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第1176話

作者: 落流蛍
栄子の姿が二階の奥へと完全に消えてから、里美はようやく堪えきれずに泣き出した。

「この子は、どうしてこんなに苦しい運命なの。もし南雲グループと何の関わりもなければよかったのに」

栄子はまだ知らなかった。

武は確かに高坂家の家主であり、家族内の大小さまざまな事柄を取り仕切っているが、家の中の本当に重要な決定は、たいてい長老たちが下すということを。

つまり、先ほどの老人が本当にこの件を長老のもとへ持ち込んだとしたら、彼らが考えるのは家族全体の利益であって、栄子の血縁など眼中にない。

ましてや、彼女は女の子なのだ。

武はそっと里美を抱き寄せた。

「安心しろ。俺はもう二度と、栄子を俺たちから離れさせはしない」

里美はすすり泣きが止まらなかった。

一方で、二階にいる栄子は、自分の置かれた状況にまったく気づいていなかった。

……

一方、車内では華恋が窓の外の景色を眺めていた。

彼女の手は、時也に強く握られている。

二人ともずっと言葉を発さなかった。

その静けさの中で、華恋は時也の鼓動まで聞こえるような気がしていた。

さらに五分ほど沈黙が続いた後、華恋が口を開いた。

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