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13-7.レイカ、女バスな人んちを泊まり歩く

last update Last Updated: 2025-05-24 18:00:29

 ナナミが言うには、宮木野と与一の二人のヴァンパイアは戦国時代の終わりに辻沢に突然現れたんだって。ふーん。

「与一って誰?」

「言い伝えの宮木野と志野婦が双子ってのは真実なんだけど、志野婦の本当の名前は与一といって、男なんだ。二人は辻沢の人たちと不襲の契約を交わし、その証に自分たちの弱点を教えた。それが、山椒と過ぎ越しの唄」

なんか聞いたことある歌の題名。

「辻沢の人は、スギコギの唄って言ってるな」

 パパの唄だ。

「山椒の木にはヴァンパイアが寄り付かないっていう誤伝が広まって、辻沢は山椒の特産地になったわけ」

 逆っしょ、寄っていきますよ、ぐいぐい。

「まあ、和むからいいんだよ」

 なるほどね。で、ナナミはなんでそんなこと知ってるかっていうと、

「うちもヴァンパイアの家系。屋号は五カ辻。ウチはヴァンパイアじゃないけどね」

 六辻家。辻の字のつく屋号の家。うちの辻王、ミワちゃんとこの辻一、町長のとこの辻まん、ナナミのとこの五カ辻、あとロ乃辻と棒辻っていうのがあって、それらが二人の血筋の証し。つまりヴァンパイアの家系ってこと。

「思い出したか?」

「うん。昨日やっと」

「まったく。ママハイ仕込みは」

「ほっとけや」

「六辻家の中でも、レイカのところにはセーヘキがあって」

 セーヘキ?

「辻沢のヴァンパイアの間では特殊な性質のことをセーヘキっていう」

「ひょっとして、それって、ザ・デイ・ウォーカー?」

「何だそれ」

「太陽の下でも平気な吸血鬼のことだよ。『ブレイド』のウイズリー・スナイプスがそうなんだ。弱点なしの最強の吸血鬼」

「何? 漫画の話? レイカ、オタクだったの?」

「まさか」

 ちがうよ。あはは。

「今ちょっと目の色が変わってたよ。きもかった」

 やばい。女バスでオタクばれるの、致命傷(冷汗)。

「ま、いいや。それが辻王のセーヘキ。あんたの家のだよ」

 よっしゃ! ザ・デイ・ウォーカー、レイカ! って喜んでいいものなのかどーか。

「ナナミのトコロは、セーヘキないの?」<
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