水の檻〜ミズノハコ。出られる場所に留まる理由

水の檻〜ミズノハコ。出られる場所に留まる理由

last updateLast Updated : 2026-07-20
By:  しずか@水PプロジェクトUpdated just now
Language: Japanese
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ヤスタカが用意したのは、山奥の一般家屋。 の形を模したクリエイター専用ハウスだった。 様々なクリエイター達と、それをまとめるヤスタカの、倫理観崩壊ハーレムが始まる。

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Chapter 1

1話/プロローグ

朝のダイニングは、いつもどおり賑やかだった。

緩いざわめきとコーヒーの香りが流れる、そんな朝だ。

キッチンではゆかりが軽やかに動き回り、食器の音とコーヒーの香りが漂う。

その中に、寝不足の足取りでようこがふらりと現れる。

ようこ「おはよう……ゆかり、コーヒーお願い」

ようこは大きくあくびをしながら椅子に体を預けた。

ゆかりは鍋を混ぜる手を止めず、ちらりと笑う。

ゆかり「はーい、昨日も夜更かしですか?濃いめで用意しますね」

ようこは半分眠ったまま、テーブルに突っ伏す勢いで崩れかけていた。

りえ「ようこさん!今朝はミーティングだと言っていたではありませんか!遅いです!」

新聞を片手にしていたあいも、すかさず突っ込む。

あい「そうだぞようこ。私のように5時に起きて筋トレしろとは言わないけど、朝はリズムを作る大切な時間。シャキッとしないと」

ようこは片目を開け、どこか拗ねた声で返す。

ようこ「仕方ないでしょ……4時まで仕事してたんだから……夜更かし組には朝のミーティングは辛いのよ……」

またテーブルの上に沈む。

その横に、ゆかりが湯気の立つマグを置く。

ゆかり「お疲れ様です。どうぞ。うーんと濃いめですよ」

ようこはマグを握ったまま、テーブルを見回した。

ようこ「ありがとゆかり……それより、私より遅い人たちは?まだ寝てるの?そっちに文句言ってよ……」

その問いに、ゆいが俯いたまま頬を赤く染める。

ゆい「ヤスタカさんとあとの方達は……その……昨夜は……」

その赤さだけで、彼女が何を見て、何を聞き、何を思っているかが全員に伝わった。

ゆい「あ、出てきたみたいです……けど……朝までだったみたいです……」

ようこはコーヒーを吹きかける勢いで顔を上げた。

ようこ「え?そこまで聞こえちゃうの?今もってこと?」

ゆいはさらに紅潮しながら、震える声で続ける。

ゆい「いえ……ヤスタカさん以外の方達の息が荒くて……足取りもなんだか引きずるような感じだったので……」

ゆいは俯いたまま、さらに真っ赤になる。

ゆい「それと、この家は防音がしっかりしてるので、ちゃんと扉を閉めたら私でもほとんど聞こえません……」

ようこは、そこでりえの方にゆっくりと意地悪な視線を滑らせる。

ようこ「そうね。確かに隣の部屋の音も聞こえないものね。例えば……昨日の昼間のスタジオみたいに扉を開けたままだとあんな声まで聞こえちゃうの?」

りえは派手にコーヒーを吹き出した。

テーブルを拭きながら、しかし必死で言い訳を続ける。

りえ「な!?そんなはずはありません!ちゃんとヤスタカさんと2人で鍵まで確認しました!」

言い返した瞬間、自分から墓穴を掘ったと気づく。

りえ「……ようこさん……嵌めましたね……」

ようこはマグを持ち直し、ニヤリと口角を上げる。

ようこ「私は例え話をしただけよ。りえちゃんの自爆じゃない?」

りえは真っ赤になったまま震えるだけ。

あいが机を叩く。

あい「りえ!お前もか?けしからん!風紀が乱れてる!」

またしてもようこが淡々と火消しをする。

ようこ「風紀ねえ……この家にそんなものあったかしら…それに日頃から風紀を乱してるのは……」

視線がゆっくりとキッチンへ向く。

ゆかりが楽しげに朝食を作っている。

ゆい「……そうですね……ゆかりさん……いつでもどこでもなんで…正直部屋の外に出る時は緊張します……大体ゆかりさんの声が聞こえてくるので……」

ゆいはとうとう真っ赤を越えて湯気を出しそうだった。

そんな空気を変えるべく、ようこが口を開く。

ようこ「でもあれね。けしからんと言えばあいのその胸じゃない?そそる形と大きさよね……じゅるり……」

りえ「ようこさん……オヤジくさいですよ……」

あい「お?これか?自分としては重くていい筋トレ程度にしか思ってなかったけど……ふふ……ヤスタカはお気に入りでな……いつも潰れるほど揉みしだいてくれるんだ」

なにが楽しいのか、あいは自分の胸を鷲掴みし出した。

ゆい「潰れるほどって……痛くないんですか?……」

ゆいの普通の疑問に、あいはキョトンと答える。

あい「何を言ってるんだ?痛いからいいんだろ?おかしなことを言うな?」

ゆい「え!?私がおかしいんですか?」

ようこ「大丈夫よゆいちゃん。おかしいのはあいとこの家の方よ」

りえ「全く……とんだドMなのにどの口で風紀とか言ってるんでしょうね」

ようこ「下の口じゃない?」

ゆい「……さすがに下品すぎます……」

少しの沈黙を切り裂いたのは、張りのある男の声だった。

ヤスタカ「おはよう!」

見た目に反して、声だけは妙に若い。

その勢いのままキッチンへ向かう。

ヤスタカ「ゆかり、朝食の準備手伝うよ」

続くように、いろは・しずか・めぐみがダイニングへ現れる。

三人とも足取りは重く、疲労の色が濃い。

いろは「おはようございます……はぁ〜しんどいです……けど、幸せです♡」

しずか「しんどいは賛成……ホントなんなのかしら……あの体力……」

めぐみ「あたし……もうだめ……腰が動かない……50手前の男の体力じゃ無いわね……」

昨夜……いや、今朝までの惨状を語るような、恨みのこもった……なのに満足げな声。

りえが呆れたように呟く。

りえ「3人がかりでこれですか……しかも本人はあんなに元気で……バケモノですね……今更ですが……」

視線がキッチンへ集まった時、全員が気づく。

“そこにいるはずのゆかり”がいない。

見えるのは、心なしか息を荒くしたヤスタカだけ。

あい「ゆかり!そこで何してるんだ!?」

ゆかり「ふぁい?なにふぉいふぁれましへも……」

ようこが呆れながら、決定的な一言を投げる。

ようこ「……ひとまず口を離しなさい……」

ちゅぱ。

ゆかり「何と言われましても……“お掃除”ですが?」

しずかは額を押さえ、あいは怒鳴りかけて言葉を噛む。

あい「……確かにゆかりが1番風紀を乱してるな……羨まし……じゃなくて!時と場所を考えろ!節操が無さ過ぎる!」

めぐみ「そうよ〜ゆいがもう限界みたいよ」

その通り、ゆいは机に突っ伏して瀕死状態。

ゆかり「ん♡んく……ん!……はぁ……ご馳走様でした♡」

満足げに立ち上がりながら、ハンカチで口元を拭う。

ゆかり「さあ、朝食にしましょうか。私はお先にいただきましたが♡」

しずか「はあ……もういいわ……食べましょ」

みんなの話し声と食器の音ののち、ヤスタカが本題を切り出す。

ヤスタカ「さて、前から言っていた通り今日から俺とあいとゆかりで2泊3日の出張だけど、みんなはどんなスケジュール?」

いろは「そうですね……特別立て込んではいませんが、あいさんのコラムが少し押してますね。それ以外はそれぞれで個別の作業です。

ヤスタカさんが必要な作業は入れないようにしておきましたから」

ヤスタカ「そうか。じゃあ出先であいの進捗は俺が見張っておくよ」

めぐみはまだテーブルに沈んだまま、弱々しく声を漏らす。

めぐみ「牧場か……ちょっと撮ってきて欲しい画があるから後でラインで送るわ。ロケハン、私の替わりにお願いするわ」

ヤスタカ「一緒にくるか?MM号ならまだ乗れるぞ?」

めぐみは伏せたまま鋭い目だけ向ける。

めぐみ「そうね、こんな状態じゃなければ行ったかもね!あんたのせいでね!」

ヤスタカ「すまん……めぐみは体小さいから気をつけてるつもりだったんだけど……」

めぐみ「ちっぱい言うな!」

ヤスタカ「言ってない!体が小さいっていったんだ!」

めぐみ「小さくない!」

ようこがクスクス笑いながら呟く。

ようこ「でもあれね、ドMコンビとMM号で2泊3日ねぇ……何もないといいけど……」

その言葉にハッとして立ち上がるりえ。

りえ「あ!本当に気をつけてくださいよ!その組み合わせ、前に職質されたチームじゃないですか!」

しずか「ああホントねぇ。街中で盛ってたんだっけ。そりゃ通報されるわよ」

ふとあいを見ると、“悪いことをした”と言う顔ではなく、むしろ嬉しげに遠い目をして恍惚と呟く。

あい「ああ……あの時は本当に楽しかった……見えてないのに見られているかもと想像しただけで……昂りが蘇る……あんな人数に襲われてしまったら私はどうなってしまうのか……ああ!」

カチャン。

コーヒーカップが置かれただけなのに、空気が凍りつく。

いろはが笑顔のまま、静かに言った。

いろは「……お二人とも……いえ、お二人だけじゃ無いですが、皆さんがどんな性癖を持って、どこで誰と何をしても何も言いません……皆さん大人なので……ですが……」

笑顔の奥に潜む怒気は深く、冷たい。

いろは「ヤスタカさんは優しいですからね。皆さんが何をしてても許してしまう……そこも素敵なんだけど……このプロジェクト……というか、ヤスタカさんの足枷になるような事をしたら……」

いろははさらにニッコリと笑う。

言葉の続きを発さず、笑顔のまま面々を見渡す。

その沈黙に全員が震えた。

空気を和らげたのは、またヤスタカだった。

ヤスタカ「うん、いろは……俺のために言ってくれてるのはわかったよ。ありがとう」

空気が少し和む。

しかし、ヤスタカの声には別の熱も混じっていた。

ヤスタカ「いろは……この後時間あるかな?俺の部屋に来て。ゆかり、あい、ちょっと出発遅れるけど待っててくれ」

ようこが呆れたように笑う。

ようこ「あ〜あ、これは出発は明日と思った方がいいんじゃない?」

りえ「いや、さすがにヤスタカさんでも徹夜明けで……ありえますね……」

この騒がしさも、ほんの数ヶ月前には想像もつかなかった……

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1話/プロローグ
朝のダイニングは、いつもどおり賑やかだった。緩いざわめきとコーヒーの香りが流れる、そんな朝だ。キッチンではゆかりが軽やかに動き回り、食器の音とコーヒーの香りが漂う。その中に、寝不足の足取りでようこがふらりと現れる。ようこ「おはよう……ゆかり、コーヒーお願い」ようこは大きくあくびをしながら椅子に体を預けた。ゆかりは鍋を混ぜる手を止めず、ちらりと笑う。ゆかり「はーい、昨日も夜更かしですか?濃いめで用意しますね」ようこは半分眠ったまま、テーブルに突っ伏す勢いで崩れかけていた。りえ「ようこさん!今朝はミーティングだと言っていたではありませんか!遅いです!」新聞を片手にしていたあいも、すかさず突っ込む。あい「そうだぞようこ。私のように5時に起きて筋トレしろとは言わないけど、朝はリズムを作る大切な時間。シャキッとしないと」ようこは片目を開け、どこか拗ねた声で返す。ようこ「仕方ないでしょ……4時まで仕事してたんだから……夜更かし組には朝のミーティングは辛いのよ……」またテーブルの上に沈む。その横に、ゆかりが湯気の立つマグを置く。ゆかり「お疲れ様です。どうぞ。うーんと濃いめですよ」ようこはマグを握ったまま、テーブルを見回した。ようこ「ありがとゆかり……それより、私より遅い人たちは?まだ寝てるの?そっちに文句言ってよ……」その問いに、ゆいが俯いたまま頬を赤く染める。ゆい「ヤスタカさんとあとの方達は……その……昨夜は……」その赤さだけで、彼女が何を見て、何を聞き、何を思っているかが全員に伝わった。ゆい「あ、出てきたみたいです……けど……朝までだったみたいです……」ようこはコーヒーを吹きかける勢いで顔を上げた。ようこ「え?そこまで聞こえちゃうの?今もってこと?」ゆいはさらに紅潮しながら、震える声で続ける。ゆい「いえ……ヤスタカさん以外の方達の息が荒くて……足取りもなんだか引きずるような感じだったので……」ゆいは俯いたまま、さらに真っ赤になる。ゆい「それと、この家は防音がしっかりしてるので、ちゃんと扉を閉めたら私でもほとんど聞こえません……」ようこは、そこでりえの方にゆっくりと意地悪な視線を滑らせる。ようこ「そうね。確かに隣の部屋の音も聞こえないものね。例えば……昨日の昼間のスタジオみたいに扉を開けたままだとあんな声まで聞こえち
last updateLast Updated : 2026-07-02
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2話/ヤスタカ。過去に触れる
どうやら、俺は運が良いらしい。子供の頃、お年玉といえば宝くじ一枚だけだった。しかし、いつの間にか俺名義の口座には数百万円が入っていた。ただ─ー当たった時の半分ほどに減っていたのは、俺の記憶違いだろうか。友人にも恵まれた。親友と呼べるやつができ、その男は当時まだ認知度の低かった仮想通貨を教えてくれた。貯金をはたいて購入した俺に、彼は「買う直前にレートが倍になってて、半分しか買えなかった」と申し訳なさそうに謝ったほど誠実だった。今では相場が八千倍になったので、謝る必要なんてなかったのに。その彼は、数ヶ月後に音信不通になった。噂では、俺の仮想通貨を買った直後くらいに大金を手にしてから散財し、借金を作り、ついには消えたらしい。言ってくれれば肩代わりくらいしたのにな、と今でも思う。結婚もできた。地道に働き、子供も二人できて──そう、あの頃は幸せの絶頂だった。……14股されていたことと、子供が俺の子じゃなかった事実が発覚するまでは。けれど慰謝料をしっかり回収し、建てた家の財産分与も放棄させたので、貯金はむしろ増えた。職場にも恵まれた。パワハラ上司と、それを黙認した会社を訴えたらきっちり賠償金を払ってくれた。数ヶ月後、その会社は潰れていた。タイミングよく逃げられた俺を同業者達は“異次元の逃亡者”と呼んだ。──やっぱり、俺は運がいい。いまでこそ1LDKで2人住まいだが、そこには“狭いながらの幸せ”が溢れている。「いや、それ絶対運悪いですって。人間関係ガチャ大爆死じゃないですか。どう考えてもヤスタカさん、メタ認知できてませんよ」ベッドでうつ伏せに漫画を読んでいたいろはが、ジト目でこちらを見ていた。「あれ?声に出てた?恥ずかしいな……」モノローグを聞かれるのは、死ぬほど恥ずかしい。「けど、大爆死ではないだろ?こうしていろはに出会えたわけだし……」コーヒーを置き、ベッドの横に座り、いろはの頭を撫でる。こんなおっさんが、いろはのような子と同じ空間で生きている。それだけで勝ちだ。そう思わないか?撫でられたいろはは真っ赤になって枕に顔を埋めた。「自分と出会えたから運が良いでしょ?なんて言う人、いませんよ。いても信じちゃいけないタイプの人ですよ……」俺の手を避けながら、枕を抱えて座り込む。「まあ、出会えて嬉しいなんて言われたら
last updateLast Updated : 2026-07-02
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3話/ヤスタカ。創り出す
衝撃的な閃きから一夜明けた朝。差し込む光は昨日と同じはずなのに、胸の奥だけが妙にざわついている。これから俺に何ができるのか──不安と期待が同時に膨らむ。ピンポーン。インターホンに乗ったしずかの声は、明らかにくたびれていた。『はい……なに?あんた達揃って……まあいいわ。鍵は開いてるから入って……』女性の一人暮らしとしてはだいぶ無防備だが、これが“残念美人”と呼ばれるゆえんでもある。ーリビングに入ると、しずかはノートPCに顔を近づけ、キーボードを叩きながら眉間にしわを寄せていた。くたびれたスエットに着古したインナーは首元が伸びきって、肩の片側がわずかにずり落ちている。見えてはいないが、その奥のラインが想像できるくらいには緩んでいた。世間から“天才美人小説家”なんて呼ばれているくせに、生活態度は壊滅的だ。「……汚いな……」「はい……たしか二週間前には掃除したはずなんですけど……」段ボール、緩衝材、包装紙。そして玄関の隅には──なぜかパンツ。俺は思わず眉をひそめた。「しずか……忙しいのはわかるが、掃除くらいしてくれよ……家事代行の金取るぞ……」「いいじゃない。知らない人に荒らされるくらいなら、知ってるおっさんに下着漁られる方がまだマシよ」冗談なのか本気なのか、その判定すら面倒だ。ただ、漁る必要はない。自然と落ちているから。俺は思わず声を荒げた。「掃除させろ!座る場所もない!」こうして突発の大掃除が始まった。ー掃除の途中、ふとベッド脇のキャビネットが目に入る。「ここ、触ったことないな……どうせ中もぐちゃぐちゃなんだろ」軽い気持ちで手を伸ばした瞬間だった。「駄目っ!!」いつになく大きな声で、しずかが俺の前に飛び込んできた。頬は赤く、目は潤んで、荒い呼吸。伸びたインナーの隙間からちらりと見えた細い布地は、今日の彼女がどれほど余裕のない状態かを雄弁に語る。「しずかさん……女の子の“パンドラの箱”、ですよね?なのでヤスタカさん、そこは他人が触ってはいけないんです。察しなくていいのでわかってください」いろはが静かに微笑む。しずかは歯を食いしばり、小さく震える声で言った。「いろは……喋ったら……わかってるわよね……」中身については追及しないことにした。死ぬほど面倒くさそうだから。ー一通り片付いた頃、いろは
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4話/ようこ。敗北する
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5話/いろは。対策する
私は、エッチなことが好きです。学生時代から数だけならかなりの男性と関係を持ってきました。酷い男にソープへ売られたときでさえ——むしろ「天職かも♡」と感じたほどに、私は性に貪欲でした。けれど、そんな私の人生に転機が訪れました。大袈裟ではなく、天啓のように思えるほどの出会い。その瞬間、私は悟ったのです。——ああ、この人だ、と。「はじめまして♡ いろはです♡」いつもと同じ仕事、同じ段取り。相手が誰かなんて関係ない。身体を重ねれば私も潤う、相手も満足、財布も満たされる。これが私の中での“最適解”でした。なのに、その日は違った。どこにでもいる普通のおじさん。威圧的でもなく、知的アピールもせず、ただ礼儀正しいだけの人——そう思ったのに。すべてを奪われました。これまでの快楽は前座にすぎなかった。欲しい言葉を欲しい瞬間にくれる優しさ、激しさ、体温。ほんのひと匙の気遣いが、私の心を根こそぎ攫っていく。“最高”ではなく“最適”。その答えを、ヤスタカさんは一度で叩き込んでいきました。私の心も体も“あの人のためのものだ”と理解させられるほどに。―「ほうほう……それで? あの美人ライターさんを完全KOして帰ってきたと。武勇伝を聞かされてるんですか私は」ヤスタカさんの部屋。仁王立ちの私と、土下座するヤスタカさん。「いや、武勇伝とかじゃなくてな!? いろはには隠し事をしたくなくてだな……酔った勢いというか……つまり、ごめんなさい! 浮気しました!」必死な謝罪。怒ってはいない。けれど、これは儀式だ。ヤスタカさんの“心の形”を守るために必要な段取り。許しを経て、ようやく彼は安心できる。だから私は淡々と確認し、そして告げる。「無理やりしたわけではないんですよね? 傷つけてもいない? ……わかりました。なら許します」本当は少し嫉妬している。でも乙女心なんてそんなもの。「ただし罰を与えます。私がいいというまで禁欲です。いいですね?」罪と罰はセット。これは二人のための“形”でもある。―そして私は気づきました。この異常なまでの性欲の増大は、ひょっとして——[創作欲の発露]では?小説家との会話、フリーライターとの共同作業。創作の火種が大きくなるほどに、ヤスタカさんの性欲も増えている。夜の濃度が落ちないどころか、むしろ増してい
last updateLast Updated : 2026-07-02
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6話/ヤスタカ。誘う
俺の中に一つの疑念が生まれた。“性欲が増しているかも”という、少し笑えなくなってきた種類のやつだ。禁欲明けとはいえ、朝までいろはとようこを相手にしてしまった夜を思い返す。あれは若さではなく、“何かが噴き出してる”感じだった。創作への熱。誰かの言葉に触れた夜に、脳の奥がカチッと切り替わる瞬間。そして、ようこと並んで机に向かったときの、あの奇妙な昂り。“やりたいことが増えていく”と同時に、“身体がそっちに引っ張られている”感覚がある。いろはが毎晩搾ってきても夜の回数が落ちないのも、理由はそこなのかもしれない。……それに、最近、変なことまで考えるようになった。自分が創るのはもちろんやりたい。でも、それと同じくらい“誰かの創作を支える”のもやりたい。問題は――俺には技術はない。あるのは“情熱と金”だけ。金をばら撒く気はない。“金で集まった人間”の薄っぺらさを、俺はもう十分知っている。だからこそ、俺はまず、いろはに相談した。自分の曖昧さごと全部をさらけ出すように。いろはは、しばらく黙って、何かを計算するみたいにブツブツ呟いていた。「え……待ってよ?つまり、現状の検証が終わってないまま次? 間が悪いですね……しずかさんの籠絡も進んでないし……いや、ようこさんに協力を…… でもようこさんもいつもってわけじゃ……りえ……いや、友達は巻き込めないし……」何を考えてるのかはわからない。けど、“真剣に俺のことを考えている”って空気だけは伝わってきて、なんだか胸が熱くなった。「いろは。どうだろう。またしずかやようこにも相談した方がいいかな?」俺がそう言うと、いろはは「それなら」と即答で2人を呼び出した。―「は?じゃああんたが会社作れば?」しずかの第一声。あまりに雑で、逆に説得力がある。「会社……?」「というか“会社みたいな枠”ね。 金を撒くんじゃなくて、困ってるクリエイターを受け止める"箱"。 あなたは代表で、やりたいことが見つかるまで誰かに協力すればいいだけ」ようこがすかさず乗ってくる。「面白そうじゃない?私もフリーだし。 あんたからの依頼が有料になるなら、なおさら悪くないわよ?」聞いていると、俺の頭の中で“点”だったものが、ゆっくり“線”になっていく。確かにこれは、金のばら撒きじゃない。“お互い納得した契約”と
last updateLast Updated : 2026-07-06
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7話/ヤスタカ。立ち上げる
……先に言っておこう……これは完全に合意であると……「あ……あ……あ〜……♡」「んふ♡どうですか?ようこさん……見えないの……興奮……は……してますね♡」俺の自室。ベッドルーム。目隠しで拘束された黒髪の美女と、それを見て楽しむ小悪魔系美女。そして、それを眺めながら一息つく俺。「……なあようこ……お前知ってたよな?あいの……性癖……」ようこは、呼吸を乱し、体の奥から溢れ出る熱に浮かされるように答える。「ん……ええ……んん!知ってたわよ?あ……けど、仕事の話とは……ん♡関係ない……かと……んん♡」目隠しされて、次々といろはが与える刺激に耐えながら、ようこはしれっと言い放った。自分が置かれている状況をわかっているのかいないのか……「それともなに?あ、ああ!……あいのことも……ん……手を出す気だった?あん♡」俺はゆっくりとベッドに上がり、ようこの頬に触れる。ビクンっとようこの体が跳ねる。拘束具がかちゃりと音を鳴らすと、ようこは切なげに口を開ける。……クプ……「確かに関係ない……手を出す気もない……けどなぁ!実生活に影響するレベルのは伝えとけよ!」……もう一度言う。これは完全に合意であると……ー翌朝……ではなくもう昼か……いつもより少し負担の少なかったいろはは元気に家事をしてくれている。2人で昼食を食べようとした頃、ようやくようこが起きてきた。昨夜は"意趣返し"がメインだったので、かなりの時間ようこのターンだった。そんなこともあり、ようこはいつもよりも更に腰は砕け、疲労困憊の様子だった。「おう、おはようようこ。昼ごはん食べられるか?」「……無理……あんな快楽漬け……バカになる……抜けられなくなる……いいか……抜けられなくても……」返事なのか独り言なのかもわからないトーンで、ようこはブツブツ声を発した。妙に艶っぽい声音で……ーようやくようこが落ち着きを取り戻した頃、いろはが話を切り出した。スマホの画面を見せながら。「この間、動画編集してる友達がいるって言ったじゃないですか……その子がちょっと良くない状況にありまして……」スマホのメッセージにはこう書かれていた。"この間いろはが言っていた互助会?の話、ちゃんと聞かせてくれませんか……なんか……エッチな依頼をこなせばお金くれるって言う……この際、動画を続けられるならいいか
last updateLast Updated : 2026-07-06
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8話/しずか。乙女とポエム
ー夜ーパソコンの前に座りキーボードを叩く。当たり前の日常。私は小説家なのだから。あたりを見回す。雑然としていた。当たり前だ。私は家事が苦手だから。「少し前までは……綺麗になってたのに……」なんのことはない、隣室の友人が忙しくなって、私の世話をしなくなったから……依存だ……わかっている……彼は私の世話を焼く必要はない……わかっているのに……今夜も隣室はお盛んだ。朝までだって珍しくない。ただ……壁越しに聞こえる彼の声が……彼を呼ぶ声が頭に焼き付いて離れない……ただのノイズだ……これは……ただの…………嫉妬だ……「乙女か!」私は、自分が思っていた以上に彼に惹かれていた事を自覚し、思わずテーブルを叩いてしまった。「いやわかってたのよ!だいぶ前から!はいはい!そうです!好きですよ!これでいいですか!?」こんな独り言を叫んでしまうほどには彼にやられてしまっていたらしい……会いたい……会いたくない……こんな矛盾を抱えたままで、いつまで彼のそばにいられるのだろうか……「だから乙女か!私は天才小説家"しずか"!理性、仕事しなさい!」ー「しずかさ〜ん。ここの表現なんだけど……」「あ、これはね……こうすると幅がでるわね……」最近は、彼の起こした[水Pプロジェクト]の事務所によく足を運ぶ。流石と言うべきか……彼の本物を見る目は"本物"だったようで、ここに集まった子達は才能の塊だ。吸収は早いしすぐに結果に結びつく。私自身、ここで多くの刺激を受けて、毎晩筆の乗りがいい。だが……「ヤスタカさん♡取り敢えず滑り出しは上々ですよ!……まあ……赤字は想定内ですが……」「ヤスタカ?あ〜なんか肩凝ったわ〜誰か揉んでくれないかしら……」「ああヤスタカ?動画のここなんだけど……」……彼は引く手数多なようだ……いつのまにか動画チームでも彼の評価は上がっているらしい……しょっちゅう誰かが相談にきてきる。ここは彼がいる事で上手く回っている。彼には本来、サポートが向いているようだ。……彼の才能は……ヤスタカの才能は、私が最初に気づいたのに……だから!乙女か!ポエムを綴るな私の脳!仕事して!……ダメ……ここは刺激が強すぎる……ー『あ……ん……ヤスタカさん……♡そこ……もっと……♡』『ほら……ヤスタカ……ん……そう……後ろ?いいわよ♡』『いろは、
last updateLast Updated : 2026-07-06
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9話/ヤスタカ。作っちゃった前編
「なあいろは……実は……つくりたいんだ」まだ俺は“つくりたい”としか言っていないのに、いろはの顔はみるみる青くなり……「ひぃ!」……こんな声を上げた。いや失礼すぎんか……いろはなら許すけど……悲鳴を上げたいろはをよそに、ようこが話に加わった。「え?なに?子供作りたいの?私はいいわよ?♡」ようこはドヤ顔で自分の腹をぽんと叩く。いや、そうじゃない。「じゃなくて!……ん?なんか既視感が……」俺とようこのやり取りを聞いて、いろはが呆れたように口を挟む。「あーようこさん……そのくだり、もうやったんでいらないです。……ヤスタカさん……今度は何を?」「いろはちゃん!?最近私の扱い雑すぎない!?」ようこの抗議を無視していろはは俺の方に向き直る。「その……寮の件なんだけど……」ー翌日、事務所に入るとしずかが俺の前に立ちはだかった。俺を睨みつけるしずかは、何も言わず俺の手を引いて、会議室に連れ込む。しずかは扉を閉めると腰に手を当てて見上げるように睨みつけてきた。「あんた達……もっと静かにできないの?安眠妨害なんだけど!わざとなの!?朝まで聞かされるこっちの身にもなってよね!」よく見るとしずかの目の下にクマが……これは……申し訳ないやら恥ずかしいやら……「ごめん……ちょっと衝動が溢れちゃってな……気をつける……」しずかは呆れるように……しかしどこかいたずらっ子のようにこう返してきた。「2人がかりでその結果ねぇ……じゃぁ……足りないなら私が埋めてあげよっか?」ニヤリと俺の目を覗き込む。「そんな理由でお前とできるわけないだろ?お前にも失礼だしいろはとようこにも失礼だ」全く何を言い出すかと思えば……そんな理由で簡単にできるならもっと前に……いや、ダメだろ……しずかは、俺の言葉に驚いたと思ったらコロコロと笑い出した。「ふふ……冗談よ……でも、2人同時に手を出してどの口で失礼とか言ってるの?……全く……いろはちゃんの言う通りね……“創作熱=性欲”って……」いろは……そんなことまで話してるのか……「それで?今度は何を作るのかしら?ハーレム?私も入る?」「違うよ!今否定したばっかりだろ?……いや、ちょっと規模が大きすぎて何から話せばいいのか……まあちょっと待っててくれ。そのうち話すから!」俺は逃げるように会議室を後にした。ーそこか
last updateLast Updated : 2026-07-06
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10話/ヤスタカ。作っちゃった後編
「誰かここまでで気になるところはあるか?」俺は階段を降りながら聞いてみる。案の定、みんな考え込んでしまった。それはそうだろう。ここまで“住居の設備”の説明しかしていない。“クリエイターが十全に仕事ができる環境か”と言えば、まだその答えを出すフロアを見せていないのだから当然だ。……しずかの顔は……あれは「ツッコミどころしかないんですけど?」って顔だな……「さあ着いたぞ。ここが地下2階だ。」「はあ!?地下2階って……ええ!?いつの間に?」りえは嬉しいリアクションをしてくれる。頼もしい。「ああ!ここがこのハウスの心臓だな!サーバールーム、収録スタジオ、機械室を完備してある!ここのシャッターを開けると……この通りスロープでガレージに直結している!」「な、なんだこれは!素人の私でも最新設備だとわかるぞ!おいヤスタカ!お前は頭がおかしいのか!?」あいですらわかってしまうか……この地下2階の設備が実は1番高いのだ。……っておい……失礼だな……頭は正常だ…たぶん……「ふわぁ……ミキサー……私では絶対手が出ないモデルです……それに広い……」ゆいはこれまでで1番テンションが上がっている……ようだ……まあ仕方ない。これだけの設備、日本でもなかなかないだろう。「よし、上に上がろうか。地下1階。遊技場だ!」ここはバー、ジム、ビリヤード、カラオケ、麻雀(私情)、ダーツなど、色々な遊戯施設を詰め込んだ。「ここはまだスペースがあるからな。みんなも“こんなのが欲しい”ってのがあれば言ってくれ」福利厚生大事。ストレス発散は篭りがちなクリエイターには大事な要素だ。「ヤスタカさん。さっきのお風呂といいサーバールームといい……かなりエグいインフラが無いと……大丈夫なんですか?アート村からも遠いようですし……」さすがりえ……欲しいところで欲しい言葉をくれる。さすりえ。「ふふふ……そうだな……じゃあみんな、一旦外に出てくれるか!?答え合わせをしようじゃないか!ふふふ……」「代表って……」ゆかりさん、言いたいことがあるなら聞こうじゃないか。外に出て、ガレージの反対側、南側の斜面が見えてくると、一同は言葉を失った。「どうだ!この斜面いっぱいに広がるメガソーラーは!もちろん蓄電池も完備!電気代は心配ない!売るほど作れる!水も湧水を濾過、消毒をして風呂も入り放題だ!…
last updateLast Updated : 2026-07-06
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