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4. 異変

Auteur: Mr.Z
last update Date de publication: 2025-03-24 17:25:12

『え~、気付かれた方も多いと思いますが、ロアが今ちょっといません。先ほど急に動かなくなりまして、現在裏で様子を見てもらっています』

 は?

 さっきまであんなに会話してたのに?

 最後のアレはどうなったんだよ!?

 その後番組は止まる事無く、100万給付の事や新経済対策の内容、東京内建造物の急な赤い光、終盤にはロアが最後に言おうとしていた事の考察が数分だけされた。

 L.S.を使った新事業を売り出す、外交を増やして国々の物を組み合わせた限定品を作る、宇宙事業を新たに進める、と様々な意見。しかしその反動で、一気に税金を上げる、公共料金が引き上げられる、L.S.の使用料を毎月取られる、といった意見も。

 だが、俺が本当に気になったのはそれらではなかった。ほんの少数だがSNSでこう言ってる人たちがいた。

「人間を殺して、その分を取り上げるんじゃないか?」

 なんでかは俺にも分からない。なぜかこの言葉だけがずっと脳裏に残った。この違和感はなんだろう⋯⋯。

「ねぇ、ルイ」

 考えていると、不意にユキが話しかけてきた。

「総理の会見って夜にもするって言ってたよね」

「ん⋯⋯言ってたな」

「会える人は会いましょうって言ってたけど、次は強制的に見せるとかじゃないってことかな」

「かもな。また夜に見てみるしかない、ってか、この100万どうするよ?」

「う~ん⋯⋯私は一旦貯金かなぁ。ルイは?」

 突然の100万に対しても、ユキは案外冷静な様子だった。昔っからの冷静さは、ここでも変わらずのよう。ちなみに俺もと言っておいた。特に欲しいものっていっても、そんな今はない。

「さて、そろそろ出ますか」

「うん」

 俺たちが出ると同時に、一気に人が入っていった。もう昼が近いからか、人気だったりするからか、それかあの席の良さがまさかバレてるなんて事は、流石にあまり無さそう。

 会計は出る時に自動でL.S.から支払われるため、特に接客とかは無い。何年か前から自動会計の無人店舗が広がっていったが、こんな施設内まで今や無人みたいなもの。奥に管理人一人くらいはいるんだろうけど。

「えっと、10階でやってるんだよね? それ」

 俺の新仕様になったL.S.を指してユキは言う。そんなこんなでユキに連れられ、エスカレーターで例の10階に向かう。またあの場所に行くってわけだ。さっきの影響か、一気に増えた人の数。あまり多くならないうちに帰りたい、と考えながら向かう途中、

「悪い、ユキ。ここからはちょっと一人でもいいか?」

「? いいけど、どこか行くの?」

「どうしても確認したい事があって、後で屋上に来てくれ」

「屋上? 分かった」

 俺はすぐに屋上へと向かった。実はさっきから、配信やSNSで謎の赤ビル建設が話題になってる。AIだけで作ってるらしく、とてつもない速さで出来ていってるらしい。上の方からだと様子が見えるらしいから、ここからならすぐ見えるはずだ。せっかくだし、ちょっと見られるうちに見てみたい。

 屋上へ行くと、何人かが先にその様子を見ていた。「あれなに?」という声が聞こえてくる。秋葉原駅のすぐ横、確かに大きな赤い何かが今出来ようとしている。人は一人もおらず、何台もの機械だけが正確に動いていた。秋葉だけじゃない、渋谷にも出来てるっていうし、謎だ。

 さらに上をよく見てみると、赤いドローンも数台飛んでいるのが見える。何をする場所になるんだろう。L.S.でいろいろと確認をしていると、ユキが来るのが横目に見えた。屋上は風が結構あり、ユキの履いてるミニスカートが一瞬捲れ上がった。ピンクのアレは見えなかった事にしておこう。

「⋯⋯変態」

「いや見てねえって」

「嘘、絶対見た」

「もう何でもいい、んな事よりアイツを見てみ」

「?」

 ユキは赤ビルを見て少し驚く。俺たちはハンモックのある場所に座り、アレを眺めた。

「さっきはやっぱり見た?」

「何を?」

「ピンク」

「ピンクってなんだ」

「引っかからないかぁ」

「どうだっていいだろ、んなこと」

「よくないし、ルイの変態」

「意味分からん」

 ⋯⋯あれ?

 ユキを横目に見ると、右腕には水色のL.S.があった。

「なぁそれ、どうしたんだ?」

「あ、これね。さっきUnRuleの事前予約当選者ってのに当たっちゃったみたい」

「は? ユキも?」

「うん」

 ⋯⋯マジ?

 予約の数ってヤバかったはず。

 100万人くらいって、告知で見た気がする。その中の100人中2人がここにいるという事になる。にしても、形もまた少し違う。疑問が残る中、俺たちはもう数分だけ眺めてから秋葉原駅へと向かう事にした。経済対策の影響で利用者が多いのか、タクシーは全く捕まえられなかった。

「あ~、タクシー乗り場にも全然いないかぁ」

「こんな時だけ使いやがって」

「ね。電車乗るしかないかなぁ」

 駅前にも確かに人は多かったが、意外にも予想の範疇だった。俺たちは仕方なく駅構内へと入る。改札は今は何かを媒介して通る必要は無く、次の改札を通る時にL.S.が自動で支払ってくれる。最近電車は乗ってないけど、電車内も凄い進化してるって聞いた。無人電車による自動運転だけでなく、なんと全部三階建てらしい。

 AIによる案内も充実していた。駅員のような恰好をした人型アンドロイドや、マスコットキャラがまるで人のように老人たちを案内している。今までの駅員の仕事をあれらが代替してるって感じなのだろうか。

 各所でL.S.の大きい版のようなホログラム掲示板まであり、もう俺が知っている駅では無かった。そんな俺の横で、何一つ表情を変えないユキ。

 まさか知らないの俺だけじゃないよな⋯⋯?

 こんなに凄いんだな、今の駅って⋯⋯。

 俺の家は渋谷の神山町。高級住宅街なんて言われている場所だが、最近は別にそんな大した家ばかりじゃない。近くにユキの家があるが、俺の家より全然大きい。そこに向かうには、山手線の外回り(東京・品川方面)の方が少し早く行ける。

 人の流れに沿ってホームに行こうとしたその時、後ろの方で男の大きな悲鳴が聞こえ、それと重なるように人々が大声を上げて走って離れていく。駅員アンドロイドたちがすぐ気付いたのか、警報を鳴らしだし、横を走りだした。

 構内の壁のタッチパネルやホログラム掲示板が真っ赤になり、【〈〈緊急避難〉〉走らず慌てず対処をお願いします】と表示され、瞬く間に視界は赤へと染まった。

「⋯⋯ユキ、先行ってろ」

「いや、私も行く」

「いいのか、ヤバいヤツがいるかもだぞ」

「大丈夫、危なかったら一緒に逃げよ」

 ただの好奇心だった。こんな事は今は滅多に起こらないから。ヤバければ逃げればいい、それだけを考え、問題の後ろの場所へと行く。それは人を掻き分けたほんの数メートル先。

 そこには真っ赤に染まった床。取り押さえようとする駅員を次々と破壊するアレ。俺の脳内で危険信号が発した。今すぐ逃げろって。逃げろって。

 脳内が言う。早ク逃ゲロ。

 

 早 ク 逃 ゲ ロ

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    「なぁ、もうこのままでもいんじゃね?」「だな」 シンヤに返事すると、誰かの手が頭に触れた。目を開けると、俺の頭を撫でるユキが立っていた。隣に座るシンヤは、寝たまま"睡眠空旅"をまだ満喫している。「(⋯⋯何やってんだ)」「(そろそろご飯行きたいなーって)」 どんな呼びかけ方だよ、それ。他にも体験中の人がいるため、俺たちは小声で話す。ってか、今何時だ? ⋯⋯深夜の1時!? 時間を見ると、≪2030.09.27 AM 01:12≫になっていた。小一時間だけ体験してから飯に行こう思っていたら、ありえないくらい経っていた。 睡眠空旅、終わってんな⋯⋯やり始めたら時間が一瞬で溶けちまう。寝てるのに、空を飛んでる臨場感、いろんなゲームの先行体験、さらには周りを歩いてるだけでも様々な景色を楽しめる。 これが無料で出来るのはレベルが高すぎる、やる人が多い訳だ。 ⋯⋯シンヤはこのまま放っとこう「(んじゃ、行くか)」「(シンヤ君はいいの?)」「(腹減ったらくるだろ)」 バレないようにこっそり立ち、ユキと機内から出ようとすると、「(あ、ニイナとノノがいる。いつ来たんだろ)」「(なんちゅう顔して寝てんだ)」 二人が頭を合わせるようにしながら、口を開けて寝ていた。 もうただの仲良しじゃん。もちろん起こすような事はしない。 第2ターミナル内へと戻ってくると、こんな時間でもかなりの人が往来していた。 この流れを見るだけで、"現実の羽田空港"にいるんだと実感する。 ≪二蝶万物≫の非渋谷から帰って来たあの時、ユキは泣き続けていた。皆に心配されていたが、疲れが溜まってただけと適当にごまかしていた。 その理由は"俺だけ"しか知らない。あの"違う渋谷"で一緒にいた俺だけしか⋯⋯ 肉体的にも精神的にも休んだ方がいいと思い、明日明後日はここに泊まる予定にしている。二日くらい休んだっていいんだ、焦るのもよくない。「せっかくだし、一番いいラウンジ行ってみる?」 こんな澄ました顔で言ってきているが、さっきまで泣きじゃくってたんだよなぁ。腫れた目はもう引いてるっぽいが。 二人で国際線NJAスーパーファーストクラスラウンジへとやってきた。どうやらここは無料ではなく、"新経済対策後の累計収入額の多さ"に応じて、入れるかどうか決まっているらしい。そのように入口横に大きく書

  • フォールン・イノベーション -2030-   96. 十二

     ※この話以降は【三船ルイの視点】となります 静かな風が辺りを包んだ。巨大な紫月がこの渋谷スカイを照らし始めると、あの時の事が蘇った。何も出来ず、こいつに殺された、あの時の事が。あんなに何も出来ない事は初めてだった。 自慢じゃないが、俺は一度も負けた事が無かった。ARやXRは、VRと違ってリアルの繊細な動きと判断が物を言う。ただ鍛えればいい、ただ慣れればいい、その時代は終わり、AIを使って常に最新の動きと対策を研究し、独自の動きへと、自分のAIへフィルターをかける必要がある。肌に合っていたのがこの環境だった。 こんな意味不明な経済対策が始まった時、その経験がこんなに活きるなんて、人生何があるか分からないと思った。でも、最期はこいつと会って、今までの経験全てを否定されたかのようだった。 遥か先を行った見た事無い動き、5年の歳月はあまりに大きさな差を生んでいた。 でも、今は違う。一度見たのは脳裏に焼き付いている。死んでから何もかも失って、何もかも捨てて、その代わりのものを持ってきた。 それは誰でもない、ユキたちのおかげ。だから、またここに立っていられる。 次はもう無い。今度こそ、どちらかがこの世から消える。『⋯⋯』 ヤツの両手に銃剣が握られた。このヘリポート上へと散る、0と∞、白と黒の時間粒子。"真の不死蝶"という存在が、辺りを震撼させる。 白空羽田空港の時のように、話してかけてくれそうにない。アドバイスもくれそうにない。俺を本気で殺すという意志だけが、そこには立っている。 ヤツの背中から七色蝶の羽根が広がると、ヤツは一瞬で俺へと迫って来た。お互いの銃剣が激しくぶつかった時、俺の銃剣から"新たな粒子"が舞う。 "前と違う異変"を察知したのか、ヤツが動きを変えようとする。その背には、薄っすらと浮かぶショウカさんが目を瞑り、ヤツを包んでいた。 ショウカさん、そこで見てるんだろ? 俺が代わりに持ってきた、この"全虚無限涅槃蝶の銃剣"で、あんたらを連れて帰るからな。「ルイ⋯⋯!!」 ユキの叫ぶ声が後方から伝う。「大丈夫だ。手に持ってる"それ"、任せたからな⋯⋯!」 ユキが持つ、あの"白黒カプセル"。それをどうするのか、全てユキに委ねている。 けど、そんな他の事を考える暇は今無い。目で認識出来ない攻防が続く中、死んで得た"コレ"が正しいのか

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