頃から、すでにその兆候は表れていた。

彼女は主導権を握るのが上手く、進むも退くもすべて彼女のペースだった。

付き合い始めた時も彼女からアプローチしてきたし、別れる時も彼女が一方的に一言残して、そのまま連絡を絶った。

今この瞬間、海人は立ち聞きしたことへの気まずさなど微塵も感じておらず、冷ややかな声で言った。

「自分の家の前にいただけで、立ち聞きも何もないだろう。お前が俺に気づかなかっただけだ」

気のせいか、最後の言葉にほんの少しだけ拗ねているような響きが混じっているように聞こえた。

きっと気のせいだと綾香は思った。

海人のような、生まれながらの特権階級の御曹司が、他人に割を食わせることはあっても、自分が被害者になるなんてあり得ない。

彼女は何か考えるようにこくりと頷いた。

「確かにその通りね」

そう言い残し、これ以上彼と話すつもりはないとばかりに、
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