LOGIN私には、大好きな夫がいる。 だけど、結婚してからもその夫は私の義妹・胡桃(こもも)ばかりを優先して、喧嘩になることもしばしば。 口論になると、夫の誠司(せいじ)はいつだって【離婚】を切り出してくる。 私は誠司が大好きだから、いつも離婚を切り出されるとすぐに泣いて謝ってきた。 だけど、誠司が胡桃を優先する度に、喧嘩になる度に【離婚】と言う言葉を口にする度に──。 あれだけ大好きだった気持ちが冷めていく。 夫からの99回目の【離婚】の言葉。 99回目が、最後と決めていた。 私は夫と本当に離婚した。 もう、夫誠司には何の未練も、愛情も残っていない。 これからは、自分で一人で、生きていく──。 そう思っていた私の目の前に現れたのは、容姿端麗で、とても背の高い男性。 その男性は、私に告げた。 「もみじさん。俺と結婚を前提にお付き合いしてくれませんか?あなたが好きです」 その男性は、ただの会社員だと思っていたのに、大企業の社長で──。 全てを知った前夫の誠司が、私に泣きながら謝罪をし、離婚を取り消して欲しいと言ったけど。 私はもう既に大好きな旦那様がいるのだ。
View Moreぎゅうぎゅうと髙野辺から強く抱きしめられたもみじは、自分の体から強ばりが解けてなくなっていくのを感じた。 坂崎が傍にいてくれても、体の震えはなくならなかった。 それに、警備員に取り押さえられているとは言え、自分の首を絞めてきた徳居がまだ近くにいる。 それがとても恐ろしかった。 絶対に大丈夫だと分かっていても、自分の首を絞めていたあの徳居の形相。 呪詛を吐くように自分を罵る言葉達。 目を閉じても、その光景は強烈に脳に刻み付けられている。 だが、髙野辺が駆け付けてくれて。 髙野辺の声を聞いて。 髙野辺に抱きしめられた瞬間。 もみじは、自分の体から力が抜けていくのを感じた。 髙野辺に抱きしめられると、安心感に包まれる。 もう大丈夫なんだ、と気持ちになる。 「──髙野辺さん」 「ん……、ちゃんと傍にいますから」 もみじが髙野辺に顔を寄せる。 すると、髙野辺は甘い声で答えて抱きしめる腕に力を込めた。 警察への通報を終えた坂崎は、そんな2人の姿を見て、何とも形容しがたい表情を浮かべた。 もみじの表情が、自分が傍にいた時よりも全然違うのだ──。 安心しきったもみじの表情に、坂崎はため息を吐いて指示を飛ばしている田島や蒔田のもとへ向かって歩き出した。 ◇ 警察が来て、聴き取りが始まる。 受付の人。 警備員。 カフェの店員。 防犯カメラ映像。 そして、もみじの証言──。 もみじの隣には、常に髙野辺が一緒にいた。 襲われた時の恐怖を思い出し、体が震えたもみじにすぐ気がついた髙野辺は、もみじの手を優しく握った。 安心させるように常にもみじの傍に寄り添ってくれる髙野辺に、もみじも安心して自分の身を預ける。 最初は遠慮がちに繋がっていたお互いの手は、時間が経つ度に強く絡み合っていった。 「──ご協力、ありがとうございました。犯人は……」 「警備室に捕らえています。警備員が身柄を拘束していると思います」 「分かりました、それでは責任者の方──」 「あ、私がご案内します。どうぞ、こちらです」 警察の言葉に、蒔田がさっと対応する。 駆け付けた警察官2人を、蒔田と田島が案内して行く後ろ姿を見た髙野辺は、自分の腕の中にいるもみじに優しく話しかけた。 「もみじさん、社長室に一旦行きましょう?首の手形、冷やさないと痣になってしま
田島の報告を受け、社員用入口に駆け付けた髙野辺。 その髙野辺の目の前には、信じられない光景が広がっていた。 「──もみじさん、もみじさん!?」 床に座り込み、首元を押さえているもみじ。 そんなもみじの隣には、坂崎 将太がいた。 現役大学生で、もみじと同じコンテストで優秀賞を受賞した彼も、TK株式会社とデザイナー契約を結んでいる。 そんな彼は今日、会社に用があったのだろう。 少し遅れて会社に到着した坂崎は、もみじを襲う徳居を見て、すぐに駆け付けて徳居をもみじから引き離してくれたらしい──。 「けほっ、髙野辺さ……っ」 「……っ、首を絞められたのか!?」 髙野辺は、もみじのすぐ隣に跪くと、もみじの首元にくっきりと刻まれている手形を見て声を荒らげた。 もみじの細く、白い首にはくっきりと手形が残っている。 辛そうに息をしているもみじを見るに、相当強い力で首を絞められたのだろう。 髙野辺はもみじを抱き寄せ、奥歯を噛み締めてある方向へ視線を向けた。 髙野辺が鋭い視線を向けた方向──そこには、警備員に取り押さえられ、未だに喚き続けている徳居がいる。 受付の人間もおろおろとしつつ、どうすれば、とパニックになっている様子が窺える。 髙野辺は地を這うような低い声でもみじを助けてくれた坂崎に声をかけた。 「──坂崎さん、もみじさんを助けてくれてありがとうございます。……警察に、通報を」 「えっ、わ、分かりました……!」 そして髙野辺は警備員に取り押さえられている徳居を冷たい目で見据えた後、受付の人間に顔を向ける。 「君たち。こっちに来て何が起きたのか私に説明を。……この後、警察がくる。証人として、警察にも説明をしてくれ」 「か、かしこまりました……社長……!」 そして、髙野辺は最後に警備員に顔を向けると口を開く。 「警備員は、その女をもみじさんの視界に入れないよう、警備室へ連れて行ってください。警察が来たら、警備室に案内します」 「分かりました」 的確に指示を出し終えた髙野辺は、もみじの体を支え、その場に立たせる。 「もみじさん。大丈夫ですか?救急車を呼びますか?」 「──けほっ、いえ……っ、大丈夫、です……。落ち着いて、きました……」 「本当に……?無理はしていませんか?」 「ええ、……っ、はぁっ、大丈夫です……っ」 大き
聖さんを助けてあげられるのは、私しかいない──。 聖さんの目を覚まさせてあげられるのは、私。 聖さんを心から本当に愛しているのは、私だけ──。 (私に笑いかけてくれたあの日から、聖さんは私の彼なのよ……!) 徳居の視線は、レジで注文するもみじに真っ直ぐ向かっている。 その視線は悍ましく暗い。 レジで注文した商品を待ち、商品を受け渡されたもみじが出口に向かう。 「……社内に戻るの。私の聖さんのところに、戻るのね……」 恨みのこもった低い声でぼそり、と呟いた徳居は出口の自動ドアを潜り、外に出て行くもみじを追う。 一定の距離を保ち、ヒールの音を立てないよう気をつけながらもみじの後を、徳居は追っていた。 もみじが社員証を取り出した瞬間、徳居は足を速めた。 ピッ、と電子音がして、ゲートが開く。 もみじが通ったすぐ後に徳居も続き、ゲートを潜り抜けた。 背後からの足音、そして近過ぎる気配に、ようやくもみじが異変を感じて振り返る。 もみじの斜め前には、受付があり、そこには会社の受付がいる。 「──えっ、なにっ、誰……っ」 もみじが、戸惑った声を上げる。 今の徳居は、メイクもしておらず、髪の毛も綺麗に纏めていない。 社内で1度、2度しか徳居を見かけた事のないもみじにとって、目の前にいる女が徳居だとはすぐに結びつかなかった。 「──玖渡川 もみじっ!お前っ、お前が聖さんを……!このアバズレが!」 「えっ、──きゃあっ!」 徳居は言いたい事だけを叫ぶと、目の前にいるもみじの首に両手を伸ばした。 そして、もみじの細い首に両手をかける。 突然の事に驚愕したもみじの手から、買ったばかりのカフェの飲み物がガシャン、と床に落ちた。 ◇ 営業フロアでの説明を終えた髙野辺と蒔田が廊下を歩いていた。 すると、背後から2人を追ってくる足音が聞こえてきた。 「──しゃ、社長!」 「……?」 男の声に、髙野辺が不思議そうに振り返る。 するとそこにいたのは。 「──君は、神咲社員か。確か、徳居元社員と同時に中途採用された……」 「そっ、そうです……!」 髙野辺の言葉に、神咲は足を止め、頷く。 「それで……どうした?私に何か用でも?」 髙野辺の言葉に、神咲はぐっと唇を噛み締め、真っ直ぐ髙野辺を見た。 「あのっ、俺……いえっ、私は徳居社員が
徳居はふらり、と覚束無い足取りで社員用のゲートに向かう。 鞄の中から社員証を取り出し、慣れた手つきで翳した。 今までであれば、ゲートが開き、中に入る事が出来た。 だが、今日は──。 ビー、と警告音が鳴り、ゲートは閉じたまま。 「──え?」 どうして、ゲートが開かないの? そう思った徳居は、もう一度自分の社員証を翳した。 だが、結果は変わらない。 「──え?えっ?」 どうして、と焦りが出てくる。 徳居がゲート前で手こずっていると、受付から不審者を見るような目で見ていた受付の担当者が、受付を出てこちらにやって来るのが見えた。 「〜っ、もう……!」 どうして開かないのよ、と悪態をつきつつ、徳居は1階に併設されているカフェに向かう事にした。 このままあそこで開かないゲートに手こずっていたら、受付の人間がやって来てしまう。 受付の人間ならまだしも、警備員が来てしまったら。 (追い出されてしまうわ……!) そんな事になったら、意味がない。 徳居はちら、とゲートに視線を戻す。 自分の姿がそこから無くなった事で、受付の人間は首を傾げながら自分の持ち場に戻る後ろ姿が見えた。 警備員がやって来るような気配もなく、徳居はほっと胸を撫で下ろす。 (……昨日話をされたばかりだって言うのに、もう私のデータを消去したって言うの……?酷い、酷すぎるわ、聖さん……。私が何をしたって言うのよ……!) ただ、ちょっと。 あの女が痛い目に遭えばいいと思っただけなのだ。 (それなのに、聖さんも聖さんだわ……!こんな大事にしなくたっていいじゃない……!会社の損失だって、そこまで酷い訳じゃないでしょう!?TK株式会社は凄い大きな会社なんだし、今回の商品が出せなくなったとしても、大した事にはならないのに……!) カフェにあるテーブルと椅子に、どすっと乱暴に腰を下ろす。 今思い出してもイライラしてしまう。 (それなのに……聖さんは少し大袈裟過ぎるわ……贔屓、絶対にあの女を贔屓しているのよ。こんな大企業の社長が、既婚者の不倫相手に落ちぶれて、それで不倫相手を贔屓するなんて、絶対にダメよ……!私が聖さんの目を覚ましてあげなきゃ……!) そんな事を考えていると、徳居の目に、ある人物の姿が入る。 ずっと、憎んでいた人物。 自分の彼を、不倫などと言うろくでもない
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