LOGINちなみに予備はある。
鋭利な鉄の剣が一本。
世の中なにがあるか判らないので非常事態に備えて温存しているのだ。
他にクリスに取り上げられている鋭利な鋼鉄の剣もあるにはある。
「クリス、一本くらい使わせてくれてもいいんじゃないのか?」
と、頼んではみたが、にべなく断られていた。
そのクリスも十二本の剣のうちすでに七本使い潰している。
数を揃えるために安物を買ったせいもあるんだろうけど、それにしてももっと大事に使ってもいいんじゃないかとレイトは思ったわけだ。
けど、
「武器こそ消耗品だ」
という。
や、そうだけど。
武器は高いんだぞ。
しかも
ちょっとは遠慮というか、配慮くらいしたらどうなんだ?
そんなクリスも最初から持っていた騎士の剣は非常事態のために温存している。
アマゾネスの大剣+2という
「…………」 おそるおそる振り返る玲太が目にしたのは、目の覚めるような五人の美少女たちが愛らしく横たわっている寝姿だった。「なんじゃあ、こりゃあ!!」二回目だね、それ。 さっきよりも大きな声が出たことで、少女たちの目が覚めたようだ。「ん……ここは?」 愛らしい仕草と耳に心地いい声はまごうことなくクリスティーンのものだ。「なんなの、ココ!?」 アシュレイが驚くのも無理はないよねー。 玲太だってあっちの世界で似たようなリアクションだったし。 それにしたって学生が一人で暮らすワンルームマンションに六人がいるんだから窮屈に感じないか? しかも、玲太にヴァネッサにソフィアと鎧を着ているってんだからね。「ええと、なにから説明しよう?」 混乱はしながらも意外に冷静に対処しようとしている玲太。 さすがだね。 伊達に修羅場はくぐっていないよ。 いや、でもこっちの修羅場はどうだろう? とりあえず、知った顔ばかりだったこともあって大騒ぎにだけはならなかったことも幸いし、玲太は事の起こりから丁寧に説明することにした。 その前に玲太はみんなに着替えてもらうことにする。 まずは玲太が普段着に着替え、彼女たちが着替えている間に近所のコンビニまで買い出しに出かける。 戻ってきたときにはみんな玲太の部屋着を着ているんだから、彼の言い知れないむずがゆさを判ってもらえるだろうか?「──つまり、玲太が私たちの世界に来たように今度は私たちが玲太の世界に来たということですね?」「そういうことになるね」「でもどうしてかしら?」 アシュレイの疑問ももっともだ。 人類滅亡の危機に瀕したゲーム世界に救世主として吸い込まれた(と思われる)玲太と違って、彼女たちが世界を渡る意味が判らない。「たぶんですけど、私たちが玲太と一緒にいたいと願ったからじゃないでしょうか?」 さすがは最年少ながら聖女として英才教
玲太の意識が戻った時、最初に出た言葉は「はぁ!?」 だった。 無理もない。 見覚えのある懐かしいワンルームマンションの自室のパソコンの前に、国王に謁見していたときに着ていた鎧姿で座っていたのだから。 テレビモニターに映し出されているのは、あの日起動して「さあ、ゲームを始めよう!」と思っていたゲーム「王国の勇者」。 しかも、なにがどうなってなのか知らないが、ゲームがクリアされていてエンディングが流れている。 そりゃあ混乱しない方がおかしかろう。 他にリアクションがあるとすれば「え?」とか「あぁん?」せいぜい「ちょ、待てよ!」くらいしかないに違いない。 混乱に拍車をかけているのは「王国の勇者」がSHARP製8bitパソコンX-1 turbo Z II用のレトロゲームであり、確かにX-1 turbo Z IIにペラッペラの5(正確には5.25)インチ2HDフロッピーディスクを差し込んで起動したはずなのに今動いているのは玲太の持つもっとも最新のPCだったからだ。「フロッピーディスクはどこいった!?」 X-1 turbo Z IIの灯は消えていて、確かに二つのドライブに差し込んだはずの二枚のフロッピーディスクは影も形もない。「なんじゃあ、こりゃあ!」 腹を撃たれた刑事のようなリアクションの後、起動しているPCを操作するとびっくりするほど軽いゲームデータがインストールされている。「2MBって……これっぽっちのデータでどうやってこんな美麗なグラフィックとBGMのエンディングが動くんだよ?」 突っ込むところがそこかいな。「ん……」 混乱した玲太の耳に女性の漏らす甘い呟きが聞こえてきた。
「ソフィア、ビルヒルティス、アシュレイ、そしてヴァネッサとレイト。魔王に攫われた我が娘クリスティーンを救出に旅立った勇者たちよ、王国の危機、ひいては世界の危機を救ってくれたこと、心より感謝する。特にヴァネッサとレイトには二度も娘の命を救ってもらった。この恩、生涯忘れまいぞ」「もったいなきお言葉」「命の危険を顧みず、魔王に立ち向かいあまつさえその魔王を討ち滅ぼしたそなたらはまさに世界の救世主。英雄と呼ぶにふさわしい者たちだ。朕は王として、また民の代表としてそなたらの望みを出来うる限り叶えたい。この場で望みを申すがよい」 そう言われて、五人は互いに顔を見交わした。 突然そんなこと言われてもねぇ。 すぐには思い浮かばないよねぇ。 まぁ、レイトの願いは想像つくけどね。「レイトよ。娘はそなたを好ましく思っておるようだぞ」「お父様!」 語気を強めるクリスティーンは耳まで朱くして抗議する。 王様、封建社会だからって娘をものみたいに扱っちゃいけませんよ。 王妃は王妃で笑みをたたえて父娘のやりとりを見ている。 そんな微笑ましい様子じゃないと思うけどね。「あの……」 と、恐る恐る発言許可を求めたのは最年少のビルヒーだった。「私、聖女の地位を捨ててレイトと一緒に旅がしたいと思います」「え?」 つい言葉が漏れたのは一緒に旅をしてきた四人だった。「聖女として母や国教会、王国に育てていただいた身ですが、この旅で外の世界の面白さ、気ままな自由さを知りました。このままレイトと一緒に自由に生きていきたいと望みます」「で、では私も、私も騎士の身分を捨てレイトと共に生きていきたく存じます」「ははは、そりゃいいね。あたしは別に欲しいものなんてなかったんだけど、あたしもかたっくるしい生活よりレイトと一緒に気ままに楽しく過ごせるならそうしたいや」「私も、私も一緒にいる!」(は? なんじゃこりゃ!) おうおう、王道のハーレム展開じ
王都に戻って十日が経った。 王女であるクリスティーンは王宮に戻り、ソフィアは騎士として王都の治安維持に、ビルヒーは聖女として最高司祭である母とともにそれぞれの仕事に従事している。 その間残った三人は暇を持て余していた。 そして、ようやくお呼びがかかり、国王に謁見とあいなった。 王城に登り控室に通されると、そこには騎士として正装したソフィアとこちらも聖女として国教会の正装をしているビルヒーがいた。「久しぶりだねぇ」 ヴァネッサが二人に声をかける。「お久しぶりです、ヴネッサ」 ちょっと見ない間に少し大人っぽくなっているビルヒーが、会釈をする。「はぁ、ちゃんとした正装のある立場の人はいいよねー。私なんか一応洗濯はしてきたけど旅に出てた時のまんまよ」 と、女の子らしく嘆くアシュレイをカラカラと笑い飛ばすソフィアは「ならこれを着るかい?」 と、クローゼットを開けてみせる。 そこにはきらびやかなドレスが数着並んでいた。 それを見たアシュレイはぶるぶると首を振って「やっぱやめとく。そんなの着たらみんなになんて言われるか判ったものじゃないもの」 と、チラリとレイトを横目で伺う。「なら、あたしが着ようかね?」 というヴァネッサに「サイズがないだろ」 と、余計な一言を投げかけてしまいチョークスリーパーをかけられるレイトであった。 ……まったく。 目鼻立ちのクッキリしたオリエンタルな顔立ちのヴァネッサにきらびやかなドレスは案外似合うと思うぞ。 しばしの談笑を繰り広げていると、部屋をノックする音がして呼び出しの声がかかる。(謁見するのは二度目だなぁ) なんて思いながら謁見の間に向かうレイト。 魔王の襲撃によって破壊された壁などは応急修繕がなされてはいたけれど、その爪痕は残っている。 居並ぶ顔ぶれも若い。 あの日、かなりの重臣が身を挺して魔王と戦い散っていった。 その
たどり着いた大聖堂は無傷とはいえなかったが、甚大と言えるほどの被害ではなかった。「お母様」 陣頭指揮に当たっているアデルグンティスを見つけて駆け寄るビルヒーはやはりいたいけな少女だった。「ビルヒルティス。無事に戻ったと言うことは」 というと、娘から顔をあげ、クリスティーンを見とめた。「ああ、よくぞご無事で」「最高司祭様もご無事でなによりです」 アデルグンティスは陣頭指揮を近くにいた側近に引き継ぎ、大聖堂の中へと冒険者たちを案内する。「魔王軍襲来は国家存亡の危機でした」 最高司祭手ずから入れてくれたお茶を飲みながら、双方の情報交換が行われた。 それによると魔王に率いられた魔王軍は当初、三軍に別れて進軍、瞬く間に侵略されたのだけれど、突然四分五裂。 各軍団が互いに争い始めてあるものは討たれ、あるものは魔族領に戻りして次第に勢力が縮小していったそうだ。「各地で猛威を振るった魔族軍ですが、大賢者バガナス様や王国軍の奮戦によって軍としては壊滅いたしました。今、王国内に残っているのは残党に過ぎません」「つまり、魔王が倒されたことで、次の魔王候補が王国内で覇権争いを始め、侵略戦争どころじゃなくなったってことですかね?」「そうなのかもしれません」「とすれば、次期魔王候補で有力なものほど魔族領に戻り地盤固めに入り、そうではない者が王国内に取り残されているって考えていい?」 それはさすがに短絡すぎやしないかね? レイト。「なんにせよ、幸運にも我が国は世界は魔王の脅威から救われたのだな」 ここにも物事を単純化して考える女騎士がいたよ。 まぁ、間違っちゃいないんだ、これが。「王国としてはこれからが大変だともいえますけれど」 と、ため息こそつかないものの憂いをたたえた表情を見せる最高司祭の横顔を不謹慎にも美しいと思ってしまうレイトであった。 言っとくけど、三十そこそことまだ全然若いけどビルヒーのお母さんだからね、その人。 王国国教の最高司
帰還の旅の最大の試練は魔王軍の一団に出くわしたことだった。 魔族の大男に率いられた十人の魔族兵と二十体はいるだろう魔獣の軍団だ。 しかし、幸いなことに敵軍で大きな傷を負っているように見えなかったものは指揮官らしい大男くらいで、その大男にしても無数の傷を負っていた。 数の上では劣勢であっても魔王を倒した無傷の英雄たちである。 先制はレイトのフレイムウェーブだった。 火の波が魔王軍を襲っている間にクリスティーンとビルヒーがブレッシングの魔法を唱える。 二重がけのブレッシングはホーリーブレスとなり、神の過剰なほどの加護を味方に与える。 そこに当然のようにアシュレイのアクセラレーションが付与されれば、魔族といえども対応の難しい神速の剣戟が生まれる。 これをたった一人で受けて反撃までしてきた魔王がどれほど規格外の存在だったか。 レイトは今更ながらに身震いしてしまう。 これほどまでに過剰なバフを与えられて、魔王軍に遅れをとる冒険者たちではない。 カーナが一人で若いワイバーンを一体倒す間に冒険者は残りの魔獣を倒して魔族との戦いに入っていく。「やれますか?」 王女クリスティーンに問われたカーナは一度強く奥歯を噛み締めるとキッとまなじりを上げて力強く宣言する。「もちろんです」 クリスティーンに向かって襲ってきた魔族を迎え撃つカーナは長く鋭い爪を亡き隊長の形見である長剣で受け止めると、その腹を蹴り押す。 わずかに開いた間合いを自ら詰めると両手でもった剣で力の限り横一閃、硬く重い手応えを受けて止まりそうな勢いを雄叫び上げて強引に振り抜く。 一刀のもと両断された魔族の上半身が地面に落ちるのを確認せずに周囲の状況を確認すると、すでに指揮官の大男以外の魔族はすべて冒険者たちに倒されていた。「なんて強い人たちだ」「英雄と呼ぶにふさわしい方達でしょう?」 クリスティーンがカーナの独り言にそう答える。「確かに」 その間にも冒険者たちの攻撃は最後の魔族に向けられていた。 剣士三人の攻撃は
冒険者は街道を王都へ向けて進む。 一日に一組くらいの旅人とすれ違う。 だいたいは商隊だ。 モンスターとはその三倍から五倍くらいは遭遇している。 街道でさえこうなのだとすれば、街道から外れた場所ではいったいどれほどのモンスターと遭遇するのだろう。 モンスターはだいたいがスケルトンやゾンビといったアンデッドだ。 ライアン曰く「無念を残して死んだ旅人が負のエネルギーで動き出したものだ。プリーストである俺が責任持って成仏させてやるよ」 っていうのだけれど、ライアンは仏
ガゼラクトは人口三千人、三分の一の千人が兵士という砦の町だ。 中に入ってまず驚いたのが、2D四頭身が懐かしいくらい粗いポリゴンキャラに変わったことだった。 そこかよ、レイト。(これならまだ2Dだった方がよかった) なんて思ってもしかたなくはある。 なにせヴァネッサの大きなおっぱいが丸みのかけらもない三角錐になってしまっているし、クリスティーンにいたっては女性らしいフォルムを作る努力を放棄したんじゃないかというまな板表現だ。 フィールドも3Dで描画されている。 ワイヤーフレーム
「冒険者ライセンス?」「ああ。通常、王国内でモンスターなどから戦利品を得たとしてもそれは王国の財産であるとして、国庫に収める義務がある。しかし、冒険者ギルドに所属する冒険者は国内のモンスターを駆除する報酬としてギルドに利益の二割を収めてあとは私財としていいことになっているのだ」 これまたいかにもRPGな設定だとレイトはクリスから手渡された認識票をしげしげと眺める。「で、俺とヴァネッサとライアンを登録したのか」「ああ」「クリスやクリスティーンは?」 と、問いかけると、クリスティー
この世界の睡眠は一瞬である。 まぁ、この感覚はどうもレイトだけのもののようだけれど、ベッドに潜り込んだ瞬間から睡魔に襲われ、目覚めた時にはちょうどいい朝になっている。「いいのか悪いのか」「なにを言っているんです?」 独り言が口をついてしまうなんて結構末期だよ、レイト。「あー。いや、独り言」 今日は休息をかねた買い出しの日である。 クリスは護衛と称してクリスティーンに付き添って食料の買い出し、残りの三人は残りの冒険道具の買い出しだ。 クリスは文無し、こちらはダン