تسجيل الدخول大場カナコはバイタリティがカンストしているタイプの女子中学生。諸事情あって学校に通えず、橋の下に住んでいる。そして拾った石や流木をフリマアプリで売って暮らす日々を過ごしていた。そんなある日、川の中にいい感じの流木を発見。これは高く売れそうだと拾おうとしたらうっかり溺れてしまう。なんとか川原に這い上がると、そこは見知らぬ場所だった。異形のサルに追われるキツネ耳の巫女服少女を助けたことをきっかけに、カナコの江戸風異世界での生活が始まるのだった。これは一人のJCが知恵と勇気と口八丁で一攫千金を目指す物語である。
عرض المزيد「我が名は大場カナコ! 世が世なら花も恥じらう女子中学生だった者である! いざ尋常に参るッッ!!」
私はそう叫ぶと、川に向かって売れ残りの石を次々に放り投げた。一段、二段、三段……と水面を跳ねる石を見ているとすっきりする。今日の記録は十八段か。うむ、調子は悪くない。
デイバッグがひとまず空になったので、今日の石拾いを始める。いい感じの石にそれっぽいキャプションをつけてフリマアプリで売るのが今の私の生業である。フリマアプリのポイントはお店の決済にそのまま使えるのが素晴らしい。銀行口座が凍結されていても問題なしだ。
富士山の樹海で逃げ回っていた頃と比べたら、いまの川原暮らしは天国みたいなものだ。契約切れのスマホでも野良Wi-Fiでネットに繋がるし、石が売れたらコンビニから発送できる。梱包用のダンボールはスーパーでただでもらえる。ビバ現代文明である。
「おっ、何やら良さげな流木を発見!」
バッグが半分ほど埋まったところで、川の少し深いところにいい感じの流木が沈んでいるのが見えた。よく干して綺麗に掃除してやると、こういうのも高く売れる。最高記録は3700円。石よりも高い値段がつくことが多いのだ。
ざぶざぶと川に入る。春先の冷たい水がジャージに染みる。つべたい。だが、我慢。流木を掴む。川底に深く突き刺さっているようで、なかなか抜けない。腰を落とし、両手に思いっきり力を込める。
「うぉぉぉぉ……おりゃぁぁぁああああ!! あがぼぼっ!? がぼぼっ!? ごぼぼぼぼ……」
すぽーんと勢いよく抜けた。それがよくなかった。足が滑った。転んだ。デイバッグに詰めた石の重みで立ち上がれない。がぼぼあぼぼと手足をばたつかせながら意識が遠くなり――
――――――
―――― ――「ぼはあっ!? げほいっ、ごっほ! じ、じぬがどおぼっだ……」
何をどうしたのか覚えていないが、なんとか岸辺に這い上がれていた。全身を犬のように震わせて水気を飛ばす。あたりを見渡すと、景色がだいぶ変わっていた。けっこう流されてしまったのだろうか。とりあえず場所を確認しようと土手を登る。
「うーん、すがすがしいほどにど田舎……」
土手から見える風景は、見渡す限りの田畑だった。ぽつぽつと民家が立っているが、瓦屋根と藁葺きの平屋ばかり。この辺に藁葺きの家なんてまだ残ってたんだな。ああいうのは観光地ぐらいにしかないもんだと思ってたよ。
あちこちに桜が咲くのどかな風景に思わず心が和むが、のんびりもしていられない。まだ今日の出品ができていないのだ。ここがどこだか見当がついていないが、川上に向かっていけば元の場所まで戻れるだろう。
拾った流木を杖代わりに、土手をとてとてと歩き始めたときだった。
「ぎゃぁぁぁあああ!! 誰かお助けぇぇぇえええ!!」
土手の向こうから誰かが走ってきた。巫女服を着ていて、金髪の頭には三角の耳が生えている。コスプレの撮影をしているところに変質者にでも襲われたのだろうか。目を凝らすと、数人の人影が巫女服を追っているのが見えた。しかし、その人影は人間にしてはやけに小さいように思える。
「んー? サルか何かかな?」
「おーたーすーけぇぇぇええええ!!」眺めていると、巫女服の少女が目の前でずてーんと転んだ。いまどきこんなきれいに転ぶ人はめったに見ない。芸術点が高いな。
「ゲギャギャギャギャ!」「グギャギャギャギャ!」「ゴギャギャギャギャ!」
少女を追っていたのは、思ったとおりサルだった。大きさは私の腰の高さくらいで、皮膚病なのかあちこちの毛が抜けており汚らしく見える。顔は青白く、まるでドクロみたいだ。額には角のような出来物がぽこぽこ付いている。いや、これ絶対変な病気持ってるわ。
「えんがちょっ!」
私はバッグから取り出した石を3匹のサルの顔面に投げつけた。それは見事に眉間に命中し、サルたちは「ゲッ」「グッ」「ゴッ」と悲鳴を上げて逃げ去っていく。普段はこうしてスズメやハトを狩っているのだ。この程度は朝飯前である。
「あ、ありがとうございましたっ!」
巫女服少女がよろよろと立ち上がり、ちょこんと頭を下げてきた。金色の瞳には涙が溜まっていて、おしりにはふさふさの尻尾が生えていた。ケモ耳はピコピコと動いており、なかなか気合の入ったコスプレだ。
「うん、まあ、あのままだと私も引っ掻かれたりしたかもだし。お礼を言われるようなことじゃないよ」
助けるつもりで助けたのなら、礼金のひとつもせびるところだが、今回は自衛がメインだ。お礼を言われる筋合いはない。野生動物の爪や牙は怖いのだ。めっちゃバイキンだらけだから、かすっただけでも破傷風とかそういう怖い病気になりかねない。狩る目的でないのなら、大声を出すなり石をぶつけるなりして追い払う方が賢い。
「いえいえ、とんでもないです! 命の恩人です! ぜひお礼をさせてください!」
「そう? じゃあ、もらうけど」しかし、くれるというものを断るほどでもない。私は右の手のひらを少女に差し出した。
「おひけえなすって?」
「違うわっ!」なぜそうなる。私が任侠にでも見えるのか。磨いて売れば千万単位の値がつくと借金取りから太鼓判を押されたこともある美少女なのだぞ、私は。
「ええっと、お金、ですか……?」
「もちのろん。お金に勝る誠意なし。次に物だね。言葉なんていくらもらっても何にもならないし」 「そ、そうですか。あまり持ち合わせがないのですが……」そういって、少女は懐から財布を取り出した。布製の渋いデザインだ。小物にまで凝るとは、なかなかのコスプレイヤーである。
「すみません、これしかなくって……」
「かまわないよ。たくさんあればうれしいけど、少なくたってお金はお金だもん。……って、何これ?」私の手のひらには、五円玉に似たものが4枚置かれていた。デザインも違っていて、穴は四角く、寛永通宝と書かれている。古銭ってやつだろうか? いくらなんでもこだわりすぎだろ。
「ご、ごめんなさい! 命の恩人に十六文(※)は少なすぎますね……」
「別にいいよ。こんなのでもフリマで何百円かにはなるでしょ」 「ふりま? ええっと、他に何かできることがあればいいのですが……」 「うーん、じゃあ 世境橋は私の
「世境橋ですか? 私もちょうどそちらに用事があったんです! よかったらご案内しますよ!」
「あ、そうなんだ。じゃあお願いするね」どうせまっすぐ行くだけだろうけど、案内してくれるのなら断ることもない。私は少女の揺れる尻尾を追いかけて歩き始めた。
※
【稲荷家コガネの日記帳より】■嘉永3年。1月1日 今年も無事にお正月を迎えられました。江戸へ来てからははじめてのお正月です。初日の出を拝んで若水を飲んでから寝ようとしたら、カナさんから「初詣に行こうよ」と誘われました。 そういえば、最近は二日にお参りに行く習慣が江戸の街で流行っているらしいです。カナさんがやってきた未来の江戸(本当は東京って名前になっているってこっそり教えてくれました)では、1月1日にお参りに行くのが普通になっているんだそうです。 元日にお出かけなんてしても面白いことは何もないですし、神様だって元日ぐらいはゆっくりされていると思うのですが、未来の風習と言うからにはきっと何か理由があるんでしょう。 付き合って初詣に行ってみたのですが、肝心のカナさんは「屋台のひとつもない!? というか人っ子一人いない!? 一体どうなってんの!?」と文句を言っていました。 うーん、元日から働く人なんていないと思うのですが、未来の日ノ本は1年中休みなしだったのでしょうか? そう考えると、カナさんがやたらとあれこれやりたがるのもわかる気がしました。■1月2日 眠りから目覚めたように、早朝から江戸の街が活気づいています。最近はすっかり慣れっこになっていましたが、この騒々しさが江戸の街の色なんですね。私も修行をがんばらなくちゃって気持ちになります。 行商から買った小鰭のお寿司を食べながら、カナさんと一緒に街を歩いていると遠くから賑やかな演奏が聞こえてきました。豊作を願う鳥追の人たちですね。実家の方では子どもたちが主役でしたが、江戸では大人の女太夫が数人連れでやっているようです。三味線や胡弓を弾きながら歌っています。♪あの鳥ャどっから追ってきた♪信濃の国から追ってきた♪何もって追ってきた♪柴抜いて追ってきた♪一番鳥も二番鳥も♪飛び立ちやがれホーイホーイ♪ホンヤラホンヤラホーイホーイ 思わず楽しくなって体を揺らしていると、カナさんが「正月から辛気臭え!」なんてことを言いながら三味線を奪い取り、すごく騒々しい曲をかき鳴らし始めました。 商店の店先にある空樽を叩いたり、異国の言葉で歌い出したりとやりたい放題です。しかし、これもまたなんだか楽しくなって、体が自然と揺れてしまいます。気がつけば、大勢の人たちで囲まれ
尖った岩山が海を引き裂き、その下にあるものが明らかになった。 爛々と赤く燃え上がる巨大な双眸。自動車も丸呑みに出来そうな巨大な口腔。海上に出ただけでも100メートルはゆうに超える巨大な上半身。輪郭は直立するワニのよう。最初に見えた岩山は、この怪物の背ビレだったのだ。「なにッ!? あれはまさしくゴメラではないのかッ!? まさか二百年も早く現れるとは、この象山の慧眼をもってしても見通せなかったぞッ!!」「あれがゴメラ……! わたくしは船に戻って砲撃の準備をしマスわ!」 象山とペルリが色めき立っている。辺りにいた幕府の軍隊も、ペルリが連れてきた水兵も大騒ぎだ。私は私で「マジかよ!?」という顔になっていることだろう。瓢箪からコマどころではない。瓢箪から大怪獣が現れてしまった。どうしたらええねん、これ? ――豪雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄!! ゴメラの口から青紫の光線が吐き出される。それはさながら天を貫く巨大な柱。雲が割れ、空気が焼け、辺り一帯にオゾン臭が漂う。やべーよ、熱線吹いたよ。ガチモンの大怪獣だよ。「わぁぁぁあああ!? にっ、逃げろ!」「あ、あんなの勝てるわけがない!」「ぶ、武士の戦場はケダモノと戦うことではないでござる」「馬鹿者どもッ! 早く持ち場につかぬかッ! この象山が発明した超電磁エレキテルキャノンの力があれば必ず勝てるッ!」「あなたたちも勝手に逃げては駄目デスの! ステイツの威光をあのモンスターに見せてやりマスの!」 象山とペルリは悲鳴を上げて逃げ惑う兵士たちを叱咤するが、誰も話を聞いていない。まあそりゃそうだろう。あんな大怪獣に生身で挑める人間などいるはずもないのだ。 私にしても、いつまでも固まっている場合じゃない。少しでも早く逃げ出さなければ。象山とペルリにはせいぜいがんばってほしい。なんとか粘って私が逃げる時間を稼いでほしいものだ。しかし、避難に使えそうな船はみんな逃げ出した兵士や人足で押し合いへし合いになっている。くそっ、いっそ海飛び込むか……。 そんな覚悟を決めた、そのときだった。『ちょろちょろやかましいんじゃ、ゴラァッ!!』「へ?」 どすの利いた声が待機を震わせた。その場にいた全員の動きが止まる。そしてゴメラがざっばーんざっばーんと大波を立てながら歩いてくる。『何いたずらし腐ってんのや、
江戸湾の沖で、埋立工事が始まった。 土砂を満載した船がひっきりなしに行き来し、もっこを担いだ男たちが威勢のよい掛け声を上げている。「よしッ! 設置場所はここでよかろう。どうかな、大場君ッ!!」「はい、とても埋まってますね」「フハハハハ! そうだろう、そうだろうッ!」 そして最初に出来上がった埋立地に連れて来られたのが私である。この象山とかいう先生は、遠い未来に海から襲い来るであろう大怪獣に備え、江戸湾に砲台を作り上げてしまったのだ。そういえば、お台場ってもともと黒船に備えた砲台の跡地だったっけ……と曖昧な記憶をたどる。 この世界ではアメリカと平和的に開国にいたり、友好的な関係を構築できている。なんならポケニンの影響で日本は超人的な能力を持つサムライとニンジャの国として恐れられてすらいるらしい。巨費を投じてこんな砲台を作るのなんてはっきり言って税金の無駄遣いなのだが……。 ま、私の財布が痛むわけじゃなし、別にいっか。穴を掘って埋めるだけでも景気対策になるのだと、どっかの経済学の先生も言っていた気がする。「では、これより試射実験を開始するッ! よく見ていてくれたまえッ!」「はい、よく見ていてくれたまえます」 そんなことよりも問題は、目の前にある巨砲である。二本の鉄柱が突き出しており、バチバチと青白い電流をまとっている。「ではゆくぞッ! 象山式超電磁エレキテルキャノン、発射ッ!!」 バシュンッと空気が切り裂かれる音。ソニックブームで弾道にコーン状の白い雲がいくつも出来ていく。水平線が爆発し、高さ数十メートルにも及ぶ水柱が立ち上がる。遅れて爆風がここまで届いて髪をバサバサと揺らした。「どうかねッ、大場君ッ! この象山砲の威力はゴメラにも通じると思うかねッ!」「はい、効果はバツグンだと思います」「フハハハハ! そうだろう、そうだろうッ! この象山がいる限り、神州日本の平和は誰にも脅かさせんよッ!!」 私の作り話を真に受けた象山は、とんでもない超兵器を作り出してしまった。彼の説明によるとエレキテルの力を使って砲弾を加速し、火薬式の大砲ではありえない初速と威力を実現しているとのことなのだが……それってレールガンだよね? 現代でも実験段階だった兵器だ。なんでそんなものを開発できるんだよ。頭がおかしいのか? いや、おかしいんだろうな。「いまは大き
「時は西暦20XX年! 二百年後の日ノ本の国、ネオ江戸シティは恐怖のどん底に叩き落されていた……!」 ベンベンっと扇子で机を叩くと、庭先までびっしりとすし詰めになった聴衆がごくりと息を呑む。「江戸湾から現れ出たのは頭の高さは五百尺を超える大怪獣! ぎょろりと真っ赤に燃える目に岩山の如き荒々しい肌。どしんどしんと歩くたび、家屋が潰され大地が揺れる! その全貌はさながら直立する巨大な鰐! 火を吹きながら歩く様子は浅間山が生命を得て動いたが如くっ! その名も大怪獣<ゴメラ>! 未曾有の危機に、ネオ江戸っ子たちはなすすべもなく逃げ惑う!!」 ベンベンっ。「地球防衛火消し『バイオロジーサイバネティックめ組』は秘密兵器を駆使してこの大怪獣に立ち向かうっ! まず出動したるは超電磁エレキテル重戦車っ! にゅっと突き出た砲口からまばゆい雷光が発せられ天をも焦がすっ! さしものゴメラもこれには……しかしっ! 白い雷光の向こうからぬうっと垣間見えるは不敵なる魔獣の凶相! 人類の脆弱さを嘲笑うが如く乱杭歯がびっしり生えた凶悪な口を開けると、紅蓮の炎が吹き出し超電磁エレキテル戦車を吹き飛ばすっ! 名状しがたい熱波が広がり、エターナル永代橋からジャパナイズ日本橋まで、ネオ江戸シティが一瞬で灰燼と化すっ!」 ベベンベンベベンっ。「もはやネオ江戸シティの……否、人類の命運もこれまでか……ネオ江戸っ子たちが絶望のどん底に落とされたそのときだった……。アイツが、そう、アイツが来てくれたのだ。さあ、皆様もご一緒に!」「「「「ウルトラスーパーミラクル暴れん坊ショウグーン!!!!」」」」 よしっ、聴衆の声が見事に揃った。みんな呼吸がわかってきたな。「そう! やってきたのは我らがウルトラスーパーミラクル暴れん坊ショーグン! 鮮やかなる金糸のマントを閃かせ! 真っ白な天馬にまたがって! 大空を駆けてやってきた! ゴメラの目の前にシュタッと着地すると、即座に巨大化! 五百尺まで膨れ上がり、憎っくきゴメラの顔面に右拳、左拳、右拳、左拳、右拳、左拳……拳の嵐を叩き込む!! ウルトラスーパーミラクル暴れん坊ショーグンの七十七の必殺技のひとつ、<ウルトラスーパーミラクル暴れん坊フィストストーム>が炸裂したあっ!!」 聴衆が「わあっ」と盛り上がる。やっぱりヒーローの登場シーンはど派手に