LOGIN潜入捜査中に正体を見破られたブランシュは、ダミアンと30日間の服従契約を結ぶことになる。自由を制限され、過酷な試練に直面する中、彼女は自分自身を見失わないよう必死に抗う。 支配と服従の関係の裏側で、二人の間には複雑な感情が芽生え始める。思いがけない視線や優しさがダミアンの隠された一面を浮き彫りにし、彼自身の揺るぎないはずの信念さえも少しずつ揺らいでいく。 しかし、裏切りと絶望がすべてを一変させる。命を脅かす事件に巻き込まれたブランシュは、自らの力で立ち直り、人生の主導権を取り戻そうと決意する。 療養期間を経て、二人の立場は逆転する。かつてダミアンに翻弄されていたブランシュは、自分のルールを掲げるようになり、彼はもはやすべてを思いどおりにはできないことを知る。 対立、秘密、そして移り変わる力関係。二人の関係は新たな局面を迎え、それぞれが何を犠牲にする覚悟があるのかを問われることになる。 だが、主導権が入れ替わった今、本当に二人を支配しているのは誰なのだろうか?
View More援軍が到着するまでの時間。 私の犠牲が、意味を持つための時間。 「連れていけ」 ヴァンスが護衛たちに命じた。 「象牙の間に閉じ込めろ。もし嘘をついていたら、私が直接始末する」 男たちは私の腕をつかみ、執務室から引きずり出した。 私は抵抗しなかった。 最後に一度だけ、ヴァンスを振り返る。 彼はダミアンの椅子に座り、空のUSBメモリを指先で弄んでいた。 勝利に酔いしれ、顔を歪めながら。 彼はまだ知らない。 自分がすでに負けていることを。 手にしているUSBメモリが囮であることを。 ダミアンがまだ生きていることを。 そして、私が彼を救うために、命を懸けていることを。 彼が勝利に酔いしれて無駄にする一秒一秒が、私の愛する男に与えられる一秒なのだ。 護衛たちは私を北翼へと引きずっていった。 象牙の間へ。 かつて、最初の裏切りのあと、三日間にわたって沈黙と空虚の中に閉じ込められた部屋へ。
私は声を震わせた。 恐怖は本物だった。 ただし、それは彼に対する恐怖ではない。 トンネルの中で、今も命を失いかけているダミアンへの恐怖だった。 「USBメモリを渡しました。今度は私を守ってください。ダミアン・クロスは死んだか、もう長くはないはずです。ホールで倒れるのを見ました。彼の部下たちは敗走しています。私はただ、生きてここを出たいだけなんです」 ヴァンスの唇に笑みが浮かんだ。 勝利を確信した笑み。 侮蔑と、これから味わう優越感を楽しむ笑みだった。 「ダミアン・クロスが死んだ?」 彼は首を傾けた。 「お前は、彼が死ぬところを見たのか?」 「倒れるところを見ました。何発も撃たれていました。もう立ち上がれないと思います」 ヴァンスは突然、笑い出した。 狂人のような笑い声が、荒れ果てた執務室に響く。 「聞いたか、クロス? 聞いたか? お前の大切なブランシュがお前を見捨てたぞ!」 彼は私を嘲笑いながら、さらに声を張り上げた。 「お前の伴侶も、女王も、愛する女も、勝者の側についたということだ!」 そして、再び私へ向き直った。 狂気じみた光が、その瞳の奥で揺れている。 「ここを生きて出たいのか? なら、最後に一つ情報を渡せ。忠誠を証明してみろ。秘密の通路はどこだ? クロスは最も機密性の高い記録をどこに隠している? 生き残った部下たちはどこだ?」
男たちは再び視線を交わした。 一人が無線機を取り出し、私には聞き取れないほど小さな声で何かを報告する。 もう一人は、銃口を私から逸らさなかった。 「ヴァンスがお前に会うそうだ」 無線機をしまった男が言った。 「秘密の通路について情報を持っているらしいな。執務室へ連れていく」 私は二人に挟まれ、背中に銃口を感じながら廊下を進んだ。 心臓が激しく打っていた。 これは、絶望的な賭けだった。 自殺行為にも等しいはったり。 もしヴァンスが、私が裏切ったことを知ったら。 USBメモリが偽物だと気づいたら。 私が最後までダミアンに忠実であり続けていると見抜いたら。 彼は私を殺すだろう。 それでも、時間を稼げるかもしれない。 ダミアンが死にかけているトンネルから、敵の注意を逸らせるかもしれない。 味方が介入できるだけの時間を作れるかもしれない。 私の命を懸けた陽動が、彼を救う助けになるかもしれない。 私たちは破壊された館の中を進んだ。 愛着を覚えるようになった石とベルベットの廊下は、見る影もなく荒れ果てている。 床には遺体が転がっていた。 ダミアンの部下。 ヴァンスの部下。 そして、銃撃戦に巻き込まれた罪のない招待
オーブンの火は消え、鍋やフライパンが避難の混乱の中で床に散乱している。 けれど、忠実な副官であるマーカスが、医務室を確保するよう命じたことは知っていた。 医務室は東翼にある。図書室の裏側だ。 そこまでたどり着けば、医師と担架、そして救護チームを連れて戻ることができる。 私は厨房を出て、中央廊下へ向かった。 そして、二人のヴァンスの部下と鉢合わせた。 黒い戦闘服に身を包み、目出し帽をかぶった男たちが、突撃銃をこちらへ向けている。 彼らは私を見て目を見開いた。 破れたベルベットのドレス。 血まみれの身体。 裸足。 そして、手にした拳銃。 「お前! クロスの女だな! 動くな!」 本能が働いた。 パニックではない。 本能だった。 犯罪カルテルと交渉し、民兵組織に潜入し、何度も絶望的な状況を生き延びてきた記者としての本能。 私は両手を上げた。 掌を相手に向け、拳銃を指先からぶら下げるようにして、ゆっくりと声を出した。 「待って。撃たないで。降伏します」 男たちは驚いたように顔を見合わせた。