Masukその言葉に、彼自身が少しだけ苦笑したように見えた。「そして、それは私の人生で最も恐ろしく、それでいて最も美しい出来事だった」私は目を閉じる。彼の言葉の一つひとつが、胸の奥へ染み込んでいく。「もう二度と、私たちの間に秘密を作りたくない、ブランシュ。もう二度と嘘をつかない。沈黙もしない。お前のすべてが欲しい。恐怖も、過ちも、そして誰にも見せたことのない、お前の最も暗い欲望さえも」彼の額が私の額に触れる。「その代わりに、私もすべてをお前に渡す。私の弱さも、迷いも、誰にも見せたことのない傷も。何も隠さない」彼の瞳が私を見つめる。「準備はできているか?」その問いは、静かだった。けれど、その奥には彼のすべてが込められていた。「私のものになる覚悟はあるか? 契約によってでも、強制によってでもない。お前自身の意思で、私を選ぶ覚悟があるか?」私は再び涙を流した。けれど、今度の涙には羞恥も恐怖もなかった。そこにあったのは、純粋な喜びと安堵、そして胸いっぱいに広がる愛だった。私は言葉を出せないまま、ただ頷いた。喉が感情で塞がれていた。「……はい」ようやく、それだけを絞り出す。「はい、ダミアン。私はあなたのものです。契約のためでも、脅されたからでもない。私自身の意思で。永遠に。ただ……愛しているから」彼は私を抱きしめる。二人の距離はさらに近づき、互いの鼓動と呼吸が重なっていく。それは支配でも、罰でもなかった。ただ、互いを選んだ二人が、言葉では言い尽くせないほど深い愛を確かめ合う時間だった。彼の額が私の額に触れ、唇が重なる。私は目を閉じる。もう何も怖くない。今夜、私たちは互いに何も隠さない。ただの男と女として。
「お前は私と対等な存在だ。私の恋人だ。そして――私の愛する女だ」 彼が身を屈め、唇を私の唇へ重ねる。 それは優しいキスだった。 ほとんど無垢なほどに。 祝福のように。 赦しのように。 そして、約束のように。 やがて彼はゆっくりと離れ、表情を変えた。 告白によって張り詰めていた空気が薄れ、そこにはもっと柔らかく、そしてそれ以上に無防備な感情が浮かんでいた。 「私に、お前を愛させてくれ」 彼が囁く。 「仮面もなく、役割もなく、契約もなく。ただの男と女として、この夜の静けさの中で」 彼は私の手を取り、プライベート・サロンを出る。 静まり返った屋敷の廊下を抜け、やがて彼の部屋へ――今では、私たちの部屋となった場所へ向かった。 暖炉の火はすでに赤く輝く熾火へと変わっていて、その柔らかな光が石造りの壁を蜂蜜色に染めている。 彼は私を天蓋付きのベッドまで連れていった。 重厚な錬鉄製のそのベッドは、私たちが初めて一つになった場所だった。 そして彼は、白いリネンのシーツの上へ私を横たえる。 その手つきには、胸が締めつけられるほどの優しさがあった。 彼はゆっくりと服を脱いだ。 黒いシャツのボタンを一つずつ外し、衣服を一枚ずつ床へ落としていく。 まるで、今まで身につけていた鎧を、ひとつずつ脱ぎ捨てていくように。 そして彼が裸になり、私の隣へ横たわり、白いリネンの上で二人の身体が向き合ったとき――そこにはもう「影の王」はいなかった。 ただ一人の男がいた。
そして――すべてを引き起こし、すべてを利用していた。怒るべきだった。彼を突き飛ばし、叫び、叩くべきだった。それなのに、彼を見上げた私の胸に湧き上がったのは怒りではなかった。驚愕と、奇妙な感謝。なぜなら、彼は私を私の意思に反して救ったわけではなかったから。私自身を通して、私を救ったのだ。彼は私に選ぶための余白を与えた。間違うことも、迷うことも、いったん自分を見失うことも、そして自分自身の力で戻ってくることも許した。主人が、その弟子に与えられる最大の贈り物。それは――間違った選択をする自由。そして、自分自身の力で償い、やり直す機会だった。「……どうして?」私は、かすかな声で尋ねた。「強制されたものには、何の価値もないからだ、ブランシュ」彼の声は静かだった。「お前は恐怖のために私に従うこともできた。契約のためでも、躾のためでもいい。だが、私はそんな服従を望んでいたわけじゃない」彼の瞳が私をまっすぐに捉える。「私は、お前自身に選んでほしかった。悪を正面から見て、その目を見つめたうえで、それを拒絶してほしかった。お前の忠誠が強制されたものではなく、お前自身の自由な意思による行為であってほしかった」彼の両手が私の顔を包む。「価値があるのは、完全に同意し、自分が何を選んでいるのか理解したうえで差し出される服従だけだ」その言葉が、私の胸の奥へ深く沈んでいく。「そして、お前は選んだ」彼は続けた。「私を裏切る代わりに、奴を罠にかけることを選んだ。真実から目を背ける代わりに、真実を探すことを選んだ。沈黙する代わりに、告白することを選んだ」彼の瞳が、さらに深く私を見つめる。「今夜、お前はもう私の弟子ではない、ブランシュ」
彼は私を抱き寄せた。強い腕が私を包み込み、その胸へと引き寄せる。頬に彼の心臓の鼓動が伝わってくる。低く、力強く、それでも確かに生きている鼓動。彼の手が私の後頭部を撫で、絡まった髪をゆっくりと解いていく。彼はすぐには何も言わなかった。ただ、私を抱いていた。私が泣いている間も。胸の奥に溜め込んでいた恐怖と羞恥をすべて吐き出している間も。ただ、私を抱きしめ続けた。まるで傷ついた小鳥を抱くように。その腕には、私を砕くことさえできるほどの力があるのに、その力を選んで抑え、守るために使っている。「知っていた」やがて彼が、私の髪に顔を埋めたまま呟いた。低い声の振動が、私の胸郭の奥まで響く。「全部知っていた、ブランシュ。最初からな」私は彼の腕の中で凍りついた。血の気が引いていく。ゆっくりと顔を上げ、彼の目を探す。彼は瞬きひとつせず、私を見つめていた。そして、その黒い瞳の中に、私は決して見ることができないと思っていたものを見つけた。罪悪感。彼が――「影の王」が、罪悪感を抱いている。「……知っていたの?」「ヴァンスがお前に廊下で声をかけた、その瞬間からな。私の部下たちは何年も前から奴を監視している。この屋敷で奴が一歩動くたび、どんな言葉を口にするか、誰を見るか、そのすべてが報告され、記録され、分析されている。奴がお前に接触したと知った時、私は一時間以内に奴を消すことだってできた」彼の手が私の髪から離れ、頬へと移る。親指が頬骨を撫で、涙を一筋拭った。「お前を守るために、象牙の部屋へ閉じ込めてしまうこともできた。そして私自身の手で問題を片づけることもできた」彼は一度言葉を切った。
ただ彼に差し出した。私がすべてを差し出すのと同じように。「……あなたを裏切りかけました、パパ」その言葉は、傷口から毒を抜き取るように、私の唇からこぼれ落ちた。熱く、痛く、それでもどこか解放される言葉だった。声は震え、途切れそうだった。けれど、もう止めなかった。何も隠さなかった。「V氏が私のところへ来たんです。脅されました。私のすべてを知っていると言われました……記者だった過去も、あなたの組織に潜り込んだことも、最初から何を企んでいたのかも。彼は偽造した写真まで見せて、あなたが怪物だと私に信じ込ませようとした。あなたの資料を盗み出して、あなたを破滅させるために協力しろと言われたんです」息が詰まる。それでも私は続けた。「そして……私は、その取引を受け入れました」彼の髪に置かれていた手が、一瞬だけ止まった。けれど次の瞬間には、再びゆっくりと髪を撫で始めた。まるで、続きを話せと言っているかのように。「でも、できなかった……」私の声が震える。「あなたを裏切ることなんて、できなかった。刺青のあとも、融合したあとも、私たちが一緒に乗り越えてきたすべてのことを思えば、どうしてもあなたを裏切れなかった。だから、今度は私が彼を罠にかけようとしたんです。彼を葉巻室に呼び出して、会話を録音し、証拠を掴もうとしました。でも……彼は来なかった」涙が止まらない。「代わりに、私は真実を見つけた。完全な写真と、彼の指輪……。あの男だったんです。あなたの妹を殺したのは、あの男だった。そして私は……私は、その男と手を組みかけた。私は……」最後まで言葉にすることができなかった。嗚咽が喉を塞ぎ、肩が激しく震える。膝から力が抜けていく。私は覚悟していた。彼が離れていくことを。顔からすべての感情
私はそのまま、彼の瞳の奥へ沈んでいった。そして――息を呑んだ。そこにあるものを見つけたから。もう仮面はなかった。「影の王」もいない。「主人」もいない。そこにいたのは、一人の男だった。疲れ果てた男。愛することを知った男。そして、愛することを恐れている男。彼の黒い瞳は二つの深淵のようで、その奥には暖炉の炎が揺らめいている。その炎の中に、私は私たちのすべてを見た。あの穴。契約。蝋。米。鏡。刺青。融合。嘘。涙。そして、許し。「今夜のお前は完璧だった、ブランシュ」彼の声は低く、掠れていた。こんな声を、私は知らない。「お前は、私が望み得るすべてだった。いや……私自身が、こんなものを望んでいたことさえ知らなかった。今夜、お前に向けられたすべての視線が、私の胸に突き刺さる刃物のようだった。それでも、私は誇らしかった。お前が私のものだと、世界中に見せられたことが誇らしかった。どれほど美しく、どれほど強い女なのか、そして、決して弱さに屈することなく従うことのできる女なのだということを、誰もが目にしたからだ」彼の指が私の顎から離れ、頬をなぞり、こめかみへと上がっていく。そして髪の中へと入り込む。その仕草はあまりにも優しく、あまりにも深い献身に満ちていて、私はとうとう涙をこらえることができなくなった。「だが、今夜私が必要としているのは、お前の完璧さじゃない、ブランシュ」彼の声が静かに響く。「今夜、私はお前の真実が欲しい。お前の弱さが欲しい。お前の過ちも、恐怖も、全部欲しい。あと少しで自分自身を失いかけ、それでも戻ってきた女――その女を私に見せてくれ。できるか?」その問いは、私の魂に最後に残されていた鍵のかかった扉を開く鍵だった。涙が溢れ、頬を伝い、裸の胸へと落ちていく。私はそれを拭わなかった。







